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最終更新 平成20年9月

損益通算と損失の繰越控除

 
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本稿は「損益通算」と「損失の繰越控除」についての解説であります。

損益通算

各種所得の金額を合計する際、個別に計算した各種所得のなかに「損失(赤字)の金額」があればどうすればよいのでしょうか、現行所得税法では、「所得金額の合計額」は、単純に黒字と損失(赤字)の合計と言うわけにはいきません。

損失(赤字)の金額を他の黒字の各種所得の金額から控除することができることを「損益通算」と言いますが、「損益通算」が認められる所得の種類が制限されています。

不動産所得事業所得山林所得及び譲渡所得」の金額の計算上生じた赤字のみ「損益通算」が行えます。

古くは「富・士・山・上(フジサンジョウ)」と語呂合わせで覚えたものですが、その後、様相が変化してきています。

つまり、上記4つの所得区分のなかにも制限が加えられるようになりました。

 「不動産所得」の金額の計算上生じた損失でも、土地等を取得するために要した負債の利子の額に相当する金額は「損益通算」の対象外とされました。解説・様式ページ
 「不動産所得」を生ずべき事業を行う民法組合等の個人組合員の当該民法組合等に係る不動産所得の金額の計算上生じた損失も「損益通算」の対象外とされました。
 「譲渡所得」の金額の計算上生じた損失でも、分離課税に係る「譲渡所得」については、居住用財産に係る譲渡損失以外「損益通算」が認められなくなりました。
 (総合課税に係る「譲渡所得」は、「損益通算」可)
解説・様式ページ

※分離課税の譲渡所得=土地等建物など不動産の譲渡
 総合課税の譲渡所得=業務用車両・機械やゴルフ会員権などの譲渡    

上記、所得区分以外の「利子所得配当所得給与所得退職所得一時所得雑所得」の金額は、元々損失が生じることが想定されていないものであるなどの理由により「損益通算」が認められていません。

また、近年、分離課税の所得とされるようになった

 分離課税とされる「株式等に係る譲渡所得等の金額」及び解説・様式ページ
 「先物取引に係る雑所得等」の金額も、他の所得区分とは垣根があるがごとく独立しており、「損益通算」には影響しません。「損失の繰越控除」も単独で行われます。解説・様式ページ
(参考) 政令で規定される「生活用動産」の譲渡による所得は、黒字の場合は非課税とされ、逆に損失が生じてもその損失はないものとみなされています。

損益通算の方法

総所得金額を、利子、配当、不動産、事業、給与、雑所得の「経常グル−プ」と譲渡、一時所得の「臨時グループ」との2グループに区分し、次の手順に従って損益通算を行います。

損益通算の順序@ 「経常グループ」の不動産・事業の赤字は「経常グループ」の所得のうちから控除
A 「臨時グループ」の譲渡所得の損失はまず一時所得から控除
譲渡・一時内で内部通算後、特別控除50万を差引、「経常グループ」との損益通算に向かい、その後1/2
B @の適用後も「経常グループ」に損失がある場合、Aの適用後の「譲渡・一時所得グループ」から控除
 分離短期⇒総合短期⇒分離長期⇒総合長期 
C Aの適用後も「譲渡・一時所得グループ」に損失がある場合、@の適用後の「経常グループ」から控除
@からCの適用後も損失がある場合は 山林⇒退職の順で控除
山林所得の損失は@、C適用後の
経常所得(分離課税に係るもの→その他)⇒譲渡所得(分短→総長)⇒一時所得の順で控除
実務においては、次のような「損益の通算の計算書」が用意され、通算の計算が行えるようになっております。
⇒「損益の通算の計算書」はこちら

以上の順序に従って「損益通算」を行っても、なお損失の金額が生じるときは、その金額を「純損失の金額」と言います。

損失の繰越控除

所得金額の計算は、暦年計算(1/1から12/31)であり、その年分にて完結するものです。つまり、その年の損失の金額は、翌年以後の所得金額の計算に影響を与えません。

しかし、損失の発生に伴う担税力の減少等を考慮して、例外的に翌年以後3年間の「損失の繰越控除」が認められています。これが「純損失の繰越控除」と「雑損失の金額の繰越控除」の制度であります。

純損失・雑損失のイメージ

※ 青色は、純損失の金額を翌年以後繰越、若しくは、前年に繰戻しが可能。
※ 白色は、損失の内容により制限はありますが、翌年以後の繰越が可能。

※ 雑損失は、青白ともに翌年以後に繰越可能。

純損失の繰越控除

青色申告者と白色申告者では、次の事項で差異があります。
 @青色申告者は「純損失の金額」のすべて
 A白色申告者は「純損失の金額」のうち「変動所得の損失と被災事業用資産の損失の金額」を、
 純損失を生じた年の翌年から3年間の「総所得金額」、「土地等に係る事業所得等の金額(※現在休止中)」、「退職所得金額」又は「山林所得金額」の計算上、控除することができます。

これを「純損失の繰越控除」と言います。

(要件) 純損失の金額の生じた年分確定申告期限までに、その純損失の金額に関する事項を記載した確定申告書を提出。(期限後でも認められる場合あり) 翌年以後、連続して確定申告書を提出している場合に限り適用されます。

(順序) その年分の損益通算⇒純損失の繰越控除

雑損失の金額の繰越控除

所得から差引く所得控除のうち「雑損控除」については、その年分の所得金額から控除できなかった場合。
 この差引くことができなかった金額を「雑損失の金額」とし、

その損失の生じた年の翌年から3年内の「総所得金額」、「土地等に係る事業所得等の金額」、「分離課税の短期・長期譲渡所得の金額」、「株式等に係る譲渡所得等の金額」、「先物取引に係る雑所得等の金額」、「退職所得金額」又は「山林所得金額」の計算上控除することができます。

これを「雑損失の繰越控除」と言います。

(要件) 雑損失の金額の生じた年分確定申告期限までに、その雑損失の金額に関する事項を記載した確定申告書を提出。(期限後でも認められる場合あり) 翌年以後、連続して確定申告書を提出している場合に限り適用されます。

(順序) その年分の損益通算⇒純損失の繰越控除⇒雑損失の繰越控除
 「純損失の繰越控除」と「雑損失の金額の繰越控除」においては、確定申告書第四表(損失申告書)を使用し、申告を行うことになります。  ⇒「確定申告書第四表(損失申告書)」はこちら

所得税の計算の流れ

所得税の税額計算(申告書作成)は、次のような流れにて求めて行きます。

各種所得の金額を求め

●「損益通算」や「純損失・雑損失」の繰越控除を行い

この結果「課税標準」を求める

「所得控除」の金額を差引「課税所得金額」を求める

所得税の税率を適用し税額計算

「税額控除」を差引き納める税額を求める