とっておきの詩の、とっておきの話

このたびは課題図書に選んでいただいて本当に嬉しく思います。

何より多くの子どもたちが読んでくれることを想像すると、胸が幸せでいっぱいになります。

ご存じの方も多いと思いますが、この「とっておきの詩」は毎日新聞さんの

第18回《小さな童話大賞》で選者賞をいただいた作品です。

このストーリーが出来たきっかけは、ほぼこの内容通りで、

ある日ヒーターがやたらピーピーいいはじめ、やがて壊れてしまいました。

(けりを入れたのも事実ですが・・・・笑)

これはマズイと、とうちゃんの運転で電器屋さんへ行こうとしたら、前夜の雪がまだ道ばたに少し残っていて、

タイヤがシュワシュワ音を立てていました。

そして、ふと見ていた空の雲が切れて青い空がのぞいたのです。

「春みたいな空やなあ」といった後、

「冬のくせになまいきやな」と笑いました。

そのとき、ふと、そんなことを言う子がいたら面白いやろな、

と考えて出来たのが、つよしくんの作った詩です。


そのあと家に帰って、すぐ原稿用紙に向かいました。

ただ、最初に書き上げたのは賞をいただいた作品とはまだ少し違っていました。

どういうのかというと、つよし君が書いた詩を学校へ持って行くと、

先生にあまりいいことないといわれ、それを聞いたおばあちゃんが学校へ怒り込むという内容でした。


けれど、そのあと「うーん、なんかちゃうなあ」と、自分でも違和感を覚えました。

どなたかがおっしゃっていたと思いますが、

「なんかおかしいと感じた時は、作品の中に嘘が入ってる」

(どこが嘘なんやろ・・・・)

とずっと考え、おばあちゃんと先生の描き方にあると気づきました。

そして手直しした作品で賞をいただき、ご覧になった岩崎書店の津久井さんから

何か書いてみませんかと声をかけて頂いたわけです。

つまりすべての道が、この作品から始まったわけです。


これほど思い出深い作品ですから、当然私も、単行本にしたいな、とは思っていました。

そんなある日、PHP研究所の聡子さんから、

「‥‥ところで、『とっておきの詩』なんですけど、どこかから出版される予定はありますか?」

と聞かれ驚きました。

そして、

「あの作品、ずっと本にしたいと思ってたんです」

と嬉しいお言葉も。

もちろん「れいぞうこのなつやすみ」が結構売れてくれたおかげもあったのでしょう。(笑)


聡子さんのすごいなと思うところは、あーだ、こーだ悩まず、要点だけを的確にズバッと言うところです。

この作品の場合、加筆するにあたって、

「詩をあと二つ三つ、足して欲しいな。

本題に入る前に、クラスでのやりとりがあったら楽しいですよね。他は書き込まず20枚までに」

ということでした。


更に、今までの私の作品の場合、地の文は共通語だったので、うかがったところ

(この作品ははじめから地の文も関西弁だった)

「書き直さなくていいです。今のままで」と即答。

聡子さんの判断力や決断力のシャープさは、いつもすごいなと尊敬しています。

絵を描いてくれた、市居みかさんも、私自身まだアマチュアの時から大好きで、

今回、みかさん以外考えられなかったので、提案させていただくと、

「市居みかさん、いいですねぇ。私も好きですよぉ」

と即決していただいた時もとても嬉しかったです。

さて、そういういきさつで出版された「とっておきの詩」

もう、それだけで、私は大満足です。

以前、長谷川義史さんの本が課題図書になり、お電話させてもらった時に、

「そのうち、しいこちゃんも、課題図書になんで」

と言ってくれました。

でも正直、

「いやぁ、けど関西弁で書いてるから、全国のは無理やで」

「ああ、そうかなぁ」

そんな話をしたのを思い出します。

どんな作家さんでもそうだと思うけど、普段冗談で(いや本気で?)

「課題図書、とりたいなぁ」とか「あの賞、欲しいなぁ」とか、言いますが、

作品を書く時は100%、読者の人に楽しんでもらえることだけを考えているのです。

この本が出たとき、ふたつの嬉しい言葉を頂きました。

ひとつは聡子さんから、

「営業の方が、こういう本が欲しかったんだよって、いってましたよぉ」

そしてもうひとつは、現役の小学校の男性教師から、

「これ、めっちゃ面白い。自分で買ってクラスに置くわ」

と言ってもらえたことです。

作家さんは結構みんな孤独なもので、こうした一言ひとことが、ものすごく励ましや力になるのです。

今回、課題図書という大きなパワーをいただいて、

また新しい、そして自分らしい作品に挑戦していこうと思っています。



                        感謝