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    第一節 いくつかの種類の根拠地

 抗日遊撃戦争の根拠地は、だいたい、山岳地帯、平原地帯および河川・湖沼・港湾・川股《かわまた》地帯の三つの種類をでない。

 山岳地帯での根拠地の樹立が有利なことは、だれにもあきらかであり、長白山《チャンパイシャン》〔1〕、五台山《ウータイシャン》〔2〕、太行山《タイハンシャン》〔3〕、泰山《タイシャン》〔4〕、燕山《イェンシャン》〔5〕、茅山《マオシャン》〔6〕などで、すでにつくられているか、いまつくられつつあるか、これからつくられようとしている根拠地が、それである。これらの根拠地は、抗日遊撃戦争をもっとも長期間もちこたえていける場所であり、抗日戦争の重要なとりでである。われわれは、敵の後方にあるすべての山岳地帯にいって遊撃戦争をくりひろげるとともに、根拠地をうちたてなければならない。
 平原地帯が山岳地帯よりいくらかおとることはもちろんだが、けっして、遊撃戦争をくりひろげることができないわけではないし、またどんな根拠地もつくれないというのでもない。河北《ホーペイ》省の平原、山東省の北部と西北部の平原では、すでに広い地域にわたって遊撃戦争をくりひろげており、これは平原地帯で遊撃戦争をくりひろげることができる証拠である。平原地帯でも、長期間もちこたえられる根拠地を樹立することができるかどうかは、現在のところ、まだ証明されていない。だが、臨時的な根拠地の樹立、小部隊の根拠地または季節的な根拠地の樹立については、前者は現在すでに証明されているが、後者も可能だというべきである。なぜなら、一方では、敵は配置する兵力に不足し、また、かつてない野蛮な政策を実行しているということ、他方では、中国には広大な土地があり、また抗日の人民がたくさんいるということ、これらのことが平原地帯に遊撃戦争をくりひろげ、また臨時の根拠地をうちたてることのできる客観的な条件をあたえている。もしそのうえに、指揮の適切という条件がくわわれば、小部隊の、固定しない、長期の根拠地をうちたてることも当然可能だというべきである〔7〕。だいたい、敵がその戦略的進攻を終わり、占領地の保持の段階にうつってくると、遊撃戦争のすべての根拠地にたいする残酷な進攻がはじまるのは疑いのないことで、平原の遊撃根拠地は、おのずから、まっさきにその矢面にたたされる。そうしたとき、平原地帯で活動している大きな遊撃兵団は、もとのところで長期間作戦をもちこたえることができなくなり、状況に応じて、だんだん山岳地帯に転移していかなければならない。たとえば、河北平原から五台山と大行山に転移し、山東平原から泰山と膠東《チャオトン》半島に転移するというようにする。だが、多くの小さな遊撃部隊を保持し、それらを広大な平原の各県に分散させて、流動作戦の方法、つまりときにはこちら、ときにはあちらという根拠地引っ越しの方法をとることは、民族戦争という条件のもとでは、可能性がないといえない。夏には見渡すかぎりのこうりゃん畑、冬には河川の結氷を利用する季節的な遊撃戦争となると、疑いもなく可能である。敵は現在手がまわりかねており、将来手がまわるにしても十分にゆきとどかないという条件のもとで、われわれが、現在は、平原の遊撃戦争を広範に展開し、臨時の根拠地を樹立するという方針、将来は、小部隊の遊撃戦争、すくなくとも季節的な遊撃戦争を堅持し、固定しない根拠地を樹立するという方針を確定することは、ぜひとも必要である。
 河川・湖沼・港湾・川股をよりどころにして遊撃戦争をくりひろげ、また根拠地を樹立する可能性は、客観的にいうと、山岳地帯よりやや小さいが、平原地帯よりは大きい。歴史上のいわゆる「海賊」や「水賊」は無数の武勇劇を演じており、赤軍時代の洪湖《ホンフー》の遊撃戦争は数年もの長いあいだもちこたえられたが、これらは河川・湖沼・港湾・川股地帯で遊撃戦争をくりひろげ、また根拠地を樹立することのできる証拠である。だが、抗日の各政党や抗日の人民は、いまになってもこの方面にあまり注目していない。まだ主体的条件がそなわっていないとはいえ、それに注目すべきであり、またそれを実行にうつすべきであるということは疑いがない。長江《チャンチァン》北部の洪沢湖《ホンツォーフー》地帯、長江南部の太湖《タイフー》地帯、大きな川や海岸にそった敵の占領地区にあるすべての港湾・川股地帯では、遊撃戦争を十分に組織し、河川・湖沼・港湾・川股およびその付近に恒久的な根拠地を樹立して、遊撃戦争を全国にくりひろげていく一つの方面とすべきである。この方面が欠けていることは、敵に水上交通の便をあたえるのと同じで、抗日戦争の戦略計画の一つの欠陥であり、すみやかにおぎなうべきである。


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