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     民主と自由のためのたたかい

 (七)日本帝国主義は、いま中国中心部にたいする侵略準備に、拍車をかけている。ヒトラーやムッソリーニが西方で準備に拍車をかけている強盗戦争に呼応して、日本は東方で、既定の段どりにしたがって、中国を一挙に滅ぼす条件――国内の軍事的、政治的、経済的、思想的条件、国際上の外交的条件、中国での親日勢力の育成――をあらゆる精力をかたむけて準備している。「中日提携」なるものの宣伝や、一部の外交的措置の緩和は、まさに戦争前夜における日本の侵略政策の戦術的必要からでている。中国はその存亡をきめる瀬戸ぎわにおいこまれている。中国の救国抗戦は、駆け足で準備されなければならない。われわれは、準備に反対するものではないが、長期準備論には反対であり、また官吏や軍人の安楽をむさぼり、飽食して日をすごす亡国的現象には反対する。こうしたことは、実際には敵をたすけるもので、すみやかに一掃しなければならない。
 (八)政治、軍事、経済、教育のうえで国防の準備をすることは、救国抗戦にとって欠くことのできない条件であり、一刻も猶予してはならないものである。そして、政治上の民主と自由をかちとることは、抗戦の勝利を保障する中心的な環である。抗戦には、全国的な平和と団結が必要であり、民主と自由がなければ、すでにかちとった平和をかためることもできなければ、国内の団結をつよめることもできない。抗戦には人民の動員が必要であるが、民主と自由がなければ、動員をするにもしようがない。強固な平和と団結がなく、人民の動員がなければ、抗戦の前途はエチオピアの二の舞いをふむことになる。エチオピアが敗北したのは、おもに内部の団結をかためることができず、人民の積極性を発揮させることのできない封建制度の支配によるものである。中国がほんとうの強固な抗日民族統一戦線をうちたて、またその任務を達成するには、民主主義がなければだめである。
 (九)中国は、ただちに、つぎの二つの面で民主的改革を実行しはじめなければならない。第一の面は、政治制度のうえで国民党による一政党、一階級だけの反動的独裁的政体を、各政党、各階級の協力による民主的政体にあらためることである。この面です、まず国民大会の選挙とその招集上の反民主的なやり方をあらためて、民主的な選挙を実行し、入会の自由な開催を保障することから、ほんとうの民主的憲法を制定し、ほんとうの民主的国会を招集し、ほんとうの民主的政府を選出し、ほんとうの民主的政策を実施することまでやらなければならない。そうしないかぎり、挙国一致して外敵に抵抗するために、ほんとうに国内の平和をかため、国内の武力による対立をやめさせ、国内の団結をつよめることはできない。しかし、われわれの改革が終わらないうちに、日本帝国主義が進攻してくるという事態がおこる可能性もある。したがって、日本の進攻にいつでも抵抗でき、それに徹底的にうち勝つためには、われわれはすみやかに改革をすすめなければならず、また抗戦の過程で徹底的改革にまですすむ心構えをすることである。全国人民および各政党の愛国的な人びとは、国民大会や憲法制定の問題にたいするこれまでの冷淡な態度をすて、国防的意義をもつこの具体的な国民大会運動と憲法運動に力を集中し、政権をにぎっている国民党をきびしく批判し、国民党がその一政党、一階級の独裁をすてて人民の意見を実行するように推進し督促しなければならない。ことしの数ヵ月のあいだに、全国で広範な民主主義運動をおこさなければならない。この運動の当面の目標は、国民大会と憲法の民主化の達成におくべきである。第二の面は、人民の言論、集会、結社の自由である。このような自由がなければ、政治制度の民主的改革を実現することもできず、祖国防衛と失地回復の勝利をかちとるよう人民を抗戦に動員することもできない。ここ数ヵ月のうちに、全国人民の民主主義運動は、政治犯の釈放、政党禁止の解除などをふくむこの任務の最低限度の達成をたたかいとらなければならない。政治制度の民主的改革と、人民の自由の権利は、抗日民族統一戦線の綱領の重要な部分であり、同時にそれは、ほんとうの強固な抗日民族統一戦線をうちたてるための必要な条件でもある。
 (一〇)われわれの敵――日本帝国主義、中国の民族裏切り者、親日派、トロツキストは、全力をあげて中国の平和と統一、民主と自由、および対日抗戦の一つ一つの段どりを破壊している。これまで、われわれが平和と統一のためにたたかっていたとき、かれらは、内戦と分裂を挑発することに全力をつくした。現在および近い将来、われわれが、民主と自由のためにたたかうとき、かれらはまたこれを破壊しようとするにちがいない。かれらの総目標は、祖国を防衛するわれわれの抗戦任務を成功させないようにし、中国を滅亡させようとするかれらの侵略計画の目的を達成することにある。今後、民主と自由をたたかいとる闘争では、国民党の頑迷派や人民内部のおくれた層にたいする宣伝、扇動および批判の活動に力をいれるだけでなく、日本帝国主義および日本の中国侵略の手先をつとめる親日派とトロツキストの陰謀にたちむかい、あますところなくこれを暴露し、断固としてこれとたたかわなければならない。
 (一一)平和と民主と抗戦のために、また抗日の民族統一戦線をうちたてるために、中国共産党は、すでに国民党中央執行委員会第三回全体会議にあてた電報のなかで、つぎの四項目を保証している。(イ)共産党の指導する陝西《シャンシー》・甘粛《カンスー》・寧夏《ニンシァ》革命根拠地の政府は、中華民国特別地区政府と改称し、赤軍は国民革命軍と改称して、南京中央政府および軍事委員会の指示をうけること。(ロ)特別地区政府の地域内では、徹底的な民主制度を実行すること。(ハ)国民党を武力によってうちたおす方針をとりやめること。(ニ)地主の土地の没収をとりやめること。これらの保証は、必要なことであり、またゆるされることである。なぜなら、そうしないかぎり、民族的矛盾と国内的矛盾の政治的比重のうえでの変化にもとづいて、国内の二つの政権の敵対状態をあらため、一致団結し、ともに敵にあたることはできないからである。これは、原則性のある条件つきの譲歩であり、このような譲歩をするのは、そのかわりとして全民族が必要としている平和、民主、抗戦を手にいれるためである。だが、譲歩には限度がある。特別地区と赤軍のなかでの共産党の指導の確保、国民党と共産党の両党の関係における共産党の独立性と批判の自由の確保、これが譲歩の限度であり、この限度をこえることはゆるされない。譲歩は両党の譲歩である。国民党は内戦、独裁および対外無抵抗政策を放棄し、共産党は二つの政権の敵対という政策を放棄することである。われわれは、後者によって前者を手にいれ、あらためて国民党と協力し、救国のためにたたかうのである。これを共産党の降伏だというならば、それは阿Q主義〔14〕と悪意にみちた中傷でしかない。
 (一二)共産党は三民主義に賛成するのか。賛成するとわれわれは答える〔15〕。三民主義には歴史上変化があった。孫中山《スンチョンシャン》先生の革命的三民主義は、かつて孫中山先生が共産党と協力し、それを断固として実行したことによって人民の信頼をかちとり、一九二四年から一九二七年までの勝利にかがやく革命の旗じるしとなった。ところが、一九二七年に国民党は共産党を排斥し(清党運動〔16〕と反共戦争)、まったく反対の政策をとって、革命を失敗させ、民族を危険な状態におとしいれたので、三民主義も人民から信頼をうしなった。現在、民族の危機はきわめて重大で、国民党は、もはやいままでどおりの支配をつづけられなくなったので、全国の人民や国民党内の愛国的な人びとは、両党が協力することをふたたび切実に要求している。したがって、三民主義の精神をたてなおし、対外的には独立と解放をたたかいとる民族主義、対内的には民主と自由を実現する民権主義および人民の幸福を増進する民生主義のもとで、両党がふたたび協力し、また断固それを実行するよう人民を指導することは、中国革命の歴史的要求に完全に合致するものであって、共産党員はだれでもこれをはっきりと認識していなければならない。共産党員は、けっして社会主義と共産主義の理想をすてるものではなく、ブルジョア民主主義革命の段階をへて社会主義と共産主義の段階に到達しようとするものである。中国共産党は自分の政治経済綱領をもっている。その最高の綱領は社会主義および共産主義であって、それは三民主義とはちがっている。その民主主義革命の時期における綱領もまた、国内のどの政党のものよりも徹底している。しかし、共産党の民主主義革命の綱領は、国民党の第一回全国代表大会で宣言された三民主義の綱領と、基本的には衝突しない。だから、われわれは、三民主義を拒否しないばかりか、三民主義を断固実行する考えであり、しかも、国民党にわれわれとともに三民主義を実行するよう要求し、また全国の人民に三民主義を実行するようよびかけるものである。共産党、国民党、全国の人民は一致協力して、民族の独立、民権の自由、民生の幸福という、この三大目標のために奮闘しなければならないものとわれわれは考える。
 (一三)われわれのこれまでの労農民主共和国のスローガンは、まちがっていたであろうか。まちがってはいなかった。ブルジョア階級、とくに大ブルジョア階級が、革命から脱落し、しかも帝国主義と封建勢力に身を投じ、人民の敵となった以上、革命の原動力は、ただプロレタリア階級、農民および都市の小ブルジョア階級だけとなり、革命の政党は、ただ共産党だけとなり、革命を組織する責務は、唯一の革命政党としての共産党の肩にかかってこざるをえなかった。共産党だけが、革命の旗を高くかかげつづけ、革命の伝統をまもり、労農民主共和国のスローガンをかかげ、しかも、そのスローガンのために長い年月のあいだ困難にめげず奮闘してきた。労農民主共和国のスローガンは、ブルジョア民主主義革命の任務にそむくものではなくて、ブルジョア民主主義革命の任務を断固として実行するものである。実際のたたかいにおいてわれわれの政策はなに一つとしてこの任務に反するものはなかった。地主の土地の没収と八時間労働制の実施をふくむわれわれの政策は、資本主義的範疇《はんちゅう》での私有財産制の限界をこえるものではなかったし、社会主義を実行するものでもなかった。新しい民主共和国にふくまれる階級的要素とはどのようなものか。それにふくまれるものは、プロレタリア階級、農民、都市小ブルジョア階級、ブルジョア階級および民族民主主義革命に賛成する国内のすべての人びとであり、それは、これらの階級の民族民主主義革命の同盟である。ここでの特徴はブルジョア階級がふくまれることであり、それは、こんにちの環境のもとで、ブルジョア階級にふたたび抗日に参加する可能性がでてきたので、プロレタリア階級の政党としては、かれらを拒否すべきではなく、中国革命の前進に役立てるために、かれらをひきいれ、かれらとともにたたかう同盟を復活しなければならないからである。国内の武力衝突を停止させるために、共産党は、地主の土地を暴力によって没収する政策をとりやめるつもりであり、土地問題は、新しい民主共和国を建設する過程で、立法的な方法や別の適切な方法で解決する用意がある。中国の土地は、日本人のものか、それとも中国人のものか。これがまず解決されなければならない問題である。中国を防衛するという大前提のもとで、農民の土地問題を解決するからには、暴力によって没収する方法から新しい適切な方法に転換することは、ぜひとも必要なことである。
 労農民主共和国のスローガンが以前提起されたことも、こんにち放棄されたことも、どちらも正しい。
 (一四)民族統一戦線をうちたて、ともに敵にあたるためには、国内の一部の矛盾を適切に解決しなければならない。それは、抗日民族統一戦線をよわめたり、せばめたりすることではなく、その強化と拡大に役立つことを原則とすべきである。民主主義革命の段階では、国内の各階級間、各政党間、各政治集団間の矛盾と闘争は、さげられないものである。だが、団結して抗日することにとって不利な闘争(国内戦争、政党間の敵対、地方的割拠、一方における封建的な政治的抑圧および経済的抑圧、他方における暴動政策および抗日に不利な過大な経済的要求など)は停止できるし、また停止しなければならず、団結して抗日することにとって有利な闘争(批判の自由、政党の独立性、人民の政治的条件および経済的条件の改善など)は持続していく。
 (一五)抗日民族統一戦線と統一的な民主共和国のためにたたかうという全般的任務のもとでの、赤軍と抗日根拠地の任務はつぎのとおりである。(1)赤軍を抗日戦争という状況に適応させるよう、ただちに国民革命軍に編成がえするとともに、軍事的、政治的、文化的教育をよりいっそうたかめて、抗日戦争における模範兵団につくりあげる。(2)根拠地を国家の一構成部分にかえ、新しい条件のもとでの民主制度を実行し、保安部隊を編成しなおし、民族裏切り者や攪乱《かくらん》分子を一掃して、抗日と民主の模範地域につくりあげる。(3)この地域内で必要な経済建設をおこない、人民の生活状態を改善する。(4)必要な文化建設をおこなう。


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