「Mahoo!ニュース2」


Written by ユラ



 午後十時。それは未知なる世界へと旅立つことが出来る列車の発車時刻である。

 福沢祐麒はまたもやテレビの前に正座してその時が来るのを待っていた。実に可哀相な
話ではあるが、祐麒はもう立派な「Mahoo!中毒者」なのである。Mahoo!無し
ではもう生きられないのである。いや、それは少し言い過ぎか。

 それはともかく、彼のような中毒者が実際に日本国内に数百万単位でいることは事実と
して認めなければならない。多分。


 九時五十九分五十五秒。残り五秒前、四、三、二、一……。

 午後十時になり、番組のオープニング映像が流される。BGMは前回と同様バリバリの
ヘヴィメタルだが、アニメーションじゃなくて実写映像だった。

 緑色が眩しいぐらいに映える山の俯瞰風景から、徐々にカメラの高度が下がり小さな都
市の市街地が映されている。緩やかな高配の坂をゆっくりと歩いている市民の姿。
 それから場面が切り替わり、古びてはいるけれど立派な造りの学校らしき建造物の俯瞰
風景が。その学校の教室や体育館が数秒ごとに映し出され、今度は歴史を感じさせる神社
へと場面が変わる。
 敷地はかなり広く、学校の運動場ぐらいある。真っ赤な鳥居が存在感を主張し、その鳥
居から奥に構える立派な神社が見えていた。
 そして最後に「おいでませ、聖美原市へ」という手書き風味な文字が画面いっぱいに広
がった。っておい、これ番組と全然関係ないじゃんか!!

「ごきげんよう福沢祐巳です。今宵もまたファンキーでエキセントリックなニュースをお
届けします」

「ごきげんよう。解説の小笠原祥子です。今宵もまたファンキーでエキセントリックな解
説を行いたいと思います」

 なんだこの瓜二つな台詞は? 普通のニュースと解説でいいから。普通で。

「本日一発目のニュースです。写真部の武嶋蔦子さんが盗撮容疑で逮捕されました」

「本当に??」

 なんか妙に嬉しそうな祥子さん。そうだよなぁ、今まで散々撮られてきたからな。

「今日の午後三時に、クラブハウスと自両方の家宅捜索を行い盗撮写真二十七万四千枚と
三十九台のデジタルカメラ等を押収しました。蔦子容疑者は容疑を全面に否定しています。
本人の弁によりますと、『私は美しいものを撮影するようにマリア様から依頼されている
のよ。だからこれは全然盗撮じゃないし』と……」

 瞳子ちゃんが祐巳そっと駆け寄り、身を屈めて祐巳に何かを手渡した。

「お伝えします。蔦子容疑者がたった今釈放されました。東京拘置所には乃梨子ちゃんが
待機しているとのことです。それでは呼んでみましょう。の〜り〜こちゃ〜ん」

 あ〜そ〜ぼってか。緩いなおい。なんか緊張感がまるで無いよな。

「二条乃梨子です。こちら拘置所前にはたくさんのファンが詰め掛けています。蔦子さま
は、『ほらね、私は美しいものを撮る為に生きているんだから』とにこやかに述べながら
タクシーで自宅へ戻られました。以上現場からお伝えしました」

 ん〜なんかしっくりこないな。そう、蔦子さんが写っている映像が全く無いからか。い
やまてよ、確か本人は「映される(写される)」のが苦手だったっけか。

「チクショー!!」

 祥子さんは、蔦子さんの保釈に本気で怒ってるみたいだ。やっと安心して眠れると思っ
たのが束の間だったんだからなぁ。

「次のニュースです。以前から由乃火山大規模噴火予知連盟会が指摘していたように、と
うとう由乃さんは令さまと十万回目の破局を向かえ、由乃火山が破局的噴火を起こしまし
た。
 噴火の際に放出された怒りのエネルギーは、往復ピンタ二百八十五万回分という桁がお
かしいぐらいのエネルギーです。当然その矛先は全て令さまに向けられ、ちょっと可哀相
な気もします。
 破局的噴火の原因は、令さまの剣道部員の後輩の指導の仕方でした。でれっと顔が緩ん
でいた令さまに由乃さんがキレたわけです」

「令もいい加減学習したらいいのにね。私はそんなことしないから安心なさい祐巳」

「はいお姉さま」

 あの、これニュース番組だよな? 決して甘〜いドラマとじゃないよな?? じゃあ、
画面からひしひしと伝わるこの甘ったるい雰囲気は何だろうか?

「続いてのニュースは、聖句原株式会社の動向です。今朝、佐藤聖社長が記者会見を開き
ましたので、その模様をお伝えします」

「うちの会社結構儲かってるからね、何か買おうかなと思ってるの。選択肢はこれ」

1:ボールペン一本
2:隣の蟹名不動産が発行してる株の51%
3:東京ドーム
4:山手線

「どれにするか、エンピツ転がして決めたいと思います。せ〜の……
 4ってことは、買うものは『山手線』にけって〜い!」

 マ、マジかよ!? 本気でそんな決定の仕方でいいのか? しかも買ってどうするんだ
よ山手線なんて。っていうかそもそも買えるのか? しっかし振り幅のでかい選択肢だな
あ。ボールペンとかわざわざ会見開いて買うものでもないだろうに。

「聖さまも困った人ね。そのうち、小笠原グループを買うとか言い出しかねないわね」

 高らかに笑う祥子さまをよそに、瞳子ちゃんは祐巳にまたもやメモらしきものを手渡し
た。

「え〜っと、再び臨時ニュースです。先ほど、小笠原グループが聖句原株式会社と合併す
る、と発表しました。合併とは言っていますが、これは事実上の買収です」

「ウソ?」

「ホントなんですよお姉さまぁ」

 絶妙なタイミング。もしかして狙ってやったのか?

「それではスポーツに関するニュースです」

 祥子さんは茫然自失で、目の焦点が合っていない。見ていてちょっと気の毒だ。

「なんと、可南子ちゃんがバスケットで三千安打を達成しました」

 バスケットボールでどうやって達成するんだよ! 野球とごっちゃになってるし。

「今日の太仲との試合で、九回表、太仲の大東のサーブを見事キャッチした可南子ちゃん
は、そのままゴールへタッチダウンし、三千安打達成となりました」

 何競技混じってるんだ一体? サーブはバレー、キャッチって野球か、で、タッチダウ
ンはフットボールだったけ。三競技が混然としたバスケ。もう意味が分からないな。

「最後に、明日のお天気を、志摩子さんお願いします」

「明日は東京に血糊の雨が降るでしょう」

 怖っ! 気持ち悪っ! 唐突に何て事を言うんだ志摩子さん。全国のファンが泣くじゃ
ないか。

「今のは冗談です。明日は多分雨かもしれないとも言い切れないところもまたさもありな
ん言わずもがな」

 意味不明過ぎる。結局明日は雨でいいのか?

「週間天気予報ですが、関東地方は今週いっぱいオーロラが出るでしょう」

 日本じゃ出ないってば。そんなナチュラルに嘘言わんで下さいよ志摩子さん。

「あら。気温のことを言い忘れていました。明日の奈良の最低気温は十五度、最高気温は
二十二度でしょう」

 いやいや、ここは東京だから奈良のことはいいからさ。ね?

「天気予報は以上です」

 ありゃぁ。結局何も分からなかったよ志摩子さんの予報。

「それでは、また次回があればお会いしましょう。ごきげんよう」

 ちなみに番組の最後まで、祥子さんは言葉を発しませんでした。合掌。



FIN

初版2006年5月20日



最近ギャグが加熱暴走気味がしないでもないですが、いかがでしょうか??

シリアスな作品を書くのもいいですけど、こういったおバカな作品もいいですね。

ちなみに番組冒頭の聖美原は架空の都市ですのでご注意を。


それでは、また

ユラ