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Travis / Club Quattro

 どんなライブになるか予想できなかった。Travisは1stアルバムでは、瑞々しい音楽に対する初期衝動を余すことなく外へ発信していた。ところが、2ndアルバムではグッと音を整理して、最小限の音で自分たちの作り出す音を再現して見せた。どちらも、彼らの持つある角度からとらえた姿であることは間違いないが、こうした表現方法のベクトルの違いをどのようにライブで見せるのかが予想できなかった。元々は、ライブをOasisのNoel が見て気に入って、彼らのライブのオープニングアクトに起用したという話もあり、そうした逸話と彼らの新作の音が直接リンクできなかった。もちろん、それが一つの見所であるわけだが。イギリスでは新作"The Man Who"が依然として売れ続け、絶好のタイミングでの来日だ。会場はオーディエンスで埋め尽くされていた。年齢層は年齢層がかなり広く、また、最近のライブにしては男性の比率が高かった。

 開演時刻を10分ほど過ぎて客電が落ちる。メンバーが普通に、本当に普通にステージに出てくる。みんなニコニコしてる。アルバムジャケットやインナースリーブから受けるクールな印象とは全く違い、非常にフレンドリーな感じだ。1曲目から静かに大きく、しかし止まることない不思議なグルーヴが会場に響く。バンドの形態は、ボーカル、ギター、ベース、キーボード、ドラムと一般的なものだが、セカンドアルバムの曲においてはキーボードが曲の雰囲気を作り出すのに大きな役割を果たしていた。サウンドの要はギター2本と、ボーカルであることには間違いがないが、後ろでキーボードがあることで、ギターの音がくっきりと浮かび上がっていた。そして、とにかく歌がうまい。少しThom Yorkeに似すぎているような気もするが、低音から高音まで無理なく歌い、感情移入が非常に自然で、聴いているととにかく引き込まれていく。さらには、曲によっては12弦ギターを使ったりして、予想以上に分厚い音を出してくるところにも驚いた。

 オーディエンスグイグイ煽って引っ張っていくタイプのライブではなく、周りでうねっているグルーヴにオーディエンスが手を伸ばして、それに捕まって揺られるような、ゆったりとしたうねりが充満している。それは、抑え気味のトーンのアルバムの音だけを聞いていては決して想像できなかった彼らの音楽の魅力だ。 また、オーディエンスとのコミュニケーションを非常に丁寧に取ろうとしていたところにも好感が持てた。知っている日本語を披露するのはお約束としても、丁寧できれいな発音で日本人にも分かりやすく話かけてくるところは、「ああ、良い兄ちゃん達なんだろうなあ」と思わせるのに充分だった。

 「次はイギリスでのニューシングルになっている曲だ。この曲は願いの曲なんだ。誰でも、流れ星を見たらお願い事をして、誰にも話さないよね。そんな願い事の曲」というMCと共に始まった"Turn"はアルバムの中でも繊細でそれでいて力強い佳曲だったが、ライブでも過多な感情移入をすることなく、この曲の持ち味を完璧に再現したあたりは彼らの底力を見たようなきな気がした。また、「次の曲は3枚目のアルバムに入れる予定の曲だ」と言って演奏した"Coming around"は非常にかわいらしい曲で、バブルガムミュージックとの境界スレスレで踏みとどまったような曲調に非常に惹かれる。とにかく、良いメロディーを作ることができる能力というのは、ミュージシャンにとって圧倒的な力であることが分かるライブだった。

 アンコールではアコースティックギターだけで、「うまく弾けなかったらみんな助けてね」と茶目っ気たっぷりに演奏し、難しい部分になると苦笑いしながら必死にギターを弾く様子が何ともいえず人間ぽかった。意味のない背伸びをすることなく、等身大の自分自身を表現したライブはアルバム同様に直接心に響いた。もっともっと、大きくなれるバンドだということを確信できたライブだった。