『「ボクちゃんらいおん」誕生秘話』

私はよく講演会で、才能というのは、何かをする力じゃなくて、

何かと出会い力だということを話したりします。

そのためには積極的に行動することが大切だと。

今回、アリス館から無事出版されました、「ボクちゃんらいおん」も、

いろんな出会いから生まれた一冊なのです。


もう、数年前になります。

長谷川義史さんと、ばんごはんを食べに行く約束をしておりました。

「ぼく、その日打ち合わせが入ってるから6時にきてや」

「うん、わかった!」

小学生のように、その日の夕方、

「はっせがわ、さーん!」

と元気よく、おなかをすかせて、家までさそいに行くと、

丁度、どこかの女性編集者さんが帰られるとことでした。

その時彼女は私のことを、どこか近所のオバチャンだと思っていたようです。

「それじゃ、失礼します」と彼女が立ち去ろうとした瞬間、長谷川さんが、

「今からどうすんの?」

と、彼女に声をかけたのです。

「コンビニ寄ってお弁当買ってホテルに戻ります」

答えた彼女に、

「ほないっしょに食べに行こや。ぼくら今から晩ご飯食べに行くねん」

 と誘ったのです。

そして夕食会(飲み会)も始まって、30分くらいしてやっと、

「ああ、かめきちの〜」となったのです。

これが今回、「ボクちゃんらいおん」を一緒に作った、

さやかさんとの出会いのシーンです。


「村上しいこに、今度、うちに遊びにきて下さいって、いうたら、ホンマに来るで!」

ということわざ?があります。

その時さやかさんは、家においでとはいわなかったけど、

「うちでも、こんど書いてくださいね」と言ってしまいました。

酔ってました。

「今の聞いたな! 長谷川さん聞いたよな!」

 と、念を押し、翌日帰った私は、さっそく絵本のテキストを送り付けたのでした。

それが、この「ボクちゃんらいおん」に入っている「おさんぽ」です。


さて、話は少し変わって、ある日のこと、

児童書専門店の店長さんと、世間話をしていたときのことです。

「今、絵本はいいのがたくさんあって、幼年童話も、けっこう充実してるんだけど、その中間がないのよね」

店長さんがおっしゃいました。

「中間といいますと‥‥」

「だから、お話しが、四つ五つ入ってて、ストーリーがしっかりしてて、読んでて楽しくなるような」

 なるほど、そういわれて見回すと、ないんですよね、これが。

で、その話はそのまま心に留め置きました。


さて、絵本のテキストを送ったのに返事がない。

「くそっ! 逃してなるものか!」

とばかりに、後日、アリス館に電話をすると、

「ごめんなさい。色々忙しくて」

 と、さやかさん。しかし、

「絵本のテキスト、読ませていただいたのですが‥‥」

と、声に力がない。

「やっ! もしかして、ボツか」と思いきや、

「こちらで、提案させていただいてよろしいですか?」

「なんじゃらほい?」

「あのぉ、今回のような作品が、五つほど入った本を作ろうと思うのですが。絵本でもないし、童話でもないし‥‥」

そのとき私は、不思議な気持ちでいっぱいでした。

ついこの前、児童書の店長さんにいわれたのと同じだったからです。

「これは、私に、書け! っていうことやな」

と、勝手に天命を感じたのです。

「じゃあ、あと四つ、がんばって書きます」という私に、

「できれば七つか八つお話を書いてください。そこから残り四つを選 びたいです。でも無理なさらずに」

と、さやかさん。彼女の方が一枚上手でした。


絵の方は、「もりのおふろ」を見た時から、すっかりとりこになってしまった西村敏雄さんにお願いすることで、

最初から一致しておりました。

そしてできあがった作品は、もうカンペキといっていいでしょう。

なんといっても、あこがれの、全ページカラーで絵が入っています。

これはもう、ラーメンの表面が具だくさんで見えないくらいの感動があります。


というわけで、一冊の本には、また違うストーリーが織り込まれているのです。

ああそうや、長谷川さんにお礼の電話せなあかん。

「長谷川さーん、今度いつ空いてるぅ?」