Written by ユラ



『もしもし。私小笠原放送局Mahooシリーズ製作・指揮を担当しております鳥居と申
しますが、福沢祐麒さまでございますか?』

「はい。俺が福沢です」

『以前お話させて頂いた段取りで収録、放送の方を行いますのでご準備の方はよろしいで
しょうか?』

「はい。俺の方は準備できています」

『速やかな段取り、ありがとうございます。祐麒さんの出番は三番目ですのでよろしくお
願いします』

「はい、こちらこそよろしくお願いします」

                                   「Mahoo!電話相談室出張版」



 日曜日の正午。またあの番組がやってきた。今度はメンバーを一新して。さて、今日の
メインは出張版ということで……

「私だ! 聖さまだ!! いやぁ揃いも揃ってなんだ辛気臭い。今日はほらおバカな商品
を売りつける番組なんでしょ?」

 聖さん違うよそれ! そっちは「テレビショッピング」だから。今回は困っている人の
相談に乗ってあげる番組だから。

「い、いきなり何てこと言うのですか聖さま!! 揃いも揃ってこのスタジオの出演者は
私と聖さましかいないじゃないですかもう。ちゃんとやってくれなきゃチキンがカラスに
なっちゃいますヨ?」

 珍しい。Mahooシリーズでは無敵の祐巳がツッコミにまわってるじゃないか。

「おや? 私に黒いのは効かないよ。何故ならば私は聖さまだからだ!」

「なんですって!?」

 ほら、祐巳のやつ一瞬で立つ瀬が無くなっちゃったぞ。

「ギンナンは?」

「無問題」

「盗撮盗聴は?」

「バッチコーイ」

 ふっ、と不敵に笑う聖さん。祐巳は聖さんには勝てない定めなのかっていうかもう番組
開始から何分経ってるんだ?? 早く先に進めてくれないと困るじゃないか。

「あ、改めてみなさまごきげんよう。助手の福沢祐巳です。本日は電話相談室の出張版と
いうことでお送りいたします」

「ん? あぁごきげんよう。私が聖さまだ! 悩める子羊よ、集まれ。そして私に抱かれ
ろ」

「ダメですよ聖さま!! 私がいるっていうのに」

 今日の聖さんはやたら自己顕示欲が強いなぁ。ついでに発言も危険だなぁ。そういえば
Mahooシリーズのメインは確か初めてだったっけか。でも、そんなはしゃぐものでも
ないだろうに。

「そ、それでは本日最初のご相談は、東京都にお住まいの『ブツゾウマニア』さんからで
す。もしもし、ブツゾウマニアさんでしょうか?」

『はい、そうです。今日はよろしくお願いします』

「それでは相談内容のほうをお願いできますか?」

『あのですね、私の姉の、あっ「姉」というのは実際には血の繋がっていない便宜上のも
のなんですが、で、そう、その姉であるシマコさんがすっごい美人なんです。綺麗なんで
す。この世の宝なのです』

「はぁ。それで」

 適当な相槌を打つ祐巳。聖さんには到っては携帯電話で誰かと楽しそうに喋ってる。

『どうしたらいいでしょうか?』

「何が……ですか?」

『ですから、シマコさんが可愛すぎるのです!! もう堪らん!』

 落ち着け乃梨子ちゃん! おっと「ブツゾウマニア」さん。うん。志摩子さんは確かに
改めて言うまでも無い程の美人だ。

「で、私達はどういった回答をすればいいのでしょう?」

 さしもの祐巳も返す言葉が無いようだ。

『はぁスッキリした。それではごきげんよう』

 えぇぇぇぇ!! なんじゃそら乃梨子ちゃん!

「…………あれ?」

「で、さぁ。うんうん。あ? ゴメン私収録中だからまた掛けなおすね。じゃ。祐巳ちゃ
ん終わった?」

「はい、それでは本日二人目のご相談は、東京都お住まいの『ショーグージ』さんからで
す。もしもしショーグージさん?」

『はい、ショーグージですが』

「早速ですが相談内容をお願いします」

『こんなことをご相談させて頂くのは恐縮なのですが、どうも私は迷子になってしまった
のです』

「迷子……ですって? それじゃあ電話する相手が違うじゃないですか。早く警察とかに
電話をしないと」

『いえ、その迷子といっても行楽地で迷ったというわけではありません。時の迷子になっ
てしまったようなのです』

 ちょっ、ストップ。何を言ってるんだ志摩子さんは?? それをネタにしちゃあマズイ
だろう。

「ほう。それはまた奇怪な。もっと詳しく話してごらん」

 お? 聖さまが妙に熱心だぞ。

『どうも私だけが来年を迎えられないようなのです。私だけが何年も同じ年を迷子の様に
廻っているようなのです』

「ふむ。それは多分『砂時計』が絡んでいるはずだね。もしかして割れたでしょ。それ?
そして君は砂に触れなかった?」

『え、えぇ。触ってしまいましたが……』

「やはり。それじゃあその砂時計を出来る限り修復し、時計を動かしてみる、つまり砂が
落下するようにすればいい。やってごらん。あの子はまだ持ってる筈だから」

『分かりました。それでは早速やってみることにします。それではごきげんよう』

 うん。これ元ネタ知らないとまるで意味不明だ。なのでちょこっとだけ解説を。これは
どこぞのしがない文士が書いた『時の迷子』という作品を読んでいただければ分かります。

 さて、もうすぐ俺の出番。携帯電話を握り締め、いざ戦場へ赴かん。

「本日三番目のご相談に参りたいと思います。東京都にお住まいの『ユキチ』さんからで
す。もしもし」

『もしもし。今日はよろしく』

「あら? この番組で初の男性相談者ですね。それでは相談内容をどうぞ」

『じゃあ、早速。相談したいことは俺の姉のことなんだ。当然血が繋がっている姉なんだ
けれども、とある番組に出演しているこの姉の暴走を止めてやってはくれないだろうか?
姉は出演者にそりゃ無茶なことをして……』

「ちょっと祐麒、私はそんなことした覚えないけど」

『ウソつけ。俺は一回も欠かさず見てるんだから間違いない。令さんに豆腐と称して焼け
た石を食べさせたりしたことを忘れたとは言わせないぞっていうか本名で呼ぶな。何の為
のペンネームなんだよ』

「それは偶然よ。偶然」

『本当か? あの時目が笑ってたぞ』

「それは酷いな。祐巳ちゃん。君は純粋で真っ直ぐであるべきだ。そんな真っ黒い祐巳ち
ゃんにはオシオキが必要なのかもしれないね。ふふふふふふ」

 て、手付きが怪しすぎるぞ聖さん! その、なんだ、公共の電波で放送できない真似は
止してくれよ。

「それぐらいでは負けません。だって私はブラックですから!!」

『おい、そんなこと胸張って言うな。恥かしいだろ』

「恥かしくないよ。だって私はブラックだもん!!」

 何をムキになってるんだ祐巳のやつは?

『二回も言わなくていいからそんなこと』

「ほう、祐巳ちゃんはあれか? オシオキされたい属性の持ち主なんだね。それならば私
は適任者じゃないか。だって私は……」

 おっと聖さんの魔の手が(なんと言い得て妙な表現だ)祐巳に襲い掛かる。流石に弟し
て放って置く訳には。

『聖さんストップ! 今は日曜日の真昼間だからね。ほら、日本の住まう純真な良い子達
も見てるからさ』

「子供如きでは私の暴走は止められないよ」

 うわぁ、これはどうしたものか!?

 結局番組の進行は一時停止になってしまった。聖さまが凶行に及んでいる間、画面は

「ご迷惑をおかけして大変申し訳ありません。しばらくお待ち下さい」

というテロップが表示されること十分間。その間、電話から色々な声が聞こえてきた。そ
う、「覗いて」しまったみたいな感じがする。でも切るにも切れないしなぁ。まぁ、事故
ということにしておこう。うん。

「はぁ。お、お待たせいたしました。で、えっと何の話でしたっけ」

 息が乱れまくっている祐巳。そりゃ、あんなことや、これ以上は本人の名誉の為に伏せ
ておこう。

「私のオシオキって身に堪えるでしょう祐巳ちゃん?」

「メタルのご加護がある限り私は負けません」

 おいおい何か発言が怪しげな宗教家みたいなってるじゃないか。というか、俺の相談は
どうなったんだろう?

『あの、もしもし、俺の相談は?』

「祐麒は黙ってて! これは聖戦なんだから」

「ふっ。そんなに構えなくていいよ祐巳ちゃん。そのメタルのご加護とやらも全部ひっく
るめて愛してあげるからさ」

 聖戦とはまた大袈裟な。

「聖さま?」

 ぎゅっと祐巳を抱きしめる聖さま。弟の俺が一部始終見ていることは……あの二人のこ
とだから気にしないんだろうな。汝のあるがままを愛すってか。

「さて、ユキチ君。祐巳ちゃんのああいった行動も、彼女の魅力の一つとして捉えてはや
ってくれないかな?」

『……分かりました。祐巳、あんまり無茶なことはするなよ。それじゃ、失礼します』

 祐巳だからこそあんな暴挙が許されるというわけか。祐巳よ、物事は程ほどにな。

「ふぅ。さて、本日最後のご相談は東京都にお住まいの『SRG』さんからです。もしも
しSRGさん?」

『ごきげんよう。聖、お久しぶりね』

「そ、その声はまさか……お姉さま!?」

 何だって!? と、驚いてみたけれども全く面識無いのでどんな人なのかさっぱり分か
らないが、あの聖さまが動揺するぐらいなのだから推して知るべしか。

『そうよ。覚えていてくれたようね。さて、聖、あなたに聞いてもらいたいことがあるの
だけれどいいかしら?』

「はい何でしょうか」

『前回の放送で自分の苗字が無いと言っていた子がいたのだけれど、私の場合なんか下の
名前すらないのよ。世間ではSRG、つまりスーパーロサギガンティアと呼ばれているの。
なんか合体系のロボットみたいに思わない?』

 そりゃ仰るとおりだ。何故名前を付けてあげなかったのだろう。そう考えると桂さんは
まだ幸せな方なのかもしれない。

「それはお姉さまが合体系のロボットだからでしょうに」

 かっかっかっと快活に笑う聖さま。ものすごい回答だ。

『そうか。私はロボットだったのねって違う! ロケットパンチもミサイルも装備してい
ないから!』

「それでは……実は名簿に載っていない生徒だったとか」

『そうなんです。私どうしてか苛められる訳が無いでしょう! 学校ぐるみの嫌がらせを
受ける理由が無いわ』

「分かりました!」

 祐巳が元気良く挙手して発言をする。

「おそらく『SRG』が本名なんですよきっと」

『そうだったのね。だから私の両親は白人じゃありません!』

「お姉さま。おそらくは『ご想像にお任せします』というやつなんでしょう」

『それも若干ニュアンスが違うような……。まぁ、私のことは好きに呼ぶといいわ。それ
じゃ、またね』

「ふぅ。疲れたな」

 聖さんは大きな溜息を一つついた。

「え? 余裕で互角以上に渡り合っていたじゃないですか」

「そうかなぁ? まぁ次の出番は全く未定だからいいか」

「残念ながらお時間となってしまいました。次回があれば、よろしくお願いしますね。そ
れでは皆さまごきげんよう」

「うん。じゃ、ごきげんよ」





FIN


初版2006年6月10日


作後贅言

しょっぱい物書きユラですごきげんよう。

60万ヒットの記念作品ということでお送りいたしましたが、お楽しみいただけたでしょ
うか??

せっかくの目出度いときにこんなおバカな作品で申し訳ないです(汗

今回は「種々雑多」といった感じになりました。初めてSRGにご登場いただいたのです
が、こんな形になってしまいました。


鯨さま、60万ヒットおめでとうございました!!

記念品がこんなのでゴメンナサイ。

それでは、また。