「聖王ヴィヴィオの日々 第一話」


Written by 佐々木真史





 午前十時三十九分 ベッドの上

「んっ……」

 なのはさんがもぞもぞと布団から這い出て目覚まし時計の時刻を確認したその瞬間……

「あぁっ!! え、あぁぁぁぁ!!」

「どうしたのなのは!?」

 なのはさんの絶叫にフェイトさんが飛び起きました。

「どうしたもこうしたもないよ! また目覚まし勝手に止めたでしょ」

「私知らないよ……」

「今日はせっかくの休みだから出かけようって言ってたのに」

 シフトを強引に捻じ曲げて二人ともお休みを取ったのです。ちなみにこういった休みの

取り方を極道休暇って言うらしいですよ。

「だってそれは……いくら私でも十回も出したらキツイよ」

 ●●じゃなくて汗だよ汗。誰だ●●なんていったヤツは。

「フェイトちゃんならそれぐらい平気でしょ。それよりもヴィヴィオ起こして早く用意し

よ。ヴィヴィオ、起きて」

「ん〜朝?」

「うん、朝」

 聖王さまは、なのはさんとフェイトさんの寝技の特訓に見入っていたようで、寝不足の

ようです。流石に午前一時から三時間ってバカなの? 孕むの?

「急いで朝食作るからフェイトちゃんとヴィヴィオは先に着替えてて」

「うん」

「は〜い」

 着替えのシーンは省略されました。ご了承下さい。

「フェイト母さん、あなたはいささかパン屑をこぼし過ぎる」

「ふぇ?」

 フェイトさんのお皿の周りにはトーストの欠片がいーっぱい。せっかく着替えたよそ行

きの服にも沢山引っ付いてます。ホント子供だなあんた。





 六課隊舎前 午前十一時九分

「いってらっしゃいませ聖王さま、高町一尉」

「うむ、出せ」

「じゃ、行ってきますってフェイトちゃんまだ乗ってない!?」

「うむ、出せ」

 六課職員達に見送られながら聖王さまご一行は課の自動車で一路クラナガンへ向かわれ

ました。神々し過ぎる!! ちなみにフェイトさんは涙目になりながら後を追って飛んで

いきましたとさ。市街地を許可無く飛行していいのか?





 セイオーデパート六階 午前十一時三十九分

 まずは上の階から見て回ろうということで、最上階へとやって来ました聖王さまご一行。

聖王さまのカリスマっぷりに一般客達が三歩ぐらい引いてます。ドン引きとかそういう意

味ではありません。断じて、否。

「ねぇフェイトちゃん、このフロアってゲームセンターしかないけど」

「いいのいいの。ちょっとだけゲームしてくるから三百オーラムちょーだい」

 注釈、この世界の通貨は「オーラム」です。元ネタが分かった方はご一報下さい。

「ヴィヴィオもゲームする?」

「うん。する〜」

 二人とも遊びたいということで、結局なのはさんも付いて行くことにしました。フェイ

トさんがまず選んだのはガンシューティングです。群がるゾンビをハンドガン片手に撃ち

抜いていくタイプです。おや? フェイトさんは二人分のクレジットを投入しました。聖

王さまの分も入れておくなんて気が利いてますね。

「フェイト母さん?」

「ゴメン、ダブルプレイなんだ」

 なんてこったい! 二丁拳銃スタイルでプレイすると。聖王さまは黙って見てろと。不

遜な振舞い許しがたいですよマッタク!

 とはいえ、いざゲームが始まるとフェイトさんの上手いの何の、ほとんどの敵は出てき

た瞬間に射殺、ボス敵も弱点を集中連射して鮮やかに撃退。同じく二丁拳銃の某ティアナ

さん涙目ですね。フェイトさんも普段からコレぐらいシャキっとしてくれていればいいの

ですが……

「素晴らしかったぞ、フェイト母さん」

「えへへぇ、そうかな」

 その頃なのはさんはパンチングマシーンで「冥王キャノン」とか叫びながら三百キロ以

上の数値を叩き出していました。普通に人死にが出そうな威力です。

 次にフェイトさんがプレイしたゲームは、そうみんなお馴染み音ゲーです。その中でも

割と難しい方のドラムを叩くアレをプレイするようですね。

「フェイトさん頑張っちゃうよ」

「うむ」

 いつもは色々と緩いフェイトさん、しかしながらことゲームとなると人が変わるようで

す。ちょ、おま、そのフィルイン無理すぐるwwってな譜面も楽々叩きこなしてしまいま

した。まさに才能の無駄遣い(良い意味で





 セイオーデパート四階 十二時九分

 聖王さまはフェイトさんのプレイを見てるだけで、何も遊ばれませんでした。クレーン

ゲームに興味がおありのようでしたが……

「ヴィヴィオの服見てみようか」

「うん!」

 というわけで、聖王さまのお召し物をみつくろうことに。あれ? フェイトさんの姿が

見えませんね。

「ヴィヴィオは青と黄色だったらどっちが好き?」

「青!」

 気に入ったデザインの服が見つかり、色のチョイスをしているとフェイトさんが戻って

きました。

「なのはぁ、見て見て!」

「チャイナドレス?」

 赤い生地に巻きつくように昇っている青い龍の刺繍が入ったものです。ものすごい派手。

もちろんスリットも入ってますよ。

「コレ着てよ。ね? いいでしょ」

「ダメだよ。フェイトちゃんが自分で着ればいいでしょ」

「違うよぉ、着たいんじゃなくて着てほしいの」

 なんだか不純な香りがしますね。

「フェイト母さん、あまりわがままを言わないほうがいい」

「そ、ヴィヴィオの言うとおり。欲しければ自分で買うこと」

「いいもん。自分で買ってなのはに着せてやるもん」

 ぷぅっと頬を膨らませて拗ねるフェイトさん。それ、聖王さまぐらいの年代のやる仕草

では? そしてまたどこぞへ走っていくフェイトさんでした。

「なのはママ似合ってるよ」

「そっかなぁ。派手じゃない?」

「ううん。すごくきれー」

 どんな服を試着しているのかはご想像にお任せします。

「なのは、見て見て! こんなの見つけた」

 両手を広げてブーンとか言いながら戻ってきたフェイトさん、彼女の手にはなんと……

「フェイトちゃんこれスクール水着だよ!?」

 なぜそんなものが!?

「えへへぇ、着てくれるよね?」

「着ないよ! あと着れないよサイズ的に」

「そんなことなぁい」

 驚くことにサイズは問題なかったのです。いったい誰に向けて販売しているのやら。今

日日の高校生はプールの授業とかあるのかしらん?

「着れるけど、まだお家にあるでしょ?」

「えぇ、だってあれ緩くなってきてるもん。フェイトさんピッチリしたのがいい」

「もう、またそんなこと言って」

「フェイト母さん、無駄遣いはよくないぞ」

 むぅ、と唸りながり買い物カゴへスク水をイン。

「だから買わないってば」

「いいもん、コレも自分で買うもん!」

 別なカゴへ水着を放り込むフェイトさん。そこにはさっきのチャイナドレスも入ってま

した。本当に買うんだソレも!?

 聖王さまの普段着を選び終え、なのはさんの服もお気に入りなのが見つかったようで、

お会計を済ますことに。

「フェイトちゃん本当に自分で買うんだね」

「うん。それでなのはに着てもらうの」

 フェイトさんの選んだチャイナドレスとスク水の会計を済ませます。それにしてもドレ

ス高ぇな。四万て。

「カードでお願いしまぁす」

「恐れ入りますがコチラにサインをお願いできますでしょうか」

 フェイトさんがサインをしたのですが……

「チョット待てフェイト母さん、それはフェイト・テスタロッサ・孕んどるん? と書い

てあるじゃないか」

「あやややや、失敗失敗」

 普通しませんよそんな書き間違い。わざとか、わざとだなゼッタイ。





セイオーデパート一階 十二時五十九分

「晩ご飯はお肉にしようかな、お魚にしようかな」

 なのはさんが献立を考えながら食材をカゴへぽいぽい放り込んでいきます。むっちゃ強

いのに、こうみると普通の主婦にしか見えませんね。

「ん?」

 聖王さま、カゴの中に何かを見つけた模様です。それはピーマンでした。あぁ、ピーマ

ン苦手でしたっけ。

「そぉい!」

 カゴに入ってたピーマン三つを放り投げると、キレイな放物線を描いて野菜売り場のピ

ーマンの棚へ落下。素晴らしいですそのピーマンコントロール! さすが我らの聖王さま。

そういえばフェイトさんの姿が見えません。と、思ったら遠くからなのはさんの様子を伺

っていました。手にはポテチの袋を握り締めながら。

「あ、タコが半額になってる」

 なのはさんが鮮魚売り場で割引商品に注意が向いている隙に、フェイトさんはそっと忍

び寄ってポテチの袋をカゴへイン。

「鮭が二割引……う〜ん、どうしようかな」

 退散したかと思えばまた忍び寄ってきましたよフェイトさんが。そしてカゴの中へ今度

はチョコチップクッキーの箱をイン。なのはさん早く気付いてください。

「あれ?」

 タコのパックと鮭のパックをカゴに入れようとしたとき、入れた覚えの無いものに気が

ついたようです。

「フェイトちゃん?」

 そういえば聖王さまのお姿も見えませんがって、フェイトさんと一緒に影から隙をうか

がってますよ。プリチー過ぎます。

 なのはさんの後ろをつけ、ジュースのボトルやらお寿司のパックやらステーキ弁当やら

を放り込んでいく二人。そのへんにしておかないと怒られますよ?

「ちょっとフェイトちゃん!! ご飯抜きにするよ」

 ほらいわんこっちゃない。

「ごめんなさぁい」

「ごめんなさーい」

「ヴィヴィオも一緒だったの!?」

 ど、どうか聖王さまはお許しいただけないでしょうか。金髪淫乱の方はどうなってもい

いので。

「コレ入れたのヴィヴィオ?」

 一パック八貫入って千九百八十オーラムのお寿司を指差すなのはさん。寿司高い! 大

トロ入りだから仕方ないですね。

「ごめんなさい……」

「いいよ、ヴィヴィオが食べたいなら」

「ありがとうなのはママ」

 ぎゅむっとなのはさんの足元に抱き付く聖王さま。あぁ、微笑ましいですなぁ。

「で、コレはフェイトちゃん?」

 高級国産牛肉を使用したステーキ弁当お値段三千百五十オーラム。寿司より高ぇ!

「ごめんなさぁい」

「自分で買うならいいよ」

「え!?」

 そうですよ、聖王さまよりもいいもの食べようなんて不謹慎です! 結局ステーキ弁当

は自腹で購入することになり、クレジットのサインを書いたときに「フェイト・テスタロ

ッサ・産んどるん?」と記入して二人から盛大にツッコミを入れられてました。ちなみに

フェイトさんがクレジットでしか買い物しないのは、現金を持たせるとぽろぽろ落とすか

らだそうです。クレジットカードもやばくないか?

 まぁ、なんだかんだいってものんびりとお買い物を楽しまれた、ある休日でしたとさ。





 高町家愛の巣 オンザソファ 午前一時十九分

「ちょっと、フェイトちゃん今日は一段と激しいよ!!」

「うひょー! 高級お肉のおかげで今晩のフェイトさんはパワフルだよぉ!!」

 なのはさんに今日買ったばかりのスク水を着せて特訓に励んでいるようです。

「ゴメン、私がイジワルだった。だからもうちょっと優しく」

「別に気にしてないよ。うふふ、うふふ、うふふふふ」

(フェイト母さんゼッタイ根に持ってるな、コレは)










作後贅言

ダメっ子フェイトさんと聖王ヴィヴィオを書いててすごく気持ちよかったので続き物にし

てしまいました。

とってもほのぼのとしたお下劣要素の無い緩い作品ですよね? ですよね?

近いうちに八神さんちも絡ませてみたいなぁと思いつつ今回はココでお別れです。

それではまた。