「新人研修DeathMetal!! 〜入社式の巻〜」
Written by ユラ
私、福沢祐巳はリリアン女子大学文学部英文科を卒業し、この度「聖句原(せいくはら)
株式会社」へ就職することになりました。今日からから新人研修が始まり、今からとって
も緊張してます。一体どんな研修が始まるんでしょうか?? あ、でもその前に入社式が
あるみたいです。その時に社長の佐藤聖さまからお話をいただけるみたいですが、どんな
話が聞けるのか楽しみです。
四月の三日、東京都内に二十七階建ての本社を構える「聖句原株式会社」本社ビルの十
五階、今日からここで入りたてほやほやのカワイイ新入社員達への新人研修が始まる。
この聖句原株式会社の代表取締役は佐藤聖、常務は水野蓉子、専務は鳥居江利子のゴー
ルデンなメンバーに、部長には小笠原祥子や支倉令といった有力メンバー、彼女達計五人
が、代わる代わる新人達へ教育を施すことになっていた。
さて、今期の新人は、福沢祐巳、島津由乃、藤堂志摩子、松平瞳子、二条乃梨子の五人
である。彼女達は、十五階にある新人研修室へと集められ、まずは入社式、そしてその後
には早速研修が始まる。研修は四月三日から六月の三十日までのおよそ三ヶ月間みっちり
と行われ、一人前の企業戦士を作り上げるのである。
午前十時。いよいよ、式が始まる。新入社員の五名はぱりっとスーツを着こなし、全身
にフレッシュさがみなぎっていた。部屋全体に軽い緊張感が満たされた頃、佐藤聖、水野
蓉子、鳥居江利子、小笠原祥子の四名が威風堂々と入室してきた。
(うわぁ、あの人達が社長とかなんだ。カッコイイなぁ)
部屋の前方には一人用のテーブルとイスが三組置かれ、各テーブルには役員の名前が記
してあった紙が張られていたのだが、代表取締役の聖の名前だけは「腹ペコおおかみ佐藤
聖」と、力強くも流麗な文字が墨で書かれていた。ちなみに残りの二名の名前はワープロ
印刷だった。重役と新入社員は対面の格好で座っている。
(腹ペコおおかみ? いったいどういうことなんだろう?? お腹が空いているのかな?)
伊達眼鏡をかけている祥子は、眼鏡のズレを左人差し指でくいっと押し上げ修正し、佇
まいを正し、部屋に澄み渡るような声で、式の開催を告げる。
(わぁ、眼鏡の似合う超美人な人だなぁ。あの人確か小笠原祥子ってお名前だったよね)
「これより、聖句原株式会社入社式を始めます。一同起立」
赤いスーツに、黄色いシャツ、そして白いネクタイを締めた聖は「よっこらせ」と、ま
るでおじんのようにもっさりと立ち上がり、それを蓉子に強く注意されていた。
「聖、あなたまだ24なのよ? その年寄りくさい言動は止めなさい」
「スーツ姿で眉をきっと吊り上げて怒る蓉子ちゃんに萌えぇぇぇ!!」
(萌えぇぇぇって本当にあの人社長なのかな? ぱっと見は派手で面白い美人なんだけど)
「礼。着席」
(あの、鳥居江利子さま起立も礼も着席も何もしなかったけどいいのかな? 顔には「超
絶に面倒だわ」と書いてあるみたいな無気力フェイス。でもすごく美人。というか、この
会社美人率が異常に高い。右隣の志摩子さんも左隣の由乃さんもとっても美人だし後ろの
瞳子ちゃんや、乃梨子ちゃんもかなり可愛らしい。まさか顔で採ったってことないよね?)
「それでは、新入社員の紹介に参ります。名前を読み上げますので、呼ばれた方は元気よ
く、『はいお姉さま』と言ってから立ち上がってください。可愛く言えた方には私個人か
らボーナスを出します」
(え? 祥子さまからボーナス?? 頑張っちゃおうか。でも、可愛らしく『はい、お姉
さま』ってどう言えばいいんだろう?)
「島津由乃さん」
由乃は、呼ばれたので返事をして立ったという感じでもって返事をし、立ち上がった。
「はい、お姉さま」
「70点、67点、79点」
(今の評価は左から蓉子さま、聖さま、江利子さまが順につけたものだ。重役三人から評
価されるなんてすごいプレッシャーだよ)
「藤堂志摩子さん」
志摩子は、よく通る発声で返事をし、微笑みながら立ち上がった。背中には志摩子の体
を柔らかく包む純白の翼の幻視が見える。出席者には、まるで天使が光臨したかのように
見えた(人によっては、黒翼の堕天使の光臨にも見えるかもしれないが)。
「はい、お姉さま」
「86点、93点、88点」
「ちょっとぉぉぉ!!! どうして私の評価が軒並み志摩子さんより低いのよ!」
噛み付かんばかりの勢いで、声を荒げ抗議する由乃。自身の行動に落ち度等があるなん
て考えが、毛頭無いといった雰囲気が見て取れるようであった。
「いひぁ、らって今の志摩子のろうが可愛かったんらから仕方らい」
(対訳:いやぁ、だって今の志摩子の方が可愛かったんだから仕方が無い)
真っ赤なスーツ姿の聖は、懐からネクタイのような形をしたでかいスルメをしがみなが
ら答えた。
「聖、物を食べながら喋っちゃいけないって何度も言ってるでしょう」
蓉子は聖のしがんいたスルメを取り上げて、めっ、っと注意する。しかし聖の顔は全く
落ち込んでいるという様子は無く、むしろ蓉子の姿に叱られるのを楽しんでいるような節
さえ見受けられていた。
(蓉子さま式の途中に物を食べるということは注意しないんだ)
「二条乃梨子さん」
乃梨子はいたって普通に何の感情も込めることなく事務的に返事をし、背筋を伸ばしな
がらすっと立ち上がった。
「はい、お姉さま」
「69点、83点、76点」
「聖、あなただけ妙に点数を高く評価しているのは何故?」
「不感症な乃梨子ちゃんに萌えぇぇぇぇ!! お姉さんが感じさせてあげるから」
(ちなみに聖さまは、この発言をした後蓉子さまにグーで殴られていました。わ〜お、蓉
子さまって武闘派なんだぁ)
「福沢祐巳さん」
名前を呼ばれた祐巳は慌てて返事をして、イスをがたんといわせながら慌しく立ち上が
った。
「は、はいお姉さにゃん」
(あわわわ噛んじゃったよう……)
「99点、2万点、123点」
現時点では最高得点を叩き出した祐巳。特に、聖に到っては二万という桁外れな点数を
付けている。ちなみに祐巳以前の最高得点者は、去年蓉子が祥子に付けた97点が最高だ
った。そんな蓉子でさえ、祐巳の「お姉さにゃん」の威力に99点という祥子を上回る高
評価をしており、頬杖ついていた江利子も表情を豹変させ、「祐巳ちゃんに興味津々です」
と、おでこに自分で書いたメモを貼り付けていた。
「ご、ごほん。静粛にして下さい。式の途中ですわ。祐巳、そう緊張する必要は無いわ。
そうね、リラックスするために深呼吸なさい。はい吸って」
「す〜」
「はい、吸って」
「す〜」
「はい、吸って」
「す〜……うっ」
「はい、吸って」
「す〜……っていつ吐くんですか!! このまま吸い続けたら信者居ますってば!!」
「あら? 嫌だわ私ったら。おほほほほほ」
祥子は口元に右手を当てながら高らかに笑っていた。
(あれれれ? もしかして私、総受け?)
祥子はひとしきり笑った後、再び顔を引き締め厳かに式を進行させる。
「松平瞳子さん」
とても新人とは思えない堂々とした貫禄を見せつけながら、優雅に、そして華麗に返事
をし立ち上がった。
「はい、お姉さま」
「77点、77点、77点」
まるで謀ったかのように7ばかりが並んでいた。
「言うまでも無いけれど最高得点者は祐巳ね。今月の給与に私からのボーナス五十万足し
ておくわね」
(ナンダッテー!? ごごごごご五十ユキチですか??)
「それでは、代表取締役佐藤聖社長より挨拶を頂戴いたします」
聖はしがんでいたスルメを蓉子に手渡し、今度は「どっこらせ」とのっそり立ち上がり、
話を始めた。
「ごきげんよう新入社員のみなさん。私は『腹ペコおおかみ佐藤聖』といいます。カワイ
イ子は私がイートゥン(eaten)しちゃうからそこんとこヨロシク。今のところイートゥン
最有力候補は祐巳ちゃんね。あとで一人で社長室へ来てちょうだいって痛い。痛いです蓉
子さん!」
立ち上がった蓉子は、聖の耳たぶを指でつまんで引っ張り上げていた。
「聖、後で私の部屋に来なさい」
「は、はい分かりました。後でお伺いいたしますからその手を話していただけませんか?」
(聖さまの耳痛そうだなぁ。というかイートゥンってどういうこと? 食べる??)
真っ赤になっている耳たぶをさすりさすりしながら聖は、話を続ける。
「君達新入社員には是非夢を持ってもらいたい。例えば私の『会社にハーレムを作る』と
いった崇高でかつ日本の未来を作るようなデッカイ夢でも構わないし、『毎月千円貯金す
る』といった地味で小っさい夢でも構わないから、とにかく夢を持とう。
何故夢を持たなければならないか、それは、ただ会社に仕事しにくるだけじゃつまらな
いでしょ? 実際。野望でも構わないから何か、やり遂げようとする目標を持って仕事に
望んでもらいたいと思う。以上」
蓉子に預かってもらっていたスルメを受け取った聖はそれを受け取り、イスに座って直
ぐにしがみはじめた。せっせとしがんだためか、スルメはもう既に半分近く食べられてい
た。
「以上で入社式を終了いたします。それでは、一同起立」
聖は、しがんでいたスルメを内ポケットにしまい江利子以外全員が起立する。
「礼、解散」
「蓉子ちゃん今日のお昼何食べようか? 私は蓉子ちゃんを食べたいな」
「もう、仕方ないわね。昼休みまで我慢なさい」
「うぇ〜い。了解。今日のお昼は蓉子を♪」
ものすごい爆弾発言な会話を交わしながら(江利子を除く)重役達は退出していった。
(聖さまと蓉子さますごく仲がいいんだ。お昼も一緒に食べるみたいだし)
「新入社員のみなさんは、十一時から研修を始めるので、それまで休憩しておいてちょう
だい。では、解散」
祥子の号令に各自相好を崩し、緊張をほぐしていた。しかし祐巳以外全員の視線は祐巳
へと注がれていたのだが、当の本人は全くそのことに気が付かずにいた。総受け属性が開
花寸前の祐巳を待ち受けるイベントとは??
続く?
初版2006年4月6日
作後贅言
どうも連載しそうな雰囲気をかもし出してはいますが実際のところ未定です。
ユラマニアな方ならば、この作品が「実体験」に基づいて書かれているだろうと、思われ
るかもしれませんがその通りです(笑 結構端折りましたがあんな感じの入社式でした。
当然ですが、社長の話はもっとちゃんとしたものでしたけれど(笑
それでは、また
ユラ
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