「なのは先生の小説講座」
Written by 佐々木真史
休憩時間にテレビを点けてみたら、こんな番組が放送されていた。
「なのはへの愛情が止まらない。どうしたらいいかな。あ、そう、なのはと私のキャッキ
ャウフフな小説を書いてパッション解放だ!」
なぜそうなるのかツッコまないほうがいいんだろうね。
「あ!! しまった!! 私、小説の書き方が分からないよ。たぁすけてぇ、淫乱なのは
先生」
「その妙な接頭語は明らかにいらないよね」
「なんのことですかな」
いや、明らかに”淫乱”だと思うけど……
「それはともかく、フェイトちゃん小説の書き方が分からないの?」
「うん、わかんね」
「それじゃあなのはさんがお教えいたしましょう。いきなり書き始めてもいいのだけど、
その前に文章作法というのがあるからそこを押さえておこうか」
「そうだね、ヤる前に爪を切っておくのも作法だしね」
何の作法だろう?
「まず最初に押さえておくのは記号の類から。”!”や”?”の次の一文字は空けておく
こと」
「つまり、『なのはが好きだ?なのはが好きだ!』じゃなくて『なのはが好きだ? なの
はが好きだ』になるんだね」
活字はこういうときに便利だね。
「口頭だけじゃサッパリ分からないけど、しょうゆーこと。つぎに”…”は二つ連続で使
用してね。ちなみに”…”は三点リーダーと読みます」
「ちょ、成績が三点のリーダーとか大丈夫なのかな」
「典型的なボケをありがとう。えっと、”……”の後は一文字空ける必要が無くて、これ
が文末の場合は”。”で閉じる必要も無いの」
「なるほど、『あ……あの……その……なんていうか……なのはが好きです……』みたい
な感じ?」
「使い方はあってるけど、連発はくどくなるから注意してね」
確かに。さっさと言えよぉ、見たいな気分になるね。
「よく誤解されがちなんだけど、会話文の文末には”。”不要だから気をつけて」
「そーなのかー。」
「うん、それはダメだって言ったばかりだよねフェイトちゃん? お話聞いてくれてるか
な?」
あ、なのはさん少しお怒りだよ。
「スイマセンっす」
「作法が今一つ分かりにくいのが補足のために使われる”()”なの」
「普通に使えばいいとおもうけどダメなんだ」
「それはそうなんだけど、一応は『きょうのお昼(とんこつしょうゆラーメン)は美味し
かったね』っていう具合でいいんだけど、文末に使用すると、『フェイトちゃんはフリー
ダム過ぎる(良い意味で)』ってなるの。意味が分かるかな?」
「ん? ん〜」
「会話文の文末には”。”がいらなかったよね」
「あぁ、そうだった」
言われてみるとそうだね。う〜ん、思いの他ややこしい。
「普通の文章だと()の後ろに”。”で閉じてね」
「なのはは締りがいいなぁ」
何のだろ??
「あと、算用数字はなるべく使わない方向で、基本的には漢数字を使ってね」
「私のなのはラブパワーを十五京ですが何か?」
「うん、まぁそういう感じ。アルファベットは横書きの場合特に気にする必要は無いけど、
縦書きの場合はかなり読みづらいからあまり使わないように配慮してあげると読みやすく
なるね」
「I love Nanoha so much」
「アレはダメ、コレはダメと色々注意してきたけど、結局は”読みやすくするため”、こ
れを実現させるがためのルールだから、『あぁ、そう書けば読みやすいんだね』程度に押
さえておいてくれればそれで構わないと思うの。ルールを分かっているのなら、それをあ
えて破るのも表現手段の一つかもしれないし。ただ、わけも分からず適当にっていうのは
ナシだからね」
今日のなのはさんはスルースキルが高いなぁ。
「私はなのはのポッチを押さえたいんだけどダメかな?」
「次は具体的な執筆方法について勉強しようね」
スルーされまくりなフェイトさんカワイソス。
「文章作法を押さえたら、今度は実際に書いてみようか」
「でも、何を書いたらいいのか分からないよ」
「まずは書きたいものの文量を決めようか。短い、中ぐらい、長い、連載の四パターンが
あるの。一次創作では圧倒的に掌編作品の方が難易度が高いけれど、二次創作ではマッタ
ク逆になるね。フェイトちゃんは私を題材に小説を書きたいなら、まず短いものから書い
てみたらいいと思うよ」
へぇ、そうなんだ。短い方が簡単な気がするけど、一次創作においては全然違うんだね。
「私はとてもなのはをオカズにしたいです」
「じゃあこれからは二次創作という観点から語るね。一番ダメなパターンとしてはいきな
り連載モノに手を出し、かつジャンルが殴り合い系のアクション、これはほぼ確実に破綻
するよ」
「なんで? 私やなのはが活躍するアクション小説って面白そうだけど?」
うん、私もそう思った。なにがダメなんだろう。
「アクション作品って初心者が手を出すには敷居が高いの。敵が弱いうちならまだしも、
物語が進むと強さがインフレしてくるのは当然だよね。じゃあそんな強い敵をどうやって
倒すのってなるとそこで行き詰る」
「夜の私みたいだね」
どんなだ。
「よしんば攻略法を思いついてもそれを表現するだけの力が無いの」
「あぁ、棒読みとか、明らか演技してるのがバレバレなのは萎えるよね」
フェイトさんはどんな作品を見てるのだろう。
「なるべくそうならないためにもまずは"人称"という概念を押さえておこうか。地の文を
誰の視点で書くかを考えることなんだよ。”一人称”というのは基本的に主人公の視点か
ら描くもので、そのキャラが見たもの聞いたもの感じたもの、そして何をどう考えている
のかをダイレクトに表現できる書き方なの。その代わりキャラを通してしか情報が入って
こないから、自分以外のキャラが何をどう思っているかや、キャラの見えないところでの
出来事はマッタク不明という情報量の少なさが欠点かな」
「成年向けのノベルゲームってだいたい一人称だよね?」
そういうものなんだ。私はやらないからよく分からないけど。
「自分と相手の感情を一辺に表現したりすると混乱しちゃうからかな。で、次に”三人称”
は誰の視点でもない俗に言う神の視点から描いたものなの。だからありとあらゆる表面的
な情報を描くことが出来る代わりにキャラの内面を描くのが不得手という欠点があるの」
「ということは一長一短なんだ」
「うん。だから書きたい作品に合わせて人称を変えていくといいんじゃないかな。キャラ
クターの内面を描くなら一人称、大きな出来事を描くなら三人称という具合に。ギャフラ
ジはこれでもかといわんばかりの一人称だね。そのかわりSFものは三人称が多いかな」
堅苦しい話とかにも三人称は使えそうだね。
「人称とかが分かったのはいいけど、何を書いていけばいいのか分からないよ」
「ゴメンゴメン話がチョット脱線しちゃったね。いきなり難しいことを書こうなんて思わ
ずに、まずは短いものでいいからキャラを動かす練習を始めるといいよ。内容なんてソレ
こそ日常会話を活字にしたものでも構わないから」
「それ面白いの? 私には刺激が、刺激が足りないっっ!」
フェイトさん!?
「いきなり面白い作品を書こうと身構えるとその時点で書けなくなるね。だから一旦ソレ
はおいといて、”書き上げる”ことに重点をおくといいよ。書き始めたのはいいけど結局
仕上げられなくて没に、これを繰り返していくとどんどんモチベーションが下がって書く
のを止めちゃうの。だから”仕上げる”これが一番大事。短くても面白みが無くても書い
た作品が溜まっていくのは確実にやる気の増加に繋がるから」
「そうだよねぇ。私となのはも昔はぎこちなくて下手っぴだったけど、今じゃ随分手馴れ
たものだよ」
一体何の話だろうか。でも、おおよそ察しは付くけど。
「変に小慣れたのはフェイトちゃんのせいだよ。それはいいから、キャラを動かす練習を
しよう。書きたいキャラの一人称、二人称、三人称、語尾や口癖、こういうのを把握する
だけでもぐっと味に深みが増すから」
「オッケー。なのはの一人称は”オイラ”で二人称は”ユー”、三人称は”ヤツ”、語尾
は”ダゼ”で口癖は”胃が痛い”……カンペキだ」
イヤ、流石にそれはないでしょう。
「0点なの!! 何ソレ? 私胃が痛いって言わないよ」
「まぁまぁ、二次創作だから、ね?」
「そういうものかなぁ」
「なのなの。えっと、話の内容は……トイレに行く」
面白さは二の次って話だったけど、それにどう物語性を付随させていくつもりなんだろ
うか。個人的には少し気になる。
「いや、さすがにそれはチョット」
「そうだ、タイトルを忘れてた。『なのはのドキワク便所大冒険』に決まりだよ」
タイトルがもろだった。
「ひどいタイトルだよ! せめてお花摘みぐらいにしておいてほしいな」
「今から書いてみるからちょっと待ってて」
「あ、うん……」
「でけた! なのは、読んで」
「うん……分かった」
明らかノリ気ではないなのはさん。心中お察しいたします。フェイトさんの作品は次の
ものだった。
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「なのはのドキワク便所大冒険」
Written by フェイト・T=takamachi・ハラオウン
オイラお花摘み行く。用足した。すっきりいい気分。おわり。
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ひどい、あまりにもひど過ぎる。これまでのなのはさんの講義は一体なんだったのだろ
うかという虚無感で胸が満たされてくる。
「フェイトちゃん、あのね、お話聞いてた?」
「これだもかと聞いてたよぉ。ダメ?」
「ダメも何もこれ小説違う」
「あは〜、違ったんだ。ゴメン、もう一回書き直すね」
「うん、今度ちゃんとやってね」
「任せて」
限りなく胡散臭いですフェイトさん……
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「なのはのドキワク便所大冒険 ver2.0」
Written by フェイト・T=takamachi・ハラオウン
「よぉ、ユー元気?」
「お早うございますなのはさん」
「オイラはバッチシ元気ダゼ。胃が痛い」
「おはようなのは。今日も相変わらず全裸だね」
「おはようフェイトちゃん。オイラはバッチシ全裸ダゼ。胃が痛い」
「おはようなのはちゃん、今日も相変わらずやなぁ」
「おはようはやてちゃん。オイラはバッチシ不変ダゼ。胃が痛い」
全米が泣くほど完結
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結局お手洗いはどうなったの!?
「フェイト君、きみ、小説書く気あるの?」
「ありまくりんぐ。コレもダメ?」
「ダメも何もツッコミどころ多過ぎてどう指摘していいのか分からないから。とりあえず、
地の文は申し訳程度でも入れておこうよ。これはもう小説じゃなくて文笑なの」
確かに小説と呼べる代物じゃないかもしれないね。
「ただ、会話の内容はともかくとして、徐々にソレっぽくなってきているから、もうちょ
っと頑張ってみようか」
「うん、頑張る」
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「なのはのドキワク便所大冒険 ver10.95」
Written by フェイト・T=takamachi・ハラオウン
なのはは常々考えていた。どうすれば夜一人でトイレに行けるのだろうかと。宵闇の便
所はもはや異界の領域であり常人である自分には到底足を踏み入れることの適わぬ場所。
そこをいかにして攻略するか、その対策を憂慮するあまり胃痛まで引き起こしていたので
あった。そう、世に言う「オイラはバッチシ元気ダゼ。胃が痛い」現象である。
そんなある日の夜。突然の尿意に苛むなのは。しかし時刻は丑三つ時、厠に行こう者な
どだれもおらぬ。瘴気溢れる天外魔境に赴くだけの度胸は自分にはない。しかし、膀胱は
すでに黄色信号を超え赤信号が明滅していた。夕食に飲んだコーラのせいだろう、秒を追
うごとに強まる尿意、軋む膀胱、痛む下腹部。崩壊の時は目前と迫っていた。
このまま朝まで耐えることは不可能またしかしせっちんに向かうことも不可能、なのは
は人生最大にして絶体絶命の危機に陥っていた。消耗戦では分が悪すぎると悟ったなのは
は最後の手段に打って出た。
「フェイトさん」
「どうしたのかしらなのはさん」
ベッドで三点倒立をしながら成年向けの雑誌をめくっていたフェイトに声をかけた。
「あの、お手洗いに行きたいのですが」
「どうぞ行ってらっしゃい」
「それが……」
そこで口ごもるなのは。後一声がどうして出せない。
「分かったわ、一緒に行きましょう」
「フェイトさん」
二人は手を取り合って魔界の入り口まで歩みを進め、フェイトが聖なる文言を唱えると
悪しき気配は跡形も無く消えてしまった。そして二人は中に入り……
終
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言葉が出ない。何と表現すればいいのだろう。
「……」
「どうしたのなのは??」
「あ、ゴメン、えっとこれはさっきよりも格段に良くなってる。良くはなっているんだけ
ど、どうしてこんなに違和感があるんだろうね」
「自分としては割とよくかけたと思うんだけどダメかな?」
「ダメじゃないよ。ダメじゃないんだけど……ま、いっか。うん、こんな感じで今後も書
いていってね」
もしかしてなのはさん、めんどくさくなった?
「は〜い、今日の授業はココまで。分からないことがあったらいつでも聞いてね。それじ
ゃまた」
「ばいにー」
終
作後贅言
僕からすると備忘録的な作品ですが、もし小説を書いてみたいなぁと思われる方の参考に
なれば幸いです。本気で書けば一冊ぐらいの量になってしまうので(汗 とはいえ、多分
参考にならないと思いますが(苦笑 まぁそういえば前に同じ手法の作品書いたなぁと思
い出して苦笑している佐々木でした。それではまた。
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