医療消費者ネットワーク MECON

医療の実態を知る③

内視鏡検査・手術の医療事故

(会報『メコン・ニュース』No.43より)

胃内視鏡の事故

◆父(60代)は食道に静脈瘤があると言われ、何度か胃カメラの検査を受けていた。先日、その検査中に3〜4リットルの大出血を起こし、その日に急死した。

◆父(80代)はひとりで胃の内視鏡検査に行ったが、帰宅途中で倒れていた。見知らぬ人に発見され、病院に救急搬送されたが、翌日死亡した。検査中に出血があったというのに、帰宅させたのはミスではないか。

◆夫(50代)は出血性胃潰瘍で、毎月3回の内視鏡検査を受けていた。ある日、検査中に呼吸停止状態になり、1か月後に死亡した。解剖の結果、死因は血栓性肺梗塞だった。

◆夫(50代)は胃の内視鏡検査で、静脈麻酔をかけられたらショック症状を起こした。救急病院へ搬送されたが、3日後に死亡した。医師はミスを認めて、警察が司法解剖中だ。どうしたらいいか。

◆父(70代)はほかの病気で入院中に、胃の内視鏡検査でポリープを摘出したが、2日後に死亡した。医師は患者側の同意を得ずにこれを行なった。

◆夫(60代)が脳梗塞の治療で入院中に、胃の内視鏡検査をされ、検査中に死亡した。

◆母(70代)はひとりで自転車に乗って胃カメラ検査を受けに行ったら、「検査中に脳内出血を起こした」と言われ、もう9か月も植物状態だ。医者は「突発的に起きたことで責任はとれない」と言う。

◆胃潰瘍の最終確認のため、内視鏡検査を受けたら、を傷つけられた。ともかく喉が苦しい。示談金の提示を受けたが、それどころではない。まずは、喉がどうなっているのか。なんとかしてほしい。(40代男性)

◆胃内視鏡検査の操作ミスで声帯を傷つけられ、声が出なくなった。(70代女性)

◆胃内視鏡の不手際で、喉の腫れと出血が続いている。検査中、別の医師に「もうやめろ」と言われたのに、新米医師は1時間もかけ、胃から十二指腸まで診た。痛くて死ぬ思いだった。(60代女性)

◆成人病検診で胃の内視鏡検査を受けたら、1週間後に胃痛が発生。再検査したら、胃の中が真っ黒だと言われ、数日入院する羽目になった。(30代男性)

◆胃潰瘍で、ピロリ菌の除菌のため、胃カメラを飲んだところ、翌日吐血した。再受診し、血管が切れていることがわかった。そのため1週間入院したら、治療費を請求された。(30代男性)

◆胃カメラの前処置の麻酔のやり方が悪く、嚥下性肺炎になり、3週間入院した。病院はこの入院費を出してほしい。(50代女性)

大腸内視鏡の事故

◆家族(70代)が大腸の内視鏡検査中に、大腸穿孔を起こした。器具が大腸を突き抜けたのだろうか。孔を塞ぐために緊急の開腹手術となったが、意識が戻らないまま死亡した。医師側弁護士に見舞金程度で和解を迫られている。

◆母(70代)が大腸ポリープを内視鏡手術で切除した。その日の夜、発熱と腹痛のため、緊急の開腹手術となった。ところが、その手術中に脳梗塞を起こし、10日後に死亡した。死亡診断書には「脳梗塞」と書かれていた。どう交渉したらよいか。

◆母(60代)が下腹部痛で大腸内視鏡検査を受けたら、S字結腸に孔をあけられてしまった。そこで、緊急手術となったが、人工肛門を付けられたうえに、脳梗塞を起こして、寝たきりになってしまった。

◆近くの病院で大腸がんの初期と言われ、大学病院に回されて大腸の内視鏡手術を受け、リンパ節も郭清した。ところが、がん細胞は見つからず、医者に「手術しなくてもよかったね」と人ごとのように言われた。(40代女性)

◆大腸がんの疑いで内視鏡検査に行ったら、腸に孔をあけられた。転送先の大きな病院で腸をつなぐ緊急手術を受けて、3週間も入院した。補償はどうなるのか。(50代女性)

◆大腸内視鏡手術でをあけられ、開腹手術になったが、その費用も全部払わされた。おかしくないか。(60代男性)

◆大腸の内視鏡手術で孔をあけられ、開腹手術になり、人工肛門を2つも付けられた。入院費と医療費のすべてを返してもらいたい。(70代女性)

◆大腸の内視鏡検査でをあけられ、緊急手術をしたが、経過が良くなく、10年以上も通院している。化膿した場所から糸のようなものが次々と出てくる。(70代女性)

◆大腸の内視鏡検査で腸穿孔を起こし、緊急の開腹手術となった。見舞金程度の示談書にサインしてしまったが、本意ではない。(50代男性)

◆大腸内視鏡の検査時に激痛が走った。その後も痛みがつづいたため、1年も入院したが、鎮痛剤を投与されるだけでよくならない。(50代男性)

胆石の内視鏡(腹腔鏡)手術の事故

◆息子(30代)が開業医のところで、胆石の内視鏡手術を受けたら、静脈と胆管を切られ、胆汁性腹膜炎になった。出血がひどく、輸血が3回行なわれた。病室に戻ってきたときには意識がなく、人工呼吸器をつけていた。その後、大学病院で再手術を受けたら、MRSAに感染した。そこで再々手術になったが、今度は腸閉塞になった。現在は意識不明だ。

◆母(70代)が胆石の内視鏡手術で、肝臓を傷つけられて大出血し、開腹手術になった。4000ミリリットル近い出血のため、多量に輸血され、血液内凝固症候群を起こしたが、一命はとり留めた。

◆胆石の腹腔鏡手術で痛みがとれず動けないため、転院したところ、腹膜炎を起こしていると言われ、緊急手術を受けた。クリップがはずれたことによる胆汁性腹膜炎とわかった。社会復帰に3か月もかかった。弁護士を通して病院と交渉中だ。(50代男性)

◆胆石の内視鏡手術を受けたが、胆汁が漏れて、腹膜炎細菌感染を起こし、入院が1か月半に及んだ。病院はミスを認め、再手術や再手術後の入院の費用はとらなかった。慰謝料を請求したところ、返事がない。(30代女性)

◆胆石症で緊急入院し、内視鏡手術を受けた。しかし、途中で開腹手術となった。胆管の切断ミスだとわかったので、病院と交渉したい。(40代男性)

◆胆石症で内視鏡手術を受けたが、途中で開腹手術に変更された。保険の請求証明書には「手術時の損傷」と書かれていた。病院はミスを認めたが、どう交渉したらいいか。(60代男性)

◆胆石の内視鏡手術で胆管に孔をあけられて、腹膜炎を起こし、緊急の開腹手術をしたが、予後が悪い。どうしたらいいか。(30代女性)

◆胆石の腹腔鏡手術で胆管を傷つけたため、開腹してバイパス手術を受けたが、胆汁が逆流するなど調子が悪く、3回も入退院を繰り返している。(40代女性)

メコンの眼 - 内視鏡の医療事故の場合

 ここに例示された内視鏡の医療事故は一時期のもので、日本全国でおそらく毎日のように起きている事故の氷山の一角に過ぎません。しかし、内視鏡で、患者がさまざまな医療被害に遭っていることはわかります。
 なお、内視鏡検査では、胃や大腸だけでなく、気管支や膵臓などでも事故は起きています。内視鏡手術でも、胆石に限らず、甲状腺、子宮内膜症、卵巣嚢腫・子宮筋腫、腰椎・椎間板ヘルニア、副鼻腔などでも事故は起きています。

 血管や臓器が傷ついて3〜4000ミリリットルもの大出血があれば、患者の命に関わってきますし、大腸穿孔(せんこう)の場合も、緊急の開腹手術を行なって患者を救命している事例が多くみられます。いずれの場合も、救命できず死亡事故に至ることもあります。
 他方、傷害事故の場合、が傷ついても、胆管が切れても、あるいは神経が傷ついても、命に別状はありませんが、患者は思わぬ医原病と闘わなくてはならず、日々の平安な生活が壊れて、自由を失い、苦しくて大変です。

 内視鏡事故の被害者に代わって、患者と医師の双方に伝えたいことがあります。
 患者側は、急変異変が起きたら、すぐに医師に冷静に説明を求め、状況をしっかり理解するようにしてほしい。曖昧にしておくと、わけがわからぬまま入院や通院が長引いています。事後対応をきちんとしてもらうためにも、患者側は落ち着いて行動し、患者の身体に何が起ったのかをしっかり把握しておくことが大切なのです。さらに、そうした患者側の行動は、同様の事故を防ぐ効果もあり、問題解決にもつながります。
 一方、担当医は、治らないと逃げ腰の対応をするのではなく、患者の苦境を理解し、自分の力不足で生じた医原病に対して誠意をもって対応してほしい。患者が救いを求める第2、第3の医師も、再治療に力を尽くしてほしい。同輩医師の力不足を補って、苦痛と不自由な生活を強いられている被害者を救うことも医療の使命であり、そうあって初めて、国民も医療に対して安心と信頼を感ずることができます。

 専門家のお話を聞くと、内視鏡の偶発症(医療事故のこと)が起きやすいのは高齢者基礎疾患のある人。実際、死亡事故の半数以上は70歳以上で起きているとのこと(会報23号)。
 また、上記の事例にあるように、脳梗塞の高齢者が胃の内視鏡検査中に死亡していますし、この検査・手術自体が身体への大きな負荷となって、その最中や直後に脳梗塞や脳出血を起こしている人もいます。

 また、たとえば糖尿病の高齢者が、基礎疾患のリスクも知らされず、勧められるままに大腸内視鏡検査を受けたところ、その2,3日後に自宅で激しい腹痛に襲われ、救急入院したものの大腸破裂で死亡というようなこともあります。
 このように、高齢者や基礎疾患のある人に、必要な配慮をせずに内視鏡を使う医師がいるのも現実です。患者がしっかり判断しないと、医療現場の流れに飲み込まれてこうした事故に遭いかねません。被害者は病院の責任では?と考えますが、失われた命は決して戻りませんし、時が経過してからの事故ほど、責任を問うことはむずかしくなります。
被害を防ぐには、高齢者や基礎疾患のある人は、おまかせ姿勢で医師に勧められるままに受けるのではなく、事前に、本当に受ける必要のある検査・手術なのかどうか、などを自分でよく考えてから判断する必要があります。

 なお、ここに事例はありませんが、内視鏡で検査・手術中に大腸穿孔などの事故に遭った場合、患者側が自力で病院側と話し合って、相応の補償を含む示談(示談書作成)にこぎつける例もいくつか本会に寄せられています。
 内視鏡の事故は、簡単なはずの検査や手術の途中で患者の容態が急変し大事に至ります。そのため、医師もすぐに待機中の家族に事情を説明して、救命のための緊急開腹手術を行なうので、回復が確認された段階(退院時など)で交渉すると、誠意と良識のある病院はミスを認めて示談に応じています。自力交渉で示談が成立しているのは大腸穿孔が目立ちますが、それだけ隠しにくいミスだということでしょうか。(詳しくは『医療ミス 被害者から学ぶ解決策』〈講談社刊〉の第5章、「医療被害にあったときの解決の手立て」を参照。)

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