注意欠陥・多動性障害(AD/HD


落ち着きがない、キレやすい、片付けられない。
現在、このような特徴をもつ病態の可能性が指摘されるようになってきました。それが注意欠陥・多動性障害(AD/HD :Attention Deficit /Hyperactivity Disorder)です。
AD/HDは、「注意欠陥・多動性“障害”」と訳されていますが、いわゆる“障害”ではなく、その名が示すとおり「多動性」「注意集中困難」「衝動性」という行動上の特徴をもつ医学的診断名です。子どもに多く見られますが、大人でもAD/HDで悩んでいる人も多く、50〜60人に1人はAD/HDという報告もあります。
AD/HDと診断される人は年々増えており、本人の努力はもちろん、周囲の人の正しい理解とサポート、そして専門家による適切な治療が、この疾患を克服するうえで重要なカギを握ります。

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どんな病気?

注意欠陥・多動性障害は、(1)多動性、(2)不注意、(3)衝動性の3つの症状が組み合わさって現われる病気です。一般には、英名の「Attention Deficit/ Hyperactivity Disorder」から、その頭文字をとってAD/HDと呼ばれています。

AD/HDは、欧米では80年ほど前から学会などで取り上げられ、1930年代からこれらに対して薬物治療が有効なことも知られていました。しかし、AD/HDという病名が米国精神医学会(APA)によって正式に定められたのは、1980年代のことです。AD/HDに対する医学的研究も進み、日本でもここ数年のあいだにマスコミなどで取り上げられる機会が増えました。

AD/HDは、米国では学童の3〜5%にみられるといわれています。女の子に比べて男の子に圧倒的に多いのが特徴で、気づかないまま成長している場合が少なくありません。
AD/HDの子どもの言動は、「じっと座っていられない」、「授業中に歩きまわる」、「忘れ物が多い」、「順番を守れない」など、友だちに理解してもらえない面が多いため、いじめの対象になり不登校になったり、逆に衝動性が強いと周囲からあきれられたりします。 また、親や教師からも叱られ続けたり「怠け者」といわれたりすることもあり、劣等感をもち自己を低く評価します。知能は正常でも勉強に集中できないことから、良好な学業成績を残すことが難しくなるので、早い時期に発見し、効果的な治療や対応を行うことが重要です。

AD/HDと診断された子どものうち20〜25%は、大人になってもAD/HDの症状を持ち越すといわれています。
AD/HDの症状を抱えながら社会生活を送る人の中には困難を感じている人もいます。うまく社会に適応できず、転職や離婚を繰り返したり、育児ノイローゼになるケースが少なくありません。簡単な片付けができなくて、足の踏み場もない部屋で途方にくれている人もいます。
傍目には「やる気がない」「だらしない」「怠け者」とうつりがちですが、本人はいつも必死です。失敗と挫折を重ねるうちに自信を失い、反社会的な行動を起こしたり、二次的な障害(抑うつ状態,不安障害など)を招く例もみられます。

AD/HDでは、他の精神疾患の合併がみられるといわれています。その場合、二次的に併発した病気にAD/HDが隠れて見過ごされることがあります。例えば、不安障害を併発している場合、その背景にあるAD/HDに気づかないまま「不安障害」とされて、その治療だけがなされることもあります。

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AD/HDに合併しやすい精神疾患

学習障害
言語の特異的発達障害
協調運動障害
強迫性障害
気分障害(うつ病など)
不安障害
行為障害(反抗挑戦性障害)
人格障害
自閉症
トゥレット障害

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症状

多動性については成長につれて改善される場合が多いことから、成人のAD/HDは「不注意」と「衝動性」が主となります。気分の移り変わりが激しくてストレスに弱く、うつになりやすいのが特徴です。
以下にあげるような症状のうち、どれが強く出るかは個人差があります。不注意の症状が強くみられるタイプを「不注意優勢型」、多動性や衝動性が強く出るタイプを「多動性・衝動性優位型」、両者が並存する場合を「混合型」と、さらに細かく分類する場合もあります。

AD/HDの人は、おとなになっても、注意を払ったり集中できるのは短時間に限られます。また、人と話しているときや会議中などに、しばしばぼんやりしてしまうこともあります。そのため、本人のやる気とは裏腹に、周囲の社会的評価は低くなりがちで、仕事上はもとより、人間関係や日常生活にもさまざまな支障がでてきます。子どものころは多少大目にみてもらえた不注意も、社会人としてはかなりのマイナスポイントとなります。

さまざまな刺激に対して過敏に反応する傾向も、成人後まで持ち越される場合があります。子どもの衝動的行動に加えて、大人の場合は、車を運転中に無理な追い越しを繰り返すなど重大なリスクを伴う場合や、アルコール中毒などの薬物中毒に陥る危険性が高い点も注意が必要です。また、性衝動をうまくコントロールできないといった形で表面化する場合もあります。いずれにしても社会生活を送るうえで、トラブルを招きやすい症状といえます。

多動性は、成長するにつれて改善されるのが一般的です。ただし、多動の症状がすっかり消えるわけではなく、年齢を重ねるごとに多動が好ましくない行為だということを本人が学習し、自らの行動を規制する能力が身につくためと考えられています。むやみに走り回ったりすることはないものの、落ち着きのなさ、じっとしているのが苦手といった特徴はそのまま残ります。

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診 断

落ち着きがないからAD/HDであると簡単には診断できません。AD/HDの診断には、WHO(世界保健機関)の国際疾病分類「ICD-10」と、米国精神医学会の「DSM-IV」という2つの診断基準が主に使われています。
この診断基準は操作的診断基準と呼ばれ、不注意や多動性、衝動性などを中心とした診断項目を多数あげて、これらに当てはまるかどうかで決めるようになっています。加えて患者さんの発育歴や病歴、精神的・心理的な経過、家族歴、生活環境などを考慮しながら、似たような病態を示す疾患と鑑別のために、神経学的検査や脳波検査、身体の診察、血液検査、質問表を使った行動評価や知能検査なども行われます。
AD/HDの症状は個人差があって、同じ人でも年齢や環境で症状の出方が大きく変わりますから、診断を受けるときには専門医を受診することが大切です。とくに女性の場合、衝動性や暴力行為といった目立った症状がほとんどみられないこともあり、日常生活に困るほど注意力が欠けている例でも、AD/HDが見過ごされてしまう可能性もあります。

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DSM-IVのAD/HD疾患分類

注意欠陥/多動性障害(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder) A.(1)か(2)のどちらか:
(1) 以下の不注意の症状のうち6つ(またはそれ以上)が少なくとも6カ月間持続したことがあり、その程度は不適応的で、発達の水準に相応しないもの:
(不注意)
(a) 学業、仕事、またはその他の活動において、しばしば綿密に注意することができない、または不注意な過ちをおかす。
(b) 課題または遊びの活動で注意を持続することがしばしば困難である。
(c) 直接話しかけられたときにしばしば聞いていないように見える。
(d) しばしば指示に従えず、学業、用事、または職場での業務をやり遂げることができない(反抗的な行動,または指示を理解できないためではなく)。
(e) 課題や活動を順序立てることがしばしば困難である。
(f) (学業や宿題のような)精神的努力の持続を要する課題に従事することをしばしば避ける、嫌う、またはいやいや行う。
(g) 課題や活動に必要なもの(例:おもちゃ、学校の宿題、鉛筆、本、または道具)をしばしばなくす。
(h) しばしば外からの刺激によって容易に注意をそらされる。
(i) しばしば毎日の活動を忘れてしまう。
(2) 以下の多動性−衝動性の症状のうち6つ(またはそれ以上)が少なくとも6カ月間持続したことがあり、その程度は不適応的で、発達水準に相応しない:

〈多動性〉
(a) しばしば手足をそわそわと動かし、またはいすの上でもじもじする。
(b) しばしば教室や、その他、座っていることを要求される状況で席を離れる。
(c) しばしば、不適切な状況で、余計に走り回ったり高い所へ上ったりする(青年または成人では落ち着かない感じの自覚のみに限られるかもしれない)。
(d) しばしば静かに遊んだり余暇活動につくことができない。
(e) しばしば“じっとしていない”、またはまるで“エンジンで動かされるように”行動する。
(f) しばしばしゃべりすぎる。

〈衝動性〉
(g) しばしば質問が終わる前に出し抜けに答え始めてしまう。
(h) しばしば順番を待つことが困難である。
(i) しばしば他人を妨害し、邪魔する(例:会話やゲームに干渉する)。

B. 多動性−衝動性または不注意の症状のいくつかが7歳以前に存在し、障害を引き起こしている。

C. これらの症状による障害が2つ以上の状況〔例:学校(または職場)と家庭〕において存在する。

D. 社会的、学業的、または職業的機能において、臨床的に著しい障害が存在するという明確な証拠が存在しなければならない。

E. その症状は広汎性発達障害、精神分裂病、または他の精神病性障害の経過中にのみ起こるものではなく、他の精神疾患(例:気分障害、不安障害、解離性障害、または人格障害)ではうまく説明されない。


現れる症状がAD/HDときわめてよく似ていても、別の病気によって生じている場合も少なくありません。誤った自己診断をしないためにも、AD/HDとよく似た症状を示す病気が多いことをぜひ知っておいてください。

AD/HDに似た症状を示す病気
視覚・聴覚障害
てんかん発作
脳の外傷による後遺症
各種急性・慢性疾患
心的外傷後ストレス障害(PTSD)
アルツハイマー病
栄養不良
睡眠不足
薬物の副作用など


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