今月の特集はGTフェチさんにご協力いただき52〜53年製のトラピーズレスポールを徹底(?)比較してみました。

<特集No.25 トラピーズレスポールの比較>

トラピーズレスポール集合写真です。
左からGTフェチさん所有’52年製、寿庵皆男所有’53年製、GTフェチさん所有’53年製。
’53年の途中からスイッチプレートが付くようになります。
同じゴールドトップですが、色やけの具合が微妙に違いそれぞれが過ごして来た半世紀を物語っているようです。


中央の’53年製はALL GOLD、右の’53年製はシリアル入りです。
バックのマホガニーのシミなど何らかの理由で全部GOLDに塗られてしまったといわれるALLGOLDですが、ネック裏は手の汗により緑変しています。握った感じもかなり塗装面の違和感があり、不評だったので’56年頃からはダークバックに替わったのが頷けます。



左の’52年製は40本しか存在しないと言われるアンバウンド仕様です。ネックの差し角は3本とも同じです。 ’53年の後半にトラピーズからバーテイルに変更されるときに差し角が1度から3度になりますが、移行期には1度のままでバーテイルという仕様もあるようです。



上の’52年製にはフルアコ用のTALLタイプのバレルノブが付いています。「GIBSON ELECTRICS」によると’53年の初め頃から背の低いモノに変わります。



左の’52年製のロゴはiのドットがGにくっついているタイプで、位置も一番高いようです。右の’53年製のトラスロッドカバーがかなり高い位置に付いているのが判ります。 ’52〜’53年までは徐々にロゴとトラスロッドカバーの位置が中央よりになってきた感じです。その後’57年後半からは反対に段々両者の位置が離れて行くような気もしますが個体差なのでしょうか。



’52年製はノーシリアルです。シリアライズされたのは’53年の途中からと言われています。



’52年型の特徴であるトラピーズテールピースですが、上のアンバウンドの’52年製はナットの形状が違います。


アンバウンドの’52年製はピックアップの固定ネジがフロント(左)、リア(右)ともマイナスです。 リアピックアップの固定ネジが対角線上にあるのがこの時期の特徴です。 残念なことにハンダゴテが当たったのか(?)PUカバーの一部が溶けてしまっています。


アンバウンド’52年製(左)と’53年製(右)のピックアップを外してみるとキャビティの形状がかなり違うことが判りました。またP90のカバーは薄いセルロイド製で、タイトなキャビティに合わせてそれぞれ縁を削って有ります。特にアンバウンドはキチキチに作ってありPUを外すのにかなり苦労しました。あらかじめピックアップ等の電装品を組み込んだピックガードをパカパカとビスで留めるだけでよいストラト等のフェンダー製品と比べ、なんとも手間のかかることをしていたものです。


これがリアピックアップキャビティですが、左のアンバウンド’52年製は中央部に配線を通すためのザグリがあります。このためピックアップ固定ネジを対角線上に付けざるを得なかった訳ですね。


こちらはフロントピックアップキャビティで、左のアンバウンド’52年製はスイッチからの配線が通っていないのが判ります。やはり配線を通す位置が全く違うようです。



コントロールキャビティも大きな違いがありました。ザグリの大きさが全く違いますし、配線を通す穴の位置が異なります。 アンバウンド’52年製(上)のコントロールキャビティの中を見ると、綺麗なバーズアイメイプルであることが判ります。コンデンサーの一個はコーネルダブラー製に換えられています。 肘の当たるTOPの剥げたところも同じくバーズアイメイプルで、しかも良くTOPを見るとセンター合わせの2ピースです。 つまりGOLDの下は綺麗な総バーズアイメイプルと思われます。



スイッチキャビティも同様にザグリの大きさが違います。



左がアンバウンドが入っていたケースですが、勿論最初からペアだったかどうかは不明です。 形状は通称カルフォルニアガールと呼ばれているものですが、な、な、なんと!! 「SUNBURST ALLEY」等のバースト本の著者でサンバースト・レスポールのコレクターとして知られるVIC DAPRA氏の所有物だと書いてあります。
また右は’80年代のギブソン純正ケースですが珍しい形ですね。


生まれて半世紀を経て尚エレキギターの王道として生き続けるレスポール。

その最初のプロトタイプともいえるアンバウンド、そしていわばB級品のALLGOLD、 シリアライズされスイッチプレートもついて後年のレスポールの形により近づいた’53年という3本のトラピーズ・タイプのレスポールを今月は比較してみました。 フルアコのジャズギターからのアプローチでエレキギターを作ったギブソンが、生産効率を上げようと試行錯誤していたことが判りました。

またTOPを金色に塗るという発想はレス・ポール氏のものと言われています。
しかし当初ギブソンはそれまでのフルアコと同様のサンバーストにするつもりで、実際に最初にレス・ポール氏に見せたソリッド・エレキギターのプロトはサンバーストだったということです。
あくまで素人の勝手な想像ですが、もしかするとプロトタイプであるアンバウンドの中でも最初のロットは、サンバーストに塗ることを想定してセンター合わせの2ピースになっているのかもしれません。
私が実際に現物を見た2本と写真で見た2本のアンバウンドはセンター合わせでした。(センター以外の継ぎ目が見え難いだけで実は3ピースかもしれませんが。)もっともこのようなことは多くの同型ギターを見てこられたプロの方々の間では周知のことなのかもしれませんが、素人の私としては今後もアンバウンドを見る機会があれば確かめていきたいと思っています。

余談ですが、その後田村六蔵さんの56GTもセンター2ピースであることが判明しました。 もっともセンター2ピースだったにせよGOLDを剥ぐ訳には行かないのが辛いところですが、グッと我慢しましょう。
江戸っ子は裏地に凝ると言うじゃないですか。

え?お前の物じゃないだろうって?失礼しました。(完)