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農村の階級をいかに分析するか

          (一九三三年十月)

     一 地主

 土地を所有し、自分では労働をしないか、あるいはただ補助的な労働をするだけで、農民を搾取することによって生活するものを地主という。地主の搾取方式は、主として小作料の取りたてであるが、そのほかに、金貸しか、作男の雇用か、商工業の経営かを兼ねたりしている。しかし、農民にたいする小作料の搾取が、地主の主要な搾取方式である。共有の財産の管理と学田の地代徴収〔1〕も小作料搾取の一種である。
 地主のうち一部の、すでに破産してはいるが、破産後もあいかわらず労働せず、詐欺、略奪、あるいは親戚友人からの援助などの方法にたよって生活し、その生活状態が普通の中農以上であるものは、やはり地主のなかにいれる。
 軍閥、官僚、土豪、劣紳は、地主階級の政治的代表であり、地主のなかでもとくに悪らつなものである。わりあいに小さな土豪、劣紳は富農のなかにもよくいる。
 地主をたすけて小作料を取りたてたり、家の差配をしたりし、地主の農民にたいする搾取に依存して、それを生活の主要な源泉にしており、その生活状態が普通の中農以上である一部のものは、地主とおなじとりあつかいをすべきである。
 高利貸しによる搾取を生活の主要な源泉にしており、その生活状態が普通の中農以上であるものは、高利貸しとよび、地主とおなじとりあつかいをすべきである。


     二 富農

 富農は一般に土地を所有している。しかし、なかには、自分でも一部の土地を所有しているが、別に一部の土地を借りいれているものもいる。また、自分ではぜんぜん土地を所有せず、全部の土地を借りいれているものもいる。富農は、一般に、わりあい多くの生産用具と流動資本をもち、自分でも労働するが、恒常的に搾取にたより、それを生活の一部または大部分の源泉にしている。富農の搾取方式は、主として雇用労働(年季作男のやといいれ)の搾取である。そのほかに、一部の土地の貸しつけによる小作料の搾取か、金貸しか、商工業の経営かを兼ねたりしている。富農の大半はまた共有の財産を管理している。あるものは、かなり多くのよい土地を所有し、作男をやといいれないで自分で労働するが、小作料や金利などの、別の方式で農民を搾取している。このような状態にあるものも富農としてとりあつかうべきである。富農の搾取は恒常的なものであり、しかも多くの富農の搾取による収入は、その全収入のうちでも主要な部分をしめている。


     三 中農

 中農の多くは土地を所有している。中農の一部は、土地を一部所有するだけで、ほかの一部の土地は借りいれている。中農の一部は、土地を所有せず、土地は全部借りいれている。中農はみな自分でかなりの生産用具をもっている。中農の生活の源泉は、全部が自分の労働によるか、あるいは主として自分の労働による。一般に中農は他人を搾取せず「多くの中農は、わずかながら他人から小作料、金利などによる搾取をうけている。しかし、一般に中農は労働力を売らない。他の一部の中農(富裕中農)は、わずかながら他人を搾取しているが、それは恒常的なものでも、主要なものでもない。


     四 貧農

 貧農のなかの一部は、土地の一部と不完全な生産用具をもっており、一部は土地がぜんぜんなく、わずかばかりの不完全な生産用具しかもっていない。一般には、土地を借りいれて耕作しなければならす、他人から小作料、金利および小部分の雇用労働による搾取をうけている。
 中農は一般に労働力を売る必要はないが、貧農は一般に小部分ながら労働力を売らなければならない。これが、中農と貧農とを区別する主要な基準である。


     五 労働者

 労働者(雇農をふくむ)は一般に土地も生産用具もぜんぜんもっていない。労働者のなかにはごくわずかな土地と生産用具をもっているものもいる。労働者は、完全にか、あるいは主として、労働力を売ることによって生活している。




〔1〕 中国の農村にはたくさんの共有地があった。あるものは政治的な性質をもっていた。たとえば区や郷の政府がもっていた土地がそれである。あるものは同族的な性質をもっていた。たとえはそれぞれの同族の祖先廟がもっていた土地がそれである。あるものは宗教的な性質をもっていた。たとえば仏教、道教、カトリック教、回教などの寺院がもっていた土地がそれである。あるものは社会救済あるいは社会公益的性質をもっていた。たとえば備荒倉、橋梁・道路修築の費用にあてるための土地がそれである。あるものは教育的な性質をもっていた。たとえば学田がそれである。こうした土地の大部分は地主、富農の手ににぎられ、農民が関与する権利をもつ土地はごく一部にすぎなかった。


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