「ただいまー……。」
 その日、日向夏美はクタクタになりながら学校から帰宅した。
「……ただいまー……誰もいないの?」
 そう言いながらリビングのドアを開けた。
「……ボケガエルもいないのか。」
 ため息をつきながら、ソファーに腰を下ろした。リビングにはコチコチという時計の針の音だけが響いていた。
「……で。」
 夏美の視線の先には、
「このダンボールは何なのかしら。」
 テーブルの上には中くらいの大きさのダンボール箱が置いてあった。
「……まーた変なものなんじゃないでしょうね。」
 夏美はそう言いながら疑いの目をダンボールに向けた。リビングにはカチカチという音が響いていた。
「……そうだ。」
 夏美はそう言うと、庭に面した窓を開けた。
「ギロロー。いるんでしょ?」
「な、なんだ夏美。何か、用なのか?あ、あまりナレナレしくするな。お、オレ達は敵同士、なんだからな。」
 テントの中から赤い顔が現われた。
「いいから。そんな難しい事言わないでさ。ちょっとこっち来てよ。」

 カチカチカチ……
「で、さ。このダンボールって何なの?ギロロなら知ってるかな、って。」
「さあな。オレは知らんぞ。ま、仮に知っていたとしても言うわけはないがな。」
「まあ、ギロロは口が堅いものね。」
 カチカチカチ……
「そういや冬樹は?まだ帰ってないの?」
「ああ。今日は夏美、お前の方が先だ。」
 カチカチカチ……
「ところで夏美。さっきから聞こえてくる、『カチカチ』という音はなんだ?」
「え?そこの時計じゃないの?」
「いや、あそこの時計は『コチコチ』という音だろう?違う音がさっきから……。」
 そうギロロが言ったところで、二人はダンボール箱に視線をやった。
 カチカチカチ……
「……あのダンボールから聞こえてくるわよね。」
「ああ。」
 夏美はダンボールに手を伸ばした。すると、
「待てっ!」
 とギロロが叫んだ。
「オレが開けよう。夏美、お前は下がっていろ。」
「う、うん……。」
 ギロロはダンボール箱に手をかけた。
「いくぞ。」
「おっけー。」
 ギロロは夏美が返事を返すと、静かにダンボールを開けた。中には
「……時計か?」
 デジタル表示の時計とボタンが一つ付いた、球状の機械が入っていた。時計からはカチカチ音がしている。
「……なーんだ、時計か。もうギロロったら……。」
「ん?」
 カチカチカチ……
「夏美、この時計、時間がズレてないか?」
「え?……本当だ、10:00になってる……あれ?」
 時計の数値は徐々に減っていった。
「数字が減ってるわよね。」
「ああ。……まさか……。」
 ギロロと夏美は互いに顔を見合わせた。
「「時限爆弾!」」
 カチカチカチ……
「……クルルに連絡するか。チェックメイト・キング供クルル!いないのか!」
 ギロロの通信機からは何の音も聞こえてこなかった。
「ダメよギロロ!たしかクルルって今日ダソヌ☆マソのライブに行って来るって……。」
「くそっ!肝心な時に役に立たん奴だ。ケロロ!タママ!誰か応答してくれ!」
 カチカチカチ……
「ダメだ、誰も出ん。」
 ……誰か忘れられてるが、ここでは特に何の問題もなかった。
「……仕方がない。こうなったら。」
「私達で解除するしかないわね。」
「解除!?素人にできるわけがないだろう!いいから夏美、早く遠くに逃げろ!」
「……嫌よ。私は逃げないわ。」
「……夏美。」
「私達が逃げても、この近所に住んでる人はどうなるの?……それに思い出がたくさんあるこの家を見捨てて逃げる事なんて出来ないわよ。」
 そう言う夏美の目には、涙が浮かんでいた。
「……わかった。やれるだけやってみよう。」
「ギロロ、あなたは逃げてよ。」
「夏美一人を置いて、逃げれるわけないだろう。それに、オレにもこの家には思い出があるからな。……初めてお前と戦ったのも、この家だ。」
 カチカチカチ……。
 ギロロと夏美はデジタル表示に目をやった。
「残り、5分か。」
「ええ。そしてボタンが一つ。」
「このボタンを押すべきか……。」
「とりあえず、押してみましょう。」
「ひょっとしたら爆発するかもしれんぞ。」
「大丈夫よ、ギロロと一緒なら。」
「……ああ。」
 ギロロと夏美は二人同時にボタンを押した。
 カチカチカチ……ピー……。
 デジタル表示は消えた。
「……やった!止まったわよギロロ!」
 そう言うと夏美はギロロを抱き締めた。
「な、な、ナツ、ナツ、ナツ、ナ・ツ・ミ……。」
 カチカチカチ……
「「え。」」
 ギロロと夏美はデジタル表示に視線を向けた。デジタル表示は残り1分から減り始めている。
「……ねえギロロ……これって……。」
「……止まったんじゃなくて、残り時間が少なくなっただけか!?」
「ど、どうしよう!」
「今からじゃとても止められん!逃げるぞ!」
 が、夏美は制服の上着を脱いで球状の機械にかぶせた。そしてその上から覆い被さった。
「何をやってるんだ!早く逃げろ!」
「ダメよ!私達だけが逃げてもまわりのみんなが間に合わないわよ!」
「くっ!」
 ギロロは夏美と一緒に球状の機械に覆い被さった。
「ギロロ、あなたは早く逃げてよ!」
「お前だけ置いて逃げれるわけないだろう!お前がいなくなったら……オレは……!」
 そして、デジタル表示が0になった。
「……?」
「なんだ!どうなったんだ!」
 そうギロロが叫ぶと同時に球状の機械のフタが開いた。
「「うわぁっ!」」
 球状の機械の中には
「……何よ、サツマイモ?」
「どういうことだ?」
 機械の中のサツマイモは、ヤキイモになっていた。
「あり?二人とも何やってるでありますか?」
「ケロロ!いったい何をやっていたんだ!」
 リビングにケロロが入ってきた。
「何って……ガンプラ作っていたでありますよ。ついつい集中してしまって通信機にギロロから連絡があったことに気付かなかったんであります。」
「……お前って奴は……。」
「あ、ヤキイモできてるでありますな。」
「何!?」
「昨日クルルに自動ヤキイモ機を作ってもらったんでありますよ。二人とも、食べるでありますか?……ケロ!?」
 突然、ケロロはシャレにならないぐらいの殺気を感じた。
「ケロロ……。」
「ボ〜ケ〜ガ〜エ〜ル……。」
「ケロ?ふ、二人ともどうしたでありますか?二人ともヤキイモ好きでありますよね!?……ケロォォォォォォ〜〜〜〜〜!!!!!!!」

「……まったく、人騒がせな奴だ。」
「……本当にもう……。ねえギロロ、緊張が解けたらお腹すいちゃった。ヤキイモ焼いてよ。」
「?ヤキイモなら、さっきケロロが作ったのがあるだろう。」
「違うのよ、ギロロが焼いたのが食べたいの。」
「仕方ないな。」
 そう言いつつ、ギロロの顔は若干ゆるんでいた。

「そうだ、ギロロ。さっき何を言おうとしたの?『お前がいなくったら』何なのよ?」
「あ、いや、それはだな……その……。」
 そう言いながらギロロはサツマイモを手に取った。

END


ケロロ軍曹の部屋へ
Photograph
CHOPIN
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