医療消費者ネットワーク MECON

より良い医療を選ぶ③

患者の直感や判断は大事にすべし

(読売新聞2001.4.8付 患者道指南)

 受けた医療が原因となって派生する病気(医原病)が少なくないと言われる時代に、患者が自分らしく生きるためには、自分の体力や生き方に合った医療を探し、選択する姿勢を育てることが大切だ。

 六十歳代のCさんは、病院で前立腺肥大症を治療中だが、短期間に担当医が四人も替わり、自分の望む治療と医師が勧める治療が食い違ってきて、どうしたらいいか悩んだ。

 新たな担当医は今までの薬物療法を否定し、突然、こう命じたのだ。
 「腫瘍マーカーの値がやや高い。がんの疑いがあり、細胞検査をするから、すぐ入院しなさい」

 Cさんは「がんの疑い」と聞いても動じなかった。以前に脳卒中を起こして左半身が不自由で、糖尿病も抱えている彼は、自分の病歴を考える必要性を直感し、「今は調子がいいので、これまでの薬でお願いします」と頼んだ。

 腫瘍マーカーの数値は、急激に上昇した訳でもなかった。しかし、担当医は患者の要望を聞き入れず、抗がん剤の治療や手術さえ勧めて、入院をせかした。

 Cさんは、医師の一方的な勧めに納得できなかった。「医者の言うことは正しいかもしれないが、自分の場合にはかえって体を壊すように思える。自分の希望する治療を選んでいきたい」と考え、別の医師にかかることにした。

 Cさんは、壊れ物のような自分の体の状態をよく知っていたのだろう。体の一部の検査数値に驚いてすぐに徹底的な治療を受けるより、全体的な体調を大事にして、細々とでも今の生活と自営の仕事が続けられる道を選んだのである。

 自分の直感や判断を大切にするCさんのような患者はまだ少ない。MECONに寄せられる苦情相談には、医師に勧められるまま治療を受けて取り返しのつかない結果になり、家族が激しく後悔している事例があまりに多い。

 膀胱がんの手術を繰り返した結果、脳梗塞を併発した人。脳梗塞の病歴があるのに血管造影検査を強要され、植物状態になった人。九十歳代で心臓にペースメーカーを装着され、手術後に痴ほうが始まった人。心臓カテーテル検査に失敗してバイパス手術を受け、抗生物質の効かない細菌に院内感染した人、等々。

 患者が医療に参加し主体的に判断する姿勢をもたないと、過酷な治療による悲しい「病院死」はなくならない。

        (医療消費者ネットワークMECON代表世話人 清水とよ子)

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