My Clavichord
"King of Sweden"
クラヴィコードの紹介&製作記

 My Clavichordの紹介&製作記です。

 クラヴィコードとは、16〜18世紀にかけ、ヨーロッパにおいて教育用・練習用など私的な空間で演奏された鍵盤楽器。J.S.バッハが家庭で愉しむ楽器として愛用していたこと、またC.Ph.E.バッハがその表現力、教育用の楽器として高く評価していたことはよく知られている。

 同時代のチェンバロが弦をはじいて発音する(發弦楽器)のに対し、クラヴィコードはタンジェントと呼ばれる金属片を突き上げて弦を振動(打弦楽器)させる。一方、弦を打つと同時にハンマーがエスケープするピアノとも異なり、クラヴィコードは鍵を押している間タンジェントは弦に触れ続け、この間、タンジェントからブリッジまでの間の弦が振動したまま発音を継続する。

 このことから、チェンバロと異なり限られた範囲ではあるが音量の変化をつけることができ、陰影のある演奏が可能ではある。ただ音量は微弱であり、広い会場ではそのニュアンスを聴き取ることはできず、家庭用の楽器として甘んじている所以でもある。

 製作した楽器は共有弦式と言われるもので、前身ともいうべきモノコードのように、一つの弦で複数の音高が割り当てられている(ダブルフレッティッド)。後期において一般的となる専有弦方式(アンフレッティッド)に比べ、軽量で小型が特徴であるが、その中でもこの楽器は小型の楽器と言える。

 単純な機構だけに演奏は違った意味でデリケートで、弦の振動が指先に伝わり、より直接的に奏者との対話が可能であり、その味わい深い響きは愛すべきものである。

クラヴィコード1
クラヴィコード2
 屋根蓋を閉じて。
外装はオイルフィニッシュ(亜麻仁油、5回塗)。
 スタンドは同じチェリー材を使いオリジナル。
クラヴィコード3
クラヴィコード4
 正面。
顔となる部分であり、ネームボードのネームには金箔、鍵盤蓋には房飾りを。
 ネームボードには金箔のほか木象嵌によるラインも見える。

楽器プロフィール
キット製品 製造:ズッカーマン・ハープシコード・インターナショナル(アメリカ)、 販売:日本総代理店(有)コースタルトレーディング
モデル "King of Sweden" キング・オブ・スウェーデン モデルIII.2 ダブルフレティッド(共有弦) クラヴィコード。
サイズ/重量 最大長 99cm / 奥行き 29cm / 高さ 10cm 約12Kg(除くスタンド)
音域/配列 45鍵, C/E-c''' ショート・オクターブ
28コース/56本(複弦) 真鍮弦(Brass string) / φ0.012〜φ0.022
基準ピッチ A=440Hzが望ましい
躯体 側板:チェリー / 響板:スプルース 外装:オイルフィニッシュ5回塗り仕上げ
鍵盤部 ナチュラルキー:メープル / シャープキー:チェリー
製作時期 2010年8月〜12月

音色が聴けます
The Fall of the Leafe ♪ The Fall of the Leafe
〜 Fitzwilliam Virginal Book 〜
Martin Peerson (Between 1571 and 1573 〜 1650 or 1651/England)

製作記
2010.08.02 開封、部品チェック。
加工の難しいキーは切出し済み。
マニュアル読み込み。
2010.08.27 ドライラン。部品を配置し完成をイメージする。
●ケース組立て
2010.08.28 最初の接着。レストプランクを側板に。
ヒッチピンブロック及び外枠の接着。
箱作りであり、直角に細心の注意を。
底板は平面を得るため置いたもので、まだ接着していない。
ケースの外縁に沿って、底板にネジ穴加工。
底板は弦の張力に耐えるため斜めに木目が走っている。
2010.08.29 次の日、底板の接着。
バックレールの接着。
前ライナー、後ライナーの接着。
接着前に高音側響板振動面を広くするため後ろライナーに丸く面取りを施す(低音側はすでに丸く切り欠いてある)。
2010.09.02 ひたすら接着が続きます、バランスレール(鍵盤を載せる部材)の接着。
チーク(頬板)の接着。
ガイドラック(鍵盤奥にあって、鍵盤の上下の動きを規定する部材)の接着。
響板を載せるベリーレール、チークライナーの接着。
2010.09.03 ヒッチピン穴の位置決め、実寸図に合せキリで印をつける。
同上、鍵盤奥側のヒッチピンレール。
ヒッチピンレール(弦を引っ掛ける部材)の接着。
ケース組立て完了。
●響板張り込み
2010.09.03 ブリッジ・ピン位置決め、実寸図に合せキリで印をつける。
2010.09.04 ブリッジの響板への接着。
響板裏面、リブ(響棒)補強。
ブリッジピン打ち込み後、響板張り込み。
2010.09.05 チューニングピン穴あけ。
響板モールディング(化粧材)接着。
響板張り込み完了。
●ケース仕上げ
2010.09.05 ヒッチピン穴あけ。
2010.09.11 響板塗装。
キットに付属のシェラックを使う。
底板モールデング(化粧材)取り付け。
フォールボード(鍵盤蓋)用蝶番取り付け材加工。
鍵盤バランスピン打ち込み。
高さを揃えるため治具を使う。
●キー(鍵)加工及び調整
2010.09.12 キーはすでに切り出した状態で提供されている。
2010.09.18 先端にサムネール(薄板)の取り付け。
鍵盤奥のガイドラックに差し込まれる。
2010.09.19 鍵盤調整。
バランスピン穴、サムネールとも最初はきついので、はめ込んで、ある程度動くように調整する。
2010.09.20 半音キーの接着。
2010.09.23 キーレバーの飾り彫り(屋根飾り)。
2010.09.25 キーレバーの飾り彫り(屋根飾り)完了。
2010.09.26 キー塗装(シェラック塗装)。
●ケース塗装
2010.09.21 ネームボード、道具箱蓋、ファールボード塗装。
オイルフィニッシュ1回目
2010.09.23 屋根蓋サンダー掛け後、塗装。
ケース内側塗装。
ケース外側塗装。
2010.10.23 屋根蓋組立て及び塗装。
2010.11.03 最終回の塗装。
9月下旬から塗り始め、乾燥を繰り返し5回目の塗装です。
●スタンドの製作
2010.10.16 塗装が乾く間、作業がないので同じチェリー材を取り寄せオリジナルのスタンドを製作することに。
木材のカット販売を取り扱う府中家具工業協同組合さんから取り寄せました。
長さに合せ部材切り出し。
部材ホゾ穴加工。
2010.10.24 部材加工完了。
スタンド組立て。
解体・移動を考慮し横方向はボルト着脱。
あとは本体に合せ、オイルフィニッシュ塗装を行う。
●弦張り、タンジェント打ち込み、キーバランス調整
2010.09.26 タンジェント調整
上端のヤスリがけ。
2010.11.13 ヒッチピンの打ち込み。
乾燥が終わり本体作業の再開
2010.11.20 弦張り、タンジェント打ち込み開始。
弦巻器を使い弦ループ巻。
チューニングピン打ち込み、巻き取り。
タンジェント打ち込み。
2010.11.23 弦張りとタンジェント打ち込みの並行作業完了。
2010.12.04 キーバランス調整。
キー手前裏の穴あけ。
キーバランス調整。
キー手前の裏側切削及び、先端に鉛錘を埋め込む。
2010.12.05 キーバランス調整。
1円玉(1g/個)を載せバランスを確認する。
●リスティングクロス編み、音律調整
2010.12.05 リスティングクロス編み込み。
リスティングクロスの主たる役割は、@打鍵時、尻尾側の不要な振動を抑えるA離鍵時の消音であるが、タッチの固さや音色にも影響があり、編み直しによる試行錯誤が必要。
編み込み完了。
チューニングピン側も編み込み、屋根蓋取り付け。
2010.12.07 調律。
各音2コース弦があるので、ピアノと同じように消音ウェッジが必要。ピアノ用ゴムウェッジを小さく切って使用。
タンジェントを傾け、音律をキルンベルガー第3に調整。
共有弦クラヴィコードなので、タンジェントの間隔を調整(傾ける)することにより音律を決める。それにしても、こんなに傾けなければいけないとは想定外。
●化粧いろいろ
2010.09.06 特にマニュアルにはありませんが、世界に1台の楽器としてのオリジナル化粧を施しました。
道具箱蓋の装飾加工。
手元にあったギター用パーフリングを埋め込むことに。
装飾の終わった道具箱蓋を置いてみる。
ネームボードの装飾加工。
正面が寂しいので、これもギター用パーフリングを埋め込みました(有り合せだったので、長さが少し足りない。
2010.10.13 道具箱蓋ノブ取り付け。
ノーザンライツさんから『真鍮古色仕上げノブ』を取り寄せました。
2010.10.03 道具箱内張りクロスの切り出し。
2010.11.13 道具箱内張り。
2010.11.14 譜面台受けクロス張り。
フォールボード(鍵盤蓋)タッセル(房飾り)取り付け。
アンティーク家具展示会で見つけたタッセル。
フォールボード(鍵盤蓋)裏側、ヒスイのタッセル留め具。
実は奥様の小銭入れストラップをもらいました。
2010.09.26 ネームボード装飾用のマスキングシートの作成。
2010.12.11 ネームボード装飾用金箔。
金沢のカタニさんから金箔貼りセットを取り寄せました。
ネームボード金箔
仕上がりはいまいち(苦笑)です。

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