Natho Hennのページ
ブラジル音楽と一口に言っても、日本の約23倍の面積を持った国のこと、地方により音楽も多様です。ブラジル最南部ー広大な大草原が広がるリオ・グランジ・ド・スル州の住民は愛称でガウシュと呼ばれるが、そのガウシュの素朴な音楽をピアノ曲にしたのがNatho Hennです。彼のピアノ曲を聴いていると、大草原を走り回る牧童の姿が目に浮かんで来ます。
Natho Hennについて
Natho Henn(ナート・エン、正式にはNatalio Rodrigues Henn)は1901年12月26日、ブラジル南部のリオ・グランジ・ド・スル州の、その南東部ーウルグアイとの国境にあるQuaraiの町に生まれた。5歳の時から母にピアノを習い、後にウルグアイのモンテビデオでも学んだ。Quaraiに戻ってからは、地元の民謡を元にしたピアノ曲や歌曲を作曲した。1942年にポルト・アレグレに移り、自作の演奏会を開いている。1958年8月1日、ポルト・アレグレで亡くなった。
ナート・エンの作品には、合唱と管弦楽のための"Hino Gloria do Brasil (1943) "を作った以外は、殆どが歌曲かピアノ曲である。ピアノ曲は計12曲が残されている。録音が僅かなのでその全貌は分らないが、彼の作品は「いわゆるブラジル風」のリオデジャネイロ辺りの熱気を帯びた音楽とは大きく異なり、ウルグアイやアルゼンチンにまたがるパンパ(大草原)の涼しい風が吹いているような響きがします。同じブラジルの作曲家でもヴィラ=ロボスやナザレあたりとは雰囲気が違っていて、むしろウルグアイのファビーニやアルゼンチンのグアスタビーノの近いものを感じます。ガウシュ(パンパの牧童)の日常を描いたナート・エンは、ブラジルの中でもローカルな音楽家として貴重な存在に思います。
Natho Hennのピアノ曲リストとその解説
- Páginas do Sul 南部の頁
1940年出版。南部ブラジルのカンポ(大草原)の雰囲気ムンムンの曲。変イ長調、3/4拍子、A-B-B'-A-B形式。冒頭A(下記の楽譜)の楽しいブンチャッブンチャッのリズムはGaita~リオ・グランジ・ド・スル州のアコーディオン~の音を模したのであろう。(リオ・グランジ・ド・スル州にあるベント・ゴンサルヴェスの町はかつてGaitaの製作で知られており、ここのGaitaはブラジルはもとより世界中に輸出していたとのこと。)
A obra musical de Natho Henn. Revisada e anotada por Armando Albuquerque、Páginas do Sul、1〜8小節、Editora Movimentoより引用
Bの部分は一転して、落ち着いた伸びやかな旋律が奏される(下記の楽譜)。I 度の和音に第II音や第VI音(変イ長調のこの曲ではラ♭-ド-ミ♭にシ♭やファ)を加えたり、V度の和音を属九にしたりを多用するのがナート・エンの好みというかこの地方の和音なのか、それがのどかで平和な田舎の雰囲気を上手く醸し出しているように思えます。
A obra musical de Natho Henn. Revisada e anotada por Armando Albuquerque、Páginas do Sul、25〜28小節、Editora Movimentoより引用
B'はBの変奏で、旋律が高音部十度のアルペジオで優しく奏されたり、急にVivoになって跳ねるような3連符が現れる。- A carreta 荷車
田舎の一本道を、牛に曳かれた荷車がゆっくりと進む光景を描いたような曲。変イ長調、3/4拍子、三部形式。長調ながらファやソを♭とした陰のある旋律は牛曳きの男の歌だろう。中間部はハ長調で、少しテンポを上げて荷車が進む光景かな。- Toada (Cantilena) トアーダ(カンティレーナ)
変ホ長調。左手オスティナートの静かな伴奏にのって、子守歌の民謡のような素朴な旋律が奏される。楽譜の旋律には「坊や、目を閉じな。寝んねの時間だよ。いい子は寝んねしな。」と歌詞が記されている。旋律に添えられた半音階的和音、特にV度の増三和音が絶妙で、微睡みを誘うよう。- Feitiço 魔法
ト長調。冒頭の気取った旋律はタンゴ風。後半はハバネラのリズムも現れ甘い響きに。- Rolinha キジバト(雉鳩)
のどかなリオ・グランジ・ド・スル州の草原と青い空が思い浮かぶような曲。嬰ヘ長調、4/4拍子、A-B-A-B-A' 形式。Aは32分音符がキジバトのさえずりのように奏される。32分音符が3オクターブを急速に上下するのは技巧的(下記の楽譜)。Bはバトゥキのようなリズムが現れてから、キジバトが自由に飛び回るような伸びやかな旋律が歌われる。最後のA' は32分音符のパッセージが名残惜しそうに続く。
A obra musical de Natho Henn. Revisada e anotada por Armando Albuquerque、Rolinha、1〜5小節、Editora Movimentoより引用- Pastoral 牧歌
題名通りののどかで平和な調べの曲。ト長調、6/8拍子、A-B-A' 形式。冒頭の高音部の軽快な旋律はスカルラッティを思わせる。中間部はト短調。A' の最後は旋律が変奏され、高音部の32分音符の音階が鳥のさえずりのよう。- Tapera 廃屋
ト短調、3/4拍子、三部形式。哀愁を帯びた「Valsa brasileira」のムードの曲で、ちょっとミニョーネを思わせる。中間部はト長調だが、長調と短調が揺れ動く憂うつな雰囲気。- Prelúdio I 前奏曲1番
- Prelúdio II 前奏曲2番
- Peça sem Título 題名のない作品
- Procissão (e Festa) dos Navegantes
- Ymembuí, Bailado
Natho Hennのピアノ曲楽譜
- A obra musical de Natho Henn. Revisada e anotada por Armando Albuquerque
- Páginas do Sul
- A carreta
- Toada
- Feitiço
- Rolinha
- Pastoral
- Tapera
- Prelúdio I
- Prelúdio II
- Peça sem Título
- Procissão (e Festa) dos Navegantes
- Ymembuí
Natho Hennのピアノ曲CD
星の数は、
は是非お薦めのCD、
は興味を持たれた人にはお薦めのCD、
はどうしてもという人にお薦めのCDです。
Coletânea Piano Brasileiro, Volume 7 - Alma Gaúcha
Biscoito Fino, BC 208
- Negaceando (Radamés Gnattali)
- Alma Brasileira (Radamés Gnattali)
- Canhoto (Choro) (Radamés Gnattali)
- Por que? (Radamés Gnattali)
- Caprichosa (Valsa) (Radamés Gnattali)
- Vaidosa (Valsa) (Radamés Gnattali)
- Suite Brasiliana no. IV (Radamés Gnattali)
- Dez Valsas para Piano (Radamés Gnattali)
- Improviso (Araújo Vianna)
- Rèverie (Araújo Vianna)
- Presto (Araújo Vianna)
- Chorinho (Paulo Guedes)
- Pastoral (Natho Henn)
- Tapera (Natho Henn)
- Rolinha (Natho Henn)
- Grande Fantasia Triunfal Sobre o Hino Nacional Brasileiro (L.M. Gottschalk)
Miguel Proença (pf)
このCDは、10枚組CDの"Coletânea Piano Brasileiro"の中の第7巻。
pamPiano - A música erudita dos pampas
- El Pampeano (Ariel Ramirez)
- El Bailecito (Carlos Guastavino)
- Páginas do Sul (Natho Henn)
- La Pecadora (Dalmiro Costa)
- Gato (Julian Aguirre)
- Amanduá (Dimitri Cervo)
- Rolinha (Natho Henn)
- Campera (Carlos López Buchardo)
- Danzas Argentinas (Alberto Ginastera)
- A Carreta (Natho Henn)
- Triste No. 2 (Eduardo Fabini)
- Feitiço (Natho Henn)
- Prenda Minha (Radamés Gnattali)
- Dança Charrua No. 2 (Breno Blauth)
- Noite Estrelada (Suzana Almada)
Olinda Allessandrini (pf)