僕が図書館の扉を押したのはその何日かあとの夕方だった。重い木の扉は 軋んだ音を立てて開き、その奥には長い廊下がまっすぐにのびていた。空気はもう何年もの間そこに置き去りにされていたかのように、ほこりっぽく淀んでいた。
村上春樹 『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』
……彼がその輝かしい知覚力をそこに埋めることに決めた密林の村のマレイ人たちは、一音節の彼の匿名に一語を加えた。マレイ人たちは彼をトアン・ジムと呼んだ――われわれならさしずめロード・ジムというところだ。
ジョセフ・コンラッド『ロード・ジム』
わたしの父の姓はピリップ、わたしの名はフィリップといったが、幼いわたしの舌では、
両方ともただのピップというだけで、それより長くも、明瞭にもいうことができなかった。そんなわけで、わたしは自分をピップとよび、人からもそうよばれるようになった。
チャールズ・ディケンズ 『大いなる遺産』
パパは台所で白いエナメルのマグカップからお茶をすすっている。ぼくを膝に抱き上げる。
パパ、クークーのお話をして。
クーフリンだ。いってごらん。クー、フー、リン。ちゃんといえたら、話してやろう。ほら、クー、フー、リン。
フランク・マコート『アンジェラの灰』
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