「絵の世界は美を扱った純粋の世界でいいですね。」という言葉をよく聞くが、絵を取り巻く環境は必ずしも純粋とは言えない複雑な絡み合いで成り立っていることも知っておく必要がある。創作する行為そのものは純粋で尊いものであると言えるが、その作品が一旦作者の手元から離れると社会の原理にそって評価が伴ってくる。評価には様々な要素が絡んでくる。作者の出身学校、所属団体、入選歴、受賞歴、師事する先生などの本人の経歴の他、年鑑の出版社、評論家、所属団体の役員等の力関係が大きく関係してくる。とても純粋な世界とは言えない複雑な絡みがある。その実態を知ってくるといやになってしまい途中で画家になる志を捨ててしまう作家も多い。純粋に絵が評価されるならば納得できるわけであるが、実際はそんな簡単なものではないということを認識しておく必要がある。しかし、ずば抜けてよい作品はその限りではない。誰もが認めるよい作品を創れば順当な評価が得られるはずだから悲観したことはない。しかし、一発勝負の一点だけでその評価を得ようとすることは不可能なことである。今までの作品の傾向とか可能性などを見てその作品が評価されるわけであるから一点だけの作品では無理である。コンクールなどに出品して賞をねらうなら可能である。評価がどう付くかは分からないところだ。長く画家生活を送るなら一発勝負に期待をかけるよりも地道な活動を選んだほうが得策と思われる。どちらにしろ選ぶのは自分自身であるわけだから自由だ。ただ、パッと咲いて散るんではさびしいことだ。継続してこそ力になるわけだから、そのへんのことをしっかり認識しておこう。世界的に権威のあるビエンナーレやアンデパンダン展等でいい賞をとれば問題なく高い評価がつきスターになることも夢ではないので挑戦する価値はある。日本画の千住博氏や版画の池田満寿夫氏や現代美術の岡本太郎氏などはそのいい例だ。ずば抜けた才能と幸運の備わった人だけに与えられるものかも知れない。羨ましい反面、その才能を継続しなければならないというプレッシャーと大衆の期待に応えていかなければならないことなど考えると大変だと思う。自己実現の可能性の高い方向に話しを戻そう。絵を取り巻く環境が一筋縄ではないことを再認識してほしい。展覧会の賞についても師弟関係の情実が絡んだり、会の功績度に関わったりして決められることがよくある。どの社会においてもあることが美術の世界にもあることを知って愕然とすることがある。せめて美術の世界だけはもっときれいであってほしいと願う気持ちを持ち続けたい。長い間、この世界に浸っているので違和感として感じなくなってきたきらいがあるので気をつけたい。私は、『よい絵はよい人間を見ること』と同じだという考えを持っている。絵は人間の手で創られるものであり、絵を人間に例えて言い表してみるとぴったりする。ただきれいだけの絵はすぐ飽いてしまうものだ。【きれいではないが何か魅力がある。その魅力は何か。言葉では表現できないが何か深いものを感じる。見ていると心が浮き浮きする。何度見ても飽きがこない。すばらしい予感を感じる。自分の手もてに置いておきたい。その絵を見ていると心が安まる。】などの言葉を人間を見る言葉に置き換えてみると【きれいな人ではないが何か魅力のある人だ。その魅力は顔だちではない。全体から受ける感じがよい。でも言葉ではっきりと表現できないが何か不思議なものを持っている人だ。心の深い感じの人だ。一緒にいると心が浮き浮きする。何度会っても飽きがこない。この人は将来性のある人だ。結婚したくなるような人だ。】と言うようににぴったりと合う。『よい絵とは自分にとってよい人と同じである』と言うことになる。こう考えるとよい絵を創った人もよい人ということが言えるかも知れないが、しかし、これは別である。有名な画家の中で人間性もよいと評価されている画家は非常に少ないからである。ユトリロはアル中患者であったし、ロートレックは放蕩三昧をしていたし、ピカソは何度も奥さんを変えたりして家庭的ではなかったし、ゴッホは精神を病んで自殺をしてしまった男であったし、ゴーギャンは家庭崩壊をしてしまった男であったり・・・などで、とても社会の模範や規範になるような人間ではない。かえって反社会的人間だったかも知れない。しかし、彼らはいろいろな犠牲をはらいながらも初志貫徹をし、すばらしい作品を残している。彼らは自分の心に忠実に生き、そして、誰もがやらないことを成し遂げた偉業は尊敬に値する。                      
  平成18年12月19日(火) 記
 
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