「或るおバカの妄想」
Written by 榎木津巽
獣耳。
非現実的な記号でありながらも、強大な魅力を秘めたもの。
この物語は、そんな獣耳属性にはまってしまった、とある女子高生の妄想溢れるおバカ
ストーリー。
世間では『うたわれるもの』というゲームが流行っているらしい。
ただし、「世間」という言葉が一体どこまでの範囲を指し示しているかを問うなんて野
暮なことはしてはいけない。
私、二条乃梨子と『うたわれるもの』との出会いはまさに偶然だった。
休み時間を文庫本を読んで過ごしていたある日、本を買ったときに中に入っていた小冊
子のような広告を栞代わりに使っていた。それに描かれていたのは『うたわれるもの』ア
ンソロジーノベルの発売広告だ。
私はこの時まで、広告に書いてあることに全く注意を払っていなかった。後から考える
と、実に勿体無いなぁとも思うわけだけど。
ページを閉じようと広告を手にし、たまたま広告のカラフルなイラストに目がいってし
まったその時。
な、なんだろうこのイラストは!? 脳髄に電撃が迸ったかのような衝撃。
アイヌ民族テイストな衣装も目新しいけど、何よりもまず、可愛らしいキャラクターに
すべからく付いている耳は何? 鳥の羽のようなものや、犬に近いもの、虎っぽい耳、あ
と、背中に大きな翼が生えたキャラもいるけど、何の違和感も無くキャラの魅力を引き立
てているじゃない。
す、すごいよコレは! ふ〜ん。『うたわれるもの』っていうのか。帰ったらググって
みようかな。
家のパソコンで検索したところ、どうも私はこのゲーム(原作がゲームだったことも調
べるまで分からなかった)に多いな感心を持ってしまったみたいだ。
この作品はアニメにもなっているようで、とある経路で視聴してみた。
正直堪りません。
すごいよ獣耳。私にこんな属性があるなんて知らなかった。
私と『うたわれるもの』との出会いは、文化革命とでも呼ぶべきな衝撃だった。
さて、私、妄想してみました。
何をかって? それは当然獣耳装備の志摩子さんに決まってるでしょう。
ケース1「犬耳装備志摩子 in薔薇の館」
志摩子さんに犬耳を装備させてみた。色は白黒のまだら模様。下付きの耳がちょこんと
ジャストフィット!! 世間ではウサ耳がデフォルトだけど、これも中々に。
そんな志摩子さんと、薔薇の館で一緒に仕事をしているシチュエーション。
「お待たせ。紅茶淹れてきたよ」
「ありがとう」
ぴょこりんと、動く犬耳。カワイイなぁ。もう。
しばらくの間は真面目に作業をしているが、ふと隣に座る志摩子さんの様子を見ると、
しっぽを揺らしている。私の視線はそれに釘付けだ。
ふっさふさの柔らかそうなしっぽを手で撫でてみたい衝動に駆られ、躊躇うことなく実
行した。
ぎゅむ。
撫でるどころか軽く握ってみちゃった。
「ひゃうんっ! の、乃梨子!?」
あぁ。えぇ声出しはりますなぁ。
「乃梨子。その、しっぽは握らないで」
「どうして?」
「え!? いや、その……そこは敏感なところだから触られると……」
顔を真っ赤にしながら、どもり、呟くようにそんなことを言っちゃう志摩子さん。
やばい。好きな人を苛めたくなるっていうヤツの気持ちがちょっとだけ分かってしまっ
たかもしれない。
こんな仕草を見せられたら、そりゃあもっと苛めたくなるじゃないデスカ。
「へぇ。敏感なところなんだ」
しっぽを軽く握った手を上から下へと滑らせるように動かしてみた。
「ひあっ!! だ、だから握らないで」
あまりのイイ声っぷりに鼻血が出そうになりました。
よし、次ぎ逝ってみよう。
ケース2「虎耳装備の志摩子 in真夏の夜の公園」
猫と言えば勝手気ままに甘えるイメージがある。というわけで、この志摩子は猫っぽい
性格を足したバージョンだ。
唐突に甘えてきたりする志摩子さんかぁ。普段そんなこと絶対にしない人だから、妄想
のしがいがあると思わないかね諸君?
志摩子さんと二人で夜の散歩。今の志摩子さんが装備してるのは黄色と黒、ぴんと尖っ
たネコミミ、つまり虎の耳だ。どことなく凛々しさがアップしたような気がする。
「乃梨子、そこのベンチで一休みしましょうか」
煌煌と輝く外灯。人気は無い。音がするものといえば虫の鳴き声と、微風にそよいだ葉
の擦れる音だけの空間。ベンチ周辺には私と虎耳志摩子さんの二人だけ。
「今晩も暑いわね」
シャツの胸元を摘んでパタパタと動かし、風を通そうとする。
全く無防備にそんなことをするので、ちらっと見えるのだ。アレが。確信犯なのか天然
なのか。
「静かで、いい夜と思わない?」
「うん。そうだね」
唐突に志摩子さんは私の肩にもたれてきた。そしてイキナリ頬擦りを。
「ちょっと志摩子さん!?」
「どうしたの? もしかして、イヤ?」
「そんなわけがありません!! ただ、ちょっとビックリしてしまって」
うふふ、と微笑んだ志摩子さんは次になんと……
「うわぁぁ!」
私の頬をぺろっと舐めた。
「さっきから乃梨子は賑やかね」
「あ、え、ゴメンなさい」
次の瞬間、志摩子さんは腰に手を回し、右肩を掴まれた私はそのままやんわりとベンチ
に押し倒された。
月夜に浮かぶ志摩子さんの蠱惑的(こわくてき)な微笑み。
「食べていい?」
「はい。どうぞ……」
……若干やり過ぎたような気もしないではないが、よしとしよう。志摩子さんになら食
べられてもいいんだから。
それでは、次で最後。さぁ逝ってみよう。
ケース3「真っ白な翼装備の志摩子 in中庭」
私と志摩子さんは、お昼休みに中庭を一緒にぶらついていた。
しかし、この志摩子さんの背中からは人の背丈近い大きさの、真っ白な翼が生えている。
見事だ。マリア様が顕現したといっても全く過言ではない。「美しさ」「優しさ」「包
容力」を兼ね備えたマイゴッデス(goddess=女神)!!
「ねぇ志摩子さん。一回この場でターンしてみてよ」
「ターン? どうして?」
「いいからいいから。ね、お願い」
私の意図を把握できず、ちょっとばかし困った顔した志摩子さんは、それでもくるっと
右足を軸にして回ってくれた。
くるんと回った志摩子さん。白い翼がふわりと舞い、純白の羽が一枚ひらりと落ちた。
本物の女神だ。ほら、後光が見えるでしょう?
「きゃっほぉぉい!! ブラボー志摩子さん!!」
「よく分からないけど、喜んでもらえてよかったわ」
「この羽もらっていい?」
地面に落ちた一枚の羽を拾う。
「別に構わないけど、それはただの羽よ」
「いいの。志摩子さんの羽じゃなきゃヤダ」
この羽は家宝にしよう。二条家の宝だ!
私は、この羽志摩子さんどうしてもやってもらいたいことがあった。それは……志摩子
さんの翼で抱擁してもらうことだ!
これはもうすっごいことだと思わないかね諸君?
ふわふわまふんな女神の抱擁。考えただけでも出血しそうだ。
前後に人がいないことを確認した私は、志摩子さんにお願いしてみることにした。
「志摩子さん!」
「は、はいっ」
「その大きくて柔らかそうで真っ白な翼で私を抱きしめて」
思い切って言っちゃったよ。
「……え?」
志摩子さんは困惑しきりなようすだ。いきなり「抱きしめて」って言われたら私でもビ
ックリして思考が止まるだろうなぁ。しかし、私はどうしてもその翼に包まれたいんだ!
「ダメ……かな?」
「ここで?」
「うん。ここで。ほら、人がいないから今のうちだよ。ね?」
きょろきょろと辺りを見回し、誰もいないことを確認した志摩子さんは、大きく息をつ
いて私と向かい合う。そして、おずおずと私の体を包み込んでくれた。
気持ちいいぃぃぃ!! しかも志摩子さんは暖かくて柔らかいから、あまりの気持ちよ
さに昇天しそうになる。
この際ついでだ。私は志摩子さんの胸元に顔をうずめてみた。
「乃梨子!? そこは、あの、えっと」
ふくよか。
この一言で全てが伝わるかと思う。
「もういいでしょ?」
「うん。本当にありがとう。そしてごちそうさまでした」
気が付くとパソコンのディスプレイにはスクリーンセーバーが。いつの間にか眠ってし
まったらしい。
妄想しながら眠るとは、私もとうとうアッチの世界にいらっしゃいしてしまったのかも
しれない。でも、それはそれでいいと思える自分がいた。
だって私は「志摩子さん属性」なんだから。
終
作後贅言
たはー。やっちゃったよそしてゴメンなさい。
素直に言います。この作品は自己満足以外の何物でもない(核爆
あとですね、うたわれるものアンソロジーノベルは<架空の商品>ですので、ご注意を。
志摩子といえば「ウサ・ギガンティア」がスタンダードですが、それ以外の記号を付与し
てみよう、と思いまして書いちゃいました。
ちょびっとでも悶えてしまったならば、乃梨子と同じ方向性をお持ちでしょう。大丈夫。
心配は要りません。それが正しいのですから(笑
さて、僕が思うに、「記号」という言葉は「メイド」「ネコミミ」「ツンデレ」「ポニー
テール」といったキャラクターの特徴を示すもの、そして「属性」は記号を愛でることの
出来る資質(素養)のことを指すものだと解釈しています。ツンデレ属性と表現されてい
る場合は「ツンデレという記号を好むことが出来る性質」を持っていることだと思います。
でも、実際にはあんまり気にしないで使ってもいいとも思う、曖昧模糊な榎木津です(笑
それでは、また。
余談ですが、この作品が万が一にも好評でしたら、蓉子さんバージョンも書こうかと思う
のですが、いかがでしょうか??
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