超初心者向け特別講義 オーバーヒート
 さて、つぎはオーバーヒートについてですね。名前くらいは聞いたことあるでしょう。まぁ、実際に遭遇する機会なんて滅多にありませんけどね。

 オーバーヒートって状況がどんな状況か、わかりますか? 温度が上がりすぎた状態、ってことはわかっているでしょうが、じゃあ、何の温度か、というと、ピンとこないかもしれませんね。
 基本的にオーバーヒートは、エンジン本体が熱くなりすぎた状態です。ただ、エンジン本体の温度を測るのは難しいですし、そもそも、温度が上がりすぎて真っ先に異常を来すのが、冷却水です。こいつが沸騰してしまう。
 温度管理での最大の問題が、この冷却水の沸騰ですから、オーバーヒートと言うと普通、冷却水が沸騰して「吹いて」しまった状態を言います。
 車には水温計がついてるのは知ってますよね? 自分の車のどのメーターが水温計か、念のために確認しておいてくださいね。この温度が高くなりすぎると、オーバーヒートというわけです。

 ただ、車載の純正の水温計はあまりあてにならないので注意してくださいね。なぜかというとこの水温計は、温度にあわせて敏感に反応するようにはできていないんですよ。
 水温が低いうちはどんどん、「適温」めがけて上がって行きます。でも、ある温度、多分70℃くらいだと思うんですけど、このあたりになると、突然「適温」のところに貼りついたまま、動かなくなります。モノの話だと、120℃くらいまで、そのまま動かないとか言いますね。
 普通、水温計が110℃をこえたら、そろそろ危険ゾーンに入ってます。120℃なんてのは、ほんとに危機的状態ですよ。だから、純正の水温計が動き始めたらもう、終わりだと思ってください。そのくらい、純正のは頼りにならないんです。
 じゃぁ、どうしてそんな設計になっているかというと、実際に水温っていうのはけっこう、簡単に上下するんですよ。車のことをなにも知らない人が、「普段より水温が高い!」と言って騒ぎ始めると、メーカーとしてはかなり厄介です。でも実際は、80℃から100℃の間ならいくら動いても全然問題ないんです。ターボ車できちんとオイルクーラーを取りつけてあれば、100℃、場合によっては110℃に達したってまだ大丈夫なこともあります。でも、知らなければびっくりしますよね? そんな、「よく知らない人」のために、こんな状態にしてあるんですよね。
 だから、車をチューンしてあったり、スポーツ走行したり、とにかく車をシビアに管理したい、っていう人は、水温計を取りつけるんですよ。
 まぁ、みなさんもつけておいて損は無いかもしれませんね。問題はそれだけのお金を出す価値があるかどうか、って点になるでしょうけど……そうですねぇ、ターボ車でブーストアップあたりを始めると、そろそろ欲しいかもしれませんね。初めのうちは別にいらない、って人が多いですね。初心者なら黙っていても危険ゾーンに入ったりしませんから。車に負担をかけるほど猛烈な走り方はできないんですよ、腕がつくまでは。

 じゃぁ、温度が上がるとなにが困るか、ということです。
 エンジン自体も、あまりに温度が上がると壊れてしまいます。ただ、どこかが融けたり焼けたり、といったことはまずないですね。それよりも、エンジン自体が熱で歪んでしまって、もうもとに戻らなくなってしまうことがあります。
 こうなるとそのエンジンはもうダメかもしれませんね。普通に走ってる分には大丈夫でしょうけど、あちこち痛んでて、簡単にオーバーヒートするようになります。
 でも、ここまでダメージを与えることはほとんどないです。ハチロクみたいな古い車で、しかも冷却系が痛んでて調子悪い状態で、それでも無理に走らせたりすれば別ですけど、最近の車はまぁ大丈夫ですよ。
 それと、大きな問題なのは油温ですね
 エンジンオイルって、わかります? エンジンっていうのはとにかく、ものすごい摩擦が発生するんですよ。とにかく摺動部が多いから、あちこちで摩擦が起きている。もちろんエンジンは金属のかたまりだから、そのままこすったらあっというまにボロボロになってしまいます。というか、金属だけでエンジンを組んで、摩擦対策をなにもしないで動かしたら、エンジンをかける前に摩擦で壊れてしまいます。
 だからエンジンは、その摺動部にオイルを使うんです。油があれば滑るし、すり減りも最低限ですみますからね。これがエンジンオイルです。
 でも、オイルはあくまでオイルだから、熱には弱いんです。高熱にさらされると分解するし、最悪、燃えてしまいます。だからエンジンでは、オイルを常に一定の温度に保たないといけないんですよ。このあたりはさっき、「熱ダレ」でやりましたね。
 実を言うと、エンジンの中で一番弱いのはオイルなんです。一応エンジンは、オイルの熱を逃がすようになっていますし、積極的にオイルクーラーをつける車もありますよね。でも、これにも限界があるんですよ。油温やエンジン本体の温度がどんどん上がっていくと、ついにオイルは限界の温度をこえてしまいます。
 そうすると、「熱ダレ」でやったみたいな現象がおきます。つまり、オイルの潤滑性がなくなって、エンジンブロー、つまり壊れちゃうわけです。

 オーバーヒートを起こさないためにはどうすればいいかというと、油温と水温を下げることですね。水温、っていうのはつまり、今のエンジンはみんな、エンジン内部に冷却水を通して、それでエンジン本体を冷やしているんですよ。こうすれば油温が上がるのも、エンジン本体が熱で歪むのも防げます。水温を、そうですね、だいたい80℃くらいまで下げてやれれば、かなりいい状態になります。
 そのために、ラジェーターの改良をしている人なんかもいますね。
 あとは、オイルそのものを冷やす。オイルクーラーですね。
 でも、こんなチューンはすぐにはできません。お金だってかかりますしね。多層ラジェーターとか大容量オイルクーラーとかつけると、軽く十数万にはなりますよ。
 それよりも、水温や油温を見て、温度が上がりすぎたら回転数を抑えるとか、そんな走り方のほうが有効でしょうね。レースの世界じゃそれだと困るんで、いろんな機器をつけるんですけどね。

 でも、それでも足りないこともあります。ちょっとでも水温を下げたい、そんな時もあるでしょうね。そんなときは、車のヒーターを外気取り入れにして、温度を最大にしてやってください。なぜかと言うと、このヒーターの熱源は、実は冷却水だからなんですよ。ラジェーターだけじゃなくて、ヒーターからも冷却水の熱を奪ってやれば、少しでも温度が下がりますから、いい結果になります。電力やパワーに余裕があればファンを回してやればもっと冷えるでしょう。まぁ、夏場はなかなか、そんなわけにもいかないでしょうけどね。
 あとは、高いシフト、だいたい4速くらいで低回転運転をしてやる。5分か10分も走っていると、水温も油温もかなり下がりますよ。走れなければアイドリングしておきます。こっちは時間もかかりますけどね。

 じゃあ、エンジンを止めたらどうか? という疑問が出ると思います。熱源を絶つわけですね。
 でも、これは絶対にやめてください。というのも、エンジン本体の温度は、絶対にエンジンオイルより高くて、普通、その温度はオイルに致命的なくらいになっているからなんです。
 エンジンが回っている間は、エンジンの力でオイルは循環しています。ある場所で油温が上がっても、すぐに冷えたオイルと混ざって、案外なんとかなるもんなんですよ。でも、エンジンを止めてしまうと、エンジンのそばにあるオイルだけが熱くなってしまい、最悪、エンジンが焼き付いてしまいます
 ターボ車のタービンはもっと深刻ですよ。というのも、ブーストをかけまくった場合、タービンの温度はエンジン本体より高くなっていることが多いんです。回転するタービンの根元はやっぱり摩擦が発生していますけど、この摩擦を消すのもエンジンオイルの役目なんです。完全に熱くなった状態で急にエンジンを止めたために、タービンが焼き付く、なんて言いますね。実際にはここまで深刻な事態になることは珍しいんですが、少なくともオイルにはよくないし、メーカーだってブーストかけたあとはいきなりエンジンを切らないでください、って言ってるくらいです、厳しい状況におかれるスポーツ走行ではなおさらですね。
 そうそう、この話、オーバーヒートしなくても重要ですよ。アフターアイドリングなんて言いますけど、ターボ車では一般的ですね。走行後はしばらくアイドリングしておくわけです。普通に乗ってる間はアフターアイドリングなんていらないんですけど、高速道路でずっと高速走行して、パーキングエリアに入っていきなりエンジンを切ったりするとマズいことがあるらしいですよ。最低1、2分はアイドリングしておいたほうがいいかも。
 え? 私ですか? まぁ、今のところ怖い状態になったことはないですね。まぁ、神経質になる必要はないんじゃないですか? ただ、気に留めておけばいいだけで。

 じゃぁ最後に。実際にオーバーヒートしたらどうするか、ですね。
 まず、とにかく車を停めてください。それ以上の走行は危険ですから。そしたら、アイドリングしたままです。絶対にエンジンは切らないように。ついでにで、ヒーターを最大、ファンも全開にしてしばらく待つ。そのとき、車のドアを開けておいたほうがヒーターの風の通りもいいですよ。エアコンをつけるとエンジンに負担をかけますけど……このくらいならいいんじゃないですかね。でも普通はエアコンつけたりしないですけど。
 あと、可能な限りはやく冷却水を補充すべきでしょう。もっともこれは状況次第なんですけどね。ここらの判断は簡単では無いと思いますので、素直に救援を呼ぶほうが良いかもしれません。
 よく、エンジンフードを開けておく人がいます。より熱を逃がすためですね。どのくらい効果があるかは、実を言うとよくわからないんですよ。それどころか、閉じておいたほうが冷却ファンの空気の流れがよくなって、冷えやすくなる、なんて言う人もいます。ま、大差はないみたいですし、どっちでもいいんじゃないんですかね。ただ、交通量のある道路の場合は、故障車だ、ってことをアピールするためにエンジンフードは開けたほうがいいかもしれませんね。
 どのくらい待てばいいのかは状況次第ですけど、まぁ、10分も待てばかなりいいほうじゃないですか? 油温計や水温計がついてれば、その温度が落ち着くまでですね。
 ま、実際にこんな状況になることはまずないですけどね。

 そんなわけで、改めて強調しておきますね。
 オーバーヒートはかなり深刻なトラブルで、時にはエンジンを痛めることすらあります。みなさんも温度管理には注意しましょうね、長く車に乗るためにも。

外気温とタイヤのグリップ力

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