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      二 中国国民党の戦争史

 われわれが自民党の歴史に目をむけ、国民党がどのように戦争に注意をはらったかに目をむけることは、有益である。
 孫中山《スンチョンシャン》は、革命的な小団体を組織したときから、いくどか清朝に反対する武装蜂起をおこなった〔4〕。同盟会の時期になると、辛亥《シンハイ》革命で清朝を武力によってくつがえすまで、いっそう多くの武装蜂起の事績〔5〕があった。中華革命党の時期には、かれは武力による東世凱反対運動をおこなった〔6〕。その後における海軍の南下〔7〕、桂林《コイリン》からの北伐〔8〕、黄埔《ホヮンプー》軍官学校の創立〔9〕は、いずれも孫中山の戦争の事業である。
 蒋介石《チァンチェシー》が孫中山にとって代わると、国民党の軍事的全盛時代がつくりだされた。かれは、北伐、内戦、抗日の三つの時期をつうじて、軍隊を自分の命のように考えてきた。過去十年間の蒋介石は反革命であった。反革命のために、かれは膨大な「中央軍」をつくりあげた。軍隊があれば権力があり、戦争がすべてを解決するというこの基本点を、かれはしっかりつかんでいる。この点については、われわれはかれに学ぶべきである。この点では、孫中山と蒋介石はともにわれわれの先生である。
 辛亥革命ののち、すべての軍閥は軍隊を自分の命のように大切にし、「軍隊があれば権力がある」という原則を重視した。
 譚延[”もんがまえ”+”山”の下に”豆”]《タンイェンカイ》〔10〕はりこうな官僚で、湖南《フーナン》省でなんどか起伏をくりかえしたが、これまでただの省長になったことはなく、いつも督軍兼省長になった。かれは、のちに広東と武漢《ウーハン》の国民政府の主席になったが、やはり第二軍の軍長をかねた。中国にはこのような軍閥が多くあり、かれらはこの中国の特徴を知っているのである。
 中国には軍隊をもとうとしない政党もいくつかあるが、そのうちのおもなものは進歩党〔11〕である。しかし、この政党も、官職にありつくにはある軍閥にたよらなければならないことを知っていた。そこで、袁世凱、段祺瑞《トヮンチーロイ》〔12〕、蒋介石(蒋にくっついているのは、進歩党の一部から転じた政学系〔13〕である)がそのうしろだてとなった。
 青年党〔14〕などのような歴史のあさいいくつかの小さな政党は、軍隊をもっていないから、これといったことはなに一つできない。
 外国のブルジョア政党は、各自が一部の軍隊を直接にぎる必要はない。だが、中国はそれとはちがい、封建的な分割のために、地主やブルジョア階級の集団または政党では、鉄砲のあるものが勢力をもち、鉄砲の多いものほど勢力が大きい。このような環境におかれているプロレタリア政党は、問題の中心を見きわめるべきである。
 共産党員は、個人の兵権は争わないが(けっして争ってはならず、二度と張国Z《チャンクォタオ》のようなことをしてはならない)、党の兵権は争わなければならず、人民の兵権は争わなければならない。現在は民族的抗戦をしているので、さらに民族の兵権を争わなければならない。兵権の問題で小児病になれば、なに一つえられないのは必定である。勤労人民は数千年らい、反動支配階級のあの欺瞞《ぎまん》や威嚇の手にのせられてきたので、鉄砲を自分の手に握ることの重要性は、はなはだ悟りにくかった。日本帝国主義の抑圧と全人民の抗戦によって、勤労人民が戦争の舞台におしあげられた以上、共産党員はこの戦争のもっとも自覚のある指導者となるべきである。共産党員の一人ひとりが、「鉄砲から政権がうまれる」という真理を理解すべきである。われわれの原則は党が鉄砲を指揮するのであって、鉄砲が党を指揮するのをけっしてゆるさない。しかし、鉄砲があれば党をつくりあげることができるのもたしかで、げんに八路軍は華北地方で大きな党組織をつくりあげた。さらに幹部をも、学校をも、文化をも、民衆運動をもつくりあげることができる。延安《イェンアン》のすべては鉄砲がつくりだしたものである。鉄砲からすべてのものがうまれてくる。マルクス主義の国家学説にかんする観点からみれば、軍隊は国家権力の主要な構成要素である。国家権力を奪取し保持しようとするものは、強大な軍隊をもたなければならない。われわれを「戦争万能論」だと笑うものがあるが、そのとおり、われわれは革命戦争万能論者である。これはわるいことではなく、よいことであり、マルクス主義である。ロシア共産党の鉄砲は社会主義をつくりだした。われわれは民主共和国をつくりだすのである。帝国主義時代の階級闘争の経験がわれわれに教えているように、労働者階級と勤労大衆は鉄砲の力によらないかぎり、武装したブルジョア階級と地主にうち勝つことはできない。この意味から、世界全体を改造できるのは鉄砲だけである、といってよい。われわれは戦争消滅論者であり、戦争を不要とするものである。だが、戦争をつうじて戦争を消滅するよりほかなく、鉄砲を不要にするには、鉄砲を手にとらなければならない。


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