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中国革命と中国共産党

          (一九三九年十二月)

     第一章中国社会

    第一節 中華民族

 わが中国は世界でもっとも大きな国の一つであり、その領土はヨーロッパ全体の面積にほぼ等しい。この広大な領土には、われわれに衣食のみなもとをあたえてくれるひろい肥沃《ひよく》な土地がある。そしてわれわれのために広大な森林をそだて豊富な鉱物資源をたくわえてくれている、全国を縦横にはしる大小の山脈がある。またわれわれに水運と灌漑の利をあたえてくれる多くの河川や湖沼があるし、われわれに海外の各民族との交通の便をあたえてくれる長い海岸線がある。はるか古代から、わが中華民族の祖先は、この広大な土地のうえで労働し、生活し、子孫をふやしてきた。
 現在、中国の国境は、東北、西北および西部の一部では、ソビエト社会主義共和国連邦と接している。真北では、モンゴル人民共和国と接している。西部の一部と西南部では、アフガニスタン、インド、ブータン、ネパールと接している。南部では、ビルマおよびベトナムと接している。東部では、朝鮮と接し、日本やフィリピンにも近い。この地理的な国際環境は、中国人民の革命に、外部からの有利な条件と困難な条件をつくりだしている。有利な条件は、ソ連と境を接し、欧米の主要な帝国主義諸国からはかなり遠くはなれており、まわりの国ぐにの多くが植民地、半植民地国だということである。困難な条件は、日本帝国主義が、中国に近いという関係を利用して、たえず中国諸民族の生存をおびやかし、中国人民の革命をおびやかしていることである。
 わが中国は、いま、四億五千万の人口をもち、全世界人口のほぼ四分の一を占めている。この四億五千万の人口のうち、九割以上が漢族である。このほかにも、蒙古族、回族、チベット族、ウィグル族、苗族、彝《い》族、壮族、布依族、朝鮮族などあわせて数十の少数民族がいて、文化の発展の程度こそちがっているが、みな長い歴史をもっている。中国は、多数の民族が結合してできた、多くの人口をもつ国である。
 中華民族の発展(ここでは主として漠族の発展をいう)は、世界の他の多くの民族とおなじように、かつて何万年かにわたる階級のない原始共同体の生活をへてきた。そして原始共同体がくずれて社会生活が階級生活にうつったその時代から、奴隷社会、封建社会をへて現在にいたるまで、およそ四千年もたっている。中華民族の文明史には、発達していることでよく知られている農業と手工業があり、たくさんの偉大な思想家、科学者、発明家、政治家、軍事家、文学者、芸術家があり、ゆたかな文化的典籍がある。中国では、ずっと昔に羅針盤が発明された〔1〕。千八百年前にはすでに製紙法が発明された〔2〕。千三百年前には木版印刷が発明された〔3〕。八百年前にはさらに活字印刷が発明された〔4〕。火薬の応用〔5〕もヨーロッパ人よりはやかった。したがって、中国は世界でもっともはやく文明の発達した国の一つであり、中国にはすでに四千年にちかい、文字によって考証できる歴史がある。
 中華民族は、刻苦勤勉なことで世界に知られているだけでなく、同時に自由を熱愛する、革命の伝統に富んだ民族でもある。漢族の歴史を例にとってみても、中国人民は暗黒勢力の支配に甘んずるものではなく、そのつど革命的手段によって、そうした支配の打倒や変革の目的をたっしてきたことが証明できる。漢族の数千年の歴史には、地主と貴族の暗黒支配に反抗した大小何百回もの農民蜂起があった。多くの王朝の交代は、農民蜂起の力によってはじめて成功したのである。中華民族のなかの各族の人民はいずれも外来民族の抑圧とたたかい、反抗の手段によってこうした抑圧をとりのぞこうとした。かれらは、平等な連合には賛成するが、たがいに抑圧しあうことには賛成しない。中華民族の数千年の歴史には、民族の英雄と革命の指導者がたくさんうまれた。したがって、中華民族は、光栄ある革命的伝統と優秀な歴史的遺産をもつ民族でもある。


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