]Y

呪文から見るネギま!魔術の信仰的背景

さて、前回とは打って変わって判らないタイトルのマギ講です。
要するに呪文に出てくる精霊や神様(以降は一括して「神性」と呼びます)の名前から各魔術体
系(神明流は含みません)の背景にある信仰を探ろうというなんかもーそんなことどーでもいい
じゃんと言いたくなるような講義です。元から無い知識を更に無駄遣いした気がします。
それでは、行ってみましょうか。

ラテン語西洋魔術体系
まずは西洋魔術体系から。前回の講義で西洋魔術体系と古典ギリシア魔術体系はシモン・マ
グスから分かれたグノーシス思想を奥義とする魔術体系ではないかという仮説を立てました
が、どんなに崇高な哲学理念であろうと理解されにくいもの、観念的なものは段々堕落していく
方向にあることは事実です。グノーシス思想で崇拝される対象は真の善神であるアイオーンや
人間に知恵を与えた蛇神ですが、イギリスに伝わってからは土着の信仰や他の宗教知識が流
入して現在ではほとんど本来のグノーシス思想をとどめていません。
ただし、特筆すべきはその流入してきた宗教知識の中にキリスト教の影響がほとんど無いこと
です。一部においての影響が認められる事は確かですが(呪文が全てラテン語で記され発音さ
れる事、悪魔の召喚が行われ得る事など)、我々の世界の西洋魔法がほぼ完全にキリスト教
の神学理論を一部なりとも取り入れている事から考えれば一種異常とも思えるほどに直接的
な関連が認められないのです。これはやはり魔法界という外界と隔絶された環境が整っていれ
ばこその状況であると考えられます。
魔術体系に主に流入してきたのは精霊信仰、ケルト神話、ギリシア神話、ローマ神話など。こ
のうちギリシア神話とローマ神話に関しては(地理的に見て)古典ギリシア魔術体系から独立し
た段階ですでに流入してきていたと思われますが、他の二つに関しては恐らく体系確立後に流
入してきたものと考えられます。
夢の妖精 女王メイヴ
ケルト神話上ではアイルランド北西部に位置するコノートの女王で夢魔のような存在とされまし
たが、後世では妖精の女王マブとされました。
魔術体系に流入してからは専ら夢を司る妖精とされたようで、他人の夢をのぞき見る呪文「
の妖精、女王メイヴよ、扉を開き夢へといざなえ」に懇願の対象となる神性として登場していま
す。なお「女王メイヴ」という名の「夢の妖精」と捉えられているようです。
ムネーモシュネーとムーサ達
どちらもギリシア神話に登場する神性。ムネーモシュネーはオリュンポスに住まう記憶の神で
あり、ムーサ達はムネーモシュネーがゼウスとの間にもうけた9柱の詩歌の神です。魔術体系
流入後はギリシア神話とは反対にムネーモシュネーの方が重要視され、ムーサ達は彼女の娘
として僅かに総称が登場するに過ぎないようです。登場するのは対象者に術者の記憶を体験
させる呪文「ムーサ達の母、ムネーモシュネーよ、おのがもとへと我らを誘え」です。
ユピテル
ローマ神話に天空を司る主神として登場する神性です。ギリシア神話のゼウスとも同一視され
ます。魔術体系に流入してからは何故か治癒の神性とされたようで、回復の呪文「汝が為にユ
ピテル王の恩寵あれ」に名前が登場しています。これについてはユピテルがローマ建国の頃
建国者ロムルスとサビニ人が戦った際にロムルスを庇護したことから戦時の庇護→戦時に傷
つけられないようにする→治癒、という風に神性の属性の解釈が変化してきたとも考えられま
すが、詳しくはわかりません。
氷の精(氷神)・闇の精・光の精・雷の精・風の精(大気の精)
恐らく精霊信仰に由来すると考えられる正体不明の神性です。中には風の精のように他の神
話に結び付けられているものもあるようですが、基本的には由来不詳と見てよいでしょう。
もともと精霊信仰は世界中のどこでも見られる原始宗教の形態ですが、特にネギの出身地で
あるイギリス・ウェールズ地方にはケルト神話などと習合する形で精霊信仰が残されています。
これらの神性は「魔法の射手」「雷の暴風」「闇の吹雪」など一番多く呪文に登場します。
水妖・火蜥蜴
これらは神性というよりむしろ妖怪や幻獣に近い存在といえるでしょう。呪文も嘆願ではなく召
喚形式になっています。それぞれ「目醒め現れよ、波立つる水妖、水床に敵を沈めん。『流水
の縛り手』」「目醒め現れよ、燃え出づる火蜥蜴、火を以ってして敵を覆わん。『紫炎の捕らえ
』」に登場します。前者はゲルマン語文化圏の水の仙女、後者はギリシア・ローマ文化圏の
火の精霊です。
悪魔
西洋魔術体系において唯一キリスト教の流入を想起させる神性(?)です。特に呪文には出て
きませんが、コミックス8巻において悪魔を召喚する魔術の存在を暗示するセリフが見られま
す(「あの日召喚された者達の中でもごくわずかに召喚された爵位級の上位悪魔の一人だよ」
152ページ2コマ目より)。
呪いの精霊・書物の精霊
この二つの精霊は人工精霊と考えられます。前者はエヴァの「登校地獄」に利用され(「強力な
呪いの精霊をだまし続けるため…」 コミックス6巻156ページ4コマ目のチャチャ丸のセリフよ
り)、後者はのどかのアーティファクト「いどの絵日記」に利用されています(詳しくは「いどの絵
日記詳論」を参照のこと)。

古典ギリシア語魔術体系
古典ギリシア語魔術体系には精霊信仰やギリシア神話が流入しています。
ディス
ディスはギリシア神話の主神、ゼウスの古名です。ゼウスはローマ神話のユピテルと同一視さ
れる事からもわかるように、天空や天候を司る神性です。魔術体系流入後は天候の神として
扱われているようで、雷撃の呪文「来たれ虚空の雷、薙ぎ払え。『雷の斧』」の名前に使用され
ています(『雷の斧(ディオス・テュコス)』とは『ディス神の斧』の意味)。
小さき王 邪眼の主バシリスコス
ギリシア語の名を持つ神性です。「バシリスコス」とは「王らしき王」「小さき王」の意味です。
魔術体系においては八つの足を持ち石化の力を持つ蜥蜴の神性と認識されているようです。
登場する呪文は対象を石化させる呪文「小さき王、八つ足の蜥蜴、邪眼の主よ。時を奪う毒の
吐息を。『石の息吹』」「小さき王、八つ足の蜥蜴、邪眼の主よ。その光、我が手に宿し、災いな
る眼差しで射よ。『石化の邪眼』」の二つです。
氷の女王
恐らく精霊信仰から由来すると思われる神性です。西洋魔術体系の「氷の精(氷神)」とは別系
統の神性と考えられます。対象を凍結させ粉砕する呪文「契約に従い、我に従え、氷の女王。
来れ、とこしえのやみ、えいえんのひょうが。全ての命ある者に等しき死を。其は、安らぎ也。
『おわるせかい』」に登場しています。

現時点(コミックス16巻&150時間目)で登場している神性は以上で全てと思われます。
うーん、改めて見てもキリスト教の神性は(悪魔を除いて)歯牙にもかけていませんね。キリスト
教とは完全に切れているという事でしょうか。そのわりに登場する魔法使いにシスターの格好
をしているのがいたり、教会の下に魔法使いの日本本部があったりしてますから利用する分は
利用してるんでしょうか。
ともかく、これにて今回の講義は終了!

トップへ
トップへ
戻る
戻る