「教えて!! 蓉子先生!!」

written by ユラ


「みなさんごきげんよう。法学部の学生をやっています水野蓉子です。

私の気のせいではないと思うのですが、このタイトルどこかで見た記憶があります。たしか「知る得る留める」先生だったような……

まぁ、それは置いておくとして、唐突ですが、今日は迷える子羊の質問に答えようかと思います。それでは、迷える子羊さんどうぞ」

「やっほ〜。聖さまだよ〜。みんな元気してるかな〜。う〜ん今日もみんな素敵で私はうれしいよ」

「……聖、あなた何しにきたの……?」

「やだなヨーコちゃん。質問に決まってるでしょ」

「じゃあ、あなたが迷える子羊ということなの」

「そ。そういうこと。んじゃ早速私の質問聞いてもらおうかな」


佐藤聖の質問「本って何で割引して売らないの?」


「これがあなたの質問ね」

「うん。そうだよ。これ不思議に思わない? もしよ、マリみて単行本を三割引とかで販売するともっと読者が増えるのに何故本屋はそうしないんだろうなぁって思わない?」

「まぁ、書籍に限らず音楽CDや新聞も定価販売が基本よね。これには理由があるの」

「理由? じゃあその理由ってやつを聞かせてもらおうじゃない」

「ちょ、ちょっと待って聖。そんなどっしり構えなくていいのよ。ね? では、質問の回答だけど、書籍は普通の商品と違う点があるの。

それは、委託販売という販売形式を採ってることね」

「委託販売?」

「そうよ。週刊誌やコミック、文庫本に実用書、本は基本的に全て出版社が取り次ぎと委託販売契約を結んで、その取次ぎがら小売店、つまり

街の本屋さんに本が委託され、そこで私達は本を購入しているのよ」

「ふうん。つまり、本は、出版社→取次ぎ→本屋っていう具合に移動するってことなのね。でも、それと定価販売ってどう関係あるの?」

「この委託販売は、出版社が本の価格を決定し、その決定された価格を取り次ぎや小売店が守って販売してるの。もっと身近な例で言えば同人誌の委託ね」

「同人誌? 何それ?」

「聖……あなた東京に住んでるのに知らないの?? そんな…なんてもったいない!

「蓉子……?」

「あら? いやだわおほほほほ。同人誌が何たるかは自分で調べなさい。でも、大雑把に言えば個人出版の雑誌が妥当かしら。

その同人誌をとらのあなやメロンブックスに委託販売するときに『この値段で売ってください』という契約を結ぶの。

もし、聖あなたが『いばらのもり』という原価六百円の同人誌をメロンブックス秋葉原店で八百円で販売してもらう約束をすると仮定するわよ?」

「そのタイトルちょっとやだな」

「そこで、メロンブックス秋葉原店が勝手にに本を割引して五百円で販売したとしたら、あなたどう思う?」

「う〜んそれはいい気がしないな。約束は約束だしちゃんと守ってもらわないとね」

「そういうことよ。今は感情論的な話になってるけど、出版社は利益を得ないと商売にならないの。だから販売価格を維持させるのよ。

だから委託販売の特徴の一つ目は、今言ったように販売価格の拘束で、特徴の二つ目、それは返品可能であること

「返品? 普通の商品って返品できないの? 売れ残ったやつとか」

「書籍以外の商品は基本的に買いきりといって返品できないの。それについてはまた後で説明するとして、本は出版社に返品出来るのよ。

週刊誌とか、売れ残った本なんかを返品できるのが委託販売なの。それは何故か。所有権が移転していないからよ」

「なんか話が難しくなってきたな……」

「そうね、でも出来る限り解り易いように努力するから、ちょっと辛抱して。

もし、あなたが祐巳ちゃんにMDプレーヤーを一万円で売ってあげるとするでしょ?」

「私は祐巳ちゃんを買いたいの!!」

「こらぁぁぁぁぁ!! 何言ってんのよ!!」

「…………祐巳ちゃん意外にガードがカタイから、ね?」

「惚気は後でやって。で、一万円で売ったMDプレーヤーの所有者は聖から祐巳ちゃんへと移ったわけね。だから祐巳ちゃんがこのMDプレーヤーを

どう扱おうが祐巳ちゃんの自由。これを志摩子に売ってもいいし静さんに売ってもいいと。売ったMDプレーヤーの扱いに聖は文句を言えないの。

これが所有権の移転なの。分かったかしら?」

「なるほどね。これを今の話を、委託販売に当てはめると大体話は読めてきたな」

「端的に言えば、本屋に並んでる本は、そのお店の持ち主じゃなくて、出版社が持ち主なの。だから返品が出来るの」

「じゃあ本以外の商品ってどうなってるの?」

「書籍以外の商品については、返品出来ない代わりに、販売価格を自由に決めることができるの。それは何故か。今言った所有権が移転したからよ。

だから、卸売業者から入荷した商品を小売業者がいくらで売ろうとそれは自由なの。でも、著しく安いのも問題なのだけれどもね」

「つまり、所有権が移転してる商品の価格は好きにできて、移転していない商品の価格は委託者の決定に従わなければならない、

決定された値段はいじれないってことでいいのかな」

「良く出来ました。結論はそうなの。ちなみに、商品の販売価格を拘束することは、再販売価格維持行為といって違反なの。

もしこんなことが横行すれば価格競争なんて無くなってしまうから禁止されてるのよ」

「ところでさ、蓉子、著しい安売りって何でダメなの?」

「それはね、もし、あなたが牛乳屋さんとするでしょ」

「私は祐巳ちゃんのミルクが欲しい!!」

「お前ちょっと黙ってろ!!」

「蓉子もそう思うでしょ? イチゴミルク祐巳ちゃん味」

「…………」

「あ痛! ごめんごめん。あの、いてて、冗談だよ冗談。痛いって! その鉄ビシはマジ勘弁」

「授業の邪魔をする悪い子には鉄拳制裁!! 

吉祥寺駅の周辺に、個人経営の佐藤牛乳店と、大手量販店のスーパー小笠原と、同じく大手量販店の鳥居マートの三店舗があったとするでしょ。

佐藤牛乳店では牛乳一本二百十円、スーパー小笠原では一本百六十円、鳥居マートでは一本百五十円で売っている状況で、

スーパー小笠原と鳥居マートが安売り合戦をした結果、スーパー小笠原では一本百円、二本で百五十円で販売していた時、

佐藤牛乳店はこれに対抗できると思う?」

「どうかんがえても無理だよね。相手は赤字覚悟でやってるんだし」

「この状況が続けば佐藤牛乳店は営業できなくなる、つまり取引の制限が発生していると表現できるの。

結局異常な安売りを続ければ競争相手が倒れてしまい、その店の一人勝ちになってしまう。それは自由競争の考えに反するの。

だから、禁止されてるのよ。でも、期間限定、時間限定、数量限定といった要素が含まれていれば認められるのよ」

「分かった。今日はありがとう蓉子」

「いえいえ、分かってもらえたらなら私もうれしいわ」

「じゃ、ごきげんよう」

「では、みなさんごきげんよう。ところで聖、さっきからあなた祐巳ちゃん祐巳ちゃんって一体どういうつもりなの?

「えっ? いや、ほら、何て言うか……」

「聖にはお仕置きが必要みたいね?」

「そんなぁ…それは勘弁してよ? ね?」

「聖、それはあなたの反省次第よ」

「うわぁ……」





『お嬢様にも分かる経済法入門』著:水野蓉子 123ページから125ページの抜粋

初版2006年2月8日



作後贅言


調子の乗ってやってしまいました法律関係のSS(滝汗

出来る限り解り易いように書いてはみたのですが、どうでしたでしょうか??

ネタがネタだけに万人受けしないと思われますが、少しでも何かの参考になれば幸いです。

ここで、一つお断りを。

このSSは素人が書いたものですので、内容に誤りが含まれている可能性があるかもしれませんので、あくまで参考程度として

お考えいただければと思います。

では、また。