前へ  目次へ  次へ


     抗日戦争の状況と教訓

  あなたのみるところでは、戦争はいままでにどんな結果をもたらしているでしょうか。
  主として二つの面があります。一つの面は、日本帝国主義の都市攻略、国土占領、強姦《ごうかん》、略奪、放火、虐殺によって、中国人には、亡国の危険が最後のところまできていることです。もう一つの面は、中国の大多数の人びとがこのことから危機を救うにはいっそう団結し、全民族の抗戦を実現しなければならないという深い認識をえたことです。同時に世界の平和諸国にも、日本の脅威に抵抗する必要性を悟らせはじめたことです。以上がすでにもたらされた結果です。
  日本のねらいはなんであるとお考えになりますか。そのねらいはどのくらい実現しているでしょうか。
  日本の計画は、第一歩が華北地方と上海《シャンハイ》を占領すること、第二歩が中国のそのほかの地域を占領することです。日本侵略者がどの程度その計画を実現したかという点についていえば、中国の抗戦がいまのところまだ政府と軍隊だけによる抗戦にとどまっているため、日本侵略者は短期間にすでに、河北《ホーペイ》、察哈爾《ちゃーはーる》、綏遠《スイユァン》の三省を手にいれたし、山西《シャンシー》省もまた危険な状態にあります。この危険な局面を救うには、民衆と政府が一致して抗戦するよりほかにありません。
  あなたのご意見によれば、中国の抗戦には成果もあるのではないでしょうか。もし教訓があるとすれば、それはどういうものでしょうか。
  この問題については少しくわしくお話しいたしましょう。まずなによりも、成果はあがっており、しかもそれが偉大だということです。それはつぎのことにあらわれています。(一)現在の抗日戦争は、帝国主義の中国にたいする侵略がはじまっていらい、かつて見られなかったものだということです。それは地域的にいってほんとうに全国的な戦争です。この戦争の性質は革命的なものです。(二)戦争は、全国のばらばらに分裂していた局面をわりあいに団結した局面に変えたことです。この団結の基礎になっているのが国共合作です。(三)国際世論の共鳴をよびおこしたことです。国際間では、これまで中国の無抵抗をけいべつしていたのが、いまでは中国の抵抗に敬意をはらうようになっています。(四)日本侵略者に大きな消耗をあたえたことです。日本侵略者の物的消耗は日に二千万円といわれています。人的消耗についてはまだ統計がありませんが、それもきっと大きなものでしょう。日本侵略者は、まえにはほとんど骨もおらずにやすやすと東北四省を手にいれることができたが、いまでは血戦なしに中国の土地を占領することはできません。日本侵略者はもともと中国でその野望をみたそうとしていたのですが、中国の長期にわたる抵抗によって、日本帝国主義そのものが崩壊の道に追いやられるでしょう。この面からいえば、中国の抗戦は、自分を救うためばかりでなく、全世界の反ファシズム戦線のなかでも偉大な責務をはたしているのです。抗日戦争の革命性はこの面にもあらわれています。
 (五)戦争から教訓をえたことです。この教訓は土地と血によってあがなわれたものです。
 教訓についていえば、これも大きなものです。数ヵ月の抗戦で、中国の多くの弱点が暴露されました。それはまず政治の面にあらわれていまも。この戦争にくわわっているのは、地域的には全国的ですが、くわわっている層は全国的ではありません。広範な人民大衆はやはり以前とおなじように、戦争へ参加することを政府から制限されているので、現在の戦争はまだ大衆性をもった戦争とはなっていません。日本帝国主義の侵略に反対する戦争であっても、大衆性をおびていなければ、けっして勝利できるものではありません。一部の人は、「いまの戦争はすでに全面的な戦争だ」といっています。これは戦争にくわわっている地域が普遍的であることをいいあらわしているにすぎません。抗戦はまだ政府と軍隊だけの抗戦で、人民の抗戦とはなっていないので、戦争にくわわっている層からいえば一面的です。この数ヵ月のあいだに、多くの土地がうしなわれ、多くの軍隊が敗北をなめていますが、おもな原因はここにあります。したがって現在の抗戦は、革命的なものではあるが、その革命性が不完全なのは、まだ大衆的な戦争となっていないからです。これは同時に団結の問題でもあります。中国の各政党は、まえよりは団結していますが、必要としている程度までにはまだほど遠いものがあります。政治犯の大多数はまだ釈放されていず、政党禁止もまだ完全には解除されていません。政府と人民のあいだ、軍隊と人民のあいだ、将校と兵士のあいだの関係は、依然として非常にわるく、そこにあるものは団結ではなくて離隔です。これはもっとも基本的な問題です。この問題が解決されなければ、戦争の勝利など話にもなりません。そのほか軍事上のあやまりも、軍隊と土地をうしなった大きな原因の一つです。これまでの戦いの大半は受動的な戦いで、軍事用語で「単純防御」とよばれるものです。このような戦いかたでは勝利する可能性はありません。勝利するには、政治上、軍事上で、いまとは大いにちがった政策をとらなければなりません。これがわれわれのえた教訓です。
  では、政治上、軍事上の必要な条件とはなんでしょうか。
  政治上からいうと、第一には、現政府を、人民の代表が参加する統一戦線の政府に改造しなければならないことです。この政府は民主的であり、また集中的でもあります。この政府は必要な革命的政策を実行します。第二には、戦争に大衆性をもたせるために、人民に言論、出版、集会、結社、武装抗戦の自由をゆるすことです。第三には、人民の生活の改善が必要で、その改善の方法としては、苛酷《かこく》で雑多な税金の廃止、小作料・利子の引き下げ、労働者と下級将兵の待遇改善、抗日軍人家族の優遇、被災者や避難民の救済などがふくまれます。政府の財政は合理的な負担、つまり金のあるものが金をだすという原則のうえにたてるれるべきです。第四には、外交政策の積極化をはかることです。第五には、文化教育政策を改革することです。第六には、民族裏切り者をきびしく弾圧することです。この問題は現在すでにきわめて重大なものになっています。民族裏切り者はだれはばかるところなく横行しています。つまり戦区では敵をたすけ、後方ではほしいままに攪乱《かくらん》し、うわべは抗日の格好をよそおって、愛国的人民を逆に民族裏切り者よばわりして逮捕するものさえいます。だが、民族裏切り者をほんとうに弾圧するには、人民が立ちあがって政府に協力しないかぎり不可能です。軍事上からいうと、これも全面的な改革を実行しなければなりません。それは主として、戦略上戦術上の単純防御の方針を敵にたいする積極的攻撃の方針にあらためること、ふるい制度の軍隊を新しい制度の軍隊にあらためること、強制動員の方法を、人民が前線におもむくよう激励する方法にあらためること、不統一な指揮を統一的な指揮にあらためること、人民から遊離した無規律な状態を、自覚の原則のうえにうちたてられた少しも人民の利益をそこなわない規律にあらためること、正規軍だけで戦う局面を、広範な人民遊撃戦争を発展させて正規軍の戦いに呼応させる局面にあらためることなどです。以上にのべた政治的、軍事的条件は、すべてわれわれの発表した十大綱領のなかで提起されているものです。これらの政策は、孫中山《スンチョンシャン》先生の三民主義、三大政策およびその遺言の精神に合致するものです。こうしたことを実行しなければ、戦争に勝利することはできません。
  共産党はどのようにしてこの綱領を実行しますか。
  われわれの活動は、抗日民族統一戦線を拡大強化し、すべての力を動員して、抗戦の勝利をかちとるためにたたかうよう、うむことのない努力をはらって現在の情勢を説明し、国民党およびその他すべての愛国的諸政党と連合することです。いまの抗日民族統一戦線は範囲がまだ非常に狭いので、これを拡大しなければなりません。つまり孫中山先生の「民衆をよびさます」という遺言を実行し、社会の下層民衆をこの統一戦線に参加させるよう動員することです。統一戦線の強化についていえば、共同綱領を実行することであり、この綱領によって各党各派の行動を制約するのです。われわれは、孫中山先生の革命的三民主義、三大政策およびその遺言を各政党、各階層の統一戦線の共同綱領とすることに同意します。しかし、この綱領は、いまでもまだ各政党から認められていず、なによりもまず国民党がまだこうした全面的な綱領を発表することを認めていません。国民党は現在すでに孫中山先生の民族主義を部分的には実行しており、それは対日抗戦の実行にあらわれています。しかし、民権主義は実行されていず、民生主義も実行されていず、こうしたところから現在の抗戦に重大な危機がうまれています。戦争がこのように緊迫している現在こそ、国民党が全面的に三民主義を実行すべきときであって、これ以上実行しないでいるならば、後悔してもおよばないでしょう。共産党の責務は、抗日民族統一戦線の拡大と強化のために、真の革命的三民主義、三大政策および孫氏の遺言がかならず全国的範囲で全面的、徹底的に実行されるよう、声を大にして、国民党と全国人民にうむことなく説明し説得することにあります。


前へ  目次へ  次へ