玄関口で抱き合ったまま、ねろねろと舌を絡め合う。「おかえりなさい」の挨拶とは程遠い、、、そう、まるで濃厚な前戯、快楽をむさぼるのが目的の様なディープキス。帰宅早々イキナリこれだ。フム、悪くない。身長の差がかなりあるのであいつは背伸び、こっちはかなり身をかがめてのキス。うっとりと目を閉じているあいつの顔は、風呂上がりのように軽く赤らみ、なんだか色っぽい。

 「ん、、、、んふっ、んふふうっ、、、ふふん、、、くむうっ」

 お互い興奮してきたのか、鼻息が荒くなってきた。息が苦しいせいもあるが。うっ、ヤバイぞ、反応して膨らんできやがった。双方名残惜しげに唇を離すと、つうっ、と唾液が細く長い糸を引く。

 「あは、なんか変。蜘蛛の糸みたい」

 あいつがちょっとテレたように笑って見せ、その拍子にその蜘蛛の糸はぷつりと切れてしまう。さらば、カンダタ。

 「ただいま」

 と、もう一度言ってみた。上京して一人で暮らし始めて、四捨五入すりゃもう十年。そうか、ただいまを口に出して言ったのも、約十年ぶりか? (かなり大雑把だが)なんだかちょっとコソバユイ感じがしてならない。が反面、なにやら妙にうれしくもある。「誰かが待ってくれている家」ってのも、そう悪いモノではないのかも知れん。

 スーツを脱いでハンガーに掛け、ラフな格好に着替える。さて、あいつ一体何買ってきたのかな?

 「で? 昼は何食ったの?」

 この辺から聞く事にする。キョーミあるし。

 「お昼はね、駅前のラーメン屋で豚骨ラーメン食べたよ。あそこのお店、麺が極細でスッゴクおいしかった。」

 「みのり屋だろ? あそこはうまいんだ。なんだ、明日あたり連れてってやろうと思ってたのに。」

 「ほんと? じゃ連れてってよ、あたし明日も食べたい。一緒行こ」

 「ほかにもウマイの食わす店けっこうあるよ。この辺いい店多いんだ。ま、見つけるまで苦労したけど。とんでもないハズレの店もあるんだぜ。ひっでぇの。」

 「いいお店って何のお店?」

 「まずとんかつの「桜島」だな、鹿児島の黒豚がどーの、ラード100%で揚げてるだの、能書き多いけど確かに味はいい。ソースもうまい。それから焼き肉の「寿柔園」カルビもいいが、ここはハラミがうまい。タレはちょっと甘目だけど、辛いの好きならニンニクやコチュジャンたっぷり漬けるといい。キムチも一級品だ。回転寿司なら「寛永寿司」だな。全品130円均一で、ネタもデカイ。いつも混んでるから昼時は避けたほうが無難だな。お好み焼きの「鉄板娘」、広島風のヤキソバ入りがオススメだな。エビ、ブタ、イカ入りのミックスが基本。あとここの特製マヨネーズはイケるぞ。あと、うどんだったら「手打ちのテッちゃん」、関西風のダシ汁がうまいんだぁ、一味トウガラシをチョチョッと入れてな。きつねうどんもいいが、天ぷらうどんの海老天がまたデカイんだ。中華だったら「白龍軒」だろうな。焼き餃子がうまくてねぇ。ビールと合うんだなぁ、コレが。ま、うまい分どこもちょっと高いけどね。その価値はあるよ」

 一気に語ってやると、あいつは目を真ん丸くしてコッチを見ている。少々あきれてもいるようだ。ほっとけ。

 「、、、すごぉーい。いっぱいあるんだ、、、あーん、聞いてるだけでお腹すいてきちゃったよお」

 「引っ越すとき、食い物屋で決めたもんな、ここの場所とアパート。前住んでた所、ヒドクてねぇ。、、、で。今日の晩飯にナニ買ってきてくれたのかなぁ?」

 「えっとね、スーパーで牛肉の特売やってたから、すき焼きにしようと思って、いろいろ買ってきたよ」

 そう言うと、台所からスーパーのビニール袋を持ってきてその中身を取り出し、ちゃぶ台の上に並べはじめた。鍋か。悪くないな。こればっかしは相手がいないとつまらんからな。たまに一人で作って一人で食うが、やはりちょっと物足りない。

 「お肉は大きなパック2つ、冷蔵庫の中だから、、、えっと、玉子でしょ、焼き豆腐、結び糸こんにゃく、長ねぎ、しいたけ、えのき、白菜、春菊、割り下、それからこれ乾燥きくらげの黒。これ大好きなんだ。すき焼きに入れても美味しいよ。あとビールも買っといた。エビスの瓶を四本。これも冷蔵庫で冷やしてある。コーラもあるよ、ペプシの1、5リットル。お菓子やスナックもいろいろ買っちゃった。重かったよお、帰り」

 「たしかに重かっただろうな、、、いや、ご苦労さま。で、ほかには何か買った?」

 「ウン。下着の替えを二枚、後で見せたげるね。それとダイジョブだとは思うけど、念のために、タンポン。こないだ来たばっかだけど、たまーに狂う時あるから、あたしの場合。これで全部」

 ジーンズのポケットから折りたたんだ札や小銭をとりだすと、レシートごとこちらに差し出した。

 「これ、お釣。たしかめて」

 「そんだけでいいの? ほかに欲しいモンとかなかったの?」

 「ないよー、、、そうねぇ、強いて言えば、もっとおっきなおっぱいが欲しいでーす」

 なんだよ、そりゃ? そー言う意味で聞いたんじゃないんだけど。化粧品とかいるんじゃないかと思ってたんだが。

 「、、、でかけりゃいいってもんでもない、と思うけどな」

 「でも、おっぱいおっきいと色んなことして遊べるよ。ぱふぱふとか、はさんできゅっきゅっ、とか。してみたいでしょ?」

 「そりゃあ、まあ、、、、って、そうじゃなくてさ、化粧品とか要るんじゃないかと思って、ほら、乳液とか、ローションとか、ヘアスプレーとかさ、、、口紅なんかも要るんじゃないの?」

 「あ、そーゆーのは要んない。使ってないから」

 「そうなん?」

 たしかに、こいつってまるで化粧っ気ないもんな。でも肌とかつやつやだし、変に色んな物、塗ったくる必要ないよな。それに、こいつって、口紅とか似合わないんじゃないかな? そんな気がする。

 「で、どーするぅ? すぐごはんにしちゃう? それとも先にお風呂に入る?」

 「風呂、沸いてんの?」

 「ウン。すぐ入れるよぉ。背中、ダイジョブ? まだシミるかな?」

 「うーん、ま、平気だろ。じゃ風呂にすっかな」

 「一緒に入ったげようか?」

 、、、、、このミリョク的な提案にちょっとの間迷ったが、その御厚意に甘えるとまず間違いなくヨカラヌ事をしちゃいそうだし、そうするとまた背中の傷口が開いちまうだろう。パックリと。

 「、、、いや、いい。一人で入るよ」

 「あらあ、ざーんねん。石鹸たぁっぷり使って、ソープランドごっことかしてあげよっかなあ、って思ってたのにぃ。おっぱいとかぁ、ふとももでぇ、いろぉんなトコぬるぬるぬるぅぅって、すうっごく気持ちいいコトしてあげよっかなぁって。ふふ」

 口元をキュッと歪め、挑発するような笑みを浮かべたあいつが、上目遣いでこっちを見ている。誘ってやがる。、、どう? したいでしょ? 気持ちのいいコト。いいのよ、無理しなくても。あたしだってしたいんだから、遠慮なんかしなくていいのに。ね。だから、一緒にオフロはいろうよお。楽しいコトいっぱいしようよお、、、、、、そう言ってやがる。あの顔、あの表情、あの、、、どう言えばいいのか、、、そう、「淫蕩」だ、、、、淫蕩な表情はそう言っている。

 「、、、じゃ、先入るから」

 その甘美なる誘惑に、耐え切れそうにない。またしても下半身が反応しかけてる。この節操無し! あわてて立ち上がり、そそくさと風呂場へ急ぐ。あいつの前から逃げ出すみたいに。

 「気が変わったら呼んでねーぇ」

 あくまで陽気な、はっきり言うとちょっと小馬鹿にしたような声が背中に投げつけられる。洗面所で服を脱ぎながら、ふうっ、と深くため息をつく。、、、、せっかくああ言ってくれてるんだから、素直にご好意に甘えりゃいいじゃないか。きっとすごく気持ち良くって楽しいだろうに、、、、たしかにそうだ。白い泡まみれのあいつが、オレの体の上で淫らにうねくる。あの細くてしなやかな体をこすり付けてくる。想像しただけでたまらなくなる。、、、じゃ何故断る? 、、、、それは、、、、多分、恐いからだ。、、、これ以上あいつを抱くと、、、オレはあいつの体に溺れてしまう。あの痩せた体。白い肌。あの柔らかな、なめらかな、暖かな、吸い付くような肌。小さく膨らんだ思春期そのもののような乳房。そのまろみ。小生意気に突き出てる薄桃色の乳首。その弾力。こりこりした手触り。そして、信じられないくらい熱くとろけたあいつの、、、忘れられなくなる。手放せなくなる、、、今なら、そう、今だったらまだ何とかなる。奈津美が言った通りの「行きずり」で終らせられる、、、そう、たった2、3日一緒に過ごしただけの、名前も素性も知らない女にマジになりかけている。、、、自分でも信じられないが。

 「、、、ッチ」

 やはり背中の傷はまだ少しシミる。湯船に身を沈めたまま目を閉じると、自然とあの時、オレの背中に爪を立て、掻き毟りながらあいつが上げていたあえぎ声を思い出した。わざと淫らな言葉を繰り返し、お互いの興奮をさらに煽り立てようとしていた。それは死刑囚の命乞いのように切羽詰まった必死のものだった。今ここでこれを言わないと発狂する。そんな口調だった。聞かされるこっちまでおかしくなりそうで、、、いや、完全におかしくされて、あいつを、、、。

 「ねえ!」

 いきなり風呂場のガラス戸越しに声をかけられ、心底驚いた。こちらがよからぬ事を思い出してよからぬ気分に浸っていたせいもある。

 「なな、何? 何だよっ!」

 「ごはん炊こうと思うんだけどぉ、何合にしとくぅ? 明日の朝ゴハンの分も炊いとくんなら、五合くらいかなあ?」

 「あー、うん、それでいい。、、、悪いね、そんな事までさせて、、、」

 「ご飯、固めがいい? それとも柔らかめ?」

 「固めでたのむ。そっちが嫌でなきゃ」

 「わかったぁ。じゃ固めにするねぇ。あたしも固めのご飯の方が好きなのよね」

 そういうと去っていった。、、、ああ、びっくりした。寿命が百日は縮んだな。まったく、恐怖新聞のようなヤツだ。気を取り直すとそそくさと体を洗い、軽く暖まると風呂を出る。

 「じゃ、あと15分ぐらいしたらスイッチいれといてね、炊飯器」

 「ん、わーった」

 「それじゃ、あたしもお風呂に入ろっと。」

 服を着ると、すき焼きの準備にかかる。野菜を洗って適当な大きさに切り、ザルにあげておく。流しの奥からすき焼き鍋とカセットコンロを取り出すと、ちゃぶ台の上にセットする。玉子や割り下も用意して、さあ、後は飯が炊き上がればOKだな。

 「あー、さっぱりしたあ。いい湯だったあ」

 バスタオル一枚を体に巻いたあいつが風呂から出てきた。ちゃぶ台の上をチラッと見ると、嬉しそうにはしゃぎ声を上げる。

 「おっ、準備完了だね。ご飯炊けてるぅ?」

 「あとちょっと蒸らさなきゃ。あと十分くらいかな」

 「そう? じゃそれまでビール飲も。ビール。キュウゥーーッとね。風呂上がりはビールよねぇ、ヤッパ。あたし取ってくるね」

 「その前に服着れ」

 「えー、いいじゃん。バスタオルの美女にお酌してもらうなんて、滅多に体験出来ないよぉ。あ、それとも下着姿の方がいいかな? ランパブみたいで。そだ、今日買ったおニューの下着のお披露目もしなきゃね、、、おもちゃ屋さんのパーティグッズコーナーに、バニーさんのコスチュームとか売ってないかなあ」

 なんだかなー。妙にハイなんですけど。大丈夫かな、飲ませて?

 「とにかく、、、服、着てくれよ」

 「チェーッ、、、わかりましたあ。着ますよ、着ればいいんでしょ。なによ、ケチ。タカヒロって、遊び心ってヤツが欠けてんじゃないの? 」

 そんなのが「遊びゴコロ」ってんなら、ソープやピンサロだってリッパな遊園地だ。行った事ないけど。つか何でケチ呼ばわり?

 「、、、飯食う時は食う事だけに専念したいの。変な格好されたら、それどころじゃなくなっちまう」

 「ご飯よりも、あたしのことを食べたくなっちゃう? 」

 「うるさいな、、、、ああ、そうだよ。そうでごぜえますだよ」

 はき捨てるようにそう答えると、カセットコンロに点火してすき焼き鍋に油を引く。

 「へへ、うれしいな。ちょっとテレちゃう」

 パジャマ姿に着替えたあいつが、ニコニコの花丸笑顔で台所からビールとグラスを持ってきた。すき焼きをツマミにビールを傾け、軽く酔いが回ってきた所で本格的な食事に取り掛かる。二人してつつくすき焼き鍋は、美味く、楽しかった。食うだけ食った後は、ゴロリと横になってテレビを見たりして過ごす。確実に太る。

 「おいしかったぁ、、、でも食べ過ぎちゃってチョット苦しい」

 オレの隣に寝転がってるあいつが、パジャマのズボンをペロン、と下げ始めた。

 「タカヒロ、ホラ、これこれ」

 うつ伏せのままパジャマを膝近くまでズリ下げると、ピョコン、とお尻を突き出して見せる。真っ白なカーブを描く、むきたまごのような尻肉は剥き出しのままで、一瞬こいつノーパンかと思ったが良く見たら、お尻の中央の谷間に申し訳程度の黒い布、いや、ひもと言った方が正確かも知れない、、、、がくっ付いている。大切にしてるオモチャを見せびらかす子供みたいな笑顔でこっちを向くと

 「はい、ティーバックぅー」

 と、ドラエモン口調ではしゃいで見せる。しかし、選りにも選ってこんなの買いやがったのか、実用性より見てくれ優先といった感じの「大胆な黒のティバック」。それにしても、よっぽど好きなんだな、黒。

 「見て見て、どお? 色っぽいでしょ? お尻丸出し状態。冬には穿けないね。ねえ、似合ってる? セクシー? 見てて興奮する? 勃っちゃう? ねえ、ねえってばぁ」

 そう言いながらぴょこぴょことお尻を振ってみせる。色っぽいと言うより可愛らしい。

 「え、、、あ、ああ、似合うと思うよ、、、ウン、すごく色っぽい、、、」

 心にも無い事をボソボソとつぶやきながら、それでも目が離せないでいる。あいつの白い太股の付け根あたりで、薄い黒い布切れでわずかに覆われている、プックリとした小さなふくらみから、、、。

 「、、、、脱がせて」

 四つん這いになり、腰をクイッ、と持ち上げたあいつが、小さな声でせがんで来た。ちょっと迷ったが、言われた通りにユックリとティバックの下着に手を伸ばす。そして、果物の薄皮を剥くように引き降ろすと、ピッタリと局部に張り付いていた所からつうっ、と透き通った細い小さな糸が伸びた。ちょうど玄関口でしたキスの時と同じだ。完全に剥き出しになったふくらみを見ると、早くもほころびかけた肉の花びらの真ん中あたりからは、透明な蜜が噴き零れだしている。顔を近づけて見ると、ほのかな石鹸の香りに混じって、生暖かな「女」の匂いがする、、、こいつ、興奮してる。発情してる。

 「、、、やっぱりちょっと恥ずかしい」

 あいつは顔を俯かせたまま、消え入りそうな声でつぶやく。それでもこちらに良く見えるようにと、大きく足を開く。それに合わせて「花びら」も完全に咲き開き、大量の「蜜」がとろとろと流れ出る。ゆっくりと糸を引きながら零れ落ちようとするのを、思わず舌を伸ばして受け止めると、そのままふくらみ全体を舐め上げ、舐め下ろす。口中にひろがる蜜の味、この刺激のある塩味とほのかな酸味を、もっともっと楽しみたい。その一心であいつの花びらを両手で思いっきり広げ、そのぬめやかな桃色に口全体で吸い付き、むさぼる。頭の片隅で「ヤバイ、よせ、やめろ」と声がするが、とてもそれにしたがえる状況じゃない。

 「んんっ、あっ、ああーんっ、、、そんなに、、強く吸ったら、痛いよ、、、あん、やだ、伸びちゃうぅっ、、ちぎれちゃうよぉ、あああああっ、、、、すごいぃ」

 あいつの切なそうなあえぎ声が、さらに興奮を煽る。こわれた消火栓のように蜜を噴き出し続ける裂け目に舌をねじ込みながら、その下で不安げに顔を出している、ちっちゃな赤いボタンを指でこねくり回してイジメてやるとあえぎ声は悲鳴に変わる。そのカン高い叫びが楽しくてならない。ホラ、もっとわめけ、泣き叫べ、と、ひどくサディスティックな気分になっているのが自分でも解る。強すぎる快感から逃げだそうとするのか、クネクネとうねる腰をガッチリと抱え込み、さらに強い刺激を送り
込んでやる。

 「、、、ひっ、、ひやぁんっ、、、くっ、くくああっ、、、い、いいのっ、、、感じるぅ、、感じすぎちゃ、、ううっ、、、ああっ、、ね、ねえっ、、ひっ、、あ、
あたし、にもっ、、、させてぇ、、、んあっ、、、なめさせてっ、、おしゃぶり、させ、てえぇぇっ」

 あおむけに寝そべるオレの上で、四つん這いのあいつが体を回す。パジャマのズボンとティバックはとうに脱ぎ捨てられ、下半身丸裸だ。大きく開いた足でオレの顔をまたぐと、目の前にぐしょ濡れの黒い、控えめな茂みがある。あいつがトランクスをズボンごと引き降ろそうとしてる。腰を持ち上げて協力するが、ガチガチに固く強張ったジョイスティックが引っかかりうまく脱げない。

 「あは、すっごぉい、、、」

 ようやくトランクスから飛び出したモノを見つめながら、あいつがうれしそうに呟く。先走りの汁を垂れ流す先端に優しくキスすると、敏感な部分をぱっくりと口に含み、吸い上げる。たまらなく気持ちよく、もうそれだけで漏らしそうになる。

 「ううっ」

 熱い口が、こわばり全体に吸い付き、すすり上げる。かと思うと、柔らかな舌が器用に出っ張り部分をくすぐり回す。細いしなやかな指でにぎられ、しごき上げられる。敏感な下の袋をくすぐられ、じらしまくられる。こちらも負けずに口唇愛撫を再開する。お互い、ただひたすら快感を求め合い、与え合う。濡れた粘膜がこすれ合う、淫らな、くぐもった音だけが部屋の中にひびく。

 「ああっ、もう、ダメェ、、、ッ、、いっちゃううーっ、、、」

 切なげにそう叫ぶと、ビクンビクンと腰全体を震わせながらあいつが気をやった。さらに大量の蜜が噴き出し、オレの顔に降りかかる。次の瞬間、暴発寸前の銃身を強く強く吸い上げられ、オレもまた絶頂を迎える。あいつの口の中に大量の白い毒汁をぶちまけると、それを一滴残らず飲み下してくれる。深い満足感と脱力感。お互い感謝の意を込めて、どろどろの性器を舐めてきれいにする。こんな素晴らしい、深い喜びを与えてくれた相手がいとおしくてならない。この行為が再度の欲情をそそる。

 「ね、、、今度は、、、おふとんで、、、」

 「ああ、そうしよう」

 粘液でテカテカの顔を見合わせ、微笑み合う。くちづけし、舌を絡め合うと、形容しがたい奇妙な味がした。だがけっして不快ではない。布団の上でしっかりと抱き合う。重なり合う肌のぬくもり。慈しみに満ちたおだやかな優しい愛撫。この間のいささか狂気じみた行為とは正反対の、決して快楽目的ではない、そう、心と心が結ばれ満たされ合うような、そんな落ち着いた行為。この間の行為が「ファック」なら、今こうしているのは「メイクラブ」と言った所だろう。あいつの体にこれ以上「痕」を残さないように、優しく優しく、繊細なガラス細工を触るように撫で回す。

 「、、、まだちょっと赤く残ってるな、、、」

 うなじに赤く残るキスマークの痕に軽くふれるとそう囁く。

 「ダメだよ、これ以上付けたら、、、どこにも行けなくなっちゃう」

 くすくすと楽しそうに笑いながらそう答えるあいつ、、一瞬、スゴイ力で誘惑された。今、新しいキスマークを付けてやれば、こいつはもうしばらくここに居続けてくれるんじゃないか、、そうすれば、もっともっとこいつを抱ける、こいつの体をむさぼれる。実際それは恐ろしいほどの誘惑で、その思いを振り切るのはかなりの苦痛だった。

 「、、、どしたの?」

 けげんそうにオレの顔を覗き込ながらあいつが首をかしげる。愛撫をいきなり中断されてちょっと不機嫌そうだ。

 「いや、なんでもないよ、、、」

 左の乳首に軽くキスして誤魔化す。右のはひとさし指で軽く弾く。

 「あんっ」

 ぐいっ、と太股を持ちあげ、熱くぬかるんでいる秘唇に、さっき以上に固くきばったモノをゆっくりと差し込み、ねじ入れていく。根元まですっかり入りきると、あいつはひとしきり大きな声をあげ、両足をぎゅううっ、とオレの腰に絡めてくる。やわやわぴったりと締め付けて来る粘膜の壁をこすり上げるように動かしてやると、その声はすすり泣くように変わっていく。実際涙ぐんでいる。その半開きの大きな目からは今にも涙が零れ落ちそうだ。たまらなくかわいい。

 「、、、タカヒロぉ、、、気持ちいいよお、、、」

 うわ言のようなその声に促され、腰の律動を早めていく。両手で小さな乳房をなで回すように愛撫する。硬くなった先端部の弾力が楽しくてならない。

 「オレも、、、すごくいいよ、、、」

 「うれしい、、、ね、もっと感じて、あたしで良くなって、、、ああ、、」

 繋がったままで抱き合い、何度もキスを繰り返す。優しく髪を撫でてやると、あいつはうっとりと目を閉じる。あふれ出た涙の一滴が頬を伝う。それを指でそっとぬぐってやると、うれしそうににっこり笑った。

 「ああ、、、ねえ、、あたし、またいきそう、、、」

 耳元でそう囁かれた。熱い吐息と一緒に。

 「、、、あなた、はっ、、、まだ、なのぉ?」

 「オ、オレも、、もうすぐ、、、」

 「じゃ、、、一緒に、、、一緒にいこ、、、ね、、、ぁあっ、いく、あたしいくっ、ね、きて、、、あなたもいって、、、たくさんだしてぇっ、、、んんああああっ!」

 「うううっ!!」

 「あなた」と呼ばれた事に奇妙な喜びを感じながら、オレは二度目の絶頂を迎えた。お互い抱き合ったままで激しい快感の余韻を味わう。目を閉じ、荒い息を吐きながら。

 「はぁはぁ、、、、、ねぇ、、、」

 「何?」

 「あ、あたし、、、今まで、、、はぁはぁ、、、気持ちいいセックスはイッパイしてきたけど、、、、はぁはぁ、、、」

 ここで一旦、口ごもった。なんだか言い難くそうだ。こんな時、煙草でも吸えば間が持つし、なんとなく絵にもなるんだろうけど、オレは体質的に吸えないタチなのだ。

 「はぁはぁ、、、、けど、何?」

 「こんな、、、楽しくて、、、しててうれしくなっちゃうような、、、セックスって、、、はぁ、、、初めて、、、みたい。どうしてだか、自分でもわかんないけど」

 「そう、、、オレも、、、同じだよ」

 その後はしばらくの間、ただ黙って抱き合っていた。そうしているだけであいつの言いたい事、伝えたい事が何となくわかる様な気がした。多分向うも同じだったと
思う。

 「、、、、、喉、乾いちゃった」

 ちょっと重苦しかった沈黙に耐え切れなくなったのか、あいつがそうつぶやいた。

 「ビールでも飲むか」

 「飲むっ!」

 軽くシャワーを浴びたあと、二人でビールを一本あけ、そのまま眠った。泥の様に。





 次の日と、その次の日は、会社を引けた後、あいつを誘って食い物屋巡りをした。帰ると当然の様に抱き合い、交わった。





 その次の日の朝。トーストの朝食を食べ終えると、お別れの時が来た。急にかしこまったあいつが正座すると、

 「市ノ瀬さん、本当に、本当にお世話になりました。あなたのおかげで、あたし、とても、、、とっても、、、、、、その、楽しい思いをさせてもらいました。うれしかった、、、こんなに親切にしてもらって、あたし、本当に感謝してます」

 深々と頭を下げる。いきなり礼儀正しくなりやがった。こんなのは苦手だ。

 「わかったよ、わかったから、もういいよ。そういうの苦手なんだ、たのむからやめてくれ、な」

 「そう?」

 あいつがピョコンと頭を上げる。ちょっと首をかしげたままジッとこっちを見ている。

 「それより、金とかあるの? 少しぐらいなら貸すけど、、、」

 「それはダイジョブだよ。キチンと有るから。、、、じゃ」

 そう言って、立ち上がる。こちらも立ち上がるとちょっとの間そのまま見詰め合う。

 「本当にありがとうね」

 そう言うと、飛びつくようにして抱きついてきた。あれだけたくさん食ったのに、全然変わってない。相変わらず痩せたままだ。やっぱり体質らしいな、などとぼんやり考えながらキスをした。これで最後かと思うと自然と力も入る。

 「ん、、、、これ以上してたら、、、またしたくなっちゃう」

 名残惜しげに唇を引き離すと、抱擁も解く。

 「もし、、、なんかあったらまた来なよ。飯ぐらい食わせるから」

 我ながら未練がましいな、と思いながらも、そんな事を言わずにはいられなかった。

 「うん、ありがとう」

 明るく返事される。だけどこいつと会う事はもう二度とないだろう。そう確信しながら玄関口まで来た。

 「それじゃ、、、」

 「やっぱり途中まで送るよ」

 「いいよ。一人で行けるから。タカヒロは会社に行かないと、お給料貰えなくなっちゃうよ」

 黒のスニーカーを履くと、タンポンと下着のはいった紙袋を持ち、これで準備万端、と、その袋を開けると、なにやらゴソゴソやりだした。そして、黒い塊のような物を取り出すと、

 「これ、あげるね」

、、、例のティバックだった。

 「匂いかぐなり、頭にかぶるなり、どうぞご自由に」

 「するか、そんなコト!」

 「変態仮面になれるね」

 「だから、やんねえって!」

 「ふふふ、ホントかなぁ、、、、じゃバイバイ」

 そう言うと出ていった。

 いなくなった。




前に戻る    NOVELに戻る     次に進む