びっくり箱 別館
横丁の隠居部屋

隠居の寝言
「手品やってて良かった?」



 小学校の頃、担任の教師から『飽きっぽい』と言われていた私ですが、どういう訳か手品だけは飽きもせずに45年も付き合ってしまいました。
 最近では手品は趣味ですか、と聞かれると「さあ」と一瞬答えに迷ってしまいますが、それは一つのことにここまで付き合ってしまうと何か単なる趣味ではなく、自分自身の生き方そのものにもっと深く関わりを持った何かの様な気がするからなのです。

 歌も歌えず、人前で話をするのも苦手、将来社会人になった時に何か一つくらい『芸』が出来ないと、と言うのが手品を始めた動機の一つだったと思います。そういう意味では私には手品しか無かったから長くお付き合いが出来たのかも知れないと思います。

 しかし、会社に入って2年目くらいの時に「お前の手品は『隠し芸』では無いから、手品以外の芸をやれ」と上司に言われました。他のことが出来るくらいなら手品なんかやらなかったと思いましたが、皆様にはそういう経験は有りませんか?

 友人の結婚式などでもいろいろと手品をやらせて頂きましたが、何人かの友人の結婚式が続いたりするとちょっと困りました。つまり正面に座っている人間は入れ替わっても、客席まで含めて考えれば毎回同じ客の前で演じている状態ですから、同じものをやったりすると「またあれをやっている」と言われそうな気がするのです。

 そうした点を除けば私は今まで手品を続けて来て本当に良かったと思っています。単に幾つかの手品を覚えたと言う以上に手品を通じて多くの皆様とお知り合いになれました。また、共通の趣味という接点が有るお陰で立場や年代を越えた皆様とも直ぐに親しくなれたと思います。

 60年余り生きて来て、人間は一人では生きて行けないということをつくづく実感しています。そういう意味で多くの素晴らしい知人を与えてくれた手品には心から感謝をしています。





←戻る
←←トップに戻る