「新人研修DeathMetal 〜ザ・電話番〜」
Written by ユラ
蓉子による自己紹介に関する講習が終わり、小休憩を挟んで今度は令が講師を務める。
さて、営業部部長である令が担当する項目は「電話の応対」である。
「ごきげんよう。今回講師を務める支倉令です。よろしくお願いします。さて、今回の講
習は『電話の応対』ですが、これは難しいのでしっかりと学んでいくことにしましょう」
(わぁ。茶色いスーツがビシッときまっててカッコイイなぁ)
「ダラダラと理屈を述べる前に、実際に目で見て耳で聞いてもらうことにしようかな。ま
ずは私が電話を受ける役をやりますので、電話を掛ける役をえっと……祐巳ちゃんにやっ
てもらおうかな」
「わ、私ですか!?」
突然の指名に祐巳のツインテールは、電気ショックでも食らったかのようにぴょんと勢
いよく伸びた。
「大丈夫。まだ何も教えていないから変な風になってしまっても問題ないから。祐巳ちゃ
ん携帯電話持ってる?」
「はい。持っていますが」
祐巳はバッグの中から白と黄緑色のケータイを取り出す。
「オッケー。じゃあ、実際に掛けなくていいからその電話を使ってシュミレーションして
みようね。祐巳ちゃんが電話を掛ける相手は総務部の祥子に、用件は明日の会議の時間を
連絡ということにしておこうか。その会議の時間は十時ということで。それじゃあシュミ
レーションスタート」
祐巳はイスに座ったままで携帯電話を握り、令は内ポケットから取り出した真っ黄色な
携帯電話を耳に当て、電話応対のシュミレーションを始めた。
「はい、聖句原株式会社でございます」
「え、あの、え〜っと聖句原株式会社ですか?」
「うん。相手が名乗った場合繰り返さなくていいからね。はい、続けて」
「総務部の小笠原祥子さまをお願いします」
「う〜ん、自分の名前は名乗った方がいいね。この場合は福沢祐巳です、とね」
「はい。すみません。私、福沢祐巳と申します。総務部の小笠原祥子さまをお願いします」
「いつもお世話になっております。あいにく小笠原は席を外しておりますって言った場合
祐巳ちゃんならばどうする?」
「そうですね。何時ぐらい戻るのか聞いてからまた掛けなおしますね」
うんうんと頷いた令はさらに付け加える。
「うん。それで正解だよ。他には逆に電話をしてもらうや、自分の用件を伝言してもらう
っていうのも選択肢に挙げられるね。祐巳ちゃんならばどうする?」
「伝言をお願いすると思います」
「よし、じゃあそれでいこうか。はい、続けて」
「それでしたら、伝言をお願いできますか?」
「はい。ご用件の方をどうぞ」
「明日の会議の時間の連絡したいと思ってお電話しました。時間は明日の十時からです」
「はい。それでは確認させていただきます。総務部の小笠原祥子宛に、明日の会議の開始
時刻は十時からということでよろしかったでしょうか?」
「は、はいそうです」
「かしこまりました。私営業部、支倉令が承りました」
「よろしくお願いします。失礼いたします」
「失礼いたします。で、相手が切るのを待ってから自分も受話器をそっと置くこと。これ
でシュミレーションが終わり。今ので大体の台詞や、会話の流れが掴めたかな。祐巳ちゃ
んなかなか良かったよ」
「ありがとうございます」
(あぁ。もうすっごい緊張したよ……。ふぅ)
「今のことを踏まえて、もう一人電話を掛ける役をやってもらうね。えっと、瞳子ちゃん。
君が、さっきと同じ様に総務の祥子へ電話を掛けるという設定でいくよ。オッケー?」
「はい。了解いたしましたわ」
瞳子は真っ赤な携帯を取り出し、自信たっぷりに言う。
「うん。それじゃあシュミレーションスタート。はい、聖句原株式会社です」
「あ、もしもしぃ。お久しぶりですわ。私よ私」
「ん? 瞳子ちゃん?」
「こっちも色々と忙しくて大変なのですわ。それはそうと、ちょっと困ったことがありま
して……。困ったことというのは、自動車事故を起こしちゃって賠償金にいくらか必要に
なってしまって、申し訳ないのですが二百万ほど貸していただけませんこと?」
「それオレオレ詐欺じゃないの!?」
「あら嫌だわ? シュミレーションというからてっきり」
「違うよ! もう何を聞いていたんだか」
がっくりと肩を落とす令。
「掛ける練習はもういいや。じゃあ次は、逆に私が電話を掛ける役で、誰かに電話の応対
役をやってもらおうかな。えっと……由乃にやってもらおうか」
「自分でありますか」
「軍人!?」
驚いた令は、そんな設定だったかなと首を傾げていた。
「ま、まぁいいかな。じゃあ由乃が電話の受け答えする役で、私が電話を掛ける方ね。ま
だ何も教えていないから多少間違っても構わないからね。それじゃあ、シュミレーション
スタート」
拳銃の様に黒一色の、そしてツヤが消された携帯電話を耳に当て由乃は叫んだ。
「はい、こちら捜査一課。何!? 殺しだと??」
「刑事違う!」
「へいまいど。リリアン寿司」
「寿司屋違う!」
「こちら山百合研究所」
「それ何所にあるの!?」
「お電話ありがとうございます。こちら佐藤書店でございます」
「本屋違う」
「もしもし支倉ですが?」
「それ私の家じゃない!! って由乃ぉ。ちゃんとやろうよ。ね?」
「嫌よ。それじゃあ全然面白くないじゃない!」
うわぁ、その台詞江利子さまと同じだよと呟き令はいじけ始めた。
「もういいよ。由乃には頼まないから。次には、そうだ乃梨子ちゃんにお願いしようかな」
「設定はさきほどと同じでよろしいですか?」
乃梨子はメタリックシルバーの携帯電話をスカートのポケットから取り出す。
「そう。私が掛けるから、乃梨子ちゃんが対応してね。じゃ、シュミレーションスタート」
「お電話ありがとうございます。こちら小寓寺観光案内所でございます。小寓寺に関する
ことならば何でもお答えいたします」
「乃梨子ちゃん!!」
「はい、Mahoo!電話相談室です」
「何それ!? 新シリーズ??」
「あ? Mahoo!相談室ですか? ちょっとご相談したいことがありまして。えぇ。
実は私どうも『時の迷子』になってしまったようで来年に行けないんです。はい。毎年毎
年同じです。はいはい。え? 志摩子さんが来ると。それで砂時計を。はぁなるほど。分
かりました。ありがとうございます。それでは、はい、失礼いたします」
「そのボケはアリなの? ねぇ??」
留まることの無いボケの洪水に、もはや半泣きな令。
「乃梨子ちゃんですらこうなんて…… それじゃあ最後の希望、志摩子お願い」
机に置いてあった桜色の携帯電話を手にする志摩子。
「はい、志摩子教会本部です」
「マジデスカ」
令はしくしくと泣き出し、しゃがみ込んでしまった。二回ノックの音がした後、返事を
待たずして江利子が部屋へと入ってきた。
「あら? 令が泣いているわね。面白っ! あのね、令は一見こう見えても結構デリケー
トに出来てるから、いじるとしても少しだけ手加減してあげてね」
珍しく令をかばうような発言をする江利子に、一同は半ば呆然としている。
「って私が本気で言うと思う?」
「そんな、お姉さまぁ」
FIN?
初版2006年5月30日
作後贅言
電話の応対というのものは、やってみて分かるのですが難しいものです。
一番困るのは「聞き取れない」ことですね。何度聞いても分からない。そんな時は……諦
めますね(爆) 分からない部分は推測するか空白かです(汗
さて、本編では令がいじられています。が、しかし、Mahoo!テレビショッピングシ
リーズの祥子と比べたらまだマシだと思うのですが、どうなんでしょう??
それでは、また。
ユラ
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