
「大乱闘雪合戦」
written by ユラ
第一章「ROUND 1」
その電話は冬休みのある日の朝七時のことだった。
昨日の夜から降り続けた記録的な大雪は武蔵野の街を一面の銀世界へと変えていた。
ようやく今朝になって雪は降り止み、私は真っ白な世界を二階の自室の窓から軽く興奮しながら眺めていた。
そんな時だった。
「祐巳ちゃん。鳥居江利子さんからお電話よ」
電話に出たお母さんが呼んでいる。
しかも電話の主は、前黄薔薇さまである鳥居江利子さまからだ。
残念ながら江利子さまから電話をもらう心当たりは全く無い。
「なんだろう…?」
用件を考えながら階段を降りお母さんから受話器を受け取り電話に出た。
「ごきげんよう江利子さま」
「ごきげんよう祐巳ちゃん。いきなりで悪いんだけど今日の予定何かあるかしら?」
今日は一日中残った宿題でも片付ける以外特に予定は無いのだが、なるべく早いうちに解決しておきたい。
とは思うものの…
「はあ、無いといえば無いのですが…」
「そう。じゃあね雪合戦しない?」
雪合戦? これだけ雪が積もっていればそれは盛大な雪合戦ができるだろう。
「こんなに雪が積もることって珍しいじゃない。だからみんなでやりましょ」
面白いこと好きな江利子さまがこんな珍しい状況を放っておくはずはなくその結果、雪合戦の開催にたどり着いたと。
お姉さまと雪合戦かあ。そのシーンを脳内でイメージしてみる。
「お姉さまいきますよ! そうれ!」
「きゃっ!! 祐巳、冷たいじゃないの!」
雪をぶつけられて服は真っ白で、お顔を真っ赤にしながら雪合戦に興じるお姉さま。
それはそれでなかなかに美味しいかもしれない。
私はOKすることにした。
「さすが祐巳ちゃん素直でいい子ね。私の方でも何人か誘うから、祐巳ちゃんも誘っていいわよ」
誘うといえばそりゃあもう大体のメンバーは決まってくる。
お姉さまに、聖さま、志摩子さんに乃梨子ちゃんなどなど。
「十時にリリアンの校庭に集合ね。あっ、そうそう、せっかくやるのだったら面白いほうがいいでしょう?
だから、何か賞品を持ってきてね。賞品は… そうね、自分の宝物にしましょ。じゃ、また後でね」
反論させないように言いたいことだけを一気に喋るだけ喋って江利子さまは電話を切ってしまった。
賞品は自分の宝物。これは易々と負けることは許されないが、私の宝物なんてそう大したものが無い。
何にしようかと電話の前で考えること五分。
「あぁ!! これだ!!」
それは頭に電球が点灯してもおかしくないほどの閃きだった。
第二章「READY」
そのあと何人か誘い、仕度を終え、バスを乗り継ぎ学校に到着したのが九時四十分だった。
もう既に校庭に何人か集合しているようだ。
今日は積雪がひどい為屋外での部活動は中止となり、代わりに私達が使用することになっている。
後から聞いた話では、根回しは蓉子さまが全部引き受けてくださったそうな。
さすが前生徒会長さま。
「ごきげんよう祐巳さん」
校庭には、江利子さま、蓉子さま、志摩子さん、乃梨子ちゃん、由乃さん、令さまとあと蔦子さんの計七人がいた。
「あれ? 蔦子さんも雪合戦するの?」
「私はやらないわよ。あくまで私はカメラマン。雪合戦に興じる山百合会のメンバーをこの最新式のカメラに収めれるだけで、
私は幸せなのよ。だって私は…」
「写真部のエース武嶋蔦子さん、でしょ」
「さすが祐巳さんよく分かってらっしゃること」
ほんとに写真が好きなんだなあと改めて感心してしまう。私も何か趣味でも持とうかな?
そうこうしているうちに残りのメンバーが集まってきた。
「お姉さま!!」
「ごきげんよう祐巳」
「ごきげんよう祐巳さま」
本当にお姉さまが来て下さるとは思わなかったのでこれはすごく嬉しい。でも、瞳子ちゃんまで来るとは聞いてなかったけど。
「お姉さま、今日は楽しみましょうね」
最終的には前述のメンバーに、聖さま、祥子さま、瞳子ちゃん、可南子ちゃんの計十一名が集まった。
「さて、みんな集まったわね。今日はゆっくりと楽しみましょう。では、各自賞品を提出してね」
みんなは一体どんなものを持ってきたのだろうか。特にお姉さまの賞品が気になる。
用意された大きなダンボールに一番目に賞品を出したのは、聖さまだった。
賞品は「Love me till end of the world」という文庫本で、本人曰く部数限定の貴重本だとか。
二番目は蓉子さまで賞品は、ご愛用の鎮痛剤。本人曰く痛くて困ったときにすごく助かるとか。
三番目は江利子さまで賞品は、なんとダイアモンドの指輪。兄から買ってもらったものでそのお値段三十五万円也。
本当にそんな高価なものを賞品にしてよいのかと訊ねてみると、「つまらない物だから別にいいわ」という回答をなさった。
ちょっとだけ江利子さまのお兄さん達が可哀相に思えてきた。
四番目は令さまで賞品は、ご愛用の竹刀。年季の入った代物で、令さまファンならば絶対欲しいと思う一品。特に由乃さんとか。
五番目は祥子さまで賞品は、ご愛用の櫛。本人曰く母親の清子お母さまから譲ってもらったものだそうです。
六番目は志摩子さんで賞品は、分厚い実用書。タイトルは『操る者』で、琥珀という人が書いた本だそうな。
七番目は由乃さんで賞品はこれまた文庫本。池波正太郎氏の剣客ものの文庫本のセットだ。
八番目は乃梨子ちゃんで賞品はお気に入りの仏像。さすがに仏像を賭けの対象にするのはどうかなぁと個人的に思ってしまうけど、
本人が納得しているので受理された。
九番目は瞳子ちゃんで賞品は電動ドリル。突っ込みどころが多すぎて誰も何も言わずに受理された。
十番目は可南子ちゃんで賞品は御札。これまた突っ込みどころが多すぎて誰も何も言えずに受理された。
これまでの賞品を列挙していくと、貴重本、鎮痛剤、ダイアの指輪、竹刀、櫛、実用書、文庫本のセット、仏像、電動ドリル、御札。
たしか賞品は「自分の宝物」だったはずなのだが、中にはどうひいきめに考えてみても宝物とは呼べない物もある。
そして最後は私の賞品。それは、「私と半日デート券」
私の賞品を発表すると一同に動揺が走った。さらに目つきもこころなしか変わっていて、妙にやる気まんまんだ。
「祐巳ちゃんとデートかぁ。それは当然私がいただくよん」と、聖さま。目つきがいやらしくなってます。
「祐巳は誰にも渡しませんから」と、祥子さま。ぜひ頑張って下さい。
「面白そうね。それは是非欲しいわ」と、江利子さま。あんまり頑張らなくて結構ですよ。
「そんな賞品欲しくもなんともありませんわ」と、瞳子ちゃん。でもさっきからちらちらと私を見るのは何故?
全ての商品が提出され、江利子さまからルールを説明してもらう。
「ルールは簡単。雪をぶつけて相手の体力を0にし、最後に残った一人が優勝者のバトルロイヤル形式よ。
全員の体力の最大値は、皆一律{一万}に設定してあるけれど、防御力に関しては多少の大小はあるから気をつけてね。
あと、雪で作ったものならば弓でも槍でもドリルでもなんでもOKよ。制限時間は無いから気が済むまでやってちょうだい」
ということは、もしお姉さまと私だけが残った場合どちらかが相手を倒さなければならない。
しかし、私も自分の身がかかっているのでそう簡単には負けられない。でも、お姉さまになら倒されてもいいと思う。
「皆さん。準備はよろしいですか」
皆ちりぢりに散って開始の合図を待つ。蔦子さんが競技用のピストルを真上に構える。
「READY GO!!」
第三章「GO!!」 注:特に表記が無い限り本文中に登場する武器等は(炎や日本刀など)全て雪で出来ています。
パンっとピストルが鳴り雪合戦が開始された。
蓉子VS祥子
「祥子、あなたの力見せてみなさい」
「お姉さまには負けませんわ」
先に仕掛けたのは蓉子だった。
雪で作った黒鍵(長さ一メートル弱の投擲用の剣)を祥子に向かって投げる。投げる。投げる。
瞬く間に二十本以上の黒鍵を投げつけるも、祥子はそれらを巧みにかわしたり、雪をまるで炎のように巻き上がらせることで、
軌道を逸らしたりするなど、一本もヒットしない。
「かわしきれるかしら?」
隙を見つけた祥子は高密度の炎の塊で蓉子に反撃を試みる。
27HIT 2980ダメージ 蓉子残り体力7020
「さすが祥子なかなかね。でも、それだけじゃ私は倒せないのよ」
そう言うと祥子の視界から蓉子の姿が消えた。
雪で出来た短刀での縦横無尽の超高速連撃にさすがの祥子も回避できなかった。
21HIT 2450ダメージ 祥子残り体力7550
ダウンした祥子に追い討ちをかけるべく蓉子は飛び上がり、空中から黒鍵を投げつける。
「蜂の巣に…なりなさい!!」
ダウン状態の祥子に黒鍵が次々とヒットする。
15HIT 1760ダメージ invaild 祥子残り体力5790
「まだ負けてませんわ。お姉さま、全てを奪いつくして差し上げます」
突き出すように振るわれた右腕から、先ほどの塊とは比べ物にならないほどの強烈な勢いで炎が炸裂し、
さらには地面からも蓉子を焼きつくさんと炎が舞い上がった。
まだ空中にいた蓉子に巨大な炎が襲いかかる。
予想以上に広範囲な反撃に回避が間に合わずとっさにガードする蓉子。
360ダメージ 蓉子残り体力6660
お互いの体力差は千もなく状況はやや蓉子が有利だが祥子にも少なからず望みはあった。
再び蓉子が黒鍵を投げつける。
「ゼロ! トロワ! キャトル!」
それを祥子は大ジャンプで飛んでかわした、が、それが命取りとなってしまった。
大きくジャンプして攻撃をかわした祥子は蓉子の一メートルほど手前に着地、黒鍵の投げ終わった隙に反撃を試みるが…。
「セブン…」
蓉子の両手には第七聖典(重さ六十キログラムを超える鉄塊で、引き金を引くことで先端が尖った鉄槌を撃ち込むパイルバンカーが、
構えられており、それを祥子に向かって第七聖典を突き出しながら猛突進。
逆に着地の隙を突かれた祥子は当然回避できるはずもなくもろに直撃し、
「カルヴァリア」
さらに鉄槌が刺さった祥子ごと第七聖典を真上に構え、
「デスペアー!!」
引き金を引くこと十三回の強烈な連続射撃!! まさにガンダム撃ち!!
最後の一回が引かれ、天高く撃ち上げられた祥子は、どさっと地面に叩きつけられた。
19HIT 6120ダメージ 祥子残り体力0 KO
蓉子の挑発に簡単に引っかかってしまた祥子。哀れなり。
江利子VS令と由乃
蓉子と祥子の姉妹対決が始まったその一方では三代に渡る黄薔薇一家の対決が始まっていた。
「王の財宝(ゲートオブバビロン)」
と、江利子が指をパッチンと鳴らせば、何も無い空間から無数の宝具クラスの剣や斧や槍などが由乃にむかって超高速で飛翔する。
「なかなかやるじゃない由乃ちゃん。そうこなくちゃ面白くないものね」
「き〜〜〜!!! ちょっと令ちゃんも反撃してよ!! ただでさえあっちは手強いんだから!!」
がぁぁ、と剣のような巨大で大雑把な岩塊を(でも雪です)振り回す振り回す。
由乃が剣を振り回すたびに周囲の雪が吹き飛び地面が抉れていくが、江利子にその剣を振り下ろそうとしても、
「王の財宝(ゲートオブバビロン)」
が、発動しどうしても防御に回らざるお得ないため、その必殺の一撃がどうしても当てられなかった。
「ごめんなさいお姉さま」
風王結界により令の持つ剣の刀身は見えない。その見えない剣から繰り出される見えない斬撃を江利子は「王の財宝」によって
取り出した名も無き宝剣を手に取りこれを防ぐ。
令の素早い踏み込み、さらにそこから繰り出される強烈な連撃を江利子は全て捌ききる。
「おりゃぁぁぁぁぁ!!」
令と江利子が斬り合っているその隙に、由乃は江利子の背後から必殺の一撃を見舞おうとするが…
「天の鎖(エルキドゥ)」
江利子がパチンと指を鳴らすと、由乃の足元から巨大な鎖が何本も現れ、それらは由乃をがんじがらめにし身動きできないように、
がっちりと拘束する。
「何よこれ!! くっ… 動けないじゃないの!!」
「よ、由乃!?」
天の鎖とは、「神を律する」もので相手の神格が高いほどその効果を増す拘束具である。
「何なのよ!! はずれないじゃない!!」
「ふふふ。由乃ちゃんじゃ絶対はずせないから大人しくしてなさい」
噴火の神(バーサーカー)である由乃にとって天の鎖は最強最悪な拘束具となってしまう。
「二人きりで楽しみましょう、令」
「由乃を放してくださいお姉さま!」
風王結界を解放しその光る刀身が解放され、周囲に台風のような暴風が大地を払い、令に急速に高濃度の魔力が凝縮されていく。
「面白いわ、力比べをしようというのね」
それに呼応して江利子はパチンと指を鳴らして「乖離剣エア」を取り出した。
膨大な魔力を圧縮していき、乖離剣エアの三枚刃が高速回転し強烈な旋風を巻き起こす。br>
「約束された…(エクス…)」
極限まで集積された魔力が注ぎ込まれた聖剣を、江利子を殲滅せんと今、振るわれようとしている。
「天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)」
江利子も真名を告げ己の宝具を令に振るう。
「勝利の剣(カリバー)!!」
トップクラスの威力を誇る宝具同士の打ち合いが始まった。
天地乖離す開闢の星VS約束された勝利の剣。力と力のぶつかり合い。
しかし、その差は歴然だった。約束された勝利の剣はみるみるうちに天地乖離す開闢の星に飲み込まれていき、
やがて約束された勝利の剣は完全に飲み込まれ、その強大な破壊の奔流が令を襲った。
令は軽々と数十メートル吹き飛ばされ地面に叩きつけられた。
24HIT 12730ダメージ 令残り体力0 KO
「令ちゃん!!」
「あらあら残念ね。次はもう少し頑張りなさい。さて、あとは由乃ちゃんね」
「きいいいい!! 離せ! このっ!!」
由乃のわめきを全く無視し、江利子はパチンと指を鳴らした。
「王の財宝(ゲートオブバビロン)」
必殺の威力を持つ宝具が次々と由乃に突き刺さっていった。
12HIT 10460ダメージ 由乃残り体力0 KO
聖VS志摩子と乃梨子
「おそっちゃうよ〜」
「志摩子さんに何をするんですか!!」
志摩子に抱きつこうとする聖を乃梨子は、「物干し竿」と呼ばれる長身の日本刀を振るい聖をけん制する。
「おお怖っ。ちょっとぐらいいいじゃんか、けち」
「何を考えてるんですかあなたは」
「別に何も考えて無いけど」
「考えもなしに志摩子さんに近寄らないでくれますか?」
二人のやりとりに志摩子はただおろおろするばかりであった。
「じゃあ、志摩子には力づくでも抱きついちゃうからね」
「そんなこと私が絶対させませんから」
ぶんぶんと物干し竿を振るうも、それを聖はひょいひょいっとかわす。
そして、むんずと地面の雪を掴み取った聖はそれをころころと丸めてボールし、それを乃梨子めがけて投げつけた。
が、乃梨子には当たらなかったのだが、その雪玉の着弾点にはでっかいクレーターが出来ており土煙やら粉雪が舞い上がっていて、
さながら隕石の落下地点のようである。
「な、何ですか今のは!! 」
「何ってこれは雪合戦でしょ? だから雪玉つくって投げただけじゃないの」
ちょっと本気だすよ、と聖は次から次へと雪玉を投げまくる。
自分に当たりそうなものや、志摩子にあたりそうなものを物干し竿でなんとか野球のバッティングのように打ち返していった。
「やるな乃梨子ちゃん」
「はぁはぁ化け物ですかあなたは。出鱈目にもほどがあります」
「そうかな〜。江利子や蓉子のほうがもっとひどいよ。特に江利子は私でも反則だと思うし」
と、江利子の方を指差して聖は言う。ちょうどその時は江利子が「王の財宝」で由乃の攻撃を防いでいるところだった。
「ところでさっきから妙に大人しいね志摩子」
「はいっ!!」
急に話かけられた志摩子は、びくっと肩を震わせた。
「せっかくのゲームなんだからさ、もっと積極的に参加しなきゃだめじゃない」
「はい、お姉さま」
「そこ!!」
と、聖が雪玉を投げつけた場所には志摩子が召喚した大量の骸骨のようなゴーレムがゆらゆらと聖の方に向かって歩いていた。
「ちゃっかり、やることはやってるじゃないか。さすがは私の志摩子だね」
「その隙もらった!!」
乃梨子は聖の隙を突いて必殺剣「燕返し(直線の一の太刀、弧の二の太刀、払いの三の太刀という三種類の斬撃を全くの同時に放つ、
剣撃による牢獄を作り出す回避不能の必殺剣)」を繰り出した。
3HIT 1520ダメージ 聖残り体力8480
「痛たたたた。すごいな乃梨子ちゃん。今のは全然よけられなかった」
「ってなんでそんなにぴんぴんしてるんですか!?」
「だって私真祖だからね。英霊の攻撃といえども一撃ではやられないよん。ぶい」
余裕のVサインを乃梨子に見せ付けている間にゴーレム達は聖めがけて剣を振り下ろそうとしていた。
「邪魔よ」
聖は小さな雪玉をショットガンのようにばら撒き、がらがらぼろぼろとゴーレム達はあっけなく倒されていく。
「どうしたの志摩子? もっと派手にやんなきゃ私は倒せないよ?」
「そうですねお姉さま。私も本気でいきますから」
そう言って志摩子は着ている黒いコートをばさっと翻し、空中に躍り出た。
「空中か。さすがにそれはちょっとやりにくいな」
「志摩子さんすごい!!」
苦笑いする聖や、凄技を見せられて驚いている乃梨子を尻目になにやら妖しげな呪文をぶつぶつ呟いたかと思うと、両手を上に挙げた。
そして、志摩子の両手には直径四メートルほどの巨大な雪玉が現れ、それを聖めがけて投げつけた。
「おっと危ない」
「志摩子さん!?」
聖と乃梨子は隕石のような雪玉を飛び退くように回避する。
「志摩子さん。もう少し加減してください。私までダメージ受けてしまいます」
乃梨子は上空にいる自分のお姉さまに進言するが…
「ごめんなさいね乃梨子。ついでだからあなたも一緒にやられてね」
「ちっ、腹黒モード全開だね志摩子」
そして再び志摩子の掲げた両手には巨大な雪玉が現れ、それを勢いよくぶん投げ計二十個の雪玉を次々と投げていった。
3HIT 1260ダメージ 聖残り体力7220
4HIT 6790ダメージ 乃梨子残り体力3210
聖が降ってくる雪玉を、自分が作った雪玉を投げることで幾つかは破壊できたがそれを上回る間隔で雪玉が降ってくるため、
どうしても全てをかわしきれなかった。
「乃梨子ちゃんちょっと耳かして」
「何ですか?」
不利を改めて悟った聖は、乃梨子に打開策を打ち明けた。そして、それを聞いた乃梨子は、
「仕方ないですね。まずはそれをやってみましょう」
ここに一時的ではあるが聖X乃梨子同盟が結ばれた。
「これで終わりにして差し上げます」
志摩子の両腕には今までとは比べ物にならないほど巨大な雪玉が生成されようとしている。その大きさおよそ直径三十五メートル。
「いくよ乃梨子ちゃん!!」
「はい!! 聖さま!!」
乃梨子は三メートルほどジャンプし、落下してくる乃梨子を聖が片手で受け止める。つまり今、聖の右手には乃梨子の両足がのっかている
格好になっている。そして乃梨子の体を槍投げの槍のように見立て、聖が志摩子めがけて乃梨子の体を投げる。
そして今まさに雪玉が投下されようとしたその瞬間…
「燕返し」
高速で飛翔した乃梨子は一瞬のうちに志摩子にたどり着き、彼女と同じ高さまで上昇したその刹那、必殺剣燕返しを放った。
3HIT 11050ダメージ クリティカル 志摩子残り体力0
「強いのね乃梨子…」
燕返しを放った次の瞬間に不発に終った雪玉を緩衝材にし、なんとか地面に着陸した。
落下の瞬間はかなりの衝撃が乃梨子の体を走った。
1HIT 660ダメージ 乃梨子残り体力2550
「お疲れさん乃梨子ちゃんさすが男前だね」
「はあ…、本当に疲れました」
「じゃ、おやすみ」
聖の殺人的な雪玉が乃梨子に直撃した。
1HIT 7890ダメージ 乃梨子残り体力0 KO
祐巳VS可南子VS瞳子
さすがに二人いっぺんに相手をするのはきついが、幸運なことに今は私と、可南子ちゃんと、瞳子ちゃんの三人は三つ巴状態にある。
開始直後からお互いをけん制しあうだけで、主だった攻撃はまだ両方からされていない。
何より気になるのは瞳子ちゃんの余裕たっぷりな表情だった。
一体どんな武器や能力を持ってるんだろうか。それに対して可南子ちゃんは異常なぐらい慎重だ。
先に動いたのは可南子ちゃんだった。手にした長い鎖の先には釘のような先端の尖った鉄の棒が付いている。
それを私めがけて振り投げる。
「おっとっと」
それをなんとか回避し、手に持ったナイフを構え、可南子ちゃんの死の線(モノの壊れやすい線)を識る(みる)。
その時、
「I am the bone of my sword(我が骨子は捻れ狂う)―――“偽・螺旋剣”(カラド、ボルク)」
瞳子ちゃんが武器を投影(術者の想像理念が真作を再現する魔術)し、それを可南子ちゃんにむかって矢のごとく弓で発射した。
それを紙一重のタイミングでぎりぎり回避した可南子ちゃん。
着弾と同時に耳をつんざくような爆発音が、続いて強大な衝撃波が大気をびりびりと振るわせる。
剣の着弾地点ではなんと直径二メートルほどのクレーターが出来ていた。
「…………」
あまりの威力に言葉が出ない。もはやこれは雪合戦じゃないだろうと思ってしまう。
「おっ? すごいじゃないドリルちゃん」
後ろから聖さまがこちらに歩いてくる。ちょっとダメージを受けているようだがまだまだ元気そうだ。
「偽者(フェイカー)が…」
江利子さまがすごく不機嫌そうに前から歩いてくる。フェイカーってどういうことなんだろうか。
「へえ。彼女が祐巳ちゃんの妹候補なのね」
蓉子さまがにこにこと笑顔で右から歩いてくる。しかし、蓉子さまの両手にはものすごくいかつい武器、第七聖典が握られている。
なんと、一箇所に残っている六人全員が集結している。全く油断も隙も見せられない緊張が全身を走る。
一箇所に全員が集まったのを好機と捉えた可南子ちゃんが宝具を使用する。
「騎英の手綱(ベルレフォーン)」
真っ白な白馬、ペガサスにまたがった可南子ちゃんは一気に数百メートルの高さまで飛翔し、その一団めがけて急降下する。
音速を超えるスピード。直撃すれば一撃必殺の校庭のどこにいても回避できそうに無い、不可避な破壊疾走。
が、しかし、誰も何もしようとしない。もしかしてみんな諦めてしまったのだろうか。
私の場合は何か対抗しようにも、どうにもできないだけなのだが…
あとコンマ数秒後には破壊の塊が直撃するその瞬間、
「熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)」
七枚の花弁をかたどった、その一枚一枚が古の城壁に匹敵するほどの堅固な防御力を有する結界が展開し、
可南子ちゃんの突進をなんとか食い止めている。その間に江利子さまは指をパチンとならし、
「王の財宝(ゲートオブバビロン)」
無数ともいえる様々な種類の刀剣が空間に現れては弾丸のように飛んでいく。
14HIT 7890ダメージ 可南子残り体力2110
「くっ…」
防御と攻撃を一辺にくらった可南子ちゃんは一瞬にして勢いが無くなり、ペガサスも消滅してしまい、どさっと地面に落下した。
瞳子ちゃんと江利子さまの活躍により五人まとめてのリタイヤは免れた。今のはかなりやばかったと思う。
「ちょっと江利子さま以外のみなさん! 瞳子と江利子さまだけが頑張って、他の方々は何故何もなさらないのですか!!」
バネの様な縦ロールをぶるんぶるん揺らしながら抗議する瞳子ちゃん。
「だって私達じゃどうにも出来なかったんだもん。ね、祐巳ちゃん」
なぜそんなことを私に振るのですか聖さまは!!
「祐巳さま! これは勝負なんですよ! 本当にちゃんと理解されてらっしゃいますか!?」
「うん。それは分かってるよ」
「隙あり!」
よろよろと立ち上がった可南子に聖さまは雪玉を投げつけた。
3HIT 3040ダメージ 可南子残り体力0 KO
今の時点で残っているのは、聖さま、蓉子さま、江利子さま、瞳子ちゃんに私の五人。五人中三人が前薔薇様だ。
「ところで、聖。あなたの携帯電話に知らない方からのメールがたくさんあるんだけれど、あれは誰かしら」
「あぁ。あれ? あれは大学の同じクラスの子でね、いつも私を見かけるたんびに擦り寄ってくるの。それがまたかあいいんだなこれが」
「ふうん。そんなにも、かあいいのね」
「あれ? 蓉子怒ってる?」
「いいえ。私は全然なんとも思ってないわ」
蓉子さま、その笑顔はものすご〜く怖いです。実はかなり怒り心頭な様子。
おもむろに黒鍵を三本取り出して、それを聖さまにものすごい勢いで投げつけた。
「おわっと、危ないな蓉子」
聖さまめがけて黒鍵を投げる投げる。まるで剣の雨みたいだ。
11HIT 1210ダメージ 聖残り体力6010
「あ痛たたた。もっと素直になろうよ蓉子ちゃん」
「誰のせいでこんな!! 倒れなさい!!」
第七聖典を構えて聖さまに猛突進する蓉子さま。それをひらりと回避し攻撃の隙を的確に雪玉を投げて反撃する聖さま。
3HIT 1780ダメージ 蓉子残り体力4880
その一連の攻防を私達は勝負を一時中断して見入っていた。
他人の痴話喧嘩はそんなにも楽しいのだろうか、江利子さまはとっても楽しそうに眺めている。
ちなみに私と瞳子ちゃんは見物というよりもあっけにとられていて、そちらに目が行ってしまうという状態だった。
「祐巳さま。ちょっとよろしいですか」
我に返った瞳子ちゃんが私だけに聞こえるように耳打ちする。
「私は江利子さまにとって天敵なのです。ですから、私が江利子さまを引き付けておきますから祐巳さまは、聖さまか蓉子さまの
どちらかを仕留めて下さい」
いくらなんでもあんな人外な方々のどちらかを相手に勝負出来るわけがない。
「ごめん。無理だよ瞳子ちゃん」
「まぁ祐巳さまったらご冗談を。でもそんな冗談笑えませんわ。祐巳さまは自分を過小評価しすぎです」
なんだかちょっとだけ私でもやれそうな気がしてきたぞ。
「セブン! コード……」
第七聖典をもう一度構えて聖さまに突進する蓉子さま。それに対して聖さまは、
「星の息吹よ…」
突然地面から現れた巨大な鎖が何本も現れて、蓉子さまをがんじがらめにし運動能力を拘束する。
「肉片も残さないよん」
大きく振りかぶった右腕をアンダースローの要領で猛烈な勢いで振ると、巨大な鎖が粉々に砕け散るほどの暴風が蓉子さまを吹き飛ばす。
19HIT 5630ダメージ 蓉子残り体力0 KO
「この埋め合わせはまたこんどするからさ、今は許してちょ。さて、祐巳ちゃんは私と戦るの?」
正面から見据えられるだけで、体が縮み上がりそうになるほどのプレッシャー。
私は折りたたみナイフをパチンと開きそれを逆手に持つ。そして直死の魔眼を最大出力で稼動させ死の線を識る(みる)。
聖さまのからだに走るのは十七本の死の線。
「どうしたの祐巳ちゃん? 来ないなら私から行っちゃうよ?」
雪玉をそれ〜、とぶん投げる聖さま。解き放たれた雪玉は高速で飛翔し、空気が震える音が間近で聞こえた。
やばい。あれは実にやばい。まさに弾丸の如き白色の死。
「今のは予告ね。次ははずさないからよろしく」
と、白の死が放たれた。一つ、また一つと雪玉が投げる聖さま。私はそれらを奇跡的に回避していく。
当然目で追えるようなスピードではなく、着弾点を大体予測しその予測どおりに雪玉が飛んでくるが、偶然はそう何度も起こらない。
4HIT 6310ダメージ 祐巳残り体力3610
体を大砲のような衝撃が貫き優に十メートルは吹っ飛ばされた。
体を起こし、なんとか体制を立て直す。あれ? 体が熱い。脈が早まり血がたぎる。
ある一つの衝動が体の中を暴れるように駆け巡る。急激に高まる衝動を抑える理性の限界はもう近い。
まずい。もう、抑えられない。そして、
「殺す…」
十メートル以上あった間合いがゼロに感じてしまうほどの瞬動で聖さまに詰め寄り、体を走る十七本の死の線にそってナイフを
刺し、切り、通し、走らせ、首、後頭部、右目から唇まで、右腕上腕、左腕下部、右手薬指、左腕肘、左手親指、中指、左乳房、
肋骨静脈より心臓まで、胃部より腹部までの同二箇所、左足股、左足腿、左足脛、左足指その全て。
すれ違いざまに―1秒の時間さえかけず、真実、瞬く間に解体した。
17HIT クリティカル 6660ダメージ 聖残り体力0 KO
「やるな…祐巳ちゃん」
瞳子VS江利子
「フェイカーめ…」
彼女にしては珍しく感情を剥き出しにして瞳子を睨み付ける江利子。それに臆することなく、
「王さまにしては言葉遣いが荒いですわね」と、切り返す瞳子。
「直ぐに終らせてあげるわ。雑種ごときが我(わたし)にかなうわけがないだろうし」
「その言葉、そっくりそのままお返しいたしますわ」
そして、彼女は固有結界「無限の剣製(アンリミテッドブレードワークス)」を展開すべく詠唱を開始する。
「I am the bone of my sword.(体は剣で出来ている)
Steel is my body,and fire is my blood.(血潮は鉄で 心は硝子)
I have created over a thousand blades.(幾たびの戦場を越えて不敗)
Unknown to Death.(ただの一度も敗走なく)
Nor known to Life.(ただの一度も理解されない)
Have withstood pain to create many weapons.(彼の者は常に独り剣の丘で勝利に酔う)
Yet,those hands will never hold anything. (故に、生涯に意味はなく)
So as I pray,"unlimited blade works".(その体はきっと剣で出来ていた)
宝具の貯蔵は十分かしら英雄王?」
「王の財宝(ゲートオブバビロン)」
江利子がパチンと指を鳴らすと、空間には無数の刀剣が瞳子めがけて発射されるも、瞳子はそれらのことごとくを投影し打ち消していく。
惜しげもなく展開される宝具、それと同じ数だけ劣化コピーを瞬時に展開する瞳子。
江利子は千にも届かんとする数の宝具を所有しているだけであり、それの使い手ではない。
そのため、瞳子の劣化コピーであっても十分に戦力を拮抗させることができる。
ぶつかり合い、衝突し合い粉々に砕け散っていく数々の宝具。
「このままでは埒が明かないわね」
そう言って江利子は「乖離剣エア」を取り出した。
三枚の刃が回転し巻き起こる暴風。一振りで全てを破壊する終末の旋風。
「天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)」
振るわれる暴力の塊に対して瞳子は最大防御を展開する。
「熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)」
最大攻撃対最大防御。
力の押し合いは若干江利子が優勢であった。しかし、その拮抗を打ち破る想定外の一撃が放たれた。
「祐巳…ちゃん…」
「ごめんなさい。江利子さま」
祐巳は江利子の背中にあった死の点をナイフで突いた。
1HIT 10000ダメージ 江利子残り体力0 KO
瞳子VS祐巳
「さすが祐巳さまですわ。瞳子見直しちゃいますぅ」
私に対する、いつものツンツンした物言いからは想像できないほど甘ったるい口調。
「残念ですが勝ちは瞳子がいただきますわ。祐巳さまごくろうさまでした」
瞳子ちゃんの両手には瞬時に投影された夫婦剣「干将・莫耶」が握られた。
振るわれる終わりの剣戟をナイフで受け止める。そう簡単にはやられてあげられない。
「もう。しつこいですわね祐巳さまは」
「残念だけど負けてあげる義理がないからね」
私は襲い来る剣戟を紙一重で受け流していく。脈がドクンとうねり心臓は鼓動の限界を迎えつつある。
「はあ… はあ…」
一旦距離を離して体制を整える。
持久戦では圧倒的に不利。ならば、自分で自分にアドバンテージを作ればいい。
「これが… モノを殺すということだ」
降り積もった雪の大地に走る死の線と死の点。点を突き、線を一瞬でなぞった。
その瞬間私や瞳子ちゃんが立っていた地面が崩落し、私は最大限の力で飛び退くが不意をつかれた瞳子ちゃんはなす術も無く
その崩落に巻き込れ、校庭にはぽっかりと巨大な穴が現れた。
15HIT 4400ダメージ 瞳子残り体力5600
「くぅぅぅ… 油断しましたわ」
「じゃあね。瞳子ちゃん」
私は穴に向かって飛び降り、着地と同時に横たわって動けない瞳子ちゃんの額にある死の点を突いた。
1HIT 10000ダメージ 瞳子残り体力0 KO
第四章「決着」
「優勝は福沢祐巳さんです。皆さん拍手」
まばらな拍手の中、司会進行役の蔦子さんから賞品が入ったダンボールを受け取った。
改めて賞品をみると、ぶっちゃけどうでもいいものが多かった。電動ドリルとか何に使ったらいいんだろう。
「いや〜祐巳ちゃんが勝つとは思わなかったな〜」
「さすが私の祐巳ね。よくやったわ」
「はい、みんなお疲れ様。雪合戦はこれでおしまい。また、なにか思いついたら参加よろしくね」
非常にあっさりとした主催者の江利子さまの締めの挨拶でドタバタな雪合戦は終った。
「今度さ、祐巳ちゃんのデート券かけて祐巳ちゃんと私でサシの勝負したいな」
まだ、諦めきれないのか再戦を要求する聖さま。
「それはまた今度にしましょう」
「ちぇっ」
雪合戦、これでお開きまた来年。
後日、私は校庭に空けた穴の件で担任の先生や学園長からこっぴどくしかられました。
FIN
2005年12月3日初版
作後贅言
本文の八割近くが戦闘です。
どうもこんにちわ。ユラです。
今作は描写の練習という意味合いもかねまして戦闘ばっかりです。ただ雪玉を投げあうだけじゃつまらないかなと思って、
かの有名な月姫やFateからネタを引用しまくっちゃいました。
これらの両方を知っているという稀有な方は本文を読んでニヤリとするかもしれませんが、いかがでしたでしょうか?
ギャグなはずがあんまりギャグっぽくなくなってしまい、なんとも言えない心境ではあるんですが…。
では、また。
ユラ