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     第五章 正規戦争との呼応

 遊撃戦争の戦略問題の第二の問題は、正規戦争との呼応の問題である。つまり、遊撃戦争の具体的行動の性質にもとづいて、遊撃戦争と正規戦争との作戦上の関係をあきらかにすることである。この関係を認識することは、敵を効果的にうちやぶるうえで重要な意義がある。
 遊撃戦争の正規戦争との呼応には、戦略上、戦役上、戦闘上の三種類がある。
 遊撃戦争全体が、敵の後方で敵を弱め、敵を牽制し、敵の輸送を妨害する役割をはたすこと、全国の正規軍と全国の人民に精神的激励をあたえることなどは、いずれも戦略上で正規戦争に呼応するものである。たとえば東北三省の遊撃戦争のばあい、全国的抗日戦争がはじまるまでは、もちろん呼応の問題はおこらなかったが、抗日戦争がはじまってからは、呼応の意義がはっきりあらわれてきた。そこの遊撃隊が敵兵をひとりでも多くうち殺し、敵の弾丸を一発でも多く消耗させ、敵兵をひとりでも多く牽制して万里の長城以南に侵入させないようにすることは、抗日戦争全体にたいしてそれだけ力を増大させたことになる。また、敵軍と敵国の全体に精神上不利な影響をあたえ、わが軍とわが人民の全体に精神上よい影響をあたえるということは、だれの目にもあきらかである。北平《ペイピン》=婦綏《クイスイ》、北平=漢□《ハンコウ》、天津《ティエンチン》=浦口《プーコウ》、大同《タートン》=風陵渡《フォンリントウ》、正定《チョンティン》=太原《タイユワン》、上海《シャンハイ》=杭州《ハンチョウ》などの鉄道沿線で、遊撃戦争がはたしている戦略上の呼応の役割にいたっては、いっそうあきらかである。遊撃隊は、現在のように敵が戦略的進攻をおこなっているとき、正規軍と呼応して戦略的防御の役割をはたしているばかりでなく、また、敵が戦略的進攻を終わって占領地の保持に転じたとき、正規軍と呼応して敵の保持を妨害するばかりでなく、さらに、正規車が戦略的反攻をおこなうとき、正規軍と呼応して敵軍を撃退し、すべての失地を回復するであろう。遊撃戦争が戦略上ではたす偉大な呼応の役割は、けっして軽視してはならない。遊撃隊と正規軍の指導者たちは、その役割をはっきり認識しなければならない。
 そればかりでなく、遊撃戦争にはまだ、戦役上の呼応の役割がある。たとえば、太原北方の忻口《シンコウ》鎮の戦役のとき、雁門関《イェンメンコヮン》南北の遊撃戦争が、大同==風陵渡鉄道、平型関《ピンシンコヮン》の自動車道路、楊万口《ヤンファンコウ》の自動車道路などを破壊して戦役上はたした呼応の役割は大きいものであった。また、敵が風陵渡を占領したのち、山西《シャンシー》省のいたるところでおこなわれていた遊撃戦争(主として正規軍によっておこなわれた)が、陝西《シャンシー》省の黄河《ホワンホー》西岸、河南《ホーナン》省の黄河南岸の防御戦と呼応して戦役上はたした呼応の役割は、いっそう大きいものであった。さらに、敵が山東省南部を攻撃したとき、華北五省全体の遊撃戦争も、山東省南部のわが軍の戦役的作戦と呼応するうえで、相当な力を発揮した。こうした任務では、敵の後方にある遊撃根拠地の指導者や臨時に派遣された遊撃兵団の指導者はすべて、自己の兵力をうまく配置し、おのおのがその時その地の状況に応じた方法をとって、敵のもっとも危険を感じている点やその弱い点にたいして積極的に行動をおこし、これによって敵を弱め、敵を牽制し、敵の輸送を妨害し、また内線で戦役的作戦をしている各部隊の士気を鼓舞するという目的をたっするようにし、戦役的呼応の責任をはたさなければならない。各遊撃区あるいは各遊撃隊が、戦役作戦上の呼応を考えず、めいめいのことしかやらないなら、戦略作戦全体としては依然として呼応の役割をうしなっていないとしても、戦役作戦上の呼応がないため、戦略的呼応の意義はよわめられてしまう。この点は、すべての遊撃戦争の指導者のよく注意しなければならないことである。この目的をたっするには、比較的大きな遊撃部隊や遊撃兵団のすべてに無線電信を設置しておくことが、どうしても必要である。
 最後に、戦闘上の呼応、すなわち戦場作戦での呼応は、内線戦場の近くにいるすべての遊撃隊の任務である。もちろん、これは、正規軍の近くにいる遊撃隊または臨時に正規軍から派遣された遊撃隊にかぎる。このようなばあい、遊撃隊は正規軍の指導者の指示にしたがって、通常、一部の敵の牽制、敵の輸送の妨害、敵情の偵察、道案内など、指定された任務を担当しなければならない。正規軍の指導者からの指示がないときでも、遊撃隊はすすんでこれらのことをしなければならない。見ていてもなにもしない、遊動もしなければ攻撃もしない、遊動はしても攻撃はしないというような態度があってはならない。


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