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     人民戦争

 この時期には、中国共産党の指導する、西北地方に移動した中国赤軍の主力は、中国国民革命軍第八路軍に編成がえし、長江の南北各地にふみとどまっていた中国赤軍遊撃部隊は、中国国民革命由新綿第四軍に編成がえして、あいついで華北、車中の戦いにおもむいた。内戦の時期の中国赤軍は、北伐の時期の苗補軍百学校および国民革命軍の民主的伝統を保持し発展させ、一時は数十万にまで拡大した。だが、南方各根拠地にたいする国民党政府の残酷な蹂躙のために、また万里の長征のさいの損耗およびその他の原因のために、抗日戦争がはじまったときには、その数はわずか数万人に減少していた。そこで、一部の人はこの軍隊をみくびり、抗日は主として国民党にたよるべきだと考えた。だが、人民は最良の判定者である。かれらは、八路軍、新四軍は当時、数こそすくなかったが質は高く、其の人民戦争をおこなえるのはこの軍隊だけであること、この軍隊がひとたび抗日の前線におもむいてその土地の広範な人民と結びついたなら、限りない前途がひらけることを知っていた。人民は正しかったのである。わたしがここで報告している現在、われわれの軍隊はすでに九十一万人に発展しており、農村にいて生産労働からはなれない民兵は二百二十万以上に発展している。いまのわれわれの正規の軍隊は、国民党の現存の軍隊(中央系も地方系Bもふくめて)よりも数のうえではずっとすくないにもかかわらず、迎えうっている日本軍とかいらい軍の数やひきうけている戦場の広さからいっても、戦闘力からいっても、広範な人民の呼応のもとに戦っていることからいっても、また政治的な質や内部的な統一と団結などの状況からいっても、すでに中国抗日戦争の主力軍となっている。
 この軍隊が強力なのは、この軍隊に参加しているすべての人がみな自覚的な規律をそなえているからであり、少数の人または狭隘《きょうあい》な集団の私的利益のためにではなく、広範な人民大衆の利益のため、全民族の利益のために、結集し戦っているからである。しっかりと中国人民の側にたって、誠心誠意、中国人民に奉仕すること、これがこの軍隊の唯一の目的である。
 こうした目的から、この軍隊は勇往邁進《まいしん》の精神をそなえている。この軍隊はあらゆる敵を圧倒するのであり、けっして敵に屈服するようなことはない。いかなる艱難《かんなん》辛苦の状態にあっても、生き残っているものが一人でもいるかぎり、戦いつづけるのである。
 こうした目的から、この軍隊は内外ともにりっぱに団結している。内部では、将兵のあいだ、上級と下級のあいだ、軍事活動、政治工作と後方勤務活動とのあいだで一致団結しているし、外部にたいしても、軍隊と人民のあいだ、軍隊と政府のあいだ、わが軍と友軍のあいだで一致団結している。団結をさまたげるすべての現象は、克服しなければならないものとされている。
 こうした目的から、この軍隊は敵軍の将兵を味方に獲得し、捕虜を取り扱ううえでの正しい政策をもっている。敵側から帰順してくるもの、蜂起してくるもの、あるいは武装解除されたあと共通の敵とのたたかいに参加することをのぞむものにたいしては、これを一様に歓迎し、これに適当な教育をほどこす。どの捕虜にたいしても、殺害し、虐待し、侮辱することをゆるさない。
 こうした目的から、この軍隊は人民戦争の必要とする一連の戦略戦術をつくりあげている。この軍隊は変化する具体的条件におうじて弾力性にとむ機敏な遊撃戦争をおこなうことに長じており、また運動戦にも長じている。
 こうした目的から、この軍隊は人民戦争の必要とする一連の政治工作の制度をつくりあげている。その任務は、わが軍を団結させ、友軍と団結し、人民と団結し、敵軍を瓦解《がかい》させ、戦闘の勝利を保障するためにたたかうことである。
 こうした目的から、遊撃戦争の条件のもとで、全軍は、経済困難の克服、軍隊生活の改善、人民の負担の軽減のために、戦闘と訓練の合い間を利用し、食糧および日用必需品の生産に従事して、軍隊の自給、半自給または部分的自給を達成することができるし、またすでにそのようにしている。各軍事根拠地でも、あらゆる可能性を利用して、すでに多くの小規模な軍事工業を建設している。
 この軍隊が強力なのは、また、人民自衛軍や民兵のような広範な大衆の武装組織がそれと呼応して戦っているからである。中国解放区では、すべての青壮年男女が、自由意志の原則、民主の原則、生産労働からはなれないという原則のもとに、抗日の人民自衛軍のなかに組織されている。自衛軍のなかの精鋭は、軍隊と遊撃隊に参加したもの以外は、民兵の隊伍に組織されている。これらの大衆の武装力の呼応がなければ、敵にうち勝つことは不可能である。
 この軍隊が強力なのは、また、自分を主力兵団と地方兵団の二つの部分にわけており、前者はいつでも超地方的な作戦任務を遂行することができ、後者は民兵、自衛軍と協同して地方を防衛し、その地方の敵を攻撃することが任務とされているからである。このような分けかたは人民の心からの支持をえている。もし、このような正しい分けかたをしないなら、たとえば、主力兵団の役割に心をそそぐだけで、地方兵団の役割を無視するなら、中国解放区の条件のもとで、敵にうち勝つことはやはり不可能である。地方兵団の面では、りっぱな訓練をうけていて、軍事、政治、民衆運動などの活動のうえでいずれもいっそう健全な武装工作隊Cがたくさん組織されている。これらの工作隊は、敵後方にある敵後方に深くはいり、敵に打撃をあたえ、民衆の抗日闘争をまきおこして、各解放区の正両戦線の戦いに呼応し、大きな成果をおさめている。
 中国解放区では、民主政府の指導のもとに、すべての抗日の人民にたいし、労働者、農民、青年、婦人、文化の各団体、およびその他の職業団体、大衆団体に参加して、軍隊を援助するさまざまな活動を熱心におこなうようよびかけている。これらの活動には、軍隊への参加、軍隊のための食糧運搬、抗日軍人家族の優遇、軍隊の物質的困難解決への援助に人民を動員することがふくまれるばかりでなく、さらに、襲撃運動と爆破運動の展開、政情の偵察《ていさつ》、奸徒《かんと》の粛清、負傷兵の後送と保護、軍隊の作戦への直接的援助に遊撃隊、民兵、自衛軍を動員することもふくまれる。同時に、全解放区の人民はまた政治、経済、文化、衛生などのさまざまな建設の仕事に熱心に従事している。この面でもっとも重要なことは、長期の抗日戦争をささえるために、全人民を食糧と日用品の生産に動員するとともに、すべての機関、学校でも特殊な事情のあるもののほかは一律に、仕事または学習の余暇に生産自給にたずさわらせ、それによって、人民と軍隊の生産自給に協力させ、偉大な生産の高まりをもりあげることである。中国解放区では、敵による破壊がきわめてひどく、水害、干害、虫害もつねに発生している。しかし、解放区の民主政府は、抗日戦争を長期にわたって堅持できるよう、全人民を指導してさまざまな困難を組織的に克服してきたし、また克服しつつあるのであって、イナゴの撲滅、治水、災害救済の偉大な大衆運動で史上に前例のない効果をあげている。要するに、すべては前線のために、すべては日本侵略者の打倒と中国人民の解放のためにということ、これが中国解放区の軍民全体の全般的スローガンであり、全般的方針である。
 これが真の人民戦争である。このような人民戦争によってのみ、民族の敵にうち勝てるのである。国民党が敗北しているのは、必死になって人民戦争に反対しているからである。
 中国解放区の軍隊は、ひとたび新式兵器によって装備されるなら、いっそう強大になり、日本侵略者を最後的にうちやぶることができる。


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