オペラ、音楽の形式についての豆知識

オペラとはラテン語の opus(作品) の複数形。
世界最初のオペラは、年代については諸説あるが、1598年初頭、フィレンツェのコルシ邸で上演された《ダフネ》。
カメラータとよばれるフィレンツェの文化人グループが古代ギリシア・ローマの芸術復興を目指して上演した。

声について

声種
高い順にソプラノ、メッゾ・ソプラノ、アルト(女声)、テノール、バリトン、バス(男声)となり、声質についてさらに細かく分けられる。

ソプラノ
もっとも高音域を担当。ほとんどのヒロイン役はこれ。王妃や姫、人妻、絶世の美女、メイドなど。
ラテン語の「最も高い、はなはだ上の、最も外の」という意味の supremus が語源。
コロラトゥーラ
イタリア語で<色彩豊か>。速いパッセージや、装飾的な細やかな音型をうたうのに適した軽い(レッジェーロ)声質。
ソプラノでもとくに高い声域の自由さを必要とする。箸が転げてもおかしい年頃の若い娘役、現実離れした、神がかった役柄が多い。
《ルチア》のルチア、《魔笛》の夜の女王、三点嬰ヘ音が要求される 《ナクシス島のアリアドネ》のツェルビネッタなど。
リリコ
叙情的な表現に適したソプラノ。なかでもコロラトゥーラに近い軽い声をリリコ・レッジェーロ、強さをそなえたものをリリコ・スピントという。
レッジェーロには、可憐だけれども芯が強い美少女。スピントには、愛に殉じる強さをもった大人びた美女、といった役柄が多い。
《トゥーランドット》のリュー、《ドン・ジョバンニ》のツェルリーナ、《椿姫》のヴィオレッタ、《トロヴァトーレ》のレオノーラ、など。
ドラマティコ
ドラマティック・ソプラノ。ソプラノのなかでもっとも力強く、太さをもった劇的な表現に適した声。
《トゥーランドット》のトゥーランドット、ワーグナーの楽劇の主要ソプラノ役。
ごくまれに、アジリタの完璧な技巧、劇的な表現力をもち、なんでも歌える『ソプラノ・ドラマティコ・ダジリタ』という声の持ち主が出現するが、短命な声で、はやく引退してしまうことが多い。
スブレット
フランス語で「侍女」の意。主として喜劇に登場して、はつらつと若くて才知にたけた小間使いを歌うのに適した軽いソプラノ。
《フィガロの結婚》のスザンナ、《こうもり》のアデーレ、《女はみんなこうしたもの》のデスピーナ など。

ほかに、「アクート」(とがった、鋭いという意味で、細い響きのソプラノ)や、力強い表現に適した「スフォガード」などがある。

メッゾ・ソプラノ mezzoはイタリア語で<中位>の意。様々な役に使われる。特に細かい区分はもたない。
・ドラマティコ・・・恋敵役に多い。《アイーダ》のアムネリス、《ドン・カルロ》のエボリ公女 など。
・妖艶な主役・・・《カルメン》のカルメン、《サムソンとデリラ》のデリラ など。
・母親、老婆役・・・《イル・トロヴァトーレ》のアズチェーナ など。
・魔女・・・《ローエングリン》のオルトルート など。
・リリコ・・・美少年、青年の役(ズボン役)が多い。《フィガロの結婚》のケルビーノ、《ばらの騎士》のオクタヴィアン など。
・侍女、女中役・・・落ち着いた感じのメイド役が多い。《マルタ》のナンシー、《蝶々夫人》のスズキ など。

アルト
altoはイタリア語で、もとの意味は「高い」を表わす。
これは多声音楽合唱曲において、テノールの歌う定旋律の上のパートを受け持ったためだが、女声のなかではもっとも低い声種。
一般に女声中、もっとも暗い音色と深く幅のある響きをそなえている。メゾ・ソプラノ同様、細かい区分をもたない。
まず主役はなく、老女や母親、悪女や魔法使い役などが多い。

テノール
tenorはラテン語で<持続>の意。グレゴリオ聖歌で定旋律を歌ったので、この名が生まれたらしい。
男声中、もっとも高い音域と輝かしさをそなえている。王子、騎士、英雄、色男、詩人役などが多い。
レッジェーロ・・・軽い声質。《セビリャの理髪師》のアルマヴィーヴァ伯爵、など。
リリコ・レッジェーロ・・・ソプラノの説明を参照。ちょっと頼りない若い男の役が多い。
              《ラ・ボエーム》のロドルフォ、《愛の妙薬》のネモリーノ、《魔笛》のタミーノ、など。
リリコ・スピント・・・張りのきいたリリコ。色男の役が多い。《リゴレット》の公爵、《トゥーランドット》のカラフ、
           《アイーダ》のラダメス、《トロヴァトーレ》のマンリーコ、《トスカ》のカヴァラドッシ、など。
ドラマティコ・・・劇的な表現をもつテノール。《オテロ》のオテロ、《道化師》のカニオ、など。
 ※ ワーグナーの楽劇で英雄的な役をうたう、特にドラマティックなテノールを、ドイツでは『ヘルデン・テノール』というが、
   オケに負けない力強さや張りのある高音、充実した低音をそなえたテノールはめったにいない。
ロブスト・・・イタリア語で、<力強い、丈夫な>という意味をもつ。リリコ・スピントとドラマティコの中間。
       《トリスタンとイゾルデ》のトリスタン、《ニーベルングの指輪》のジークフリート など。
ほかに、喜劇的な性格をもつ、テノール・ブッフォなどがある。

バリトン
“重い、深い” を意味するギリシャ語が語源らしい。
男声の中間の声域で、もっとも豊かな表現力を持つ声種といわれている。主役や脇役、さまざまな役柄に登場。
イタリアではメゾ・ソプラノと同様、とくに細かい分類はないが、ドイツではいくつかに分けられている。
lyrischer Bariton ・・・柔らかな声質をもち、叙情的表現をそなえたもの。 《タンホイザー》のヴォルフラム など
Charakter ・・・性格的表現にすぐれたもの。《リゴレット》のリゴレット、《ニュルンベルグのマイスタージンガー》のベックメッサー など。
Spiel ・・・喜劇的表現に適したもの。
Helden ・・・英雄的で力強いもの。《さまよえるオランダ人》のオランダ人、《ニーベルンゲンの指輪》のヴォータン など。

バス 人声中もっとも低く、幅広い深さをもった声種で、ラテン語の basis (基礎)から生まれたといわれる。
    バリトンと同じく、様々な役柄に活躍する。恋敵や父親、誠実な友人、支配者、悪魔など。
カンタンテ・・・旋律美を現わすのに適した声質、技法を持つもの。
セリオ・・・イタリア語で<まじめな>の意。悲劇的な内容にふさわしい荘重なおもむきをもったもの。
プロフォンド・・・イタリア語で<深い>という意味。バスでも特に低く、深い響きをそなえたもの。
ブッフォ・・・イタリア語で<道化た>の意。喜劇的な性格をもつ。
パルランテ・・・イタリア語で<話す>という意味で、早口でうたいしゃべるのを得意とするもの。《愛の妙薬》のドゥルカマーラ など。

これらの分類のほかに、声種内での音域、音色の高低によって、声種の名称のまえに “high” “low”(英)、あるいは、“hohe” “tief”(独)をつけて区別することがある。
細かく声種があるが、すべて明確にわけられるわけではなく、人によっては、いくつかの区分を兼ね備えていることがある。
とある名声楽教師によれば、楽譜上での二点ト音で容易に言葉を発することができれば、ソプラノ、あるいは、テノールとものべている。

カウンター・テノール・・・変声を過ぎた男性が裏声(ファルセット)や頭声を使って、女声に相当する音域を歌う。
(カウンターテナー)    《こうもり》のオルロフスキー公爵、《オルフェオとエウリディーチェ》のオルフェオ など。


オペラ、声に関する用語

アジリタ(伊)・・・<敏捷性>の意。細かい音符で書かれた速いパッセージや、それを歌いこなす技巧をさす。
アリア(伊)・・・オペラなどの声を伴う音楽作品で、独唱者が歌う、ソロ、またはデュエットの声楽曲。
ヴェリズモ・オペラ(伊)・・・19世紀末に写実主義が席巻し、オペラの世界でも神話や伝説ではなく、
                 同時代に起こった血なまぐさい事件など、現実に起こった題材をとりあげた。
                 悲劇的な、暗い内容のものが多い。
オペラ・コミック(仏)・・・フランス・オペラでもともとはコミカルな内容の作品をさしたが、
               現在はコミカルにかぎらず、地のセリフがあるものをいう。
オペラ・セリア(伊)・・・一般に「正歌劇」と訳される。神話や英雄伝説を題材とし、原則として3幕構成。悲劇が多い。
オペラ・ブッファ(伊)・・・「喜歌劇」。18世紀イタリアで隆盛した。構成は2幕で、題材が同時代のものであること、
               幕切れに重唱が置かれること、低い男声の喜劇的な役柄が重視されることなどが特徴。
オペレッタ(伊)・・・もともと「小規模なオペラ」の意味だが、「軽歌劇」と訳される。歌、踊り、セリフで構成される。
            19世紀半ば以降は喜劇的で親しみやすく、レビュー的要素の強い作品をさすようになった。
カストラート(伊)・・・16〜18世紀のイタリアで少年のソプラノやアルトの声を保つために、変声期前に去勢した歌手。
            当初は女性が歌うことが禁じられた教会内で高音部を担当していたが、やがてオペラにも進出。
            ボーイ・ソプラノと広い音域、成人の声量を兼ね備えていた。現在は人道的な理由から存在しない。
グランド・オペラ(仏)・・・豪華絢爛で大規模なオペラ作品をいう。
               通常4幕か5幕で、地のセリフはなく、内容は叙事的、壮大な合唱やバレエがある。
ジングシュピール(独)・・・ドイツの「歌芝居」。18世紀後半頃からさかんになったドイツ固有の民衆的オペラ。
                喜劇的な筋が多く、地のセリフがある。
タイトル・ロール(英)・・・主役の名前がそのままタイトルになっている作品。《カルメン》 《オテロ》 《トスカ》 など。
ブラヴォー(伊)・・・男性単数への見事な演奏への賛辞。女性単数へは「ブラーヴァ」。複数なら性別を問わず「ブラヴィー」
ブラヴーラ(伊)・・・「巧妙」「熟練」の意。歌手が持てるかぎりの技巧を発揮できるように作曲されたもので、
            速いテンポや広い音域が特徴。
ホーゼンローレ(独)・・・「ズボン役」。女性が男装して歌うことになっている役。メゾ・ソプラノのリリコ参照。


音楽の形式について

オラトリオ
一般的にいえば、聖書や神話、寓話など、宗教的もしくは道徳的題材による劇的なリブレット(台本)により、
演奏会場または教会などで、舞台装置、衣装、演技など舞台上の描写を用いず、独唱、合唱、管弦楽のために作曲された楽種。
しかし、カンタータ、その他の楽手との区別は必ずしも明瞭でない場合が多く、舞台上の表現をともなうものや、
20世紀になってからは宗教的題材によらないものもオラトリオと名づけられている場合がある。
イギリスの英語オラトリオの伝統はドイツ生まれのヘンデルによってはじめて確立した。
特有の力強い合唱の表現力や劇的効果に富んだアリア、全体の叙事的効果はオラトリオに新しい様式を開拓したといってよい。
ヘンデル以後、彼のオラトリオは、オラトリオの代表的様式とみなされるに至った。

カノン
“規則”を意味するギリシア語に由来。
厳格模倣によるポリフォニーの楽曲形式。まず単音である1声がスタートすると、それよりも少し遅れて他の声が同じ旋律で追いかける。
この後から加わる模倣音は最後まで先行音と同じ旋律を保持する。
すなわち、先行音の旋律の動きを少しも変奏せずに保つから、このような模倣を厳格模倣という。
輪唱はカノンのもっとも単純なわかりやすい標本といってよい。
いろんな種類があり、入りの記号など記さず、ただ<5度、2度のカノン>とだけ記されているような「なぞカノン」、
反復している限り終わりがない「無限カノン」、先行声の音程を鏡に映したように反転して模倣する「反転(転回、鏡影)カノン」などがある。

カンタータ
17世紀初頭のイタリアに起こった声楽曲の一形式で、イタリア語のcantare(歌う)に由来する。
したがって本来は sonare(鳴る)に由来するソナタsonataが<器楽曲>を意味したのと同様に<声楽曲>を意味した。
現在、ごく一般的にいえば、器楽伴奏を伴う多楽章形式の声楽曲をさすことが多い。
普通はテキストの内容から、世俗的な内容を持つ<室内カンタータ>または<世俗カンタータ>と
宗教的な内容、もしくは教会の典礼用の<教会カンタータ>に分けられることが多い。

セレナード
もともとは恋人の窓辺で歌う音楽という意味。後に器楽の合奏で演奏される自由な形式の多楽章の音楽を指すようになった。

ディベルティメント
 「嬉遊曲」。イタリア語で<気晴らし><娯楽>の意。
16、7世紀に盛んだった組曲という舞曲音楽を中心にした音楽の代わりに18世紀に盛んになった多楽章の器楽音楽。

トッカータ
「触れる」 という意味のイタリア語。
鍵盤楽器のための即興的楽曲として用いられており、バッハの時代にはフーガと組み合わされることが多かった。

フーガ
ポリフォニー楽曲の一形式。
17世紀を通じて生長し、主としてバッハによって18世紀はじめごろに完成された器楽的(和声的)ポリフォニーの代表的楽曲形式。

ロマンセ
文字の読めない農民や牧夫たちの口から口へと語り伝えてきた素朴な民間伝承歌謡。


曲名の豆知識

ジムノペティ・・・古代ギリシアの祭礼で行われた裸の祭り。

チゴイネルワイゼン・・・ドイツ語で、「ジプシーの歌」 の意。

トロイメライ・・・ドイツ語で、「まどろみ」 の意。

パヴァーヌ・・・フランスで大流行した優雅な舞曲のスタイル。

ラ・カンパネラ・・・イタリア語で、「鐘」 の意。教会の鐘が鳴り響く様子を音楽にしたと言われている。

レクイエム・・・鎮魂曲。キリスト教における 「死に際してのミサ曲」。

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