医療消費者ネットワーク MECON

医療の実態を知る⑦

脳外科手術の苦情〜ある脳外科医の警告

(『メコン・ニュース』 No.60より)

1. 脳腫瘍の手術で、神経を損傷し、右目を失明

 母(60代)が脳腫瘍の手術を受けたところ、右目を失明した。ビデオを見せてもらったが、「腫瘍が神経の近くにあって、神経を傷つけた」と説明された。手術ミスではないか。

2.脳手術を受けたものの、QOLがゼロの人生に

 母(60代)は髄膜腫の手術を受けたが、14時間もかかった挙句、体力的に無理なので、奥のほうには手をつけずに閉じたという。
 病室に戻った母に声をかけても会話が成り立たなかった。2週間後、視力が低下し、痴呆症状が現われ、歩行も危うくなった。食欲のコントロールもできなくなったため、よく食べ、体重が急増し、自分の下の世話もできなくなった。こうした症状と手術の因果関係を知りたい。

3.良性の脳腫瘍の手術後、様々な病気を併発、危険な状態に

 夫(60代)は耳鳴りと難聴の症状で大学病院を受診。種々の検査をして、耳上に良性の腫瘍があると言われ、手術を勧められた。
 手術後、嘔吐やめまいが続いて、眼瞼麻痺で目も閉じなくなった。3週間後、吐血があり、内視鏡で調べたところ十二指腸潰瘍で孔があいたとのこと。その後、肝臓も悪くなり、肺炎、骨膜炎、水頭症などの病気も併発。身体中の浮腫がひどく、頭に穴をあける手術をしてゴム管で水を出している。
 現在は意識障害もひどく、鼻、口、尿管などにも管が入っていて、危険な状態だ。4か月前の会社の定期健康診断では何も異常がなかった。現在の症状はすべて頭の手術をしてから出てきたものだ。

4. 大腸から転移した脳腫湯を手術して、脳梗塞を併発

 父(60代)が大腸がん原発の転移した脳腫瘍の手術を受けたが、その直後に脳梗塞を併発、医師は「原因がわからない。考えられないことが起こった」という。
 うめき声を出すがしゃべれないのでどの程度わかっているのかわからない。動けないため、寝たきりになって2か月が経つ。最初の説明で「小脳にある腫瘍なので、難しくない手術」と言われたが、こんな結果になって、悔しい気持ちがある。

5.くも膜下出血を防ぐため、未破裂動脈瘤の予防手術を受けて、寝たきりに

 くも膜下出血の予防のために、母(70代)が専門病院で脳動脈瘤の手術を受けた。
 ところが、手術の翌日、脳圧が上がったという説明で、頭蓋骨を帽子を脱ぐようにはずされ、なぜか、そのまま寝たきりで3か月半が経過した。主治医は「やむを得ない不測の事態が起きた」と言うだけで、詳しい説明をしてくれない。
 母は非常に元気な人で、何でも自分でやって普通に生活していたのに、手術をしてからこんなことになって、何が何だかわからない。

本の紹介

手術をすべきでない医師が手術をしている現実
未熟な手術が日本では平然と行なわれている!

福島 孝徳 著
『神の手の提言―日本医療に必要な改革』

(角川新書 2009年刊 705円+税)

 福島孝徳医師が脳の難手術を行なっている場面をテレビで見た人も多いだろう。彼はアメリカの大学教授にして、日本にも拠点病院を造り、世界を飛び回る脳外科医である。

 『神の手の提言』という本の題名は誤解を招きやすいが、内容は具体的で豊富だ。不幸な患者が増え続ける現状に黙っていられず、「治せる医師を育てよう」、「日本の医療を変えよう」という使命感に満ちている。

 福島医師は日本に来ると必ず、大学病院や大病院での不完全、不適切な手術に泣いている患者にたくさん出会うという。だから、彼は能力のない医師が行なった手術を「フォローする」ことが多い。頼まれてやり直し手術をするのだ。

 例えば、6cmもの巨大「聴神経腫瘍」のある29歳の女性は地元の大学教授の手術をうけたが、腫瘍は1割もとれず、あちこちいじくられ、術後寝たきりの状態が2年続き、父親が「どうせ死ぬなら危険を承知でやってください」と福島医師に無理矢理再手術を頼み込んだ。その結果、腫瘍は8割がた取り除かれ、患者は立って歩けるようになったという。

 福島医師は次々と直言している。こうした手術を担当するのが大学教授や大病院の部長ら。地位のある脳外科医にもかかわらず、彼らは絶対にしてはいけない手術を試して、本当は助かる患者をみすみす寝たきり状態にしてしまう無責任で悲惨な症例をたくさん生み出している。自分が適切な脳外科手術ができないなら、できる医師に委ねるべきだが、日本の医師はそれをしない。問題は経験不足でレベルの低い脳外科医が自分の実力以上の難しい手術を試し、失敗するとそのまま知らん振りするなど、めちゃめちゃなことが大学病院や大病院で堂々と行なわれていることだ、と。

 福島医師のこうした見解は、本会の苦情相談で被害者が訴える内容と合致する。医療被害の多くは、能力のある医師の手術ミスというより、経験不足の未熟な医師が行なう不完全で不適切な手術の結果を想わせるものが多い(上記のさまざまな苦情を参照)。しかも「手術が失敗すると知らん振りする」のは同じで、十分な事後説明もせず何の責任もとらない。まずはそこが正されない限り、医師も被害者も救われない。日本の医療の病根だろう。

 無責任で悲惨な症例は人ごとではない。数年前、2人のメコン会員から、脳動脈瘤の予防手術後にそれぞれの親御さんが寝たきり状態になったとの相談があった。2件の事故は、同じ有名病院の脳外科の部長による執刀で起きた(1件は会報44号に掲載)。この部長は、福島医師が問題視する低レベルの脳外科医なのだろうが、実は、「いい病院ランキング」を特集した週刊誌に写真付で掲載されていた。被害例は当然ながら、この2件に限るまい。患者の命を壊すこんな手術が大手を振っている限り、日本の医療は崩壊し続ける。

 さらに、例えば、日本の脳外科医が危険な術式、「内視鏡手術」と「血管内コイル塞栓術」を売りにして、未熟な手術を平然と行う無謀さに警鐘を鳴らしている。なぜなら、福島医師のアメリカのオフィスに、毎日のように、内視鏡のミスで重大な合併症が出たり、血管内コイルの事故で麻痺や寝たきりになったり、命を落としたりした患者の家族から、直訴のメールが届くからだ。

 福島医師の問題提起はここでは紹介しきれない。脳疾患・がんの脳転移などで脳外科手術を考えている人、医療の実態を知っておきたい医療消費者には、ぜひ読んでほしい本だ。
 今、医師不足ばかりが騒がれ、医療改革に必須のこういう問題は忘れられている。(以上)

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