近況 (2007/07/30〜)

2010/05/30

TI製 新型OPアンプを測定する  OPA1612はLM4562を凌ぐ超低歪

一年ぶりの更新になります。
尻切れになっていたヘッドフォンアンプ製作ページは …  ひとまず置いといて
TI製の最新型OPアンプ OPA1612、OPA1642 を入手、またリリースされて1年半ほど経ちますがOPA627の後継と思しきOPA827を測定いたしました。

OPA1612はバイポーラ入力型OPアンプで、先行してリリースされたOPA2211 (single typeはOPA211)がオフセット電圧、バイアス電流、オフセット電流等のDC特性が工業用グレードだった規格を緩めて、オーディオ用としてリリースされたものでAC特性は同一といって良いようです。尚、OPA2211、OPA211は未入手です。 
データシートに簡略化された内部回路が載っていますが、出力段にクロス・カップルド・フィードフォワード回路が使用されており、絶対最大電源電圧が40Vにもかかわらず、レイル・トゥ・レイル出力になっています。入力電圧密度は1.1nV/√HZ と、AD797、LT1028等に次ぐ超低雑音です。1.1nV/√Hz はおよそ 73Ωの抵抗から生ずる熱雑音に相当し、なかなかこのノイズ特性を十分に活かすオーディオ・アプリケーションが思い浮かばないくらいです。通常なら帰還回路に使用する抵抗の雑音だけでもこの値を超えてしまうでしょう。もちろん雑音電圧は低いに越したことはないのですが、心配なのは雑音電流で一般にバイポーラ入力の場合、電圧雑音と電流雑音はトレード・オフ、事実電流ノイズ密度は 1.7pA/√Hz (@1kHz)と LM4562 (1.6pA/√Hz)より僅かに大きくなっています。とはいえ、雑音電圧が低い割には雑音電流の増加は低く抑えられているようです。

OPA1642はJ-FET入力型OPアンプで、OPA1612同様出力段にクロス・カップルド・フィードフォワード回路が使用されておりやはりレイル・トゥ・レイル出力になっております。位置付けとしてはOPA2134の後継と思われますが、ノイズ特性が 5.1nV/√Hz と改善されておりFET入力型としては優秀な値です。またGB積が11MHzと若干大きくなっています。特筆すべきは1回路あたりの消費電流が1.8mA(typ)と少なくなっている事で、ノンカットオフ動作で僅かなアイドリング電流でも優秀な特性を示すクロス・カップルド・フィードフォワード出力段がその実現に貢献していると思われます。電源電圧が絶対最大で40V、出力電流が30mAとなっており業務用オーディオ機器の出力にも対応しています。
シングルtypeのOPA134ではオフセットトリム端子が割り当てられていましたが、OPA1641ではそれらが省略されています。

OPA827は低雑音、高精度のJ-FET入力型OPアンプで、OPA627の後継でしょう。雑音電圧密度が4nV/√HzとFET入力型としてはトップクラスの低雑音で、入力オフセット電圧が標準品で150μV(max)、ハイグレード品で75μV(max)と非常に低く抑えられています。そのためか、こちらもオフセットトリム端子が省略されています。等価回路を見ると、OPA627が初段がPch FETのソース・フォロアだったものが、Nch FETのソース・フォロアに変更されています。また、ドレイン側のカスコード・ブートストラップが省略されており、同相入力電圧範囲は広くなることが期待できますが、反面初段の同相入力成分に起因する歪悪化が懸念されるところです。

「データシートを見ればわかるような能書きはいいから、測定結果を示せ」 ごもっともです。

測定回路はこのページの 2008/09/14 の記事を参照して下さい。





20kHz 7Vrms における歪波形

OPA1612 0.000219% OPA1642 0.0057% OPA827 0.000559%

矩形波応答 100kHz 200mVp-p

OPA1612 OPA1642 OPA827

OPA1612はLM4562(LME49720)を凌ぐきわめて優秀な歪率で、しかもレイル・トゥ・レイル出力により10Vrmsまで歪率の増加がありません。クリップ直前の急激に歪が増加し始める出力はおよそ10.2Vrmsでした。
OPA1642もOPA2132からは改善されており、さらにレイル・トゥ・レイル出力により10Vrmsまでノンクリップ出力が可能です。
OPA827は、特に20kHzにおいてOPA627からの改善が大きく、FET入力型としては極めて優秀です。ただし、最大出力はOPA627よりは小さくなっているようです。上記 R to R の2品種を見た後だけに残念な気がします。
矩形波応答は3品種とも文句なくきれいです。OPA1612はデータシートによるとGB積が 80MHz(G=100)、40MHz(G=1) と仕上がりゲインにより異なっており、軽微なオーバーシュートがあるのではないかと思いましたが、G=+10 の条件においてはまったく問題ありませんでした。

OPA1612の1kHz(左) 20kHz(右)のクリップj時の波形 (電源電圧 ±15V)
 レイル・トゥ・レイル出力段により、ほぼ電源電圧近傍までスイングできる。 縦軸 5V/div
注)入力はレイル・トゥ・レイルではないので、G=+1 (ボルテージ・フォロア)では出力をここまで振ることはできません。

同相入力信号に起因する歪の評価に、信号源抵抗 対 歪率を以下に示します。測定回路は 2008/09/23 の記事参照


20kHz Rs=10.3kΩ における歪波形

OPA1612 0.00293% OPA1642 0.042% OPA827 0.0905%

OPA1612はNE5532のように入力容量の電圧依存性による2次歪キャンセルなどはやっていないようですが優秀です。一般に電圧ノイズ特性を重視すると初段トランジスタの接合面積が大きくなり入力容量が増加する傾向があり同相入力信号による歪には不利なのですが、優秀なNE5532と同等の低歪です。
OPA1642はOPA2134に対してノイズ特性が改善されていますが、入力容量に起因する歪は減少しています。N-ch FET入力になったことが効いているのでしょう。
一方、やはり残念な結果になったのはOPA827で、カスコード・ブートストラップが省かれたため、OPA627からは大きく後退した特性になってしまったようです。ノイズ特性が優秀な分入力容量が大きいのでしょう、OPA1642の倍以上の値になっています。入力の同相成分が小さいときの歪特性が優秀なだけに残念です。
*この特性だけに限れば、秋月と chip one stop で¥3500 で販売している オペアンプ史上最も恥ずかしいオペアンプ よりも劣るなぁ。まぁ、でも OPA827 は ¥1450(共立価格)で2個買ってもお釣りがくるから… (独言)

全体を通して、OPA1612の秀逸な特性が印象に残ります。これだけの特性を有しながら消費電流は僅かに 3.6mA (1回路あたり)と NE5532やLM4562より少なくなっています。1.1nV/√Hz の雑音電圧密度を得るためには初段差動のテール電流は1.2mA程度は必要ですから、出力段のアイドリング電流は僅かです。黒田さんがクロス・カップルド・フィードフォワード出力段に関して、2002年8月号のトランジスタ技術に解説を書いていますが、その出だしは 低電圧動作の要求から… という内容で始まっています。私もこの回路が使用されるオペアンプは単電源用途の5Vやそれ以下で使用するようなオペアンプまでで、まさかこのクラスのOPアンプにまで浸透してくることはないだろうと思っていました。
OPA1612に望むのは、入力電流の制限値10mAをもう少し大きな値まで保証してほしいこと。等価回路には記載されてませんがNPN入力ですから、当然ブレークダウン防止の為の双方向ダイオードが初段差動のベース・ベース間に入っています。過入力が加わる可能性がある場合、このダイオードに流れる電流を10mAi以下に制限する抵抗を入力端子に挿入しなければなりません。せっかくの 1.1nV/√Hz の低雑音(73Ωの抵抗の出す熱雑音に相当)がこの抵抗のために活かせなくなるのは勿体無いと思うのです。AD797は25mAまで保証されてます。

ところで、G=+10 での歪率測定中、OPA1612 の20kHzの歪波形を見たとき、「どこかで見たような…」と思いました。このページを下までスクロールして下から2番目のシミュレーション波形 トランスリニアバイアスのTypeI (理論歪が0にはならないタイプ)の歪波形によく似ています。


2009/06/15

ヘッドフォンアンプ製作ページ

遅々として更新が進んでいませんが…
どれほどの需要があるか判りませんが、ACアダプター版のヘッドフォンアンプ製作ページを設けました。とりあえず 感光基板などで基板が作れるように基板関連の情報および部品表を載せました。

Making of Headphone Amplifier-1

ただし、問題もありますので 2009/04/26 ヘッドフォン・アンプ ACアダプター版 (その4) の特に DCオフセットに関する項目を一読ください。認識している問題があるままというのもいかがなものかとも思いますが、そのままの基板で部品定数やオペアンプの品種はいろいろと潰しがききますので…

順次いろいろと情報を載せてゆきたいと思っております。


2009/05/25

2台目は花梨突板仕様

ケースを傷つけてしまい、ショック! 新しいケースを加工して作り直しをしましたが、傷ついたケースを捨てるのももったいなく思っていたところ東急ハンズ心斎橋店で天然銘木シールというものを見つけ購入、貼ってみたところ思いのほかイイ感じになり、2台目を製作いたしました。

今回は標準ジャック仕様で、ジャックはサブパネルに固定、部品も一部変わっています。(回路定数は変更なし)

シートサイズ 145mm X 295mm でタカチのMX4-10-15GSの上下に貼って、余剰も少なくちょうど良いサイズです。ハンズには置いていませんでしたが、直販では大きなサイズもあるようで、取り寄せてもらうことも可能かもしれません。

高価なOP-AMPやパーツを使用するより、プラセボ大かも。「アルミの固有振動による音質への影響を、天然素材が適度にダンプすることにより…」っとか何とか言っちゃって。


2009/04/26 (2009/06/15加筆  まだ書き掛け)

ヘッドフォン・アンプ ACアダプター版 (その4)

ヘッドフォン・アンプの製作例はネット上にも数多く見受けられ、ひとつのブームになっているようです。オペアンプひとつで手軽に組め電子工作の入門用にも最適なのですが、それだけに、動作に疑問を抱く怪しげなものも少なからず見受けられます。ここでは初歩的な注意点から "ひとつ上を目指す” ための要点などを、このアンプの回路説明を兼ねて述べてみたいと思います。

入力ボリュームは10kΩ(A)を使用いたしました。市販のプリアンプ、プリメインアンプ等は20kΩから100kΩ程度が使用されています。しかしOP-AMPにLM4570を使用しゲインを約15dB持たせることを前提とすると、10kΩ程度の値を使用しなければそのローノイズ特性を生かせないばかりか、却って他の汎用オペアンプにも劣るノイズ特性になってしまいます。
以下の回路において、3種類のOP-AMPを使用した場合の信号源インピーダンスRs を変化させたときの出力における雑音電圧密度(計算値)を示します。



信号源抵抗の低い領域では最も雑音が小さいLM4562が、信号源抵抗が大きくなると最も大きくなっています。これはLM4562の入力電流雑音密度が比較的大きいためです。

入力雑音電圧密度 入力雑音電流密度
LM4562 2.7 nV / √Hz 1.6 pA / √Hz
NE5532 5 nV / √Hz 0.7 pA / √Hz
OPA2134 8 nV / √Hz 0.003 pA / √Hz

信号源抵抗から生ずる熱雑音は、抵抗値の平方根に比例しますが、オペアンプの入力から生ずる入力雑音電流はこの信号源抵抗に流れ込み 雑音電流 X 抵抗値 の雑音電圧を生ずるため、抵抗値に比例して雑音電圧が増加します。したがって、信号源抵抗が小さな領域では雑音電圧密度の低いLM4562が優秀な特性を示しますが、信号源抵抗が高くなると熱雑音以上に入力雑音電流による影響が大きくなるのです。
 入力雑音電流は主に初段トランジスタのベース電流に起因しますが、入力雑音電圧を低くするためには初段トランジスタのコレクタ電流を多く流す必要があり、必然的にベース電流が増加します。したがって入力雑音電圧と入力雑音電流はトレードオフの関係にあり、一般に入力電圧密度が低いOP-AMPほど入力雑音電流が大きくなっていますので、信号源インピーダンスには注意しなければなりません。一方、FET入力型のOP-AMPでは入力電流雑音密度が無視できるほど小さく、信号源抵抗が高い領域での上昇は熱雑音のみの上昇であるため、緩慢に上昇してゆきます。
 抵抗による熱雑音や入力雑音電流による影響は、OP-AMPの非反転入力側ばかりではありません。反転入力側、つまり帰還回路をOP-AMP反転入力側から見たインピーダンス(上の回路図では Rf と Rs の並列値 約 387Ω) も同様に影響します。帰還回路も十分低いインピーダンスにすることが望まれます。

一般的な非反転増幅回路における出力雑音密度を計算して表を描くExcelによるファイルを作成いたしました。
オペアンプで組んだオーディオ帯域がフラットな非反転増幅器ならば、DCカット用のカップリングなどのオーディオ帯域を通過させるためのコンデンサは短絡することで、ほとんどがファイル内に示した回路図の形に帰着できると思います。
 一例として、前回示したヘッドフォン・アンプの回路をExcellファイルに示した回路図の形に帰着する手順を以下に示します。


尚、ファイルのデフォルトでは、4種類のオペアンプを Rf=2.2k、Rs=470 としたゲイン5.68倍(15.1dB)の回路に使用した計算値とグラフの他に、自作ヘッドフォンアンプとして有名なChu-Moy氏のA Pocket Headphone Amplifier のオリジナル定数による計算値とグラフが含まれております。こちらの雑音は他のものに比較して大きくなっていますが、ゲインが11倍(20.8dB)であることに注意してください。

 では、実際問題としてヘッドフォン・アンプの出力ノイズはどの程度を目指せばよいのかということですが、ヘッドフォノンのインピーダンスや感度がまちまちなので一概には言えませんが、一例として私の所有しているソニー製 MDR-Z900 を使用した場合、A-フィルターで測定した雑音電圧がおおよそ10μV以上になると、深夜に無信号でヘッドフォン・アンプの電源ON時とOFF時の差が判別できるようになります。A-フィルターで10μV のホワイト・ノイズ は、雑音電圧密度に換算すると 77 nV/√Hz ということになります。
 MDR-Z900 は密閉型で公称インピーダンス24Ω、出力音圧 107dB/1mW と、ダイナミック型ヘッドフォンとしてはかなり高感度の部類になりますから、この雑音レベルをクリアしていれば、概ねほとんどのヘッドフォンにおいて "ヘッドフォン・アンプの雑音" に不満を持つことはないと思われます。

 出力からコンデンサを介さずヘッドフォンと直結することを前提に考える場合、出力のDCオフセットは可能な限り小さく抑えなければなりません。低インピーダンス型ヘッドフォンも使用することを前提とするならば、1mV以下に抑えるのが望ましいのですが、無調整、無選別でこの値を満足するOP-AMPは限られており、価格・性能面を考慮するとある程度妥協せざる得ないようです。今回のヘッドフォンアンプもこの点に問題があります。
具体的にヘッドフォンアンプの回路についてついて考えてみます。

 音量調節機能を持ち、非反転型増幅構成で5倍程度のゲインを持たせるという前提で、最もシンプルな回路構成は下図の回路となるでしょう。


この構成でも一般に高精度タイプと呼ばれるオフセット電圧の小さいFET入力型のオペアンプであれば、実用になるかもしれません。例えば、入力オフセット電圧の最大値が2mVであるOPA2134を使用し R2=2.2kΩ、R3=470Ω とすれば、出力オフセット電圧のワーストケースは

2mV X (2200 + 470)/470 = 11.36mV

ですが、ほとんどのOPA2134の入力オフセット電圧は実力 0.5mV 以下に収まりますから、出力オフセットも 3mV 以下になることが期待できます。

さらに、オフセット電圧を低く抑えようとするならば、DCサーボ構成が考えられます。DCサーボ構成には帰還回路にオペアンプを使用して直流に対するゲインをほとんど0に押さえ込むアクティヴ型と、直流に対するゲインを1に収束させるパッシヴ型とがあります。

さらにパッシブ型には上図 (a) のタイプと、多重帰還型と呼ばれる(b)のタイプがあります。今回のヘッドフォンアンプは回路構成がシンプルという利点よりパッシヴ型を、また次のような理由により(b)タイプを使用しております。

 まず、オペアンプにバイポーラ入力型を使用することを考えると、入力バイアス電流によるオフセットへの影響を考慮して反転入力、非反転入力からみた直流インピーダンスを等しくする必要があります。そのため、可変抵抗の後にカップリン・グコンデンサを挿入して、直流インピーダンスが不確定な可変抵抗(および入力接続機器)の影響を無くし、かつ、R1とR2の値を等しくする必要があります。

ところが (a)タイプの場合、R2 は R3 と共に帰還回路を構成しゲインを決定する抵抗でもあるため、R1の値を大きくとると、必然的にR2、R3の値も大きくせざるを得ず、非反転入力側から見た交流インピーダンスも大きくなってしまいます。具体的に R1=100kΩとし、ゲイン約15dB の場合を考えてみると、jR2=100kΩ、R3=22kΩ ということになり、非反転入力側から見た交流インピーダンスは R2//R3≒18kΩ です。既に前項で述べたように、この値も雑音特性に影響し 18kΩ では十分なS/Nが得られません。また、この値は帰還の安定度にも影響します。このインピーダンスとオペアンプの入力容量とで帰還の位相が遅れ、超高域にピークを生じたり最悪の場合発振に至ります。特にローノイズ型でGB積の大きな高性能オペアンプほど入力容量は大きな傾向があり注意を要します。(全帰還安定型のオペアンプの場合は R2 に並列に数pF〜数10pF の容量を付加する事によりこの点は回避することが出来ます。)
 それでは、R1の値を小さくすれば… ということになりますが実は小さくしたくない理由があるのです。可変抵抗器の摺動部は流れる電流によって有効接触面積が変化するという特性があるため、ヴォリュームの摺動子に交流電流を流すと歪(主に3次高調波)を生じます。これを回避するにはヴォリュームの後にくる抵抗は出来るだけ高い値が望ましいのです。

 また、ヴォリュームの全抵抗値に比して低い値の抵抗を後に置くと、回転時の変化特性が変わってしまいます。これを逆手に利用してBカーブのヴォリュームを使用し、その後に低い値の抵抗を置くことで擬似的にAカーブ特性を得ようとする例も見受けられますが、歪の観点からすると好ましいことではありません。さらに、レオスタット型と称して「信号が接点を通らない」を謳い文句に音質の優位性を主張する使用法も見受けられますが、電圧伝送である限りは下図A-B間の電圧が問題であり、その電圧は、R1と可変抵抗間の分圧で決まるのですから接点に電流が流れることによりA-B間の電圧が影響を受けることは自明です。

  • BカーブのVRの後にVRの全抵抗値より低い抵抗を置くことによって擬似的にAカーブ特性を得ようとする例
  • レオスタット型と称して「信号が接点を通らない」としているものも見受けられるが…?

一方、パッシブ型DCサーボの(b)タイプの場合は直流と交流信号に対する帰還インピーダンスを独立して設定することが出来るため、交流に対する帰還回路のインピーダンスを低く保ったまま、R1、R2の値を大きくすることが出来ることが利点です。ただし、FET入力型のオペアンプの場合はR1、R2の値を必ずしも同じ値にする必要はなく、また値をMΩオーダーにすることも可能ですが、入力バイアス電流が流れるバイポーラ入力の場合は注意が必要です。実際にオペアンプに LM4562 を使用した場合について具体的に考察してみます。

直流動作点を考える場合は、容量はすべて開放除去します。
左図でC1、C2は開放とします。
交流成分の帰還抵抗R3およびR4の和が出力の負荷になりますが、直流オフセット電圧を考える場合は直接的には影響を与えないので除外します。
R1=R2=220kΩ とします。

オぺアンプの直流ゲインは非常に大きいく右図の場合は直流に対する帰還量が100%であるため、反転入力と非反転入力の電位が等しくなるところで出力電圧が落ち着きます。(入力オフセット電圧は0と仮定)
 LM4562の入力バイアス電流は typical 10nA (max 72nA) とされています。この値はバイポーラ入力型オペアンプとしては非常に少なく、OP07やLT1028等と同様なバイアス電流キャンセル回路が搭載されているものと思われます。この電流は R1およびR2に流れ、10nA * 220kΩ= 2.2mV (typ、 max 15.84mV) の電圧を生じます。反転入力と非反転入力に流れる入力バイアス電流の値が等しければ、仮に R1、R2 の相対誤差が 1% あったとしても R1と R2 の両端電圧の差は22μV (typ)、158.4μV (max) に過ぎず、抵抗の誤差は問題がないことが判ります。
問題は入力オフセット電流でLM4562の場合、11nA (typ)、65nA (max) になっています。これは反転入力と非反転入力に流れる電流の差が平均で11nA、最大では65nA ありますよ ということですから、 R1と R2 の両端電圧の差は平均値で 2.42mV、最大では 14.3mV に達する可能性があるということになります。

*左図に 反転入力電流が50nA、非反転入力電流が10nA (入力オフセット電流=40nA)の場合  の例を示します。

実際のオフセット電圧はこの値に入力オフセット電圧加えた値になりますが、LM4562 の入力オフセット電圧は0.1mV (typ) 07mV (max) と十分小さくオフセット電流による影響が支配的です。
 以上のように、R1、R2 が220kΩでは出力オフセット電圧が十分に小さな値にはならないのです。ところが、NS社のアプリケーション・ノートAN-1768ではDCサーボ回路にもLM4562を使用し、しかもその反転・非反転入力の抵抗が1MΩという値でヘッドフォンアンプが組まれています。(AN-1768の回路図で R9, R10, および R11, R12)  この回路はアクティヴDCサーボですから、主増幅回路のDCオフセットは十分に抑圧されますが、DCサーボ・アンプに使用されているOPアンプの入力オフセットはそのまま主増幅器の出力オフセットになって現れます。従って、AN-1768 に掲載のヘッドフォンアンプは最大で65mV にも達する可能性があるのです。しかし、私はNS社のこの設計に対し、「規格値はともかく、実際のLM4562の入力オフセット電流値はこの回路でも十分小さなオフセット電圧に収まるほどの実力を持っているのだろう」と期待し、多重帰還形のパッシヴDCサーボ方式を採用いたしました。実を言うと、当初この抵抗は、470kΩだったのですが、実際にLM4562を搭載してオフセット電圧を測定してみると、手持ちの8個(ユニット数で16) のうち2個が20mV近い出力オフセットを生じたため、やむを得ず220kΩに変更し、それでやっと両ch共3mV以下に収まるものが2個、5mV以下に収まるものが5個とれたという有様です。
 それにしても、AN-1768 掲載のヘッドフォンアンプの設計者は、ヘッドフォンアンプのオフセットはいくらまで許容できると考えているのでしょうか。全く私の買いかぶりだったようです。

以上のように、DCオフセットに関してはLM4562を使用した場合 220kΩでも全く不十分で,、この値を小さくするか、オペアンプの選別を覚悟するしかありません。

尚、電流帰還型のオペアンプを使用した場合は、パッシヴ方式のDCサーボは(a) (b) 両タイプ共、全く用を成しませんので注意してください。


2009/04/04

ヘッドフォン・アンプ ACアダプター版 (その3)

ACアダプター版のヘッドフォン・アンプの主機能部分の回路図を以下に示します。

上の回路図では、入力ピンジャックとミニジャックの切り替え回路、出力リレーおよびリレー駆動回路、電源SW等は省略しております。正確な全回路図はこちらになります

設計方針は

  1. 電源はACアダプターとして、取り扱いやすいように小型軽量にする。
  2. 低能率のハイ・インピーダンス型ヘッドフォンでも過不足なく鳴らせ、かつロー・インピーダンス型ヘッドフォンでも十分な駆動できるようにゲインを約15dBとし、出力バッファ付きとする。

としました。もちろん大前提として音質・性能のよいものであるということは言うまでもありません。

 まず、1についてですが、秋月で販売している24V 0.5A の小型ACアダプターの使用を前提とします。スイッチング電源方式のACアダプターですが、予備実験で他のものと比較してスイッチング・ノイズは少ない方でなかなか優秀です。しかしやはり若干スイッチングによるリップルが残留しており、そのまま使用したのでは出力に漏れてきます。そこでLCによる2段π型フィルターを構成いたしました。
また、電源は単電源での供給となりますが、容量と抵抗による電圧スプリッターにより仮想中点をつくり擬似的に正負2電源としました。この方式の欠点は直流電流を中点に流すと正負の電圧バランスが崩れることと、正負に分割した電源のコンデンサ容量が少ないと低域で相対的に電源電圧が変動して最大出力が低下することです。専用ICやバッファ回路を用いたスプリット回路ではこの欠点は解消しますが、反面消費電流が増加するという欠点がありバッテリー駆動式の場合は大きなデメリットとなります。これは仮想中点に流れ込んだ出力電流がスプリッターIC(バッファ回路)で熱になるためで、容量分割式の場合この電流は容量に蓄積され、出力電流が反転すると回生されます。ACアダプター専用である当機は、あまりこの点を気にする必要はないのですが、回路の簡略化のため前者といたしました。

 次に2ですが、ゲインを持たせても出力は直結としたいので、DCオフセットを低く抑える必要があります。そこで多重帰還方式によるDCサーボとし、DCに対しては100%の帰還を掛けています。出力バファはやや高価ですがLME49600を使用しました。ディスクリートで組んでも良いのですが、アイドリング電流の安定性ではモノリシック型が断然有利です。さらに過電流検出保護回路、サーマル・シャットダウン機能などディスクリートで組むとなるとかなり煩雑になる保護回路が備わっており安心して使用できます。フィードバック・ループに組み入れての安定性も十分です。
主増幅器にはLM4562(LME49720)の使用を前提としています。しかし、DCオフセットの点で問題がありました。この点については次回に詳しく述べたいと思います。


2009/03/29

ヘッドフォン・アンプ ACアダプター版 (その2)

既にプロトタイプは完成しているのですが、予期していたこととはいえ回路上の問題もあって、今回も回路は後回しで加工を終えたケースをアップいたします。

加工を終えたケースとサブパネルです。サブパネルにはタカチの不等辺アングル 30X15 t=2 のアルミ押し出し材を使用しています。

タカチのホームページの製品カタログが更新されましたが、これらの押し出し材がすべて廃止品になったようで残念です。同等のものがハンズやホームセンターで入手できますが、タカチの価格の倍くらいするようです。
ボリュームつまみの高さをパネルのセンターにすると、可変抵抗器前面側の端子がLアングルの肉に0.5mmほど干渉するため、端子を逃げる為の穴を空けています。
外装パーツをつけた前面側です。ボリュームつまみはパネルにφ26の穴を空け、落とし込みといたしました。
背面側です。
フロントパネルをはずしたところです。
LEDはパネルの穴の呼び込みに突き当てて、はんだ付けで固定です。
電源のインジケートはアンバー(琥珀色)というのが私の好みです。オレンジではありません。
基板は底面側ケースのスリット下段側に差し込み、六角スペーサーで1点固定いたします。
L=8mmのスペーサーでぴったり合います。
電源SWがサブパネルに取り付けられているため、パネルからのレバーの突出量が少なく容易にSWが切り替わらないプロ機っぽい雰囲気がいいでしょ。

2009/03/14

ヘッドフォン・アンプ ACアダプター版 (その1)

やはりケースの現物があると「ああ、こんな感じで…」とイメージが沸いてきて、基板の作画も進みます。
回路図を画く前に基板が出来てしまうのが私の常で…部品実装まで一気に終えてしまいました。

上部右側のミニ・ジャックはiPod 等の入力用で、ジャックを挿すと、入力がピンジャックからこちらに切り替わるようになっています。
その下はACアダプターのスイッチングノイズを除去するLCフィルターです。
電源投入時のポップノイズを回避するため、リレーと遅延回路を設けていますが、なくても気にならないレベルかもしれません。
撮影のため片側のみ置いていますが、バッファIC(LME49600)は現在未実装です。ジャンパーでOP-AMPの出力から直接出力出来るようにもなっており、まずはOP-AMP単体の実力をみてみようと思っています。
小容量のパスコン(セラミック)と、逆流防止ダイオードは面実装部品です。
基板をケースのスリットに納めるとこんな感じになります。
ボリュームも1枚の基板上に載せるとスマートなんですが…、高さが合いません。別基板です。

あとは、ケースと前後パネルの加工ですね。

2009/03/03

久々の日本橋

ヘッドフォン・アンプもそろそろケースに納めたいのですが、ネットでタカチのケースなどをあたってみてもどうも適当なケースが見当たりません。ケースのことなど何も考えずにプリアンプ基板にバッファを追加したのが間違いでした。基板を作り直す必要がありそうです。ネットからカタログや図面を見て設計することも出来ますが、現物があった方が細かいところも気が付きます。なにはともあれ日本橋へ。

ヘッドフォン・アンプとは関係ないのですが…。

千石電商が日本橋に進出と聴いて一番嬉しかったのはアルプスのSRN型ロータリー・スイッチが安く手に入ること。秋葉であちこち物色しても千石が一番安い。特に2連タイプは他店との価格差が大きいのです。その私のお気に入り部品のSRN型も、とうとう3月で生産終了とのことで各種購入してきました。実はこれがケース購入以上に今回日本橋に足を運んだ最大の理由。

オレンジ色のコンデンサはニッセイのAPS。千石でも扱っていますが共立系のほうが安価なのでシリコンハウスで購入。このコンデンサ購入の理由については、後日あらためて詳細報告いたします。

その他3.5φステレオ・ジャックなど、こちらはヘッドフォン・アンプ用です。
TAKACHIのモバエル・ケースMX4-10-15GS パーツランドにて購入。
ACアダプター仕様のヘッドフォン・アンプに使用する予定。

ACアダプターは先日秋月から通販購入した24V 0.5A スイッチング電源。
つまみは部品箱に残っていたずーっと以前に購入した廃業してしまった三栄無線オリジナルのもの。
このケースにはちょっと大きすぎかな?
同じくTAKACHIのモバエル・ケースMX4-13-21BB 千石電商にて購入。
OI型の電源トランス KW-1203 (15.5V-0-15.5V  0.44A) パーツランドにて購入。デジットでも扱っているようですが現在品切れ。パーツランドでも箱無しの見本品のみだったのですが、やむを得ず購入。

AC100V仕様にするつもりですが、かなり苦しそう。トランスも高さ方向で上蓋と擦れています。
諦めた方が無難かも…。
TAKACHIのHEN110420S 千石電商にて購入
Shu Nakamuraさんの外観がとっても素敵で、このケースで作ってみたくて購入
こちらもAC100V仕様は無理かな?
完成までには時間がかかりそうなので、現行の基板を裸のまま使用する訳にもいかないので、とりあえずアルミ・シャーシに納めておこう ということで
LEAD のS-22 パーツランドにて購入。

帰りに梅田のヨドバシカメラへ寄りヘッドフォン売り場へ。高級機種はそれぞれメーカー毎に仕切った試聴コーナーがあります。
実は、2008/12/14 の項で「一部のハイ・インピーダンス低能率のヘッドフォンを除けは、家庭で音楽を鑑賞する目的にはゲインを持たせる必要を感じません。」と言ったものの、いろいろ調べてみると、特に欧州製の人気機種にハイ・インピーダンス低能率の開放型が多く、(俄ヘッドフォン・ファンの悲しさなるか…)けして 一部の と例外扱いできるものではないということを知りました。それでそのタイプに興味があったのですが…

AKG K701 音はまずます気に入りました。しかし装着感は頭頂部のパッドが違和感があります。 K601 装着感はK701より遥かにいいです。音はやはりK701に軍配が上がります。
SENNHEISER HD650 装着感はいいです。音は K701 のほうが好みかな。
Beyerdynamic DT990 Edition2005、DT880 Edition2005 と高価なものから順に聴いていったのですが、装着感は合格ですが、音はどれも「まぁ、こんなもんか」って感じでしたがDT990PRO 「おお、これは!」 誇張の無い自然な感じで気に入りました。
値段はといえば…¥22,500 「貯まっているポイントで買える…。いやいや待てよ、K701なんかは並行輸入のサウンドハウスで半額以下だぞ、ノー・マークだったBeyerを衝動買いして後でネットで調べて悔しい思いをするのもなぁ」と自ら言い聞かせヨドバシを後にして梅田駅へ。しかーし…やっぱり欲しくなってUターン!
帰宅して聴いた感想は、ヨドバシでの試聴とは幾分異なる印象を受けました。ネットで評価を調べてみると不人気機種なのかあまり多くはありません。「ドンシャリ」、「サ行が…」といった評価がちらほら。まぁなんとなくなく納得。とりあえず暫くはエージング、 Beyer といえばワグナーでしょう。

やはり インピーダンス250Ω、0dBアンプではボリュームの位置がMAX近くになります。記録レベルの低いCDではゲイン不足になるようです。ある程度ゲインを持たせたヘッドフォン・アンプ設計の必要を感じました。

ところで価格ですが、恐る恐る調べてみるとサウンドハウスで¥19,800  全然OKじゃないですか!


2009/02/14

疑わしいデータ

手前味噌ながらヘッドフォンでの音楽鑑賞もいいもののだと悦に浸っていたのも束の間、NS社LME49600を使用したヘッドフォンアンプの評価ボード・アプリケーション・ノートAN-1768を眺めていて愕然といたしまた。歪率の値が私の製作したヘッドフォン・アンプより一桁低いのです。私の使用した駆動用回路はOPA134でGB積8MHz、帰還率=1です。NS社の駆動アンプはLME49720でGB積55MHz、帰還率=1/3ですから、ゲイン交点周波数は18.3MHzとなり、共に-6dB/octで高域に向かって素直に落ちていくオープン・ループ特性ですからLME49600に施される帰還量は2.3倍ほど後者の方が多くなります。従ってNS社の評価ボードがその程度歪が低いことは予想していましたが一桁も違うとは! 基板パターンを中心にもう一度設計を見直しかな…と思っていました。しかし、どうもよくよく検証してみるとNS社のデータ−がおかしいようなのです。

おかしいと気付いたのはノイズ成分です。電源電圧±15Vj時の10kHzの THD+N vs Output Power FIGURE 15の32Ω負荷1mW時の値に着目しました。

FIGURE 15: THD+N vs Output Power
LME49720/LME49600 headphone amplifier
into (from top to bottom at 20mW): 16Ω, 32Ω, 64Ω, 300Ω
(VS = ±15V, f = 10kHz, 400Hz . BW . 80kHz)

THD+N は 0.00043% と読み取れます。この領域は右下がりの直線領域で、高調波歪ではなく残留雑音が支配する領域です。32Ω負荷 1mW時の電圧は 0.179V ですから残留雑音は 0.179V X 0.00043% = 0.77μV ということになります。雑音帯域密度 2.7nV/√Hz のLME49720 をゲイン3倍で使用して仮に帯域幅を可聴領域の 20kHz までとしても

2.7 X 10^-9 X 3 X √20000 = 1.15μV

の出力雑音電圧が生ずるはずですから、明らかに0.77μVという値は少なすぎると言わざるを得ません。実際には、帰還回路の熱雑音、DCサーボ回路の雑音、入力電流雑音の影響が加わり、さらに評価周波数帯域幅はもっと広いのですから。

ではAN-1768に掲載されたヘッドフォン・アンプ回路の出力雑音電圧がいくらになるか計算してみます。

まず帯域幅ですが、400Hzから80kHzとされています。しかし、10kHzの歪率測定ですから10kHz前後は基本波を除去するノッチ・フィルターにより減衰しているはずです。しかし2次高調波以上を拾うためには20kHzでは完全に回復している必要があることを考慮し、10kHzの前後約 0.7オクターブにあたる10kHzを差し引くことにします。使用した測定器は Audio Precision SystemUであると思われ、これに標準装備の内臓 80kHz LPF は3次のバタワースです。若干減衰特性の肩の影響を受けるでしょうが上限は80kHzとし、評価帯域幅は 70kHz と見積もります。(下限の400Hzはホワイトノイズの場合大きな影響が無いので無視します。)

次に信号源インピーダンスですが、非反転入力側は10kΩのVRが付いていますが最大で測定しているでしょうから無視して0Ωとします。(Audio Precision SystemUの発振器出力は最小50Ωが選択でき、実際にはこれを使用していると考えられます。)
反転入力側に接続されているインピーダンスはR1, R2, R3 の並列となりますから 333Ωで、この抵抗から生じる帯域雑音電圧は

enRINV = √(4kT X 333) = 2.35 nV/√Hz   (帰還回路の抵抗から生ずる熱雑音)
  k : ボルツマン定数 1.38065 X 10^-23、  T : 絶対温度 300

LME49720の入力電流ノイズは in = 1.6 pA/√Hz で、これが反転入力側の 333Ωに流入し

eni = 1.6 X 10^-12 X 333 = 0.53 nV/√Hz  (帰還回路に入力雑音電流が流れ込むことによって生ずる雑音)

の帯域雑音電圧源となります。

DCサーボ回路の雑音は、評価帯域において C1, C2 の容量が R4, R5 から生ずる雑音を十分吸収するため、LME49720 から生ずる帯域雑音電圧 2.7nV/√Hz のみと考えられます。このサーボ・アンプの雑音は R2 (1k) と R1//R3 (500Ω)で分圧され、1/3 の雑音源となって、主増幅器の反転入力側に加わります。

ensv = (1/3) X 2.7 X 10^-9 = 0.9 nV/√Hz  (サーボアンプの雑音が主増幅器の反転入力に加えられる雑音)

これらの雑音源が主増幅器 LM49720 の等価入力帯域雑音電圧

enma = 2.7 nV/√Hz  (主増幅器の持つ等価入力雑音)

に加わります。尚、出力バッファ LM49600 は帰還ループ内の最後尾に置かれていますから、ここから生ずる雑音は全く無視できます。

 以上、これら4つの雑音源は互いに独立した雑音源ですから、回路全体の等価入力帯域雑音は

enin = √(2.35^2 + 0.53^2 + 0.9^2 + 2.7^2) = 3.73 nV/√Hz (回路全体の等価入力雑音)

この帯域入力雑音源はノイズゲイン(=3) 倍され出力に現れます。これに評価帯域幅の平方根を乗じると出力雑音電圧が求まります。

出力雑音電圧 Vnout = 3.73 X 10^-9 X 3 X √70000 = 2.96 μV

この値は THD + N のグラフから読み取れる値 (0.77μV) の実に3倍以上です。

以下は全く私の想像でしか無いことをご承知置きください。

LM49600 のデータシートに FIGURE 3. THD+N Distortion Test Circuit という測定回路の図があります。この測定方法は、見かけのゲインは1倍で動作しますが、帰還率を 1/101 にして増幅回路の性能を評価するものです。ノイズゲインは101倍になるため実際の THD + N の測定値を 1/101 にして全帰還時の値として表します。そのため、測定器の残留ノイズ、残留歪 の影響をほとんど無視することができるというものです。この測定法には、帰還では改善されない同相成分歪も一緒に 1/101 に圧縮される、帯域が狭い増幅器では帰還率を下げることによって評価帯域の上端のレスポンスが落ちて、ノイズ・高調波歪とも有利な値になる可能性がある などの問題がありますが、LME49710 の帯域は十分広く同相成分の歪も小さいとして、ここではこの議論には触れないことにします。

AN-1768 に掲載のヘッドフォン・アンプ測定担当者が、この測定方法でこのデータを採ったのではないでしょうか?そして、このヘッドフォン・アンプの帰還率が 1/3 であることを考慮せずに、そのまま実測値を 1/101 にして、全帰還時相当の値のまま掲載してしまった−。
そう仮定すると、帰還回路やDCサーボ回路から生ずる雑音は一切反映されず、雑音電圧はLME49710 (またはLME49720)の等価入力雑音電圧に等しくなり 

2.7 (nV/√Hz) X √70 (kHz) = 0.714μV  

とグラフから読み取れる値に近くなります。80kHz LPF の等価帯域幅がもう少し広いとすると、ほとんど同一の値といって良いでしょう。そうすると、私の製作したヘッドフォン・アンプとは帰還量が約7倍違うこととなり、歪率の一桁の違いも納得できることになります。 値こそ違いますが両者の歪率の曲線はとても似通っています。

私もよく測定結果をホームページ上で掲載いたします。データ採りは単調な作業になりがちで漫然とデータを採っているとその値の妥当性も検証せずに発表し、後から「あれっ?」などということもよくあります。(気が付けばまだマシですが…)
今回は、「以って己の戒めとすべし」 ということでしょうか。


重い内容だったので最後はか〜るく、楽ちん出力コイル巻き

電気街やハンズ、ホームセンターで売っているアルミ丸棒を10cmくらいにカットし端に貫通穴をあける。
ウレタン線を穴に通し曲げて固定する。
可変速タイプの電動ドリルにアルミ丸棒をチャッキングして、やや巻き始め側にしっかりとテンションを掛けながら、ゆっくりとドリルを回転させる。

巻き終えたらウレタン線の穴に固定した部分を二ッパーでカットして、丸棒からはずす。

怪我をしないように十分注意してください。

結構楽しいので、巻き過ぎ、作り過ぎにも注意 (笑)



2009/02/02

ヘッドフォン・アンプの安定性

話が前後しましたが、0dB ヘッドフォンアンプのアンプ部のみの回路図を以下に示します。

通常のスピーカー同様逆起電力のあるダイナミック型ヘッドフォンは抵抗を介さず低インピーダンスで駆動したいのですが、ヘッドフォンケーブルは意外に容量が大きいものが多いようです。試作段階で出力に純容量を付加してた試してみたところ、案の定 数1000pFの容量で発振しました。そこで出力にzobelネットワークとL//Rによるアイソレータを追加いたしました。出力コイルは6φの円筒(VRの軸を利用しました)に0.5φのUEWを18.5ターン密に巻き、収縮チューブ(内径8φ)を被せ固定します。実測によるインダクタンスは約1.8μHです。

100kHz 4Vp-p の出力矩形波応答を以下に示します。測定は入力の C1=47pF を除去して行っております。

100kHz 4Vp-p 矩形波 無負荷出力波形  100kHz 4Vp-p 矩形波 32Ω負荷出力波形

20kHz 0.033μF 純容量負荷時の矩形波応答を以下に示します。同様にC1を除去し、観測点は出力コイルの内側(LM49600の出力)です。

20kHz 1Vp-p 矩形波 0.033μF容量負荷 20kHz 2Vp-p 矩形波 0.033μF容量負荷

1.2Vp-pを超えると立ち上がり立下り時にスパイク状のオーバーシュートが生じますが、出力段(LM49600)のスイッチング歪によるもので実使用上の安定度には問題ありません。2.2μFまでのいかなる容量に対しても十分に安定です。
(以上、いずれもBW端子VEEへ接続時の波形)

元来ヘッドフォンは苦手なほうで、持っているのは10年以上前に購入したものですがほとんど使用していません。5年ぶりくらいで鳴らしてみましたが、(このヘッドフォンアンプだからということではなく)通常のスピーカーからのリスニングでは気づかなかった演奏前の楽器を構える音や奏者の息遣いが聴き取れて、ヘッドフォンならではのオーディオ的快感が得られるようです。暫し聴きこんでしまいました。

先日サインを頂いてきたハーンのシベリウス/シェーンベルグのVnコンチェルト、レコード芸術誌の評論家によるレコードアカデミー賞は選者の一人、宇野功芳氏が推さなかったため選外となっていましたが今月発表の読者投票によるリーダース・チョイスではぶっちぎりの1位だったようです。


2009/01/29 (2009/02/01加筆修正)

プリアンプ基板からの派生 ヘッドフォン・アンプ基板

2008/12/14  "ちゃねらーへ贈る おまけ" でお約束したフローティング電源による0dBプリアンプにLME49600を付加したヘッドフォン・アンプの基板を作製いたしました。PCBEで作画したプリアンプ基板に「ちょちょいとLME49600を載せれば…」と軽く考えていたのですが、電源投入時の「ブツ」 というノイズが気になるのでリレーによる遅延回路を設け、安定度の面でzobelや出力コイルを加え、また基板を描き出すと手を抜けない性分も祟ってかなり時間を費やしてしまいました。

オレンジ色のリレーの両サイドにある白い収縮チューブを被せたものがアイソレーターの出力コイルです。主役?のLME49600がパターン側というのはちょっと寂しい気がしますが、こんな感じで縁の下でがんばっております。

写真に示したブリッジ・ランドは1番ピン(BW選択端子)をVEEに接続か非接続かを選択するものです。

非接続の場合(アイドリング電流少)のRL=32Ω時の歪率特性を以下に示します。


接続時(アイドリング電流大)の特性を以下に示します。


2009/01/10

トランジスタの準飽和効果(Quasi-Saturation Effect)

腑に落ちないまま年を越すわけにはいかないので、2SC3423/2SA1360の特性を実測してみました。以下の測定回路で簡易的にVce−Icカーブをトレースしてみました。

便宜上、NPNの実験回路とPNPの測定回路をひとつに纏めて描いていますが、測定は独立して行っています。
DUTトランジスタのベースにはDC15V電源より142kΩを介して約0.1mAのベース電流を流しておきます。
両波整流した波形を、電流検出用の10Ωを介して、DUTトランジスタのコレクタ・エミッタ間に印加して、コレクタ・エミッタ間の電圧および電流検出抵抗の両端電圧をそれぞれオシロ・スコープのX、Y に入力してリサジューを描きます。

2SC3423 左右反転→
元波形 X=Vce: 2V/div, Y=Ic: 5mA/div
2SA1360 上下反転→
元波形 X=Vce: -2V/div, Y=Ic: -5mA/div

オシロが独立入力(差動入力)なら良いのですが、私のオシロはGND共通のため左側のような波形になってしまいますので、データシートで見慣れた向きに画像修正したものを右側に掲載いたします。
データシートに掲載されているカーブと実測カーブは低電圧部分で様変わりしており、原点からほぼ垂直に立ち上がった(飽和領域)後、いったん斜めに立ち上がる領域を経て、ほぼ水平になる領域(活性領域)に至っています。この斜めに立ち上がる現象は準飽和効果(Quasi-Saturation Effect)と呼ばれ、実際のトランジスタのコレクタ端子電圧がベース電圧より高い状態であっても、半導体内部のコレクタ領域の抵抗成分にコレクタ電流が流れることによって電圧降下が生じ、半導体内部の実質的なコレクタ電圧が低下し、飽和領域に達した状態に準ずる振る舞いとなる現象です。

この領域では直流的には、hfeの低下、出力抵抗roの低下といった現象を生じますが、交流的にも ft の急激な低下を生じます。これは、活性領域ではコレクタ・ベース間接合は逆バイアス状態にあるため、接合容量(Cob)のみですが、準飽和領域では実質的なコレクタ・ベース間接合がが順バイアスとなることにより遷移容量が生じるためです。

話を元に戻して、2SC3423/2SA1360の特性を比較してみると、2SA1360 はほぼVceが-2Vで、準飽和領域を脱して活性領域になっています。一方、2SC3423はVceが4V近くまで準飽和効果を引き摺っているようです。2SC3423/2SA1360を使用した場合、出力波形の+側頂点での歪が、-側での歪よりも早く生じるのは、2SC3423/2SA1360 の準飽和領域の差によって生ずるものであることが判明いたしました。
すなわち、信号波形の+側先端で+側フローティング電源の2SC3423が準飽和領域に至り、+側フローティング電源が歪み、この歪がQ3のFET  D−G間容量を介して入力波形を歪ませているのが主な原因です。

HP上での報告は写真撮影を含めて年明けになりましたが、すっきりした状態で新年を迎えることが出来ました。
あけましておめでとうございます。

ということで、HP上の報告も終えて明日は久々、コンサートで生の音を堪能してきます。


2008/12/29

フローティング電源用Trの飽和

0バイアスFETバッファの追加によって負荷電流が増加しても低歪になりましたが、新たな問題が発生いたしました。前回のFETバッファ付きの歪率特性を見ていただければ判るのですが、出力電圧が3Vrmsを超えると歪が悪化しております。歪波形をモニターすると、3Vrmsを超えたあたりから出力波形の+側のみに歪波形が現れており、−側が歪み始めるのは4.8Vrmsと波形の正側負側で出力が歪み始める電圧に大きな差があります。

20kHz 3.5Vrms 出力が+の部分でのみ歪 20kHz 5Vrms 負側が歪み始める

そればかりか、無負荷時(歪率計のみ)の歪も正側が先に歪むことにより、無歪最大出力が低下しております。

電源電圧の正負の差、電圧シフト用のツェナー電圧の差など思い当たる部分を確認してみましたが異常はありません。「出力バッファの寄生発振?…」いやな予感が脳裏をかすめます。しかし、いろいろと確認してみましたがそれらしき確証がつかめません。そこでFET出力バッファをはずし、正負のフローティング電源間に分流抵抗を挿入し、出力バッファに流れている分の電流を正負のフローティング電源間に流してみたところ、同様に正側が負側に比べて先に歪みだすことが判明いたしました。どうやら、フローティング電源に使用した 2SC3423/2SA1360 の飽和特性の差によるものらしいのです。これらに流れる電流は、FETバッファの挿入により5.5mAから、16mAと増加しております。そこで電流定格の大きいトランジスタに変更いたしました。但し、電流定格の大きなトランジスタはCobもそれに従って大きくなり、過渡特性を悪化させるため注意が必要です。使用したのは 2SC3951/2SA1536(三洋)です。

上図のように出力電圧3Vから4.8V間で大きな改善がみられます。歪波形が現れる出力電圧も 正側 4.6Vrms、負側 4.8Vrms と問題の無いレベルになりました。結果オーライではありますが、2SC3423/2SA1360 のデータシートを見る限り、飽和特性が劣るのはむしろ負側フローティング電源の 2SA1360 のほうなのです。何故正側 2SC3423 が先に飽和するのか、腑に落ちない疑問が残ります。


2008/12/21

出力バッファの追加

前回のプリアンプの特性は歪率計の入力インピーダンス(約6kΩ)のみを負荷としたときの特性ですが、さらに重い負荷に対する特性を調べてみました。歪率計の入力にパラに RL=1kΩ を挿入し歪率を測定したものです。

クリップ・ポイントが6Vrms弱から5Vrms弱に低下しているのは、出力に直列挿入されているR12(220Ω)と負荷との分圧により、実際のオペアンプの出力より測定される出力電圧が低下することによるものですが、1Vを超えたあたりから歪の悪化が目立ちます。OPA134の無信号時電流は4mAほどですが、そのうち出力段に供されている電流は1mA程度で負荷電流が増加するとB級(AB級)動作となり、クロスオーバー歪が生じます。

 出力 3Vrms における歪波形と、その時の+側フローティング電源 Q5 (2SC3423) のコレクタ電流を観察するために R10(4.7Ω)両端にプローブをあてた(回路図参照)観測波形を示します。

20kHz 3Vrms 0.00112% R10両端波形 20mV/div (4.26mA/div相当)

Q5のコレクタ電流には、Q3に流れる電流(約1.75mA)と、OPA134の出力段以外に流れる電流が含まれるため、Q5の電流は0にはなりませんが、OP134の出力段は、カットオフしていることが判ります。

プリアンプの出力の負荷になるものはといえば、せいぜい数メートルのケーブルとパワーアンプの入力インピーダンス、低く目に見積もっても10kΩ程度でしょう。私のにせむらアンプは100kΩです。しかも、市販のパワーアンプは1Vの入力で最大出力が得られるように設計されており、私も概ねそれに従っております。それを、可聴帯域外となる20kHzの高調波(基本波も聞こえない…orz)をとらまえて云々するのもいかがなものか、と言われればおっしゃるとおりです。しかし、過剰スペックであることは承知の上で、簡単な回路で対策を打てるのならと出力バッファを挿入してみました。
様様な回路が考えられますが、部品点数が少なくシンプルなことを条件に、フローティング電源初段にも用いたJ-FET 2SK170/2SJ74 (BLランク)による0バイアス・コンプリメンタリ・バッファです。LME49600も脳裏をかすめますが大袈裟すぎる気がするので…。


FETバッファもフローティング電源に接続し、 DG間容量Crss、内部抵抗ro 等の影響を回避するとともに、FETの発熱を抑えています。


0バイアスコンプリメンタリFETバッファの有無による1kΩ負荷追加時の歪率特性、および3Vrms出力時の歪波形とR10両端電圧波形を示します。



20kHz 3Vrms 0.000267% R10両端波形 20mV/div (4.26mA/div相当)

ほぼノイズ成分のみの測定限界に迫る歪率となっとります。Q5のコレクタ電流はFETの追加によって増加し、FETバッファはA級動作していることが判ります。

以上は、基板作製前のユニバーサル基板での試作時に検証していた内容であり、今回作製した基板には、すでにこのFETバッファのパターンは用意されております。

下側のchはFETバッファ実装済み。上側のchはFET未実装で、GS間をジャンパしてバッファ無しの状態
尚、220Ωが2個ついているのは出力を2系統取り出すことに対応しているため

2008/12/14 (2008/12/19 加筆)

プリアンプ基板の試作

 タイトルを見て、LM4562の高性能に触発されて… と思われるかもしれませんが、かなり以前から構想を練っていたもので、暫くうっちゃっておいた基板パターンの作画をようやく終えて基板を作製したものです。


 プログラム・ソースの主流がアナログ・レコードからCDへと変わってから、プリアンプの役割は専ら音量の調整と入力の切り替え程度、それならばパワーアンプにその機能を持たせ、つまり1アンプ構成のプリメインとしてしまうのがシンプルで合理的でしょう。しかし、私をはじめアンプ造りを趣味としている者にとっては、製作のたびごとに多数のピンジャック、ロータリーSW、可変抵抗器等を調達し、煩雑なケースの加工、入力周りの配線等を強いられ、レイアウトにも神経を使うことになります。入力切替と音量調整の機能を持ち、可能な限り無色透明でプログラム・ソースの信号を相似形でパワーアンプへと伝えるシンプルなプリアンプが1台欲しいのです。

 もとネタはやはり黒田さんのラジオ技術1984年1月号の製作記事で、ユニティ・ゲインのオペアンプICを入力電圧でブート・ストラップした電源で動作させ、入力の同相成分にまつわる歪を激減させるとともに、動特性を飛躍的に改善させた 0dB バッファアンプです。

基板は電源トランスを繋げば動作するオールインワン構成としていますが、片chのアンプ部の回路を以下に示します。


黒田さんのオリジナルからの主な変更点はオペアンプをLF356HからOPA134としたことで、ノイズ性能が12nV/√Hz から8nV/√Hz と若干改善されます。
詳細は後日改めてとして、歪率特性のデータを以下に示します。

信号源インピーダンス(発振器のインピーダンス)は600Ω、負荷は歪率計の入力インピーダンス約 6kΩです。

上記データはあくまで信号源インピーダンス600Ω時のデータです。プリアンプの可変抵抗器の後にくるアンプとして実使用状態で重視すべきは信号原インピーダンスが上昇しても歪率が悪化しないこと。たとえば、50kΩの可変抵抗器を使用した場合、接続する音源機器のインピーダンスが十分低くても、最悪ポジション(-6dB)で増幅器から見た信号源抵抗は12.5kΩとなるわけです。以下に出力5Vrms時における信号源抵抗対歪率特性を示します。

点線は 2008/09/23 に掲載した通常バッファ回路におけるOPA2134のデータです。

Rs=10.3kΩ 1kHz 0.000119% Rs=10.3kΩ 20kHz 0.000558%

フローティング電源によって、20kHにおける歪率は実に1/100 (-40dB)近く改善しております。

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ちゃねらーへ贈る おまけ
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1ヶ月半ほど前、アクセス数が突然増加したことがあり、調べたところ 「2ちゃんねる」 の オペアンプ・スレッド に紹介リンクが張られたことによるようです。久しぶりに関連スレッドを含め拝見いたしましたが、ナイスなヘッドホン・アンプ も 低価格・中価格・高価格 と充実したラインナップです!
そこで、以下、御礼の意味を込めての ”おまけ” です。興味を持っていただけたら幸いです。

 最近はブログなどネット上でヘッドフォン・アンプの自作を良く見かけます。一昨日届いたラジオ技術にもTI社製TPA6120を使用した製作記事が掲載されています。秋月電子ではNSの広帯域バッファLME49600を販売しており、秋月としては高価ですが海外通販より手軽に購入できるようになりました。LME49600のデータシートにはLME49720 (LM4560) と組み合わせたゲイン3倍のDCサーボ付きヘッドフォン・アンプのアプリケーションが掲載されており、詳細なアプリケーション・ノートや評価ボードもあるようです。
 それでは、前述のフローティング電源を使用したOPA134にLME49600を組み合わせ、0dBヘッドフォン・アンプとしたならどうでしょう。携帯用プレーヤーは別として、置き型CDプレーヤーの出力電圧は通常 2Vrms です。一部のハイ・インピーダンス低能率のヘッドフォンを除けは、家庭で音楽を鑑賞する目的にはゲインを持たせる必要を感じません。それより、ヘッドフォン・アンプで気になるのはS/Nです。たとえ、2.7nV/√HzのLME49720を使用しても3倍ゲインを持たせると出力には8.1nV/√Hzの帯域ノイズが出力され、ゲイン1倍のOPA134と同等です。さらに入力のVRや帰還回路の信号源抵抗による熱雑音を考慮すると実使用でのS/Nは後者の方が有利です。それでは、LME49720でゲイン1倍とすればよいではないか…、そのとおりなのですが、果たしてGB積55MHzのLME49720にLME49600を附加して帰還率=1でヘッドフォン・アンプとして安定に動作するかという懸念があります。その点OPA134のGB積である8MHzまでならLME49600による位相回りは僅かです。

以下は前述した0dBプリアンプ基板試作の前のユニバーサル基板での予備実験段階で、ついでに行った試作回路と測定データです。

負荷の軽いLINE AMPならばLME49600ごとフローティング電源に接続しても良いのですが、32Ωの負荷ではフローティング電源回路が耐えないので、LME49600の電源は直接±15Vへ接続しています。

LM49600を使用したヘッドフォンアンプのアプリケーション・ノートには1kHzの歪率データが掲載されており優秀な特性なのですが、10kHzや20kHzのデータが掲載されておりません。

実験機にて1kHz、10kHz、の特性を取り終え20kHzの特性を取りはじめたところで、疑義が生じました。フローティング電源に接続したOPA134から発生する歪はほとんど無視できますから、出力の大きなところで発生する歪は、LME49600のクロスオーバー歪です。それならば、20kHzの歪は10kHzに対して帰還量が半減するため、ほぼ2倍の値になるはずなのですが、そうはならないのです。調べた結果 LME49600 の発熱による温度上昇によって、歪率が大きく変化していることが判りました。なにしろユニバーサル基板でのインスタント配線ですから放熱パッドもなくLME49600はほとんど裸の状態です。後日機会があれば放熱パッドを設けた基板を作製した上で再度データを採り直したいと思います。

ということで、やや信憑性に欠けるデータですが、採った1kHzと10kHzのみ、掲載いたします。(あくまでおまけですから)

1kHzの歪は優秀で アプリケーション・ノートのLME49720 + LME49600 による3倍アンプと遜色ない値が得られています。
尚、32Ω負荷時の2Vrms出力は125mW、500mWは4Vrms です。


2008/10/13

 JRCオペアンプ MUSES 出来損ない?

新日本無線より、ハイエンドオーディオ機器向け高音質オペアンプと銘打って、リードフレームを4N-OFC化した試作サンプル品のオペアンプが出ています。昨年のCEATECでは展示試聴会によるお披露目もあったようで、ネットで検索すると入手された方の音質レポートなどもいくつか出ているようです。私も知人を介して貴重なサンプル品を拝借し試験する機会を得ましたので以下に測定結果を示します。

測定回路は 2008/09/14 と同一で、ゲイン+10、帰還回路も含む負荷は約1.5kΩ です。

比較参考のため、多くのメーカーから支持を得てる同社がオリジナルであるバイポーラ入力オペアンプ NJM4580DD 
また前回と重複になりますが、
同様にJ-FET入力ということでTI(B.B)の OPA2604AP
そして前回取り上げた LM4562NA も掲載します。

1kHzの歪率特性

20kHzの歪率特性


20kHz 7Vrms における歪波形

MUSES 0.0365% NJM4580 0.0145%

同一回路における100kHz矩形波応答

MUSES NJM4580


次に信号源抵抗に対する5Vrms出力時の歪です。測定回路は 2008/09/23 の試験回路と同様です…と言いたいところですが、実は、信号源インピーダンスが600Ω〜1.3kΩ時、歪率計へ繋がるケーブルの容量性負荷によるものと思われる発振を生じて、歪率が異常に跳ね上がる特性を示したため、MUSESのみ出力直列抵抗(2008/09/23の回路図でR8)を47Ω→100Ωの変更を行って測定しております。

1kHzの信号源抵抗に対する歪率特性



20kHzの信号源抵抗に対する歪率特性


信号源抵抗Rs=10.3kΩ時の20kHz 5Vrmsの波形

MUSES 0.0617% NJM4580 0.0290%

サンプル価格 @\3000 のハイエンドオーディオ機器向け高音質オペアンプ    だそうです。
量産化は未定(無期限延期)らしいのですが、無いということでしょう。賢明な判断ですね。

2008/09/23

オペアンプの同相歪

前回に続きLM4562関連です。

 LM4562の内部回路は非公開ですが、これだけの特性を有しているのですから4558系の汎用OP-AMPとは異なり初段はNPN入力と思われます。ラテラルPNPトランジスタは相対的にベース領域が長いためベース・エミッタ間逆耐圧が大きく、これを初段差動増幅回路に用いた汎用OP-AMPの多くは、電源電圧いっぱいまでの差動入力電圧が許容されています。一方、ベース・エミッタ間逆耐電圧が低いNPN入力のOP-AMPの場合、ブレーク・ダウンを防止するために差動入力間に逆方向に抱き合わせたダイオードが挿入されているのが一般的です。そこで、出力を開放した左図の回路でその存在を確認してみました。入力は片側振幅3Vの正弦波です。
LM4562
(クランプはされているが…)
NE5532
(±約0.6Vでクランプされている)
NJM4580
(ラテラルPNP入力はクランプされていない)

予想通りLM4562の差動入力間にはダイオードが挿入されたような特性となっているようです。しかし、よく見るとNE5532とは異なりクランプしてからの動作抵抗が大きくしかも上下が非対称です。破損させてしまったのかとも思い未使用のものと交換してみましたが同様です。この理由はわかりませんが、初段回路自体が通常のNPN差動回路とは異なるのかもしれません。LM4562は入力バイアス電流が10nA(typ) 、65nA (max)とバイポーラ入力としてはきわめて小さな値になっています。ベース電流キャンセル回路が入っているのだろうと思っていますが、あるいはこのクランプ特性と無関係では無いのかもしれません。
 いずれにせよ、差動入力間ががこのようなダイオード・クランプ特性を示す以上、その両端電圧もしくは電流値には制限があるはずです。例えばNE5532は入力電流が±10mA以下に規定されており、AD797のデータシートにも差動入力間電圧が±0.7Vを超える場合は、保護ダイオードに流れる電流が±25mA以下に制限するよう注記があります。ところが、LM4562のデータシートにはこれらに関する記述がありません。メーカーには是非この点を明確にしていただきたいと思います。

さて、本題の信号源抵抗の変化に対する歪です。以下に試験回路を示します。
発振器の負荷開放出力電圧は10Vrmsで、試験回路の出力電圧は約5Vrmsで測定。

信号源抵抗 Rs は上から順に 300, 600, 1.3k, 2.5k, 5k, 10.3k, 27.3k となります。

AD797のみ Rf=100 Ω
NE5534のみ D-Gに 外部位相補償 Cc=22pF
を挿入しています。


注) OPA2134とOPA2604はほぼ同じ値で重なって見えています。

Rs=10.3kΩ時の20kHz 5Vrms出力の歪波形

LM4562 0.0057% NE5532 0.0031% NE5534 0.00378%
AD797 0.00179% NJM2114 0.0197% OP275 0.061%
OPA627 0.00169% OPA2134 0.0502% OPA2604 0.051%

初段がカスコード・ブートストラップされているOPA627がやはり優秀な特性を示します。それ以外のJ-FET入力OP-AMPは信号源インピーダンスによる同相成分歪は大きいようです。これは、なにもOP-AMP IC に限ったことではなく、ディスクリートで組んだ回路でも同様で、カスコード・ブートストラップなしでは、一般にバイポーラ入力が有利です。

NE5532、NE5534が優秀な特性を示しています。これは、初段差動NPNのベース - コレクタ間容量と、前述した入力保護ダイオード(実際にはダイオード接続されたトランジスタ)のコレクタ - サブストレート間容量 が、入力が印加されることによって一方の接合間電圧が増加して接合容量が減少すると、他方の接合間電圧が減少して接合容量が増加することを利用して、2次歪が打ち消されるようなコレクタ - サブストレート間容量になるように入力保護用ダイオード接続のトランジスタの接合面積を調整しているためです。(ラジオ技術 1993年11月号 p.70 黒田徹 実験トランジスタ・アンプ設計講座「オペアンプ5532の巧妙なひずみ打消し」参照)

AD797もNE5532にまして優秀です。歪波形も綺麗な3次歪が主成分ですから、同様の打ち消し方法がとられているものと推測します。尤もAD797はこのような信号源インピーダンスの高い回路に適したオペアンプではなく、信号源インピーダンスが十分に低い回路におけるアプリケーションでこそ、その抜群のノイズ特性を生かすことができます。

5532改良型を謳うNJM2114は、この点の対応はされていないようです。LM4562も特にこの点を意識した対策はされてはいないようですが、決して悪い特性ではありません。

ところで、NE5532の歪の値は良いのですが、歪波形が「3次が主成分」とは言いがたい波形となっております。以前、同様な測定を行ったときはもっと明白な3次歪波形であった記憶があるのですが…。「もしや…?」と思い他のメーカーの5532を測定してみたところ、やはりそうでした。メーカーによって相違があるようです。これまで測定に使用してきたのはTI製NE5532で、刻印が印刷によるものですから、かなり以前に製造されたものでしょう。レーザー刻印による比較的新しいTI製も含めて、手持ちのJRC、フェアチャイルド、シグネテクスの5532を比較測定してみました。


Rs=10.3kΩの20kHz 5Vrmsの波形

NE5532 (TI 旧) 0.0031% (再掲) NJM5532 (JRC) 0.0044% RC5532 (フェアチャイルド) 0.0026%
NE5532 (シグネテクス) 0.0019% NE5532 (TI 新) 0.0026% 左より TI(旧)、TI(新)、JRC、FC、SIGNE

JRC製はほぼ3次の歪が主成分といえますが、TI製よりも歪率の値が大きくなっています。さすがに元祖シグネはほぼ綺麗な3次成分で、値も小さいようです。
これまで5532とは長い付き合いですが、メーカーによる大きな性能の差異はほとんど無いと思っていました。しかし半導体接合容量による歪打消しというきわどいテクニックのせいか、信号源インピーダンスの大きな場合の同相信号によるこの歪は、メーカーによる差異があるようです。


2008/09/14

卓越した歪特性 LM4562

 1年ぶりの更新です。

 National Semiconductor よりLM4562がリリースされてから2年が経過いたしました。同社ではこれをLME49720という名称で、他にシングル、クワッド、高耐圧版とバリエーションを拡充してシリーズ化したものもリリースし、更には組み合わせての使用が推奨されているバッファアンプ LME49600等の関連ICもリリースされており、このシリーズに対する同社の意気込みが感じられます。
LM4562は国内でも比較的早期に半導体小売店で扱うようになりアマチュアでも容易に入手が可能となりました。私も興味はあったのですが、さしあたって実用途で使用したいという目的も無く、@\600強の出費に購入をためらっていました。否、それ以上に過去にB.Bよりリリースされた OPA2604、OPA2132 のデータシート・スペックに飛びつき、都度がっかりさせられたトラウマがあったからに他なりません。所詮総合的にみてNE5532を凌ぐことはできないのでは… そんな思いがあったのです。
 ところが、ご承知のように今春から秋月電子で@\250でLM4562が販売されるようになり、「これならばダメモトで」と早速購入し測定しでみたところ、驚きました。初段の同相成分に関する歪はやや劣るものの、NE5532を遥かに凌ぐ低ひずみ、それどころか手持ちの中ではこれまで最高であったAD797をも凌ぐ程です。
以下に測定回路と実測値特性を示します。

Roscは発振器(アッテネータ含)の出力インピーダンスで600Ω、R1の56ΩでシャントしているのでDUTからみた非反転入力の信号源インピーダンスは600//56 = 約51Ωとなる。

Rinは歪率計の入力インピーダンスで約6kΩ
帰還回路を含めてDUTからみた負荷インピーダンスは約1.5kΩとなる。

歪率計の評価帯域は 測定周波数の2倍 − 約100kHz で
20kHの場合 2次から5次の高調波ということになります。

AD797のみ E−G 間に CN=51pF 挿入による出力段歪打消し(ZDR)を行ったものも測定

1kHz 出力1Vrms では、いずれのOP-AMPも高調波歪より雑音が支配的で、OP-AMPの雑音特性の比較として参考になります。
LM4562はほぼノイズ成分のみで、最大出力付近で僅かに2次歪が確認できる程度です。
またLM4562とOPA2134は電源電圧利用率が良好で、9.5Vrms までクリップが認められませんでした。
1kHzではAD797のCNの有無による有意差はありません。

20kHz 7Vrms における歪波形

LM4562 0.00024%
NE5532 0.00233%
NE5534 0.00102%
NJM2114 0.00195%
OP275 0.0047%
OPA627 0.00247%
OPA2134 0.00665%
OPA2604 0.0167%

AD797の写真にカーソルをあてると、Cn=51pF (ZDR有り)の波形になります。

20kHzではLM4562とAD797の性能が際立っていてノイズ (そのノイズも少なく優秀ですが)に埋もれかけている程度の残留歪です。低いレベルでは雑音特性に勝るAD797がLM4562より優位になっていますが、高調波歪成分のみ比較すると素のAD797を凌ぎます。
1kHzでは優秀だったJ-FET入力のOPA627も20kHzではNE5532に劣ります。

さらに負荷を重くして20kHzの歪率を測定してみました。

R5=1kΩを追加 帰還回路を含めてDUTからみた負荷インピーダンスは約600Ωとなる。
更にR6=1.2kΩ を追加 帰還回路を含めてDUTからみた負荷インピーダンスは約400Ωとなる。
   実際にLM4562を使用してみた印象は、GBP=55MHz(typ)の割にはユニティ・ゲインで使用してもなかなか安定しています。同様に安定しているNE5532のGBPはおよそ30MHzですが、フィード・フォワードを使用した軽い2ポール位相補償になっているため、Unity-gain Bandwithはおよそ10MHzになっています。(左図参照、より詳細な解説は 黒田徹著「解析OPアンプとトランジスタ活用」 P163)

それでは、LM4562のオープンループ特性はどうなっているのでしょう?夥しい量の歪率データが掲載されているLM4562のデータシートですが、オープン・ループのゲイン・位相特性は掲載されていません。低歪とユニティ・ゲインでの安定性を両立するため、NE5532と同様なオープンループ特性となっているのではないか?と思い矩形波応答を観測してみました。一般に2ポール位相補償の場合、仕上がりf特の高域端にピークを生じ、矩形波応答にオーバーシュートが生じます。例えばNE5532の場合、概ね仕上がりゲイン+100倍以下で使用すると、この現象が見られます。

観測回路は信号源が100kHzの矩形波となっていること、および歪率計(6kΩ)が10MΩのプローブになっているのみの相違で最初の歪率測定回路と同じGAIN=+10です。
測定の目的は線形領域での時間軸応答ですから、スルーレートを脅かすような大振幅動作での観測は不適当で、出力は約200mVP-Pとしております。
横軸 2μsec/div, 縦軸 100mV/divです。
NE5532のオープン・ループ特性
(RC5532のデータシートより抜粋。 尚、 AV=40dB の記載は誤りと思われる。)

LM4562
NE5532
NJM2114

私の予想は見事にはずれて、LM4562は綺麗な応答特性を示しました。ドミナント・ポールが全域に亙って支配する、素直な-6dB/octのスロープを持つオープン・ループ特性のようです。もちろんユニティ・ゲイン周波数となる55MHz付近では終段等の位相回転が付加されるでしょうが、極めて使いやすい特性といえます。
NE5532の改良型と称するNJM2114は、NE5532よりオーバー・シュートが増大しており、より深い2ポール補償になっているのではないかと思われます。

参考までに他のOP-AMPの波形ととデータ・シートからのオープンループ特性を示します。

AD797
OPA2604
OPA2134
OPA627
OP275
NE5534

余談ですが、誤解の無いように申し添えておきますと、矩形波応答にオーバーシュートがあれば周波数特性に必ずピークがあるというわけではありません。例えばよく知られたバタワース・LPFは別名 最大平坦型LPF と呼ばれ、その名の通り周波数特性にはピークはありません。しかし2次以上のこのフィルターの矩形波応答にはオーバーシュートがあります。

次回は、LM4562を中心に、ユニティ・ゲイン回路での歪率の信号源インピーダンスの影響を掲載予定

2007/08/05

TLB TypeV

前回は、従属電流源回路をなくしフローティング電源のみで構成する方法でしたが、逆にフローティング電源をなくし、従属電源のみで構成する方法です。愚直に実回路を構成しようとすると、従属電流源とカレントミラー・ミラー(これも従属電流源ですが…)だらけの回路になりそうですが、以下の回路で上下にミラーをひとつずつ追加することでTLB TypeV回路が構成できます。


前回の回路に比較して、出力段のエミッタ抵抗がなくなっているため、電流の立ち上がり部分の非対称性が改善されています。



しかし、歪成分は839μV、歪率 0.00542% と若干増加しております。


 2007/07/31 の回路、 R16〜R19 を220Ω→470Ωに変更しました。これにより歪率はほぼ倍増しております。


2007/07/31 (2007/08/05 : R16〜R19 を220Ω→470Ωに変更して解析結果も更新しました。)

TLB TypeW- 従属電流源 + 対数変換回路

TLB 回路で、従属電流源とダイオード接続されたトランジスタの回路は、出力段に流れる電流を対数圧縮して電圧に変換する回路です。ならば、対数変換回路を使用すれば従属電流源は不要になり、追加する電源はフローティング電源のみに纏められそうです。


OPアンプ X1 〜 X4 は前回(07/07/30)と同じ

黒田さんのTLB TypeWとは、従属電流源とダイオードによって生成する電圧と、反転増幅回路によって生成する電圧は、反映される電流の出力トランジスタが逆になりますが、相加平均すると同じですから同様に動作します。


歪成分は 674μV で、歪率は0.00435% です。

これにより、従属電流源部分の回路は一掃され、代役を担う X1、X2 は入出力レイル・ツー・レールの要求からも開放されます。
反面、X1、X2の出力電流は大きなもの(この回路の定数の場合50mA以上)が必要で、また、出力段のエミッタ側に抵抗を挿入しなければならないというデメリットも生じます。
これを回避し、エミッタに挿入する抵抗を小さくするためには、対数変換回路の比を大きく取ればよいのですが、アイドリング電流を決定する定電流源 I1、I2 の電流値を小さくする必要があり、スルー・レートなどを考慮すると 出力段の 3段ダーリントン化等を検討しなければなりません。


2007/07/30

TLB TypeT + ZDR

ラジオ技術の黒田さんのTLB TypeU〜TypeW 回路の解説を読んでいてふと思ったのが、結果として、Vin = Vout が成立するならば ZDR と同様で、ならば TLB TypeT の回路に ZDR を追加して Vin = Vout が成立するように制御してやれば、TLB TypeU〜TypeW と同様な動作になるのでは? と思ったのが次の回路です。


実際にシミュレーションすると、発振を抑えるのが大変そうです。とりあえず下の回路で動作いたしました。 X1はParameterised Opamp で、OPA134 相当を想定しています。(左下 デバイスパラメーター設定BOX 参照) R2、C3 はZDR を安定に動作させるための位相補償です。

20kHz、8Ω負荷 30W アイドリング電流≒200mA でシミュレーションした結果です。カット・オフはしていません。


歪率を求めてみると、出力 15.5V、歪成分 468μV で歪率は 約 0.003% です。


*歪成分(緑色)は1000倍に拡大しています。

ZDR の位相補償 C3 の値を小さくすると歪率は減少しますが、33pF まで下げると発振します。そこで、馬鹿の一つ覚え 2pool 位相補償をZDRに施してシミュレーションしてみました。

歪成分は 204μV に減少し 歪率は 0.00132% です。