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    第三節 根拠地樹立の条件

 根拠地樹立の基本的条件は、抗日の武装部隊をもっとともに、この部隊をつかって敵にうち勝ち、民衆を立ちあがらせることである。だから、根拠地を樹立する問題は、なによりもまず武装部隊の問題である。遊撃戦争に従事している指導者たちは、全精力をそそいで一つないしたくさんの遊撃部隊を創設し、闘争のなかでそれをしだいに遊撃兵団に発展させ、さらに正規の部隊および正規の兵団に発展させなければならない。武装部隊を創設することは、根拠地を樹立するもっとも基本的な環であり、これがないか、あっても無力であるなら、なに一つできるものではない。これが第一の条件である。
 根拠地の樹立と切りはなすことのできない第二の条件は、武装部隊をつかい、民衆と呼応して敵にうち勝つことである。敵におさえられているところはすべて、敵の根拠地であって、遊撃戦争の根拠地ではない。敵の根拠地を遊撃戦争の根拠地に変えることは、敵にうち勝たないかぎり実現できるものではなく、これは自明の理である。遊撃戦争でおきえているところでも、敵の進攻を粉砕せず、敵にうち勝たなかったら、それが敵のおさえるところに変わり、根拠地を樹立することもできない。
 根拠地の樹立と切りはなすことのできない第三の条件は、武装部隊の力をふくむあらゆる力をあげて、民衆を抗日闘争に立ちあがらせることである。このような闘争をつうじて人民を武装化しなければならない。すなわち自衛軍や遊撃隊を組織しなければならない。このような闘争をつうじて民衆団体を組織しなければならない。労働者、農民、青年、婦人、児童、商人、自由職業者などのすべてを、かれらの政治的自覚と闘争意欲のもりあがりの程度に応じて、必要な抗日諸団体のなかに組織するとともに、それらの団体をしだいに拡大しなければならない。民衆は、組織されなければ抗日の力を発揮することはできない。このような闘争をつうじて、公然たる、あるいは潜伏している民族裏切り者を一掃しなければならない。そのことをなしとげるにも、民衆の力にたよる以外にない。とくに重要なことは、このような闘争のなかで、民衆を動員して、その地方の抗日政権を樹立し、または強化することである。もとからの中国の政権がまだ敵に破壊されていないところでは、広範な民衆の支持を基礎としてそれを改造し強化する。もとからの中国の政権がすでに敵に破壊されたところでは、広範な民衆の努力を基礎としてそれを回復する。この政権は、抗日民族統一戦線政策を実行するものであり、すべての人民の力を結集して、唯一の敵日本帝国主義とその手先民族裏切り者、反動派と闘争しなければならない。
 すべての遊撃戦争の根拠地は、抗日の武装部隊をつくり、敵にうち勝ち、民衆を立ちあがらせるという三つの基本的な条件がしだいにととのってきたのちにはじめて、ほんとうに樹立されるのである。
 このほかに、なお指摘しなければならないのは、地理的、経済的条件である。地理的条件の問題は「いくつかの種類の根拠地」について説明したとき、二つのちがった状況を指摘しておいたので、ここではただ主要な要求、つまり地区の広大さということだけをのべよう。四方あるいは三方を敵に包囲されているなかで、長期間もちこたえる根拠地を樹立するには、もちろん、山岳地帯がもっとも条件にめぐまれているが、主要なことは遊撃隊の機動する余地、つまり広大な地区がなければならないということである。広大な地区という条件があれば、平原地帯でも遊撃戦争をくりひろげ、もちこたえることができる。河川・湖沼・港湾・川股地帯なら、なおさらいうまでもない。中国は領土が広く、敵は兵力が不足しているので、中国の遊撃戦争には、一般にこの条件がそなわっている。遊撃戦争の可能性からいうなら、それは一つの重要な条件であり、いちばん重要な条件でさえある。小国、たとえばベルギーなどの国には、こういう条件がないので、遊撃戦争の可能性はきわめてすくなく、皆無でさえある。ところが中国では、この条件は、これからたたかいとる条件でもなければこれから解決する問題でもなく、自然にそなわっていて利用しさえすればよいのである。
 経済的条件は、自然の面からみれば、地理的条件と同じような性質をもっている。いま論議しているのは、敵の後方に根拠地を樹立することであって、砂漠のなかに根拠地を樹立することではない。砂漠には敵などいない。敵がやってくることのできるところなら、もちろん、もとから中国人がいて、もともと食っていける経済的基礎があるから、根拠地樹立の面では、経済的条件を選択する問題はおこらない。中国人がいて敵もいるというところなら、その経済的条件のいかんをとわず、できるかぎり遊撃戦争をくりひろげるとともに、永久的な、あるいは臨時的な根拠地を樹立しなければならない。しかし、政治の面からみるとそうではなくて、問題が存在している。それは経済政策の問題であって、根拠地を樹立するうえで重大性をおびている。遊撃戦争の根拠地での経済政策としては、合理的な負担と商業の保護という抗日民族統一戦線の原則を実施しなければならない。地元の政権と遊撃隊はけっしてこの原則をやぶってはならず、さもないと根拠地の樹立および遊撃戦争の堅持に影響してくる。合理的な負担とは「金のあるものは金をだす」ことを実行することであるが、農民もまた一定量の食糧を遊撃隊に提供しなければならない。商業の保護では、遊撃隊の厳格な規律をつらぬくべきで、確実な証拠のあがった民族裏切り者のほかは、商店一軒でも勝手に没収してはならない。これは困難なことであるが、実行しなければならない確固とした政策である。


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