- BGMのファンクを遮るように客電が消えた。バチッと。 自慢じゃないけれども、そこまでの展開は予想していたんだ。そこまでは、ね。 と、ステージからは唐突にドラムソロ。薄暗いライトに照らし出されたドラマーは…、プリンス本人だった。これには度肝を抜かれた。予想できっこない展開。 最後のスネアロールでステージは暗転。(その間に専任のドラマーと入れ替わっているのが闇の中で見えていた) ジャジーなインストルメンタル。クール! カッチョイーっ、とシビれていたらサックスの音が。っつか、サックスプレイヤーなんてステージにいねぇじゃん。そしたら、ステージ下から階段で上がってきたよ、サックスプレイヤー。後姿で「もしや…」、横顔を見た瞬間に僕は叫んでしまった。「メイシオだーっ!」
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- 6年ぶりのプリンス公演。いや、6年前は「プリンス」ではなかったわけだが。 面子はドラム、ベース、キーボードの3名にプリンスのギターやキーボードを加えた4ピースが基本形で、楽曲によってホーンズ(サックスとトロンボーン)が加わる。コーラスはベースの女性プレイヤーが時折担当する程度。つまり、極端にシェイプアップされたサウンド。 プリンスはギターを弾きまくっていた印象があるなぁ。テレキャスターを抱えている時間が長かった。(勿論、変形ギターも登場したけれど) ショーの主役以外にギタリスト、サウンドの核としてのプリンスの自覚がビンビンと伝わってきた。
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- プリンスがライブでノッているかどうかのバロメーターは開催地の名称を叫ぶ回数に比例する、と僕は思っている。今回は「TOKIO!」を連発。プリンスも気持ちよさそうだったし、上機嫌だった。(ところで、「HAMAMATSU!」は語呂が悪いと思うのだけれど、大丈夫だったかな? あ、「YOKOHAMA!」と同じか…)
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- 往年のヒット曲を連発していた過去のライヴとは印象が違う。『パープルレイン』は初期段階で呆気なく登場。しかも、イントロはキーボード。例によって長〜いギターソロ時のバックコーラスは客に歌わせ、ステージ上では誰一人歌わない。この姿勢自体はクール。しかし、「もっと、歌いたいかい?」と問いかけ、2度もエンディングを延長。このコミュニケートはホット。中盤のシャウトなんぞは、過去に聴いた同曲のバージョン中、最高にカッコよくって激しかったな。
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- つまり、プリンスのライヴは確実に以前とは違うフェーズにあった。今回のライヴと比較してしまえば、以前のライヴはサービスが過剰だったように思える。最高の食材を使っているくせに、客の舌を気遣ってソースを甘い味付けにしていた、と言うか…。盛り付けや食器に必要以上に懲りすぎていた、と言うか…。 今回は食材の美味さをダイレクトに盛ったメニューだったな。『テイク・ミー・ウィズ・ユー』のイントロで申し訳程度に鳴っていたシンセを聴いた時に、この楽曲のファンキーな本質がようやく見えたような気がした。良質な食材は塩だけで喰うのが美味い、ってか。 ただし、メニューが変った分だけ、敷居の高さも絶妙に変ったような気もした。いや、「一見サンお断り」という排他的な印象ではなく。 受動的な態度の人には、「本日のお薦め料理」は出せません、ってな感じ。それは、つまり、ファンクに乗って来れるかい?って意味で。 かなり優遇され、出番満載のメイシオ・パーカーの参加に顕著なファンクへのシフトは、プリンスの「ネクストフェーズ」だと思う。 なんで、これまでファンクにシフトしなかったんだよ?と単純に僕は思うけれども、プリンスには「やるべきこと」が多過ぎたんだもん、仕方ないやね。言い換えれば、プリンスはファンクの娯楽性を肯定的に受け入れた(=実験性を薄めた)ということだ。
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- 以前のプリンスはレストランのスタッフに例えるならば、オーナーであり、マネージャーであり、広告塔であったと思う。しかし、今回の役割はオーナー、マネージャー、広告塔に加え、板前(っつかシェフ)でもあったと思う。嬉々としてギターを弾く姿に職人的なこだわりや熱意を感じた。専任のギタリストを参加させずに、自身のギターで押し通した。全体を通して、歌っている時間が短かったような気もする。 いいんだよ、それで。 今回はヒット曲を綺麗な飾りつけで振舞う大衆レストランではなく、吟味された食材をシンプルに食べてもらう「ファンク・オリエンテッド」な専門店だったんだから。そして、ファンクをより大衆化させることが、今のプリンスの歴史的な責務だろう。 専門店の味を継続したまま大衆レストランを展開して欲しい。
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- 実を言えば、6年前の「非プリンス」のライヴを見て僕はプリンスに失望していた。ニュー・パワー・ジェネレイションの初期公演の感激は僕の中で封印されていた。しかし、今回のライヴは、あれを上回る素敵なライヴだったな。 それって、僕がやっと食材の美味さを味わえるようになったってことなのかもね。
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