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My Best 10 Albums in 2008
※ カッコ内はそのアーティストの通算選出回数(今回を含む)

 1. The Seldom Seen Kid / Elbow (2)                              Elbow - The Seldom Seen Kid
シーンとリンクしたコマーシャル性を徹底的に排除しつつ、過去最高レベルの表現スタイルの自由度を身につけ、既成のカテゴリへのマッピングを拒否するような幅と深みを持った内容。多様な音が詰まっているにもかかわらず、アルバム全体のトーンが統一されているため、最終的には伏線が巧みに張られた映画を見たときのような納得感が想起。余分なギミックに頼ることがないこともあって、大きな潮流を作り出すのは難しそうなものの、その分レゾンデートルは際立ち、時間軸で疲弊することもなさそう。(2008/12/26)

 2. Snowflake Midnight / Mercury Rev (1)                       Mercury Rev - Snowflake Midnight
前作で究めたサイケデリックポップ路線からエレクトロニクスをフィーチャーしたサウンドへと大きく針路変更。温度感が低めのサウンドは微妙な世捨て人的な雰囲気を残しつつも過度なアブストラクトさはなく、逆にドリーミーな部分を抑え、リアリスティックな方向へ踏み出した印象。従来の次第に感覚が麻痺して行く中毒性は弱い一方、シンセサイザーで楽曲に浮遊感を与える手法は確実にトリップ感覚を創出。革新的とまでは言えないものの、新たな方向へ着実に前進する姿勢はサスガ。(2008/12/26)

 3. Grand Archives / Grand Archives (1)                         Grand Archives - Grand Archives
切なさ度が高めのメロディを薄めのリバーブで覆った楽曲群には、耳に入った途端に過去の大切な瞬間にシンクロする即効性の高さと聴き返すに連れて良さが拡散する浸食性の高さが共存。ギターも、ピアノも、ハープも特別な使い方をしている訳ではないにもかかわらず、瞬時に空気の温度と時間の流れを変えてしまう音楽は、The Thrillsの晩夏の海のストーリーをDeath Cab for Cutieのクールなセンスで仕上げたような内容で、全世代にとって悶絶必至のノスタルジー。(2008/12/26)

 4. You & Me / The Walkmen (1)                                     The Walkmen - You & Me
同郷のInterpolに通じるサウンドテキスチャは、クールさの中に存在する仄かな暖かさと開放感が絶妙のバランスで配合され、ポストパンクリバイバルの潮流が過ぎ去った今でさえ、ノスタルジー的残響ではなく、リアルタイムの音として通用するレベルの高さ。穏やかな楽曲群はキャッチーさや派手さはないものの、どちらかと言えば寡黙な音数の何倍、何十倍も饒舌に音世界を表現。暖色系の間接照明に満たされたリビングで、上質なソファーに座ってリラックスしているような心地良さを持った作品。(2008/12/26)

 5. Replica Sun Machine / The Shortwave Set (1)          The Shortwave Set - Replica Sun Machine
人懐っこさを持つメロディをLemon Jellyにも通じる暖かみあるエレクトロニクスで飾り付けた楽曲群は、オフトーン気味ながらも必要十分なカラフルさを持った内容。アナログのメンタリティを織り込んだデジタルサウンドの完成度も高く、両者を表面的に混ぜ合わせて中間的に仕上がったのではなく、徹底的に練り合わせ、意図を持ってニュートラルに仕上げたという雰囲気。良い意味で二度寝の微睡みのようなフワフワした心地良さが満載のサウンドは、突出した強みこそないものの総合力はハイレベル。(2008/12/26)

 6. Antidotes / Foals (1)                                                  Foals - Antidotes
線の細い音が中心になって楽曲が構成されているものの、それらが自律的に振動し、他の音と有機的に絡みつくことによって強い推進力を生成。また、高音で細かく刻むギターを緻密に配置することで作り出した時間軸方向の隙間にベースを配置することで低音が相対的にデフォルメされていて、低めの温度感の割には個々の曲のダイナミズムが強め。やや偏執狂的で頭デッカチな部分が目立つ気がするものの、カラーパレットの色数ではなく、色の重ね方に拘って、それを強みまで昇華したところは見事。(2008/12/26)

 7. Consolers of The Lonely / The Raconteurs (1)          The Raconteurs - Consolers of the Lonely
ブルースやトラディショナルなロックをベースにしたサウンドはThe White Stripesとベクトルこそ同じものの、そのサウンドはよりリッチかつシンプルで洗練された印象。ドーピングによるお手軽な爆発力増強ではなく、音の繊維一本一本まで鍛え上げた鋼のようなしなやかさがあるため、シンプルなアレンジでも力強さは抜群。その一方で、冗長にならない範囲で遊びの要素を取り込んでストイックになり過ぎることもなく、リアリティに付随する切迫感や息苦しさも皆無。ギミックなしの真剣勝負。(2008/12/26)

 8. Songs in A & E / Spiritualized (3)                              Spiritualized - Songs In A&E
近作のキャリアにおける新しさを追求するサウンドアプローチは一休みして、キャリアを自らサマライズしたようなニュートラルな印象で、レッドゾーンまで針が振り切れるような圧倒感は欠如。その一方で、ポジティビティを素直に表現した佳曲が揃っていて、エンジン全開一歩手前っぽさは残るものの、従来の作品に匹敵するクオリティは維持。独特の完成によるフィルタを取り除き、その音楽的な普遍性を改めて明示できたという意味で、これまでにない等身大の表現手法の採用も成功。(2008/12/26)

 9. Viva La Vida Or Death And All His Friends / Coldplay  (2)
                                                                                          Coldplay - Viva La Vida or Death and All His Friends
近作のオルタナティブへの露わな憧憬は陰を潜め、ポップスに重心を残しながらオルタナティブを俯瞰した内容で、エモーションを外部から注入するのではなく、丁寧に音を紡いだ結果として染み出して来るような感覚が印象的。線の細さが目立つメロディを弱点ではなく、逆に長所として捉えた上で新しいサウンドプロダクションを取り入れた姿勢も建設的。ドラマティックでありながら嫌みな部分は少なく、映像的でスケール感の大きさも好印象。そして、何より"Viva la Vida"のキラーチューンぶりは見事。(2008/12/26)

10. Glasvegas / Glasvegas  (1)                                                      
甘めのメロディとノイズでサウンドのエッジがボケ気味なこともあり、最初はインパクトの弱さが気になったものの、聴き返すに連れてジワジワと中毒状態。持ちネタのパターンが足りないために、多少の一本調子さは否めない一方で、基本仕様がシッカリしていることもあり、アウトロにスタンダードを重ねたり、ベートーベンをバックに語というギミックも、「変化球的なユニークさ」というプラスの印象。「次」を乗り切る伸びしろは不明ながら、この作品は今年のニューカマーの中ではかなり上位。(2008/12/26)