「わくわく森のむーかみ」

アリス館 絵 宮地彩

童話を書く人なら、だれでも一度は“クマモノ"を、と思うのではないでしょうか。
しかし、すでに有名な作品が多く、しかも、ロングセラーになっているので、 なかなか。出版までは遠い道のりでした。

この作品、一番最初に書いたのはデビュー前だから、もう十年ほどになります。
デビュー作が、一般生活童話だったせいで、その後、お声をかけていただくのも、
“人間モノ"ばかり。そしてようやくアリス館さんから、
「ところで、しいこさんは、人間以外は書かないのですか」
と言っていただいたのです。

さて、今回特筆すべきは、なんといっても、絵を描いてくれた宮地彩さん。
なんとまだ23才! どこからか、親子ほどトシ離れてますね、と声がきこえてきそう。
姉妹です姉妹! 
それはともかく、彼女は大学卒業後、画家としてやっていくべく決心で、就職もせず、頑張っているのです。

私は彼女の野性味にあふれた絵が、とても気にいってます。
ただ、若くて技術もあるので、いろんな絵が描けるので、迷うことも多いと思います。
いい意味でこれから苦労していくことでしょう。

私の作品で絵本デビューしたので、私自身も責任を感じています。
キャラクターものやファンタジー、本の装丁と、活躍の場を広げていってほしい人です。
むーかみ、ともども、彩さんもどうぞよろしくお願いします。


「ばいきんあたろー 〜はみがきしない子 みーつけた!」

PHP研究所 絵 大島妙子

この「ばいきんあたろー」の絵を見て、もしやこれは「だいすきひゃっかい」に出てくる “ばいきんおに”では、
と思った方は、かなりの“村上しいこ通”です(笑)

「だいすきひゃっかい」の絵を見た時、何よりおどろいたのが、
この“ばいきんおに”でした。この存在感はなんだ。
私だけでなく、読者の多くの子どもたちがこのページで手を(目を)とめてくれたそうです。
そして私はすぐに、このばいきんおにを主役にお話しを書いてみたいと思ったのです。

今回、名前もばいきんあたろーと決まりました。
はじめ、こたろーで行こうかと考えていたのですが、大島さんの作品に、こたろーが出てくるので、
じゃぁ、他のたろーでと(あ)からじゅんにあてはめてみたのですが、なかなかいいのがありません。
うたろー、えたろー、おたろー。
で、結局、一番始めにくる、あたろーに落ち着いたのです。

そして文章は、大島さんが好きな落語の調子や雰囲気を意識してみました。
おかげで大島さんも、とても乗って描いてくれて、ラフ画も数通り描いてくれたり、色んな提案もいただきました。

余談ですが、三重TVではなぜか、浅草寄席という番組が放映されるんですよ。

それから、聡子さんの編集も冴えて、特に、あたろーが
「おいら、かえでちゃんをしんじる」の場面は本当に素敵で、
私の想像をはるかに超えたインパクトがありました。

3人でお喋りしていると、
「このぴろりきんもいいね」
「今度はばいきん長屋の話で」
「びぶりおきんを主役で」
と夢はますます広がるのでありました。


「これもっていき」

講談社 絵 伊藤秀男

伊藤秀男さんの絵に初めて触れたのは、内田麟太郎さんの「うみのむにゃむにゃ」だったわけで、
その時、とんでもなく圧倒されたのを今でも覚えています。
それからずっと、いつかは伊藤秀男さんの絵で絵本を、と思っていたのですが、
残念ながら、それだけパワフルなテキストは書けないまま、時間だけが流れました。

さて、昨年6月、今住んでる家に引っ越しました。
今まではずーっとアパート暮らしだったので、
なんでもかんでも大家さんに頼っていたのが、全部自分でやらなくちゃなりません。
近所は田畑が広がり、先日は「猿が目撃されました」と町内放送がひびく、どっちかというと田舎です。

はじめて不燃物のゴミ出しの日。
町内会長さんをはじめ、みなさん親切で色々教えてもらいながら済ませることが出来ました。
そして帰り道、畑からおじさんが、にゅっと顔出し、
「これもっていき」ときゅうりをくれました。
そしてしばらく経って、ある日、畑からおばちゃんが、にゅっと顔出し、
「これもっていき」 と、まっ赤なトマトをくれました。
やっぱりこういう町は、情があっていいなあ、と思った私の頭の中に突然、
伊藤秀男さんの絵が飛び込んできました。
「これや! これならいける!」
あっという間にストーリーが浮かび、編集者の横川さんからも、すぐにいいお返事をもらいました。

「とっておきの詩」もそうでしたけど、本当にいい作品というのは、いきなり、
はじかれたように生まれるもんなんだと思います。
そのためにも、日々、うんうん、うなりながらお話しを考えているのです。

作品の方は、伊藤秀男さんの中にある原風景と私の日常が「これもっていき」という
キーワードでちょうどバランスよく結実したと思います。
そして、こんなにもダイナミックな形で絵本になったのは、
伊藤秀男さんの力だと、ただ、ただ、うっとりするばかりです。

余談ですが、先日こんな質問をしてみました。
「海外もスケッチ旅行をされてますけど、あちこちで、いいなぁと思ってスケッチされたものが、
実際アトリエで絵にしてみると、なんかイマイチだなぁ、と思ったりすることありませんか?」
すると、伊藤秀男さんは、にっこり微笑んで、
「そういうことはありません。写真とかだったら、あるかも知れないけど、
私は自分の目で見ていいと思ったものは、絵にしてもやっぱりいいんです」
と、きっぱり。
この作品、自信を持って、お勧めです!