6.現代戦戦闘被害(一部)

1.現代戦戦闘被害(一部)

現代戦において生じる戦闘被害について、ごく一部を資料から転載する。


(1)イラン・イラク戦争における弾道弾被害[1]
  
  イラン・イラク戦争(1980/9/22-1988/8/20)
  
  イラク軍「アル・フセイン」、イラン軍「スカッド」300基以上を発射。
  計530基ものミサイル使用。
  テヘラン・バグダッドでは数千人の死者が出たと報告される。


(2)湾岸戦争における弾道弾被害

  湾岸戦争(1990/8/2-1991/3/3)
  
①イスラエルの弾道弾被害[1]

 表1.イスラエルの弾道弾被害

項目 数量(発・人)
イスラエルに発射されたミサイル 38発
  通常弾頭 33発
  弾頭に石を詰めたもの 5発
被害者
死亡者 14人
  直接死亡者 2人
  ショックの心臓発作等 4人
  ガスマスクのゴム栓
  (湿気防止栓)を外さずに窒息
7人
負傷者 226人
アトロピン使用者 222人
精神障害者 530人

※アトロピンは化学兵器による攻撃を受けた時自身に注射するもの。
  攻撃を受けていないのに注射して具合が悪くなり、病院に担ぎ込まれる人が多かった。


②米軍の弾道弾被害[2]
  2月25日スカッド・ミサイルの弾頭がダーラン付近の兵舎に落ち、28人のアメリカ兵が死亡。


(3)コソヴォ戦争における空爆被害[3][4]

  コソヴォ紛争 NATO空爆期間(1999/3/24-6/10)

  全出撃回数 約38,400ソーティ
  内攻撃    約10,484ソーティ
  投下爆弾   26,614個

  総計460基の巡航ミサイル発射システムを持った6隻の米艦と1隻の英潜水艦が展開。
  その内358基はルーズベルト機動部隊で、90基が米国の水上艦艇群にあった。
  米英艦は329の巡航ミサイルを発射。

 表2.米国防総省によるNATO戦果(1999年6月10日)[3]

項目 被害内容 備考
軍事・民間用無線通信網 30%以上に中程度の機能障害
セルビアの広報機関 厳しい機能低下:TVは45%機能せず。
ラジオ放送は都市
軍事力全体 迅速な戦闘支援能力は減少
第1軍施設 35%が損傷または破壊
第2軍施設 20%以上が損傷または破壊
第3軍施設 60%が損傷または破壊
作戦支援能力はきわめて減少
MiG-29 14機(85%以上)破壊
SA-2大隊 3のうち2破壊 発射架
SA-3大隊 10破壊(約70%) 発射架
SA-6中隊 3破壊(10%以上) 自走車両


 表3.コソヴォにおける軍事目標に対する戦果 NATOの発表(1999年9月16日)[3]

項目 撃破数 ユーゴ連邦軍
所有数
撃破率
戦車/自走砲 93 350 26%
装甲人員輸送車 153 450 34%
火砲及び迫撃砲 389 750 47%


「NATOの事後調査によれば、退避・隠蔽が可能な戦車、装甲車の撃破率は10%以下だった。」
「そのうえ、空爆は小火器を用いた民兵組織によるアルバニア系住民の殺傷をストップさせることもできなかった。」

「ミロシェビッチへの圧力を強めるために早々と全土への戦略爆撃に切り替えたのである。」
「この結果、電力・石油施設のほか、ドナウ川を跨ぐ道路橋の70%、セルビアとコソボを結ぶ鉄道の100%が破壊されるなどインフラストラクチャーは大打撃を受け、99年のユーゴの国民一人当たり国内総生産は前年の半分に落ち込んだ。」
(以上、参考資料[4]から引用)


2.考察

弾道弾による人的被害は思ったより少なかった。
イラン・イラク戦争では実数及び負傷者は明らかではないが、弾道弾1基当たりの被害は2~18人程。
イスラエルでは38発で直接の死者2人、間接的な死者は5.5倍の11人。
直接の負傷者は1基当たり6人、同等の薬の不適切使用者、2.3倍の精神障害者が出ている。

当時のものではないが、テヘラン675.9万人(96年)、バグダッド384.1万人(87年)、テルアビブ34.8万人(98年)という都市人口の差が被害の差につながっているものと思われるが[5][6]、人口過密な大都市への攻撃にも関わらず被害は驚く程少ない。
弾道弾は長射程、高速で迎撃は困難だが、効果は低い。

コソヴォ戦争の空爆や巡航ミサイルでの攻撃は、民間への被害は大きかったが、隠蔽され移動可能な軍用車両等の被害は低かった。
空爆や巡航ミサイルは固定目標に対しては効果が高いが、移動目標に対してはその効果が限定的である事を示している。
湾岸戦争で使われた精密誘導兵器の比率は5%、コソヴォ戦争では29%に増えたが(イラク戦争では80%以上)[4]、有効ではなかったようである。
空爆や遠隔攻撃による攻撃の限界を示すものと思われる。


3.参考資料

  1. [1]ベニー・ミハルソン 「湾岸戦争とイスラエルのミサイル防衛」(戦史研究年報 第2号(1999年3月))
  2. [2]クラウディオ・ガッティ/ロジャー・コーエン 「シュワルツコフ正伝 PART-2」
  3. [3]三井光夫 「NATOによるユーゴ空爆(コソヴォ紛争)の全容―軍事的視点からの分析―」
  4.   (『防衛研究所紀要』第4巻第2号(2001年11月))
  5. [4]河野健一 「NATOによるコソボ紛争介入の教訓」(ロシア・東欧研究 第31号2002年版)
  6. [5]総務省統計局 「世界の統計 2005」
  7. [6]二宮書店 「データブック オブ ザ ワールド 2004年版」