「新春Mahoo! テレビショッピング」
Written by 榎木津巽
謹賀新年。
皆さん、新年明けましておめでとうございます。福沢祐麒です。
さて、今日は「新春Mahoo! テレビショッピング」が放送されるらしい。新年一
発目がコレというのも……。
それはともかく、特に予定の無い俺は、悲しいかなテレビの前で正座して放送を待って
いるのだった。
自分で言うのもアレだけど、律儀だな。
新年仕様なのか、紅白な飾り付けが豪華で、いかにもお正月のっていう感じがするセッ
トを背景に、セット中央には白テーブルが。そして、番組の司会を……。
「新年明けましておめでとうございます。司会進行役助手、二条乃梨子です。今回は、新
春スペシャルらしいのです。それはいいとして、この作品を真夏にご覧頂いた方への配慮
がなされているか極めて怪しいというか、ぶっちゃけそんなの有りません」
ぶっちゃけちゃったよ乃梨子ちゃん……。
「明けましておめでとうございます。司会の、藤堂志摩子ですごきげんよう。今年もまた
よろしくお願いいたしますね」
ほぉ。乃梨子ちゃんと志摩子さんが司会なんだ。あれ? じゃあ祐巳は何所へ?
「えぇっとですね、この番組は素敵な商品をご紹介し、ご覧頂いております皆さまに快適
便利な生活を送っていただこうというのが、コンセプトです」
そうだったのか!? ギンナンやらお汁粉やら盗撮専用カメラが、どう快適な生活をも
たらしてくれるのか、はなはだ疑問なんだが。
「それでは、一発目の商品をご紹介しちゃいましょう。志摩子さん、お正月といえば何を
連想されますか?」
「そうねぇ。グングニルの槍かしら?」
それは元旦関係ないと思うぞ。きっと。
それよりか、回答云々よりも俺は志摩子さんがボケたことに驚きだよ!
「残念!! 答えは鏡餅でした。といわけでですね、今回オススメしたいのが、番組特製
鏡餅『白い悪魔』です」
物騒なネーミングだなおい。ガンダムの通り名と同じじゃないか。いいのかそれ?
「乃梨子、この鏡餅妙に軽いのだけど」
志摩子さんは何を思ったのか持ち上げた。いかにも作り物っぽい感じに、何か思うとこ
ろでもあったんだろう。そして、感想が「軽い」と。でも俺が見る限りそんな小さいもの
でも無さそうだから、いくらパチ物といっても決して軽いとは思わないけどな。中に切り
餅が詰まっているものもあるし。
ん? そうか。志摩子さんが怪力なだけか。ってそんな訳あるかいな!
「さすが志摩子さん。そうなんです。この鏡餅はですね、外見はプラスチックの作り物で
して、中に……」
「切り餅か何か詰まっているのね」
「いえ、実名は出せない、いわゆる「白い粉」です」
待てぇぇぇぇ!! ちょっと、ちょっとちょっと! それは覚せい剤か?
「乃梨子、この粉末は小麦粉なんでしょう?」
「覚せい剤です」
さっき名前伏せてたじゃん! 「白い粉」って。志摩子さんにそんなもの見せちゃ駄目
だよもう。困るなぁ。
「あのね、乃梨子、ちょっとだけでいいからこれをスーハーしていいでしょう?」
おい! 志摩子さんおい! そんなものおねだりしちゃ駄目! 薬物濫用はアカン!
「ダメです。こんな馬鹿なものはアホが吸うものなんですから」
じゃあ売るなよそんなもの。
「話が逸れてしまいましたが、このビックリドッキリ鏡餅『白い悪魔』は、中に一キロの
小麦粉を鮮度を落とさないよう、完全密封された状態で封入されていますので、長期保存
も可能です」
いやいやいや、乃梨子ちゃん君はナチュラルに「覚せい剤です」って言ったじゃん。そ
れをまるで小麦粉何かのように扱おうとするのは無理があるだろうに。
「乃梨子、純度九十九パーセント以上なのだから、お値段はさぞかし高いのでしょうね」
純度の話なんてなかったぞ?
「そこはお任せ下さい。お正月特価の、十万円でご奉仕させていただきます」
「まぁ! メキシコ産のコカインがたったの十万円!?」
待て! 志摩子さん待て! それコカイン違う。メキシコってどこから出てきた。とい
うかそれは「小麦粉」なんだろ? いや、覚せい剤か。あぁもうどっちでもいいや。
もっと言うと新年早々薬物ネタはどうかと思う。人としてのモラルを疑わざるを得ない。
「去年の嫌なことを根底から忘れさせてくれる、ビックリドッキリ鏡餅『白い悪魔』は、
一家にお一つ備えておくのが紳士淑女の嗜み、今風に言えばナウいんです!!」
うぉぉぉい! ナウいって何時の時代の言葉なんだよ! なんで乃梨子ちゃんがそんな
単語知ってるんだか。
「次にご紹介させていただくのは『大陸弾道ミサイル・門松』です」
ミサイル? ミサイルってアメリカとか中国とかが山ほど持ってるアレか?
「乃梨子、この大きな門松がそうなの?」
黒子役の瞳子ちゃんが門松を台車に乗せて運んできた。
一見普通な、多少サイズがごつい門松に見えるが、この番組が普通の商品を用意するわ
けがない。皆さんも、ゆめゆめ油断はなさらぬように。
「この商品の解説は、口頭ではなくVTRをご覧いただきましょう。VTRどうぞ」
小寓寺の門に備え付けられている二つの豪奢な門松。乃梨子ちゃんが門松の間に立って
いた。彼女の手にはリモコンが。リモコン!? 門松にどう関係あるんだ?
「乃梨子、聞こえる?」
「はい。聞こえますよ」
「無線の調子は良好ね。天気もいいから、さっそくぶっ放しましょう」
ぶっ放す? ミサイル、リモコン、ぶっ放す……おい、冗談だろ?
「了解。一号、二号発射準備完了。Fire!」
リモコンの1と、2のボタンを同時に押した瞬間、門松の尖った竹の部分が三本、合計
六本ものミサイルが猛烈な煙を吐き散らしながら、寒空の中へと飛翔した。
ミサイルはどんどん高度を上げ、やがて弾頭を地面へと向けると急降下していく。
場面は切り替わり、由乃さんの家へ。支倉、島津家の二世帯住宅の門にも、さっきと全
く同じものが二つ仲良く並んでいる。
そして、由乃さんが外でリモコンを握っていた。
「由乃、準備オッケーよ」
「分かった。さぁて、私たちもやるわよ」
えい、と気合を入れてボタンを押した。
するとまぁ、竹の部分がミサイルとなって飛んでいくわけだ。同じく、六本ものミサイ
ルが煙をたなびかせながら空へと向かって。
小寓寺から発射されたものがみるみる島津家へと接近する。もう間もなく着弾するとい
うところで、つい先ほど撃ち出された六発のミサイルが迎撃すべく真っ向から向かい合う。
飛翔するミサイルと迎撃に向かうミサイルとが、お互いに打ち消しあうように衝突、そ
して合計十二のミサイルが島津家上空で炸裂した。
爆発音が大気を震わせ、破片を撒き散らしながら爆焔が球状となり、黒の煙を纏いなが
ら真っ赤な火の玉が上昇した。
これ何ていう戦争?
「はい、VTRをご覧いただいた皆さまには『大陸弾道ミサイル・門松』の魅力を感じ取
っていただけたかと思います」
いやぁ。なんていうか意味不明。目標が由乃さんの家だった理由を是非聞かせていただ
きたい。
「あともう少しでヒットだったのに、残念だったわね。次こそは必ず仕留めて見せますか
ら、待っててください由乃さん」
あれ? あれれれれれ? 志摩子さんってこんな攻撃的だったか!?
「この『門松』には、最大三発までのミサイルを搭載できまして、射程距離は半径百キロ
メートル。一発辺りの威力は住宅一軒を粉々に爆破できるぐらいと、お考え下さい」
「乃梨子、お値段方はどうなっているのかしら?」
「そこはご安心を。お年玉価格の二00七万円でのご提供です。予備のミサイルを豪勢に
も六百発お付けして、この価格ですから、大変お買い得です」
一発辺りの単価が、三万三千四百五十円とかなり安いことは確かだけど……そもそも、
こんな危ないもの家の前に置いていいのか?
「ちなみにこの商品は、祥子さまのお屋敷にも約七十基設置されており、効果は保障付き
ですので、ご安心を」
物騒な正月だなおい!?
「それでは一旦CMです」
「立ち上がるのです! 世界中のシンデレラよ!!」
理不尽な圧力に屈することのない高貴な存在、小笠原祥子。
「私は楊貴妃よ」
美の女王、水野蓉子。
「グングニルの槍を買ってきて下さるかしら?」
意味不明な難題提示者、藤堂志摩子。
「コンビニでコーヒー買ってきてくれない? ブラックのやつで」
ザ・パシらせる者、佐藤聖。
彼女達が一つの物語に登場するとき、世界が変革する。
colorfull lover次回作『くろすおーばーちょめちょめ』
never coming soon.
注:上記の『くろす〜』は、ネタですのでご注意ください。
デジタルカメラの小型化は、ここまで来たのです。
超小型デジタルカメラ『蔦子R壱万』は、なんと人の親指ほどのサイズ。
そして重さはたったの二十五グラム。
どこでも簡単便利スピーディーにあなたの思い出を記録することが出来ます。
小ささと軽さのおかげで取り回しが簡単。市販のカメラでは撮影の難しいアングルでも自
由自在に撮影が可能。
さぁ、美しい画像を撮ってみませんか?
コマーシャルが終わると、志摩子さんたちの後ろには、白地の絵柄も何も無い地味なふ
すまが四本。なんとなぁく嫌な予感がするのは気のせいだと思いたい。
「さて、次にご紹介する商品なのですが……」
そこで言葉を止める乃梨子ちゃん。その表情はやや苦い。ホントにやるの? というニ
ュアンスが伝わってくる、ような気がした。
俺はこのノリを知ってるぞ。嫌な予感はもはや確信に変わりつつある。
「次がどうかしたの?」
そう。なぜ、俺の隣にいてもいいはずの祐巳が家を空けているか、その答えが今……。
「えっとですね、次の商品の紹介は、歌でやるそうです」
「もしかして、祐巳さんの」
「はい。そうなんです。それでは、お呼びいたしますね。『リリアンマシンガンズ』のみ
なさぁん」
乃梨子ちゃんが後ろを向いて、そう呼ぶと勢いよくふすまが開き、そこにはボーカルの
祐巳、ベースの江利子さん、ギターの蓉子さん、ドラムの聖さんがスタンバイしていた。
この四人の姿はお馴染みだが、ここにお馴染みでない方の姿があった。
祥子さんがグランドピアノの前で座っていたのだった。
どういうことだ一体? 祥子さんに何があったんだ。そうか、罰ゲームか何かなんだろ
う。きっとそうに違いない!
「新メンバーの小笠原祥子です。ごきげんよう」
レギュラーかよ!?
正式メンバーじゃないか!
正直ビックリだよ!
「みなさまごきげんよう。『リリアンマシンガンズ』のボーカル、福沢祐巳です。それで
はですね、早速商品のご紹介をさせていただきます。聴いてください、『組み立てた私の
気持ち』」
BPM150
前奏(二十一秒)
今までの攻撃的なメロディとは打って変わって、キャッチーでポップなものに。
が、演奏は相も変わらず超人的で、蓉子さんの鬼テクが炸裂だ。もちろん聖さまのドラ
ムはツーバスです。で、祥子さんのピアノが曲のポップさに上品さを与えていた。
大塚愛の曲のギターが十六分音符の早弾きで、バスドラムが二つあり、ピアノが流れる
ような旋律を奏でていると、思っていただければいいと思う。
朝だ七時だ さぁ朝食を摂ろう
一日の始まりは朝食からっていうじゃない?
眠たいけれど さぁ朝食を摂ろう
沢山食べればきっと元気出るんだから
カレー 食いてぇなぁ〜(ハイ、モーニング! ハイ、モーニング!)
餃子 食いてぇなぁ〜(ハイ、モーニング! ハイ、モーニング!)
なんだなんだ、メロディと歌詞が合ってない……。そもそも曲のタイトルと歌詞が全く
別物だし。
可愛らしいメロディにパワフルな勢いの歌詞。何故に?
それはともかく、朝からカレーとか餃子とか匂いがキツイ、パンチが効いたものは食べ
ないだろう? 普通はさ。
いつも気になってるんだが、一体誰が歌詞を書いてるんだろうな?
お昼休みだ さぁ昼食を摂ろう
食べれば午後からの仕事も頑張れちゃいます
気力充電 さぁ昼食を摂ろう
今日はどこのお店に食べに行こうかな
寿司 食いてぇなぁ〜(ハイ、ランチ! ハイ、ランチ!)
焼肉 食いてぇなぁ〜(ハイ、ランチ! ハイ、ランチ!)
ケーキ も食べちゃうよ〜(ソウ、sweet! ソウ、sweet!)
昼飯に寿司や焼肉はあんまり食べないと思うぞ。気力充電しすぎだと思うのは俺だけか?
ちなみに()の部分は蓉子さん達のバックコーラスです。妙に野太い声の。
仕事が終わった さぁ食事に行こう
美味しいものを沢山食べて今日の疲れを癒します
アフター5よ さぁ食事に行こう
たっぷり溜まったストレス発散しちゃいます
梅粥 食いてぇなぁ〜(ハイ、ディナー! ハイ、ディナー!)
おじや 食いてぇなぁ〜(ハイ、ディナー! ハイ、ディナー!)
デザート は食べません〜(ノー、sweet! ノー、sweet!)
間奏(六十二秒)
晩飯がやたら貧弱だ。明らかに昼と夜食べるものがズレてるし。
さて、蓉子さんのギターソロに真っ向から立ち向かうかのように絡む祥子さんのピアノ。
これはかなり熱い! というか素直にカッコイイよ。
間奏終了。BPM210
おや? 何か……曲の雰囲気が思い切り変わって、あのいつもの、高速で攻撃的な……
スラッシュメタルになっちゃった!! ポップさなんて微塵も無い。詐欺曲か?
曲のテンポは先ほどのなんと四割増。これは早い。当然聖さまは十六分のツーバスです
よ。この重低音の連打はもう速射砲に近い。
ブロックの形したラムネ
色んな大きさや形の楽しいブロックラムネ
右脳の赴くままに組み立てろ!!
己の×××を曝け出せ!!
しこたま買い集めて原寸大のアノ人を作っちゃえ
そして最後に
食べろ!!(ハイ、eat! ハイ、eat!)
クリエイト!! アーンド デストロォォォォォォイ!!
「お姉さま、コレ見て下さい。お姉さまのチョメチョメを原寸大で作ってみちゃいました」
「まぁ。祐巳ったらすごいわね」
「ほう、これが祥子のチョメチョメなのか」
「聖、もしかして私のも作ろうとしてるでしょう?」
「これ……面白いわね」
演奏終了
「はい、リリアンマシンガンズの皆さんありがとうございました。相変わらずの演奏でし
たねお姉さま」
「祐巳さんやお姉さま、素適だったわね……」
志摩子さん? そのトロンとしたお目目は何でございましょうか? もしかして加入志
望なんデスカ?
「商品の補足説明をさせていただきます。正直アノ歌じゃ、意味が分からないと思います
ので」
流石乃梨子ちゃん。誰しもが思ってはいたが、口に出さなかったことズバリ言ってくれ
るじゃないか。
「ご紹介いたします商品は、なんとラムネ菓子で出来たブロックのおもちゃ『作るんデス』
なんです。赤や黄色や青や白といったカラフルなラムネにはポッチが付いておりまして、
それを上手くかみ合わせることで、様々なものを組み立てることが出来る、というもので
す。簡単な話が、食べれるレゴブロックだという認識で結構だと思います」
僭越ながら、私こんなものを作ってみました、と乃梨子ちゃんがいうと、瞳子ちゃんが
台車に何かを載せて運んできた。人の背丈はあるだろうソレには白い布が被せられていて、
何か分からないようにはなってるけども、話の流れでソレが何なのか大体察しはつく。
じゃん、と乃梨子ちゃんが運ばれてきたソレから布を剥ぎ取るとそこには……
「これ、私?」
志摩子さんがいた。正確には『作るんデス』で出来た志摩子さんが。
「原寸大志摩子さんを作ってみました。どうでしょう。自分で言うのも変ですが、結構な
仕上がりだと思うんですけど」
結構どころか、かなりスゴイ。小さなパーツでふわふわの巻き毛や微細な部分をも再現
している。完成度は相当に高いだろう。
「これ本当に良く出来ているわね。乃梨子のこと見直してしまったわ」
「ありがとう志摩子さん。ちなみに総制作期間は一ヶ月です。頑張りました」
志摩子さんは、毛の先端部分のパーツを一つ摘み取ると、それを口の中へ放り込んだ。
「うん。美味しいわ」
そう、これは食べれるんだ。そこを忘れちゃいけない。でもまぁ流石にここまで良く出
来ていると、食べるなんて勿体無くて飾っておきたいが。
「この『作るんデス』には、一箱に五百ピース入りましてお値段二千五百円となっており
ます」
単純計算一個五円。結構良心的な価格だと思う。なんしか遊べるし食べられるし。
「それでは、本日最後の商品をご紹介させていただきます」
タイミングを見計らって瞳子ちゃんが運んできたものは……真っ白、真っ黒な翼や、虎
耳、ネコミミ、イヌ耳、ウサ耳のヘアバンドだ。
「こちらにご用意いたしましたのは『妄想具現化』です。色々な記号をご用意いたしまし
たので、幅広い属性に対応できるかと思います」
うわぁい。これはツボにはまった。多くを語るつもりはない。おそらく俺の言いたいこ
とは、乃梨子ちゃんがきっと代言してくれるはずだろうし。
「はい志摩子さん。これ着けてみて」
乃梨子ちゃんが手渡したのは、ウサ耳のヘアバンド。もう想像するだけで志摩子さんに
似合うのが分かる。
「私が? 本当に?」
「うん。本当に。私冗談言わないから」
困ったような恥ずかしいような複雑な表情を浮かべながらも、志摩子さんはソレを頭に
装備する。
似合う。似合い過ぎる。流石「ウサ・ギガンティア」なだけのことはある。
「次はコレをお願い」
ウサ耳を着けたままの志摩子さんに、今度は無数の純白な羽で作られた白の翼を背負わ
せる。まんま天使の羽だ。
こうしてウサ耳天使志摩子さんが降臨された。見目麗しいったらありゃしない。
「良い! とっても良いですよお姉さま! 私生きてて良かったです……」
感動の余り鼻血を流す乃梨子ちゃん。
いや待て、普通流すのは涙だから。出血してるよ乃梨子ちゃん!
さりげなくスカートの中からポケットティッシュを取り出した志摩子さんは、一枚取り
出して乃梨子ちゃんに。
いそいそと鼻に詰め物をしながら、商品の解説を続けた。
「という具合にですね、この『妄想具現化』はあなたの妄想赴くままに、それを具現化せ
しめることが可能な商品なのです。商品には、白い翼、黒い翼、虎、ネコ、イヌ、ウサギ、
タヌキの耳のヘアバンドがそれぞれ一つずつ入っております。そして今回は特別に、ふわ
ふわまふんで握り心地満点なネコのしっぽを一本お付けしまして、お値段たったの一万円。
一万円でのご提供となります。なお、この商品は数量限定ですので、お早目のご注文を強
くお勧めいたします」
「あのね、乃梨子。これまだ着けたままなのかしら?」
「当然です。帰るまでずっとです」
俺も着けっぱなしを希望する。だってそう在るべき形にしか見えないのだから仕様がな
いのですよ。
「さて、本日ご紹介した商品を簡単もう一度ご紹介いたします。一発目はビックリドッキ
リ鏡餅『白い悪魔』が十万円です」
「なるべく人目につかないところに飾って置いてくださいね」
人目につくとか、つかないとかいう話ではないと思うんだが……
「二発目は『大陸弾道ミサイル・門松』が予備弾頭を六百発お付けいたしまして二00七
万円です」
「不審者の迎撃にも使用できるそうです」
ところで射程百キロなのに「大陸弾道」って呼んでもいいのか? 無理があると思うん
だけどなぁ。Mahoo!だからいいんだろう。多分。
「三発目は創作お菓子『作るんデス』が、一箱に五百ピース入りまして二千五百円となっ
ております」
「私も原寸大乃梨子を作ってみようかしら」
じゃあ俺は何の原寸大を作ろうかな。祐巳?
「そして最後の『妄想具現化』が、多様な記号をご用意いたしまして一万円でのご奉仕で
す。個人的にはコレが一番のオススメですね」
「慣れてくるとそうも恥ずかしいとは思わなくなるのね。これ」
俺も欲しいけど、着けさせたい相手がいない……
「名残惜しいのですが、お時間となってしまいました。それでは皆さま、ごきげんよう」
「ごきげんよう」
そういえば、『リリアンマシンガンズ』って何だ? いつの間にそんなバンド名になっ
たんだか……
終
作後贅言
発表する時期がちょっとずれてしまいました(汗
なので変な感覚が無きにしも非ず、です。
余談ですが、レゴブロックみたいなラムネは「実在」します。
確かトイザラスに売っていたはずです。味はともかく、遊べるお菓子っていうのが中々に
面白かった記憶があります。
それでは、また。
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