コンタクトで失明が急増中
中原英臣/山野芙蓉芸術短期大学教授
冨家隆/医療ジャーナリスト
カラーコンタクトまで登場し、視力矯正の医療器具という枠を越え、ファッション感覚で安易に使用する人さえいるコンタクトレンズ。
しかし愛用者に失明する者が急増中だという。進歩したとはいえ、眼球にとってコンタクトは異物”いま一度、危険性を見直すべき

私たちが教えている大学で、学生たちに、「コンタクトレンズで、失明する人がいます」と話したことがあります。ところが、誰も信じてくれません。同じ話を、韓国やアメリカの留学生たちに言うと、皆そういうケースを知っていました。

日本には九百万人を越すコンタクトレンズ利用者がいるのですから、もっと危険性、正しい利用法を知る必要があるのではないでしょうか。実際、「失明」する危険はかなりある。私たちの周辺だけでも「被害」にあった人が二人もいるくらいですから。

一体、なぜ失明するのか。それは、アカントアメーバ角膜炎や角膜潰瘍を起こすからです。
たこえば、コンタクトをつけているあなたが、目に異物感を感じたり、黒目のまわりが充血し、物が見えにくいとか、まぶしいなどいった視力の低下を感じたとします。
これ自体は、よくあることで、結膜炎程度の病気かもしれません。しかし、症状が進むと、目の強い痛みで涙が止まらなくなってくる。ひどくなると夜も眠れないこともある。こうなると、アカントアメーバの可能性があります。
もっとも、医者に行っても、すぐにアカントアメーバと診断されないかもしれません。「角膜へルベス」という病気に非常によく似ているので、専門の眼科医でも早期診断が難しいのです。しかし、病気がさらに進んでくると、角膜に炎症が起きて白くはれてきます。さらに進行すると、角膜にリング状や円盤状の潰瘍ができてしまいます。
この段階でも治療しないで放置しておくと、最悪の場合は、角膜に穴があいて、失明してしまう。治っても角膜に白い組織が残ることが多いので、視力障害という後遺症に悩まされることになる。しかも失明という最悪のケースが決して少なくないのです。
この文明の時代に、眼にアメーバなんかはびこるものか、それは非文明国の出来事だと思うかもしれませんが、残念ながら、アカントアメーバ角膜炎は最近になって、文明国で増えてきた病気なのです。
 
簡単なたとえ話をすると、よくわかるど思います。
人間の臓器は簡単には他人に移植できません。人それぞれに免疫反応があるからです。唯一、スムーズに移植できるのが角膜です。角膜には、それほど免疫がないのですが、それは、逆に言うと、細菌に抵抗できないということを意味します。
そんな角膜の上に、コンタクトを装用し、不潔なままにしておいたらどうなるでしよう・・細菌やアメーバが繁殖し、眼に炎症を起こすのは、ごく当たり前の理屈です。

たとえば、イギリスのモアフィールズ眼科病院のベーコン博士たちが、一九八四年から一九九二年までの九年間にわたってアカントアメーバ角膜炎と診断された七十二人の患者について、 詳しい調査を行いました。その結果、全体の89パーセントに当たる六十四人がコンタクトレンズを使用していました。
一九八八年には、東京女子医科大学の石橋康久助教授たちが、日本で最初のアカントカントアメーバ角膜炎の患者を見つけました。その後、つぎつぎにアカントカントアメーバ角膜炎が報告されています。現在のところ、日本におけるアカントアメーバ角膜炎患者の八○パーセントは、コンタクトレンズの利用者であることが明らかになっているのです。

アカンドアメーバは大きさが五十分の一ミリの単細胞生物の一種で淡水や土壌中に広く生息している原生動物です。私たちの身のまわりに広く存在するため、普通の日常生活でもアカントアメーバと接触するチヤンスは意外と多いのです。
もっとも、今までは病原性が非常に弱いために、正常な角膜に感染することほほとんどありませんでした。もしアカントアメーバが角膜についても、普通なら涙で洗い流されてしまうからです。ところが、角膜に少しでも傷があると、アカントアメーバが侵入します。コンタクトを装用していると、角膜の表面に傷ができやすいので感染しやすくなるのです。

さきほど、 ご紹介したベーコン博士によると六四人の患者の四三パトゼントに当たるニ十八人がベデホズポーザブル(使い捨て)・ソフトコンタクトレンズを使用していました。

アメリカのグリーン博士たちは、二十七人のアカントアメーバ角膜炎の患者と、八十一人の一般のコンタクトレンズ装用者について、コンタクトレンズの種類や衛生管理などについて調査を行いました。その結果、アカントアメーバ角膜炎の患者は、コンタクトレンズの保存液こして自家製の生理食塩水を用いている割合が高いことを突きとめ、アカントアメーバの汚染源は、自家製の保存液にあると言っています。
日本でも、徳島大学医学部の塩田洋助教授たちが、ソフ卜コンタクトレンズの利用者が使っているコンタクトレンズの保存液からアカントアメーバを分離しています。塩田氏が調査した九十六検体のうち四検体からアカントアメーバが検出されましたが、そのすべてが自家製の生理食塩水による保存液でした。

危険性が急増する連続装用
コンタクトレンズによって失明する可能性がある病気として、各種の細菌感染による角膜潰瘍もあげられます。私たちの手元に、世界中の専門家たちがコンタクトレンズによる角膜障害に関して調査した成果をまとめた、順天堂大学医学部の金井淳教授の論文があります。この論文によると、アメリカのメーヨー・クリニックのエリー博士たちは、一九五○年から一九八八年まで三十九年間にわたって、ミネソタ州での角膜潰瘍の発症頻度について調査を行っできました。その結果、一九八○年代には、角膜潰瘍の発症頻度が一九五○年代の四・三倍に上昇していることが明らかになりました。その最大の理由として、エリー博士はコンタクトレンズの普及を挙げ、調査した地域で発生した角膜潰瘍の五二パーセントはコンタクトレンズの装用によって発症したと指摘しています。

また、同じく米国のジョンズポプキンス大学のシャイン博士たちは、一九八九年、ソフトコンタクトを一日ごとに取り替えない連続装用している人どもソフトコンタクトを毎日取り替える終日装用を厳密に守っている人とを比較しました。その結果、角膜潰瘍が発症する危険率は、連続装用をしている人が終日装用の人よりも十〜十五倍も高いことを発表しています。また、アメリカのポヅジオ博士たちも、ソフトコンタクトレンズの連続装用による角膜潰癌の危険率は、終日装用の五・一五倍に達することを報告しています。この研究によると、連続装用の日数が一日だけの場合、角膜潰瘍が発生する危険率は、・厳密な終日装用を行っている場合の二・四〜三・六倍になり、さらに連続装用の日数が増えるごとに危険率が増大することになります。コンタクトレンズを十五日以上も連続装用していると、角膜潰瘍の危険率が十四・五〜四十五倍も高くなるのです。こうした研究報告を受けて、一九八○年アメリカのF・D・A(食品医薬品局)は、ソフトコンタクトの連続装用期間を、それまでの三十日間から七日間に短縮する措置をとりました。

ソフトコンタクトレンズだけではありません。オレゴン保健大のマクレアー博士によると、ガス透過性ハードコンタクトレンズでも、連続装用は終日装用と比較して魚膜潰瘍の危険率が三・五倍も高い。コンタクトの連続装用にはこれほど危険が伴うのです。アメリカや日本では、ディスポーザブル(使い捨て)のソフトコンタクトが普及しています。これまでのソフトコンタクトよりも衛生的ど思われる使い捨てのソフトコンタク卜にも、角膜潰瘍の危険性があります。ジョンズホプキンス大学のビューラー博士たちは、一九九二年、使い捨てのソフトコンタクトレンズ使用による角膜潰瘍が発症する危険率は、ソフトコンタクトの終日装用より十四倍も高いここを明らかにしました。この研究によると、ソフトコンタクトを連続装用した場合と比較しても、使い捨てソフトコンタク トの危険率は約七倍ほど高くなっています。

実は、もっと恐ろしい調査もあります。前出のシャパン博士たちの研究によると、コンタクトレンズの終日装用を守っていても、コンタクトをしていない人に比べると、角膜潰瘍の危険率が八・二五倍も高いことがわかったのです。これはレンズのクリーニングを毎日行ったり、レンズの蛋白除去を週一回行うといった衛生的な条件とはほとんど関係がありません。
原因は何かというと、アメリカのソロモン博士たちがウサギを用いた動物実験で説明しています。各種のコンタクトレンズをウサギに装用したうえで緑膿菌を感染させたところ、傷のない正常な角膜には感染が起こらなかったが、角膜の腫脹が強くなるにつれて、感染の危険性は高くなりました。角膜が一○パーセントほど腫脹した湯合には感染しないウサギもいました。ところが、角膜の腫脹が二○パーセントを超えるど、約半数のウサギが感染し、四三パーセントを超えるとすべてのウサギに角膜潰瘍が発生しました。つまり、コンタクトレンズの連続装用によって生じる角膜の腫脹が、角膜潰瘍の原因になる可能性が高いことがわかったのです。この説には専門家から反論もありますが、日本では衛生的と思われている使い捨てソフトコンタクトでさえ、角膜潰瘍に関する限り、必ずしも安全上は言い切れないという科学的なデータがあることは覚えておいて下さい。

急務とすべき被害の実態調査
それにしても、この記事でコンタクトをやめるーといったパニツクに陥ることはやめて下さい。実はスウ平−デンでは、角膜潰癌の発症率がアメリ力より低いというデータがあります。この原因として、スウェーデンでは、使用者に対して、使用の危険性を詳細に説明することが政府によって義務づけられていることがあげられます。日本では、医師は処方箋を書くだけで、コンタクトの危険性について詳しい説明をあまりしていないようです。この状態を改善しなければなりません。コンタクトレンズという人工臓器は、人間にとって危険のある「異物」だったことから、新しい病気が発生してしまったのです。

最後に、驚くべきことなのですが、アカントアメーバ角膜炎と角膜潰瘍によって失明した患者数について、日本では詳しい調査が行われていないようです。コンタクトレンズの購入に医師の処方箋を義務づけてきた厚生省は、コンタクトレンズによる被害の実態について一刻も早く調査する責任があるのではないでしょうか。

医者しか知らない危険な話』文芸春秋…550円
中原英臣/著 富家孝/著
ディーゼル車の排ガス、汚染された飲料水や魚、コンタクトレンズの危険性など暮らしに潜む衝撃の事実から、院内感染、乳ガン治療、尊厳死、延命治療と医療に関する驚愕の実態まで、公表されずにきた数々の真実を現役医師二人が暴く。週刊文春連載時より大反響を呼んだ「医療シリーズ」、待望の文庫化に伴い最新情報を加筆、更に充実の内容。



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