
オパール鉱山では地表にごく近い鉱脈と数10メートルの地下にある鉱脈がある。地表に近いオパールは数万年もの間太陽の熱にさらされつづけ、その結果水分が蒸発しクラックのはいったものが多いが逆説的にはそれ以上クラックがはいる可能性は少ない。むしろクラックのない部分は研磨に耐えられる強度を持つ上質なオパールといえる。灼熱の砂漠といえども数10メートルの地下の岩盤は地下水により湿度が高い。ここにもオパール鉱脈が存在するが、ここで採掘されるオパールは一見クラックのあるものは少ないが、採掘時に湿っているものが大半である。深い地下に眠っていたオパールが"陽の目"をみたとき何が起こるのだろうか?掘り出されて数分後には、陽の目をみたオパールの原石は内部の水分を放出しはじめる。その結果ついさっきまで抜群の透明度と遊色を誇っていたオパールはみるみる白くにごり始める。なおもこれらの原石を強烈な太陽下に晒しておくと白く曇った部分から亀裂が入りはじめる。この時点でこのオパールの宝石としての価値はゼロになる。しかしこのようなオパール原石にも付加価値をつけることが可能である。白く濁りクラックの入った原石を水に浸すと数分で曇りがとれ細かいクラックに水がしみこみ、みごとに透明度と遊色が復活し燦然と輝くのである。このようなオパール原石は水の入ったガラス瓶の中にいれメキシコの観光地で売られている。一瓶500円から2000円である。しかし鉱山地域では一瓶数百jを要求するメキシコ人達(coyoteと呼ぶ)もいる。彼らはきまって「この石は極上品」といって憚らない。廃鉱寸前の鉱山ではすでに地中の深いところまで採掘が進み"水分の多いオパール"が産出する。オパールの原石を研磨する前にかならず原石を日光にあて乾燥させクラックや濁りが入らないものをだけをカットするのが鉄則である。しかし研磨により石にかかる振動および熱のストレスで研磨中及び研磨後数日してクラックや濁りが生じることも日常茶飯事である。こうしたクラックの入ったルースにもまた"商品価値"がある。白濁したルースを水の入った瓶に保管しておく。初心者がきた時に瓶から取り出し水分をぬぐうと何食わぬ顔をして売りつけるのである。数時間後から一週間以内にはまちがいなく白くにごる。しかしこうして回収された資金はまた鉱山に再投資される。多くの日本人バイヤーはメキシコ人のデイーラーに"GARANTIA"をもとめる。一般的には"保証"は2週間である。2週間石に何も起こらなければ15日目に残金を決済する慣行である。しかし決済後に白濁しクラックが入るオパールはいくらでもある。この場合はバイヤーの損失となることが多いが、こうした瑕疵のあるオパールを日本国内ではハイドロフェンオパールまたはマジックオパール、果てはカメレオンオパールなどと称して出品されているから驚きである。
■原産地証明書;オパール原石(ルース)の国外持ち出し(輸出)には原産地証明書(Certificado de Origen)の添付が義務づけられている。原産地証明書の入手はSECOFI(SECRETARIA DE COMERCIO Y FOMENTO INDUSTRIAL)の事務所へ現物を持参して承認を得る。たとえ観光地の小売り店で購入する場合でも原石、ルースの場合には領収書及び原産地証明書の添付が輸出許可の必要条件でありこれを満たさない場合は出国時に税関で没収(DECOMISO)される恐れがある。これは自由貿易協定の締結により鉱物資源の輸出手続きがより合法化(制度化)、厳密化した結果である。経済のグローバル化(Globalization)によりメキシコの税関当局が世界標準(Defacto Standard)に近づいたという皮肉な見方もできる。
オパールの特徴は遊色効果である。遊色効果とは構造色の一種であり見る角度や光源の位置により多様な色が現出する現象である。オパールはシリカ(二酸化珪素)粒子が積み重なって出来ておりシリカ粒子の積み重なりが回析格子と同じ役割をするため可視光の回析現象が起こる。この回析現象を起こす構造が繰り返し組み合わされることで構造色をだす。またオパールは非結晶であるので粒子は整然と並んではいなく所々に空洞があり内部で多重反射、屈折が起こり複雑な構造色を見せる。この粒子の重なりによる回析現象と不規則な粒子の配置によって起こる多重反射が遊色効果のメカニズムである。
ファイアーオパールのファイアー(Fire) とはもともと遊色(Play Of Color)いわゆる斑を意味する言葉で Playing Fire(チラチラと揺れる炎)とも呼びます。ですから無遊色オパールはたとえ地色が赤橙系のものでもファイアーオパールとは定義されません。しかしながら市場では赤橙系の無遊色オパールがファイアーオパールと称して販売されています。この背景について解説します。80年代にこの無遊色の赤橙系のオパールが著名なE社によりファセットカットされてドイツの市場に出現しました。その時のドイツ語名は Feueropal すなわちFire Opalです。この無遊色の赤橙系のオパールは現地メキシコでは Vidrio Rojo=Red Crystal, 単に赤ガラスと呼んでいます。ドイツ人バイヤーも現地では RedCrystalと呼びファイアーオパールとは呼びません。現地メキシコではファイアーオパールを Opalo de Fuego,炎(Fuego=Fire)のオパールと呼びます。オパール自体の客観的な属性を的確に反映したネーミングです。赤ガラスはほとんどすべてのオパール鉱山で産出し以前は大変安価なオパールで誰も見向きもしませんでしたがヨーロッパ市場での需要拡大により最近ではインドのバイヤーも参入してとても高価($4000@kg/rough/fine)な原石になりました。日本の市場でも赤い無遊色オパールがファイアーオパールとして販売されていますがこのネーミングには宝石業界の恣意性がかなり反映されているとみてよいでしょう。
現地治安情報
鉱山落盤事故から奇跡的に救出された鉱夫(2008.09)

麻薬カルテルの浸透地域拡大が脅威である(2009.10)
豚インフルエンザ注意報の張り紙(2009.05)
