「コメディライフ −制限速度なんて関係ねぇ−」


Written by 佐々木真史




この作品は、ボケ倒す祐巳に健気にも突っ込みを入れ続ける、かいがいしい瞳子の物語で

ある。




「お姉さま、やはり物語には起承転結というものが必要だと思います」

 物語の導入部分が終わるや否や最後まで突っ走る暴走特急のようではイカンと思うので

す。例えば長電話している人がいて、それを注意しようとする。さぁどう指摘すれば分か

ってもらえるか試行錯誤の連続。そして行き着いた結論、それをもって注意をして終幕。

 これが物語というものですわ。

「イヤ。性に会わないから。私はブレーキの壊れた新幹線なの!」

「そんなこと力いっぱい叫ばないで下さい」

「じゃあ何で瞳子は起承転結にこだわるの? その理由を二秒で答えなさい」

「短っ!」

「はい二秒経過。終了」

「早っ!」

 まだ一秒経ってなかったでしょう。今のは。

「しかたないわね。もう一度チャンスをあげるから今度はちゃんと答えてね。二秒で」

「また二秒ですか!?」

 考えるのです。たったの二秒間しかないのだから思考フル回転で。あぁもう0.七秒が

過ぎてしまいましたわ。後は一.三秒しか残されていません。なぜといわれましても、そ

れが当然であるという普遍的な認識の上での発言なのですから、理由を述べよとおっしゃ

られても中々に難しいものがありますわ。物語という体裁を取るのならば、導入に始まり

それを受けての展開、展開を踏まえたうえでの盛り上げ、そして終幕に至らなければ、物

語として面白くないから、というのが解答でしょうか。

「お答えしましょう。起承転結がなければ物語として面白くないからです」

「ファイナルアンサー?」

「最終解答で」

 どこからかやたら長いドラムロールが聞こえてきますって、物陰に見えるのは佐藤聖さ

まじゃないですか。なぜそんなところでドラムを叩かれているのですか?

「…………残念!!」

「何が残念なのですか」

「いや、なんか至極まっとうな解答だったからつい」

 てへっ、と下をちろりと出してはにかむお姉さま。可愛らしすぎて悶絶死しそうになり

ました。でも言ってることが無茶苦茶なのはどうしましょうか。

「私はね、誰かに引いてもらったレールの上をただ走るだけの人生なんて耐えられないの。

進むべき道は自分で作り上げただひたすらにそれを突き進むのが人生というものでしょう。

違う?」

 どことなく台詞回しが演劇臭いのは置いておくとして、なぜか出てきた人生論。本当に

なぜなんでしょうか。今まで起承転結について話をしていたように思うのは私だけですか?

「さぁ。瞳子も私と一緒に進もうよ。妄想爆走ギャグの道へ!!」

 ぎゅっと私の右手を握りしめながら夕日を指差すお姉さま。なんとなく絵にはなってい

ますがいかんせんそれは使い方が間違ってます。激しく。大幅に。こういうのは「さぁ優

勝目指して頑張ろうぜ」といったスポ根性漫画に出てきそうなシチュエーションです。何

が悲しくて「さぁギャグろうぜ」という場面で使っちゃうんですかお姉さま。

「瞳子は私と一緒に進むのがイヤ?」

「いえ、別にそういうわけではありませんが……」

「私といるのが不安? だから乗り気じゃないの?」

「お姉さまがしっかりされているように思いますから……」

「私は瞳子と一緒にイキたいの!」

 ちょっとお待ちください。この展開はつい最近どこかで見たことがあるような気が……

 ん? 「行く」ではなくて「イク」?

「あの、お姉さま。何か字が違いませんか」

「違わない! 全然違わない。私は瞳子と一緒がいいの。ダメ?」

 はぁうぅぅぅ。なんて愛らしい表情をされる方なのでしょうか。眉、目付き、口元、雰

囲気、これら全てがシナジーとなって哀愁漂わせながらも愛らしさを失っていない撃沈し

ないほうがおかしいぐらいのおねだり顔。私の子供がこんな表情をしたら何でも買い与え

てしまいそうですわ。お姉さま恐ろしい人!!

「分かりました。お姉さまにお付き合いいたします」

「瞳子ダイスキ!!」

 と、抱きしめられました。あぁ。無限大の幸せを感じます。そうえいばこのオチって前

回と同じような気もいたしますが、どうでもいいですわね。