「寒暖」
Written by 佐々木真史
ここ数日の間、冷え込み具合が日増しに厳しくなっていき、昨日からとうとう雪が降り
始めていた。機動六課の隊舎敷地内にも雪が降り積もり、絵に描いたような銀世界となっ
ている。
「なのはママ、雪がいっぱい」
「そうだね。すごくたくさん積もってるね」
「ヴィヴィオね、スノーマン作りたい」
雪だるま、久しぶりに聞いた単語だ。これだけ雪があればさぞかし大きなものが作れる
だろう。
「じゃあ、なのはママと一緒に作ろうか」
「うん! 作る」
風邪をひかないように手袋やらマフラーで完全装備して、隊舎の裏庭で私達は雪だるま
を作り始めた。二人で小さな雪玉を転がして、少しずつサイズを大きくしていく。ただ雪
玉を転がすだけのすごく単純な作業だけれど、なぜだか面白い。転がせば転がすほどに大
きくなっていくのが愉快だった。もしかしてヴィヴィオより私のほうが楽しんでいるのか
もしれない。
「大きくなったねヴィヴィオ」
ちょっと張り切りすぎてヴィヴィオの背丈ほどもある雪玉になってしまった。これを下
半身にして、今度は上に乗せる上半身を作り始めた。
「なのはママ、雪冷たくてきれいだね」
「うん。そうだねぇ」
現在進行形で降雪が続いているので溶ける心配は全く無いし、材料にも事欠かない。風
が無いのが幸いだった。空気は冷えているけれども、体感温度がそこまで低くない。むし
ろ厚着して動き回るものだから少しばかり汗ばんですらいる。
「ママ、上に乗せようよ」
「これぐらいでいいかな」
下半身より二周りほど小さな雪玉を作り終え、それを乗せてみると、ちゃんと雪だるま
になっている。このままだとちょっと味気ないので、木の枝などで顔を作り、手も添えて
あげるとなかなか見栄えがあるものに仕上がった。
「上手くできたね」
「うん! これなのはママ」
「じゃあヴィヴィオとフェイトママも作ってあげなきゃね」
「作る!」
さっきと同じ要領でフェイトちゃん雪だるまとヴィヴィオ雪だるまを作っていく。三十
分ほど経過した頃には三つの雪だるまが仲良く並んでいた。
「かんせ〜い」
「よく出来たね」
ヴィヴィオと手を繋いで完成したばかりの雪だるまに見入っていると……
「二人ともこんな所にいたんだ」
小走りで駆け寄ってくるフェイトちゃん。
「あっ、フェイトちゃんお帰り」
「お帰りなさいフェイトママ」
ヴィヴィオがフェイトちゃんの足元に飛びついて頬をすり寄せている。
「雪だるま作ってたんだ」
「作ってたの!」
拳を突き上げて元気よく答えるヴィヴィオ。ホントにご機嫌だ。
「左のが私で、真ん中の小さなのがヴィヴィオ、右のがフェイトちゃんなんだよ」
「良く出来てるね。そうだ、これだけ雪が積もっていたらかまくらとか作れないかな」
「かまくらかぁ……よし、作ってみようか」
「かまくらってなぁに?」
「かんたんに言えば雪で作った小さなお家なの」
と、説明するとヴィヴィオの瞳はきらきら輝きだした。
「作る! かまくら!!」
「ようし、フェイトママとなのはママと一緒に作ろうね」
というわけで、私達三人のかまくら作りが始まるのでした。
手順としては雪を集めて山を作り、それを踏んだりして固める。次に借りてきたスコッ
プで穴を掘って完成となる。
みんなでせっせ雪を集めて雪山をこしらえていった。私の胸の高さぐらいまで雪を積み
上げたら今度をはこれを踏み固める。とはいえ、このぐらいの高さのものを踏み固めるの
はちょっと難しいから、てっぺんにヴィヴィオを乗せて飛んだり跳ねたり、斜面を滑り台
みたく滑ったりして固めてもらった。
「滑り台〜」
長さが足りないので、すぐ滑り終わってしまうけどヴィヴィオはいたくお気に入りの様
子。私達は楽しそうに滑っては登るを繰り返すヴィヴィオの様子を眺めていた。
「こんなに寒いのに元気だよね、ヴィヴィオ」
「ねぇ。思った以上にはしゃいじゃってね。フェイトちゃん寒くない?」
「大丈夫だよ。なのはが暖かいから。なのはは?」
「私も暖かいよ」
ギュッと握り締めるフェイトちゃんの手から伝わる温もり。とても心地がよかった。
ある程度固まったのが確認できたら、借りてきたスコップで穴を掘っていく。最初はス
コップで掘っていったけど、途中からは手で掘っていった。きゃあきゃあ嬌声をあげなが
ら、犬掻きみたく穴を掘っていくヴィヴィオ。本当に楽しそうで見ている私達も同じ気分
になれた。
「掘れた!」
ヴィヴィオぐらいの背丈ならば、屈まなくても十分出入りできるぐらいの穴ができてい
る。奥行きもそこそこあるし、三人程度ならば余裕で座れた。
「この中、すごく静かだね」
フェイトちゃんの言うとおり、かまくらの中は外の物音がほとんど聞こえない。雪が音
を吸収しているようだ。
「ねぇフェイトちゃん。ここで鍋持ってきて食べてみようよ」
「お鍋食べる!」
「それは面白そうだね。じゃあ、そうしようか」
調理のため私達みんなは一度部屋に戻った。私とフェイトちゃんは調理をして、ヴィヴ
ィオははしゃぎ疲れたのか部屋に着くなりすぐに眠ってしまった。
一時間ほどで、調理が終わり準備が整った。
「ヴィヴィオ、起きて。お鍋ができたよ」
ちょっと寝ぼけ気味なヴィヴィオを連れて、さっきのかまくらへと戻る。外は日が落ち
て真っ暗なので、ロウソクも準備してある。
フェイトちゃんに灯りをセットしてもらい、私は配膳の準備に取り掛かる。ヴィヴィオ
は寒さでシャキッとしたみたいで、今度は雪ウサギを作っていた。
かまくらの中でロウソクを灯すと柔らかな橙色の灯りが周囲を照らし、なんとも幻想的
な雰囲気に包まれる。
「綺麗だね」
「うん。とっても……」
少しの間二人きりで、この柔らかな雰囲気を堪能した。
「お鍋の準備も終わったからヴィヴィオを呼んでくるね」
ちょっぴり名残惜しいけど、外で走り回るヴィヴィオを呼んだ。
「ヴィヴィオ、出来たよ」
きのこや野菜、お肉をたっぷり盛り込んだ味噌味のお鍋を囲んでの夕食は、いつもとは
全然違うとっても新鮮な感じがした。
「ヴィヴィオ寝ちゃったね」
「今日は一日はしゃぎっ放しだったから」
あったかいお鍋を食べ終わったらヴィヴィオはすぐに眠ってしまった。ヴィヴィオだけ
先に部屋へ連れ帰り寝かしつけて、私とフェイトちゃんは後片付けをしている。雪はやっ
と今しがた降り止み、代わりに風が出てきた。
テーブルや鍋を片付け終わったかまくら。私とフェイトちゃん二人で特に何をするでも
なくぼんやりとロウソクの灯りを眺め続けている。
「なんだかすごく落ち着いてしまうよね」
「うん。不思議だね」
もうしばらくの間、二人きりで、この不思議と安らげる雰囲気を楽しむのでした。
完
作後贅言
たまには「雰囲気」を楽しめる作品を書こうと思い立ちて筆をとってみましたが、いかが
でしたでしょうか??
あいにく雪国育ちでも何でもないので、空想で補っている部分が多々ありますが、こうだ
ったらなぁという希望もこめて書いてみましたというか、ただたんに、ほのぼのとしたフ
ェイなのが書きたかっただけ(爆
自分としては毛色の違う作品ですが楽しんでいただけたら幸いです。
それではまた。
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