ジョルジュ・ビゼー 作曲

歌劇 ≪カルメン≫ より

第1幕 ハバネラ 恋はいうことを聞かない小鳥(恋は野の鳥)
 ~ 第2幕 クプレ この乾杯のお返しをさせて下さい(闘牛士の歌)
    ~ 前奏曲 Prelude (闘牛士の行進)


Georges Bizet  ≪CARMEN≫

ハバネラ
   日本語歌詞は こちら
カルメンが登場するときの歌。ハバネラ(Habanera)はスペイン語で、
スペインの植民地であったキューバのハバナ地方に生まれた民族舞曲のこと。
この曲は、「ラ・パロマ」 の作曲者でもあるイラディエルが編曲した民謡を素材としている。

 Havanaise

(CARMEN)
L'amour est un oiseau rebelle
Que nul ne peut apprivoiser,
Et c'est bien en vain qu'on l'appelle,
S'il lui convient de refuser!

Rien n'y fait, menace ou prière,
L'un parle bien, l'autre se tait;
Et c'est l'autre que je préfère,
Il n'a rien dit; mais il me plaît.

L'amour, l'amour...

L'amour est enfant de Bohême,
Il n'a jamais, jamais connu de loi;
Si tu ne m'aimes pas, je t'aime,
Si je t'aime, prends garde à toi!

L'oiseau que tu croyais surprendre
Battit de l'aile et s'envola;
L'amour est loin, tu peux l'attendre,
Tu ne l'attends plus, il set là.

Tout autour de toi, vite, vite,
Il vient, s'en va, puis il revient,
Tu crois le tenir, il t'évite,
Tu crois l'éviter, il te tient!

L'amour, l'amour...

L'amour est enfant de Bohême, etc.
 《直訳》 ハバネラ

(カルメン)
恋はいうことを聞かない小鳥
飼いならすことなんか誰にもできない
いくら呼んでも無駄
来たくなければ来やしない

おどしてもすかしても なんにもならない
ひとりがしゃべって ひとりが黙る
あたしはあとのひとりが好き
なんにもいわなかったけど そこが好きなの

恋、恋・・・

※ 恋はジプシーの生まれ
   おきてなんか知ったことじゃない
   好いてくれなくてもあたしから好いてやる
   あたしに好かれたら あぶないよ!

まんまとつかまえたと思ったら
鳥は羽ばたき 逃げてゆく
恋が遠くにいるときは 待つほかないが
待つ気もなくなったころ そこにいる

あたりをすばやく飛びまわり
行ったり来たり また戻ったり
捕らえたと思うと するりと逃げて
逃がしたと思うと 捕らえてる

恋、恋・・・

※ くりかえし


クプレ(小唄)   日本語歌詞は こちら
一同の歓迎に対する答礼としてエスカミーリョが歌う歌。
後半は前奏曲に用いられた行進曲風の旋律が歌われる。

 Couplets

(ESCAMILLO)
Votre toast, je peux vous le rendre,
Séñors, car avec les soldats
Oui, les toréros peuvent s'entendre;
Pour plaisirs, ils ont les combats!

Le cirque est plein, c'est jour de fête!
Le cirque est plein du haut en bas;
Les spectateurs, perdant la tête,
S'interpellent à grand fracas!
Apostrophes, cris et tapage
Poussés jusqu'à la fureur!
Car c'est la fête du courage!
C'est la fête des gens de cœur!
Allons! en garde! Ah!

Toréador, en garde!
Toréador! Toréador!
Et songe bien, oui, songe en combattant
Qu'un œil noir te regarde
Et que l'amour t'attend, Toréador!
L'amour, l'amour, t'attend!

(TOUS)
Toréador, en garde! etc.

(ESCAMILLO)
Tout d'un coup, l'on a fait silence...
Ah! que se passe-t-il?
Plus de cris, c'est l'instant! Le taureau s'élance
En bondissant hors du toril!

Il s'élance, il entre, il frappe! ...un cheval roule,
Entraînant un Picador.
《Ah! bravo! Toro!》 hurle la foule;
Le taureau va ... il vient et frappe encore!
En secouant ses banderilles,
Plein de fureur, il court! ...le cirque est plein de sang!
On se sauve ... on franchit les grilles! ...
C'est ton tour maintenant!
Allons! Toréador, en garde! Ah!
Et songe bien, oui, songe en combattant
Qu'un œil noir te regarde
Et que l'amour t'attend.

Toréador, en garde! etc.

(TOUS)
Toréador, en garde! etc.

(FRASQUITA, ESCAMILLO, MERCEDES, CARMEN)
[alternativement]
L'amour, l'amour....

(TOUT LE MONDE)
Toréador, Toréador.
L'amour t'attend.
 《直訳》 クプレ

(エスカミーリョ)
この乾杯のお返しをさせて下さい
なぜって みなさん 軍人さんと
闘牛士とは うまが合うもの
どちらも戦いが楽しみだから

闘牛場は満員 お祭りの日
闘牛場は満員 上から下まで
見物人はわれを忘れて
大騒ぎ そのどよめき!
わめいて 叫んで 足を鳴らして
ついに興奮のるつぼとなる
なぜって 今日は武勇のお祭り
血気さかんな人びとのお祭りだから
さあ! 構えはいいか! ああ!

☆ トレアドール(※) 構えはいいか
   トレアドール トレアドール!
   だが忘れるな 戦いながらも忘れるな
   黒い瞳がおまえを見てるぞ
   恋がおまえを待ってるぞ トレアドール!
   恋が 恋がおまえを待ってるぞ!

(一同)
☆ くりかえし

(エスカミーリョ)
不意に場内 水を打って静まりかえる
はて どうしたんだ?
叫び声ひとつ立たない その瞬間!
囲い場から跳ねあがって 牛がとび出す!

突進! 突入! 突きかかる 馬が倒れる
ピカドール(※)が引きずられる
「ああ! 強いぞ牛!」 わめく観衆
牛は進んで 来た来た! また突きかかる
背中に立った投げ槍をゆさぶって たけり狂って
牛は駆ける 闘牛場はもう血の海だ
みんな逃げろ 柵をこえて逃げろ
さあ いまこそおまえの出番が来た
さあ! トレアドール、構えはいいか ああ!
だが忘れるな 戦いながらも忘れるな
黒い瞳がおまえを見てるぞ
恋がおまえを待ってるぞ

☆ くりかえし

(一同)
☆ くりかえし

(フラスキータ、エスカミーリョ、メルセデス、カルメン)
[交互に]

恋が、恋が・・・

(一同)
トレアドール トレアドール
恋がおまえを待ってるぞ

※ トレアドール・・・馬に乗った闘牛士
   ピカドール・・・槍使い。馬に乗り、長槍で牛を刺して弱らせる(あるいは興奮させる)役
   バンデリリェロ・・・もり打ち師。飾りのついた銛(もり)を牛に打ち込む役
   マタドール・・・主役の闘牛士。長剣で牛の心臓を一突きし、とどめをさす
   チューロ・・・助手

  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

19世紀フランス・オペラを代表する歌劇 「カルメン」 は、スペインのセビリャの町を舞台にした全4幕からなり、
劇音楽 「アルルの女」 とともにビゼーの代表作として知られています。
原作はプロスペル・メリメの同名の小説ですが、オペラ化するにあたって大幅に改変されています。

1872年ビゼーはパリ・オペラ・コミック座から 「3幕のオペラ・コミック(※)」 の作曲を委嘱されました。
ビゼーは、アンリ・メイヤック、リュドヴィック・アレヴィのふたりを台本作家に選び、プロスペル・メリメの小説 《カルメン》 を題材に決めると、 10月、ビゼーの作曲したドーデの劇 「アルルの女」 の付随音楽の初演が好評に終わったのち、本格的に作曲を開始します。
1874年に完成し、1875年3月3日にオペラ・コミック座で、グノー、オッフェンバック、マスネーなど名士の臨席のもと初演されましたが、 題材の異質さと音楽の斬新性に観客が馴染めなかったこと、さらにオーケストラ、歌手のマズさもあって失敗。
ビゼーはそれから3ケ月後、36歳でなくなりました。
しかし彼の死後、《カルメン》 は上演を重ねるごとに充実した演奏になり、現在では世界中で驚異的な上演回数を誇る名作になっています。
現在では第3幕の第2場を分け、全4幕として上演します。
前奏曲やハバネラ、闘牛士の歌は名曲集などでもよく取り上げられていますが、他にも良い曲や、前奏曲に歌がついている場面もあるので、 興味を持った方は<カルメン>組曲を通して聴いてみてはいかがでしょうか。

※ 豪華絢爛、壮大華麗なグランド・オペラに対して、イタリアのオペラ・ブッファ(喜劇オペラ)に相当する世俗的な小規模のオペラ。
   音楽のナンバーの合間を歌うように説明するのではなく、台詞を用いるのが特徴。


 「カルメン」 のあらすじ

第1幕 Acte Premier
1820年ごろの南スペイン、アンダリシア地方のセビリャにあるタバコ工場前の広場。
ある日の昼近く、広場の一角にある衛兵の詰め所にかわいい田舎娘が現れ、ドン・ホセという伍長はいないかたずねる。
もうすぐ交代でここに来ると聞いた彼女は入れ替わったらまた来ると、引き止めるのを振り切って姿を消す。
やがてホセがやってきて、たずねてきた娘の話を聞くと、許婚のミカエラだとすぐ分かる。
正午の鐘が鳴り、女工たちが口にタバコをくわえたまま、工場から出てくるのを町の若者達が取り囲む。
彼らの目当ては女工たちのなかでもとびきり美人のカルメンシータ。
カルメンはとりまく男たちではなく、ひとりで銃の手入れをしているドン・ホセに目をとめ、胸にさしていたアカシアの花を投げつける。
ホセは驚いて立ち上がるが、工場の鐘がなり、カルメンたちは工場のなかに走り去っていった。
ミカエラが戻ってきて、ホセとの再会を喜びあい、彼の母から預かった手紙を渡す。
それには故郷に帰って、ミカエラと結婚してほしいと書いてあった。
そのとき工場でマヌエリータとカルメンシータがケンカして大騒ぎが起こる。
マヌエラの顔にナイフで十文字に傷をつけたカルメンを逮捕し、ホセが連行するが、彼女に誘惑され逃がしてしまう。

第2幕 Acte Deuxième
ひと月後、セビリャの下町にあるリーリャス・パスティアの酒場、兵隊たちとカルメンたちがテーブルを囲んでいる。
カルメンは、彼女を逃がしたせいで格下げされ、1ケ月営倉入り(禁錮)になったホセが今日出てくるのを知る。
そこへ人々の歓声に迎えられて人気闘牛士エスカミーリョがやってくる。
彼はグラナダの闘牛士だが、セビリャで行われた闘牛のためにここに来ており、一同の乾盃の礼に<闘牛士の歌>を歌う。
エスカミーリョはカルメンに言い寄るが、ホセにひかれているカルメンは断る。
エスカミーリョと兵隊たちが帰ったあと、密輸商人ダンカイロ(“外国の偽金を使う男”の意)たちが来て仲間に誘うが、ホセに首ったけになっているカルメンは彼が来るはずだからと断る。
そこへ出獄したホセがやってきたので、他の者は席を外す。
カルメンは歌い踊って歓迎するが、帰営のラッパが鳴るのが聞こえるとホセが帰ろうとするので激しく怒りだす。
それでも帰ろうとホセが戸口に駆け寄ると、カルメンに気のある兵隊(中尉)が戻ってきて、ホセとケンカになる。
ふたりは席を外していたダンカイロたちに取り押さえられるが、上官に反抗したホセは兵営に戻ることもできず、やむなく密輸商人たちの仲間になる。

第3幕 Acte Troisième
1、2ケ月後のある夜、セビリャからあまり遠くない、シエラ・ネバダの寂しい山中に密輸品を運ぶホセ、カルメンたちがやってくる。
ホセは仲直りしようというが、カルメンの愛情はさめてしまったようで、つれない返事をする。
同じジプシーの女であるフラスキータとメルセデスがたき火のそばでトランプ占いをしているのを見て、カルメンも自分の運勢を占ってみる。
しかし出る札はスペードばかりで、自分の死を予感する。
密輸商人ダンカイロが谷の出口を税関役人が見張っているのを告げると、カルメンたちジプシーの女が私たちが引き受けると言って出ていく。
他の男たちもホセ一人を残している荷物の見張りに残して、荷物をかついで行ってしまう。
そこへ案内人に連れられてミカエラがやってくる。人の気配に岩陰に身をひそめると、帽子を手にエスカミーリョが現れた。
ホセと話しているうちにふたりは互いに恋敵だと気づき、ナイフを抜いて決闘するが、戻ってきたカルメンに止められる。
エスカミーリョは近くセビリャで開催される闘牛にみなを招いて去っていく。
そのとき仲間のひとりが隠れていたミカエラを見つけて引きずりだす。
ミカエラはホセを迎えに来たことを語る。
カルメンと別れたくないためしぶっていたホセだが、母親が危篤だと聞くと、いつか会おうと捨てゼリフを残してミカエラと一緒に山をおりていく。

第4幕 Acte Quatrième (第3幕、第3場)
セビリャの町の大闘牛場。入場行進が始まり、さまざまな闘牛士が人々の歓声のなか入場していく。
最後にエスカミーリョが現れ、そのわきには美しく着飾ったカルメンが寄り添っている。
今やふたりは熱烈に愛し合っている。
フラスキータとメルセデスがホセがここにきているから注意するように忠告してもカルメンは気にもとめず、ホセが目の前に現れても平然としていた。
ホセは言葉をつくしてもう一度やりなおそうと頼むが無駄だった。
勝利の歓声を聞いて闘牛場のほうへ足を踏み出すカルメンの前にホセが立ちふさがる。
エスカミーリョのもとへ行かせないと叫ぶホセに、カルメンが昔ホセにもらった指輪を投げつけた瞬間、ホセはカルメンを刺し殺す。
闘牛場の歓声が最高潮に達するなか、ホセは死んだカルメンのそばに呆然と立ちすくむ。

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