トランス脂肪酸

2005-11-4

1 油脂の構造

 油脂はグリセリンと脂肪酸から構成されている。下図を見れば分かるがグリセリン(C3H5(OH))に脂肪酸が3つ結合したのが油脂である。グリセリンの部分はすべての油脂共通の構造なので、脂肪酸の部分が油脂の性質を決定する。

 脂肪酸は飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸とに分類される。ではこれから飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸について説明しよう。

2 飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸

 そのそも飽和脂肪酸とか不飽和脂肪酸とは何だろうか。その違いは単に構造の違いである。
具体的に言うと脂肪酸の炭素の結合に二重結合があるかどうかの違いである。たったそれだけかと思うかもしれない。しかしこの違いが性質に大きな違いを及ぼすのである。炭素間に二重結合がある不飽和脂肪酸は二重結合の部分で折れ曲がっている。一方飽和脂肪酸はまっすぐである。
 実は不飽和脂肪酸は折れ曲がっているため密集しにくい。つまり固まりにくいのである。そして飽和脂肪酸は直線形のため固まりやすいのである。
 一定体積の箱に同じ長さの2種類の棒、まっすぐな棒と曲がっている棒があり、入れることを考えよう。当然折れ曲がっている棒よりもまっすぐな棒の方がたくさん入るだろう。
 さて眠くなる説明はここまでにして結論を述べよう。
 
 
飽和脂肪酸は固まりやすい
 バターやラードなどの動物性脂肪は飽和脂肪酸を多く含んでいる。
 不飽和脂肪酸は固まりにくい
 オリーブオイルやサラダ油などの植物性脂肪は不飽和脂肪酸を多く含んでいる。

3 飽和脂肪酸は体に悪いのか?

 飽和脂肪酸は固まりやすいことが分かった。当然この飽和脂肪酸は体内でも固まりやすいのである。飽和脂肪酸は固まりやすいため血液の粘度を高めて血液を流れにくくする。中性脂肪や悪玉コレステロール(LDLコレステロール)を合成する作用が高いので動脈硬化の原因になる。そして当然中性脂肪が多くなれば肥満の原因になる。
 しかし飽和脂肪酸も三大栄養素の脂質のひとつである。当然全く摂取しないこともよくない。他の栄養素とのバランスを考えることが大切である。下に飽和脂肪酸の役割を書いておいた。是非見ておいて欲しい。
 
飽和脂肪酸が不足すると・・・血管がもろくなる、貧血、めまいなど
飽和脂肪酸を摂りすぎると・・・肥満、動脈硬化、心筋梗塞、脳卒中など

4 中性脂肪と悪玉コレステロール(LDLコレステロール)

 中性脂肪と悪玉コレステロールはよくないということがわかったと思う。ここではこれらがどのようなものなのかを説明しよう。
 中性脂肪とは体内に蓄えられている脂肪のことである。つまりお腹をつまんだらでるあれである。具体的には中性脂肪はトリグリセライドという物質である。中性脂肪は体内に蓄えられる脂肪であり、普段食べている脂肪とは違うので混同してはいけない。
 コレステロールは体内の脂質のひとつである。体内の脂質は9割が中性脂肪で、残りが細胞膜などを構成するリン脂質とこのコレステロールである。
 悪玉コレステロールは別名LDLコレステロールと呼ばれる。悪玉コレステロールは活性酸素の影響で変性悪玉コレステロールに変化し、血管を傷つけ、その傷を治そうとして血小板が集まり、かさぶた状態になる。これが血栓で、血栓は血管を細くして血液の流れを悪くする。これを繰り返すと血管はぼろぼろになって、動脈硬化になる。しかし悪玉コレステロールもコレステロールのひとつであり、これが絶対悪いっていうことではない。
コレステロールは過剰にとると人体に悪影響を及ぼすが、我々にとっては不可欠な物質である。
 コレステロールの働き
1、細胞膜を安定させる
コレステロールが不安定な細胞膜を安定させる支柱としての役割を担います。
2、ホルモンの材料になる
生命活動には欠かせない副腎皮質ホルモン、性ホルモンを合成の材料となります。
3、胆汁酸の材料になる
肝臓で作られる胆汁酸は、小腸での脂肪の消化、吸収を助ける働きをします。コレステロールは胆汁酸 の合成の材料となります。
 コレステロールも人間には必要不可欠な物質である。しかし過剰に摂取するとさまざまな悪影響を及ばすのである。

 トランス脂肪酸の構造と性質

 理解を深めて欲しいため、トランス脂肪酸の構造の説明も入れておいた。興味のない人にしてはつまらない内容だと思うが我慢して読んでみて欲しい。
 トランスって何?
 トランスとは有機物の構造のことだ。トランスに対応する構造としてシスというものがある。そんなこと言われても分からないって思うだろう。ではさっそく簡単な例をあげてみよう。

       シス-2-ブテン    トランス-2-ブテン

 どちらもブテン(C4H8)だ。真中に水平な赤線があるが、シスはCH3が2つとも上にある。しかしトランスは上と下にCH3が分かれていて、しかも右と左にある。これがシスとトランスの違い。たったこれだけって思うだろう。確かに炭素4つのブテンではシスもトランスの性質はほとんど同じである。しかしこれが炭素が10個以上ある脂肪酸の場合は大きな影響を及ぼすことになる。
 トランス脂肪酸は不飽和脂肪酸なのに固まりやすい
 オリーブオイルに多く含まれる不飽和脂肪酸であるオレイン酸(C17H33COOH)。前で述べたように不飽和脂肪酸は途中で折れ曲がっているため固まりにくい。実はオレイン酸と全く同じ化学式を持つ脂肪酸が存在する。それがトランス脂肪酸であるエライジン酸(C17H33COOH)である。
 化学式が同じなら何が違うの?と思うだろう。オレイン酸とエライジン酸の違いは先ほど述べたシス、トランスの違いなのである。
 ではさっそくオレイン酸とエライジン酸の立体構造を描いてみよう。










        オレイン酸(C17H33COOH)





        エライジン酸(C17H33COOH)
 赤で囲った部分に注目して欲しい。ここが二者の構造の違いで、オレイン酸がシスでエライジン酸がトランスである。
 そして両者の全体像を見て欲しい。どちらも不飽和脂肪酸である。当然オレイン酸は二重結合の部分で折れ曲がっている。ところが・・・なんとエライジン酸は折れ曲がっていない!二重結合があるにもかかわらず直線形なのである。
 つまりエライジン酸、その他トランス脂肪酸は不飽和脂肪酸なのに固まりやすいのである。この固まりやすいという性質は飽和脂肪酸と同じ。だからこのトランス脂肪酸は体内に入ると飽和脂肪酸のような悪影響を及ぼす。そしてトランス脂肪酸はさらに困ったことをするのである。

6 狂った人工化合物、トランス脂肪酸 百害あって一利なし!

 そもそも天然の不飽和脂肪酸はすべてシスである。つまりトランス脂肪酸は本来天然には存在しない。そのためこのトランス脂肪酸は人体に恐ろしい害を及ぼす。
トランス脂肪酸の害(知られているものを書いてみました。1と5以外は現在も研究中でまだ確定はしていません。)
1、飽和脂肪酸と同じように肥満、動脈硬化、心筋梗塞、脳卒中の原因になる。
 トランス脂肪酸は飽和脂肪酸のように固まりやすい。トランス脂肪酸=飽和脂肪酸 と考えてもいいのでは?
2、クーロン病の原因になる
 クーロン病は特発性慢性型の腸炎で、バクテリアやウイルスのような微生物や免疫の乱れが原因で発症する。腸管壁の細胞が壊れており、大きな分子、つま り体にとっては異物であるものが腸の壁の中に入ってきて、そこで 防御反応というか炎症反応が起き、腸壁に傷(潰瘍)ができてくる 事が原因の一つになっていると言われている。脂肪酸は細胞膜を構成する物質だが、トランス脂肪酸から細胞膜を構成すると膜の構造が弱くなり、有害な物質の侵入を許しやすくなる。これがクーロン病の原因だと考えられている。しかし多くの医者がクー ロン病は原因不明と述べている。
3、皮ふトラブルの元になる
 トランス脂肪酸から細胞膜を構成すると膜の構造が弱くなるが、これが皮ふ細胞の場合は有害物質の侵入を許しやすくなる。
4、認知症になる可能性大
 米国神経学会でトランス脂肪酸の取りすぎと認知症の発症確率が増加には関連あり、という論文が発表された。.
5、必須脂肪酸としての機能を持たないため生体膜の材料、ホルモンにもならないが、排泄するための代謝に、大量のビタミンとミネラルを消耗する
その他に、ぜんそく、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎の原因になる、血圧を上げる、妊娠率を低下させると言われている(これらの病を引き起こす原因までは調べられなかった)。

 一応インターネットにあるものはできる限り書いてみた。もっと詳しく調べると他にも悪影響が見つかるかもしれない。それではここでトランス脂肪酸の影響についで結論を述べよう。
 トランス脂肪酸は飽和脂肪酸の欠点を持つばかりかさまざまな病気の原因になる可能性がある。そして飽和脂肪酸の有用な役割を持たず、消化するのにエネルギーを消耗する。

7 トランス脂肪酸はどのようにしてできるのか

 トランス脂肪酸は高温で発生する。食用油の場合、製油の過程で、高温下で化学処理をするのでトランス脂肪酸が生じる。さらにマーガリンの場合、製造の過程で、不飽和脂肪酸に水素を添加するのだか最大45%の不飽和脂肪酸がトランス脂肪酸に変化する。

8 化学工業製品マーガリン

 マーガリンがトランス脂肪酸を多く含む原因はその製法にある。マーガリンの原料は植物性の食用油である。一応植物性だが残念なことに現代の食用油は製油の過程でトランス脂肪酸が発生してしまう。そしてその原料である植物性の食用油にニッケルを触媒にして水素を添加するのである。すると脂肪酸の二重結合の部分に水素が結合し、不飽和脂肪酸が飽和脂肪酸に変化するのである。そしてこの過程で不飽和脂肪酸の45%がトランス脂肪酸になってしまう。
 つまりマーガリンはもともとトランス脂肪酸を含む植物性の食用油を、さらにトランス脂肪酸に変えているのである。だからトランス脂肪酸が多いのだ。それにマーガリン自体が飽和脂肪酸。つまり我々はパンに飽和脂肪酸とトランス脂肪酸をたっぷり含んだ、化学的に処理された油を塗って食べていたのだ。 
 みなさん、もうマーガリンをパンに塗るのはやめましょう。まだトランス脂肪酸を含んでいないラードを塗るほうが健康的です。

9 最後に

 今回の文書を書くのに多くのサイトを参考にした。是非一度「トランス脂肪酸」と検索してみて欲しい。トランス脂肪酸についてもっと多くのことを知ることができるだろう。この文章は一部はオリジナルだが大半はインターネットを利用して書いた。全くの素人が書いたものなので事実と違っている部分があるだろうからこの文章を信じ込むのはよくないだろう。特にトランス脂肪酸については近年その危険性がわかったみたいで、まだわかっていないことが多いようだ。トランス脂肪酸についてはほとんどのサイトが批判的だが一部のサイトはそうではない。日本マーガリン工業会のサイトには「日本人はもともと脂肪の摂取量が少ないから気にしなくてもよい。」みたいなことを書いてある。
 トランス脂肪酸は危険なことはほぼ事実だろう。しかしまだわかっていないことも多いということも忘れてはいけない。