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ウェブホルダー>ワード文書:エルニーニョ,その男の児・・(抄)



エルニーニョ,その男の児とバミューダの女の児

<初めに>



<予備知識>


<参考>




エルニーニョ,その男の児とバミューダの女の児と(抄)

A Cen


  気象にはカオスがあると言いますよね。そうすると,海水の現象,エルニーニョもカオスに何か関係ありそうに思えるんですが…

  いや,気象や海の現象に,カオスはないと言っていいんだよ。…

            ……(中略)……

  では,いよいよ,核心の問題に行こう。この海洋の大変動,エルニーニョの現象がなぜ起きるのか。正体は,何なのか。…始めに,もう一度,現象の状況を確認しておくと,…太平洋の東の端で,西向きに流れる赤道海流によって海中から大量の冷水が引き上げられ,海面に広大な冷水域が出来ている。そして,その冷水域が原因の分からない,問題の拡大縮小,水温の低下上昇の変動を起こす。…それと,そこにもう一つ明白なことは,その海の変動によく対応して,その辺りの海上風が変動するのだ。…こういうことで,見かけはかなり単純なものだ。…さて,先ず,その海の変動と風の変動の関係について,あるややこしい見方がある。つまり,海の変動は風の変動を引き起こすが,その風の変動が今度は逆に海の変動を更に大きくするように見える。そして,その繰返しを考えて行くと,海と大気の間で,グルグル巡りで変動がどんどん拡大していくように思えるのだな。

  あー,あの正のフィードバックですね。

  非常に調子のいい考えだな,…でも正しいように思える。始め,海か大気にきっかけの変動があれば,後は,自然に拡大するのだから,このことがいかにも海の大変動,エルニーニョを引き起こしている基本のメカニズムに違いないと思えてくる。……しかし,残念ながらこの考えは,全く,間違っているんだよ。自然の最も基本の原理に反している。…君は「永久機関」のことを知っているだろう。それはあり得ないものだな。今のこの考えは,グルグル巡りの内に,エネルギーは完全に維持され,更にどこかで生まれ増えて行くのだから,正に「永久機関」になってしまう。エネルギー保存の原理にさえ反している。どこかに大きな間違いがある訳だ。…正しく見よう。今,海と大気の二つの変動には,主従の関係があるのだろう。空気と海水の熱容量の圧倒的違いから海が主で,それが従の風の変動を起こすことは確かだろう。問題は風の方だ。…風の変動の意味することは,海の変動を加速するのではなくて,本当は,全く逆に,妨げていることなのだよ。大気は海の変動に,ブレーキをかけているのだよ。

  ブレーキ!…でも,実際,強くなった風が海水を押し進めるのは確かでしょう。風は加速するとしか考えられないですよ。

  違うのだよ。主要なものが見落とされているな。風が加速するように見えるのは,風の作用のほんの一部分で,極めて劣勢なものだ。それは主要な作用にかき消されてしまうものだよ。…では,海と大気の間で起きる作用の,主要なところを見てみよう。…先ず,海の状態の変化が,大気に影響を与え,風を起こす。……ここで,全く,この世界の大原理を忘れていてはいけないな。…その時,海の方も影響を受ける,逆の影響を受ける。作用には反作用だ。…海水の変動は,風の変動を起こすと,その分エネルギーを奪われ,自分の変動が抑えられ,ブレーキがかけられたようになる訳だ。……結局,海面で起きているその全ての過程は,海の変動エネルギーの一部が大気へ拡散,散逸しているだけのことなのだよ。こういうことは,どこにでもあることで,君もよく知っていることだ。…何か動く物があると,それに接している周りの物が抵抗し,エネルギーが少し散逸するのだ。…エルニーニョ現象は振動の変動だから,それをよく表す,ちょうどいい例がある。振り子時計の振り子が振動している状況だ。振り子の振動が,エルニーニョの海の変動に当たる。振り子の周りで起きるそのわずかな風が,海上風の変動に当たる訳だ。…それらの風の変動は,元のその振動や変動に引きずられて起きているだけで,その只の影響に過ぎない。風は決して,元の振動や変動の原因ではないことは明らかだ。…それで,我々の目的,エルニーニョの原因の探求は,風ではなく、この振り子の原動力に当たるものを海のどこかで探すことになるのだ。……海面での冷水の変動,風の変動,そういう表面的な現象に惑わされるが,…このエルニーニョの大変動の原因も,大変動のその本体も,全く海面などにはないのだよ。

  …一体,どこに。

  ……海面下,この海面の冷水の異変を形成している大もとだよ。…追求すべきは,海面下のずっと深いところの海水の動きなのだ。……では,その海の海中を見てみよう。…海中では,勿論,海水は下に行く程冷たくなっている。温度は連続的だから考えづらいが,多くの温度の海水の層があると考えるといい。普通の海中では,そうした下に行く程冷たい層が,水平に重なったようになっている訳だ。ところが,湧き上がりの異常に大きいその海の海中では,そういう温度の層が引き上げられて,山型に吊り上げられたような格好をしている。そのように,冷たく重い海水が海底から順に引き上げられているのだ。そして,上の方の層の一部が,海面に出て問題の冷水域を作っている訳だ。…引き上げる力は海流の運動を元とする力だが,…これは簡単に海流の力と呼ぶことにしよう。…今,仮に想定して,まだ引き上げられていない,元々の水平な水の層の状態から考えてみよう。…先ず,優勢な海流の力で引き上げは始まる。…引き上げが進み,引き上げられた冷水が増えるにつれて,下に引き戻そうと抵抗する重力が次第に大きくなる。…そして最後には,その重力は引き上げの力に拮抗してきて,いつか二つの力は同じ強さになって釣り合う。引き上げは終わり,海はある一定の状態になる。…アキレスについに追いつき当たった,あの矢のように,重力は,海流の力にいつか追いつき,釣り合い状態になる訳だ。…この海の釣り合い状態は,アキレスが倒れた状態に当たるから,アキレスの状態と呼ぶことにしよう。…こうして,アキレスが倒れたままであるように,…その海も,冷たい水の層が海底から山のように吊り上げられたところで,その釣り合いのアキレスの状態で,そのまま止まったままになる。…何時までもだな。

  えっ,…変動は,実際に起きている変動はどうなるんです。

  …正に,そこだな。…吊り上げられた釣り合いの状態で止まっている筈なのだ。…ところが,実際は,行ったり来たりの変動をする。…釣り合いの状態に止まっていないで変動する。全く,このことが,エルニーニョの問題の謎の真髄なんだよ。……謎を解こう。なぜ釣り合いが破られ,変動が起こるのか。…先ず,運動といえば,原因となる力だ。このエルニーニョの変動現象は顕著なものだから,それだけそれを起こしている確固たる巨大な力がなければならない。…その力は何だろうか。

  …ちょっと見当がつきませんよ。

  …この海の現象の場合,その空と海のどこにもそういう原因となる力は,他には無いんだよ。その海流の力と重力以外にはね。…だから,この二つの力,それら自身が,変動を引き起こしていることになる。

  でも,それらは釣り合っている訳でしょう。

  そう,…だから,結局,…その釣り合い自体に問題があるのだよ。…実は,今,釣り合いが考えられている,その二つの巨大な力の一方に,…弱みが,決定的な弱みがあるんだよ。…どうなるか,…実験とも言えない簡単なことで見せよう。…いいかい,今,海流や温度の違いこそ作らないが,その海の海中で起きることそのままだよ。…では,コップに一杯まで水を入れ,葉書ででもふたをして,それを空中で逆さにして支える。…それから,葉書に添えている手を離す。それでも,水は落ちない。

  ええ,それは知っていますよ。地上で大気は10メートルの水の柱でも支える力を持っていますから。

  確かに,大気には十分支える力がある。大気は,コップの水にかかる重力に,葉書の下から対抗できる,力は釣り合い,水を支える。…唯,今,そこに一つ自然でない設定がある。…では,それを,海と同じ自然の状況にして,海中の巨大な冷水の山,釣り合いがどうなるかを見よう。…それには,只,葉書を取り去るだけでいい。

  …これが海で……エルニーニョとは…。

  そう,これが正体だ,…エルニーニョの現象の原因の,真の姿だ。……順番に行こう。先ずコップの水。大気には十分支える力はあるが,弱みがあった訳だ。大気が水を支えるためには,その境の面は,完全に水平,完全に平ら,そして全く不動でなければならない。液体や気体同士の境の面では,これは全く不可能なことだな。それで,一瞬にして,その境の面のそこら中で釣り合いは破れ,それが拡大して,後は,重力の一人舞台となって,コップの水は落下するだけだ。…では,海の問題だ。そのアキレスの状態の釣り合いを考えてみよう。海中では,温度の違う海水の多くの層が,引き上げられて山のようになっている。今,その一つの盛り上がった曲面を考えると,その面の下の冷たく重い海水には,上から海流の力が引き上げるように働き,下に引き下げようとする重力と釣り合っている訳だ。…これを,葉書を取った瞬間のコップの水の面での釣り合いと比べると,一つの違いは,コップでは水を下から押して支えようとするのに対し,海では冷水を上から引っ張って支えようとすることだな。力学的な状況は同じことだよ。…海の場合も,釣り合うためには,その境の,今度は曲面だが,その面は,完全にある特定の形をしていて,滑らかで,不動でなければならない。コップの場合と同じで,その面のそこら中で,釣り合いは破れているんだよ。…冷たい海水は,コップの水と同じ運命をたどる。海水は崩れ落ちる。想像を絶するような巨大な海水の落下だ。…それは全く,海水の壮大なダウンバーストだよ。……勿論,実際は,こんな全くの不安定な状態,アキレスの状態までは行かない訳だ。アキレスと呼んだその釣り合い状態は,実は,ラニーニャから更に進んだ,言わば超ラニーニャ状態で,実際には起こらない架空の状態だ。それ以前の段階,状態で,この突然の大崩落は起きてしまう。つまり,冷海水は,少しずつ持ち上げられて来て,始めは安定だが,次第に不安定さが高まる。そして,その高まったどこかの時に,海面ではラニーニャの最中などに,突然,バランスを崩して落下してしまう。こうして,その引き上げられた深海の巨大な冷水の山は,海底へと崩れ落ちてしまう。…とにかく,こうして,冷水の後退だ。海面の冷水海域にとっては,突然,元を断たれたことになる。それで,海面に拡がっていたその大規模な冷水は,次第に消散,衰退していき,冷たい海は解消され,普通の赤道の海の状態の方へ戻っていく。この通常と一段違って温かくなることは,そこの海としては異常な状態で,つまり,エルニーニョの発生になる訳だ。その変化は急速とも,ゆっくりともいえるが,とにかく,海面がはっきりしたエルニーニョの状態になるのは,この大崩落から何か月か後になる。…さて,海中の大異変の直後に戻ろう。…その大崩落の直後に,その衝撃的な影響が,太平洋の広い範囲で起きる。…膨大な量の海水の落下だ。海面付近では,その海に向かって海水が引き寄せられる。中でも際立った異変が起きるのは,赤道海流だ。西に向かって流れているその海流が逆流するのだ。しかも,太平洋の反対側,はるか西の端のその海流までもが,逆流したり流れを変える。…そこで続いて,その西の端のところの大気に,異変が起きる。その海水の流れの異常が,付近の海の状態を変え,それが大気に影響を与えて,強い西風を吹かせるのだ。

  あの西風ですか。…でも,なぜ,そんな西の離れた所でなんです。

  太平洋の真中では,その海流の異変によって,その場所の東西ということでは状態の違いが生じないから,目立った現象は現れないのだよ。…さて,大落下の衝撃の現象もしばらく続いて終わる。…それから数か月後,太平洋西部の海面の温水域が,東に向かって突然,移動するように見える。こうして,東の端のその海は,その顕著な冷たい海からより温かいエルニーニョの状態へ一変してしまう。…この一連の変化を,表面的に,海面から見ていると,…太平洋の西から進んで来るように見えてしまうが,本当は,その東の端の海中で冷水の元を断たれたことによって,もたらされている訳だ。…さて,海面が温かいエルニーニョに向かっている最中にも,海中のこの現象のメカニズムの本体では,海中の状態が落ち着いたら,また冷水の引き上げが始まる,早くも,次の,冷たい海面のラニーニャに向けてだ。そして,いつか,また落下。繰返しだな。この海中の巨大な規模の繰返し,変動現象が,今,関わっている全ての変動の大もとなのだ。この大変動が伝わって,海面で派生的にエルニーニョ,ラニーニャの変動が発生し,それが更に大気の変動へと派生して行く訳だ。  さて,エルニーニョについてはこれで終わりだが,実は,話は半分なのだよ。このエルニーニョの現象に対称的な同じ現象,もう半分の話をしよう。…男の児,女の児とは,元々海面の水温の状態を呼んでいた訳だが,今,仮に,現象の原因自体にその呼び名を当ててみよう。即ち,海面にエルニーニョをもたらす,海中の,その海水の落下,下降を男の児,…ラニーニャに向かわせる,その冷水の上昇を女の児と呼ぼう。そうすると,海流が陸地から離れるように流れるその南米沖では,ゆっくりした静かな女の児と激しい男の児が現れている訳だ。…対称的な現象とは,まあ,激しい女の児,急激な海水の上昇のことだ。場所が替わって,大洋の西の端などで,海流が陸地に遮られ,ぶつかり,そこの地形の状況によって,海水が沈み込む場合だ。海流が海水を押し下げ,今度はそれに強く抵抗するのは浮力だ。勿論,浮力は重力が姿を変えたものだ。…同じ理屈で,今度起きるのは,海水の突然の急上昇だ。上昇してくる海水は大きいエネルギーを持っている。…問題は海面で起きることだ。空気は,水に比べて軽いから,無力だ。上昇してくる海水のその巨大な勢いを押さえる力が,海面で急になくなる。何が起きるだろう。…噴き上げるのか,はじけるのか。

  …恐ろしい話ですけど,そういう条件の地形の場所は,実際にはないんでしょう。

  …一つ,問題の場所がある。大西洋で赤道海流が,南米大陸のところから北よりに進む。その流れは結局,フロリダ半島の所で行く手を遮られる。そこで,世界でも最大級の海水の沈み込みが起こる。そして,……そこの沖合の島との間で出来る三角形の海域のことは聞いたことがあるだろう。

  バミューダ!……あの正体が,これなんですか。

  …その数少ない生還者は,「穏やかな海で何の前ぶれもなく突然,訳の分からない激しい嵐に襲われた」と証言している。それが「短い時間だった」とも言っている。 …もう一つある。その謎の嵐については,昔から船乗りの間で「白い嵐」の言い伝えで恐れられていたと言うのだ。

  その「白」に特別の意味があるんですか。

  その謎の嵐に遭遇した人が,実際に見たものだろう。まず,激しいしぶきだが,それ以外にも見たものがあったのだろう。急な冷却によって,巻き起こったと言おうか,霧が発生したと考えられるだろう。…この間,強い大きなダウンバーストがあっただろ。あの時,それに襲われた人は,「周りが真っ白になった」と証言していた。地元の新聞の見出しは,「白い滝」だった。…要するに同じものに襲われたのだろう。違いは,上から急激に落ちてくる冷気か,下から噴き上げる冷水か,だな。

                (以下略)

(なお、A Cenはアルファ ケンタウリの略、単なる筆名)




 備考:
  1.  1996年12月に起きた赤道海流の逆流の、具体的な観測データは、「海洋科学技術センター」のホームページにあります。(1998年3月にプレス発表のもの)

    逆流の模様を示す図:http://www.jamstec.go.jp/jamstec-j/PR/9803/TAMAGO/fig2.html
      (但し、図中の「エルニーニョ発生の瞬間」のコメントは不当である。エルニーニョの発生は数ヶ月後であり、言うまでもなくこの異変が始まった直前の瞬間にはエルニーニョの大もとのその大崩落があったのである。)
    観測ブイの位置の図:http://www.jamstec.go.jp/jamstec-j/PR/9803/TAMAGO/fig1.html

    (この観測データは、海洋の非常に広範囲の地点で同時に、突然、急激に海水の運動が起きたことを示しています。丁度、車のレースで長く並んだ車が合図で一斉に動き出すのと同じような動きです。海の場合、これは想像を絶する壮大な運動量の変化です、その運動の裏には然るべき壮大な強さの力が衝撃的に伝達され衝撃的に働いている訳です。当然ながらそのことをこのデータは示しているのです。観測が精密ならばその500kmの距離を衝撃が東から西へ伝達されたことが確認できるはずです このデータは、エルニーニョ変動現象が直接海上風が関わって起きるという考えが全く間違っていることを最も明白に示すデータでもあります。)
  2.  バミューダ海域の異常現象についての証言は1961年5月2日に遭難した訓練船アルバトロス号の生還した乗組員による。(1998年4月25か26日にNHKで特集番組放送)
     なお、別途入手資料によると、嵐の継続時間は具体的には約90秒だったとのこと。

 補足(いくつかの考えられる疑念についての説明)
  1. 「海の変動が風の変動を引きずる」としたが、実際の海上風は海流より速いことを考えると変に思えるかもしれない。正確には、直接は、海の冷たさの変動が大気の冷たさの変動を引きずるのである。大気の冷たさは東風の強さに対応するので、本文のように言える。この点の説明は、この「抄」としては省略している。
  2. エルニーニョ変動の各段階での海中の様子、すなわち海中水温図は公開されています。そこにはこの海水の大崩落ははっきり出ていない。その理由は、特に深海における観測の密度が十分でないためです。
  3. バミューダ海域における海水の異変は、ある力学上の理由のために、エルニーニョのそれと比べて桁違いに規模は小さく、勿論、それによる、局地的なものは別として、広域的な気象などへの影響は生じない。
 

!ここまで、ウェブファイルに収めました!



(*以前に、ここのメッセージをご覧の方へ: 今、可能です。新規連絡あります。04/6/21〜 <!−−   −−>)

(上の記述について: エリアーデは最後の小説の中に何かのメッセージがほとんど不可能な難解さで隠されていることを知らせています。全く比べようもない事柄、状況ですが、気付くことは肝要!)